47 Hちゃん
あれだけ休んどいて若干ストックが切れそうなのがヤバみ。
がんばるでい。
後、Twitterで喜び報告して、肝心のこちらでなにも報告していなかったのですが、2/4と4/22にこの作品のレビューを頂いておりました!
せっかく頂いたのに、こちらで報告とお礼が遅れて申し訳ございません!!
くまさん963さん、零崎 飛織さん、本当にありがとうございました!!
レビュー信じられないくらい嬉しいです!
ブクマ10件そこそこでレビュー2つってなかなかないです。
読者の方に恵まれています……!!
――『いやそれはいいんだけどさ……これって、わざわざ朝早くに来てまでやらなきゃダメだったの?』
「え? あ……そうだね、今日使うみたいだったから……あはは、昨日は部活とか勉強が忙しくてなかなか時間取れなくて、今日の朝やっちゃおうかなって……」
「うーん……正直な所さ、今軽くお手伝いしてみて思ったんだけど……この仕事時間はかかるけど別に技能が必要なことでもないし、櫻井さんが忙しいなら誰か他の人にやってもらったり出来たんじゃない?」
「え、でも、私が先生に頼まれたことだし……」
私がそういうと鹿島君はあっけにとられたような顔をして、少し考えこむ。
「……………………もしかして、今日以外も割とこういうことある?」
「こういうことって……あ、ううん! こんな翌日に持ち越す事なんてないよ!? いつもは頑張ってその日のうちに終わらせてるの!」
「…………頑張って、ね……」
「うん! 勉強を頑張ればみんな喜んでくれるし、クラスの皆も頼ってくれる。部活だって、期待のエースだってみんな期待してくれてる! 先生が頼みごとをしてくれるのも、私を頼っての事だし、もっと……もっと頑張らなくっちゃ!!」
「……だからさっき、頑張らなきゃいけないって……?」
鹿島君の言葉に、さっき思わず呟いた一言が蘇る。
「あ、そっか……聞かれちゃってたんだったね……そうだよ、私は期待してもらってるんだから、頑張らなきゃ!」
さっきは思わずネガティブになっちゃったけど、頑張ろうとする心が大事だから。
でも鹿島君は、難しい顔をしてしまっていた。
――私、何かしてしまったのかな……?
「うーん……………………」
「えと……どうかした……?」
私が恐る恐る尋ねると、鹿島君は意を決したように私の目をジッと見つめて――。
「うん、ちょっと説教臭くて嫌な言い方に聞こえるかもしれないから、先に謝っとく。ごめんなさい」
――と頭を下げつつ告げてきた。
「え」
私がどういうことかを尋ねようとする前に、鹿島君はそのまま話し始める。
「さっきも言ったけど、俺は無理してまで頑張らなくちゃいけない事なんて存在しないと思ってる」
「え……で、でも! 皆の期待に応えなくちゃっ!! 皆、私を頼ってくれてるんだし!」
「……部活も?」
「ぶ、ぶかつ?」
「さっき言ってたでしょ? 部活も頑張らなきゃって。俺そんな詳しくなくてさ。何部で何をそんな期待されてるのかわからないんだけど」
「あ……えっと、陸上部なんだけど、うん……先生も同じ部の皆も私のタイムに期待してくれてる。それになにより、私が陸上部で頑張って喜んでくれるのは、お父さんとお母さんなの」
「………………」
「私は、小さい頃身体が弱くて、お父さんやお母さんに心配ばかりかけてたんだけど、成長するにつれて身体もよくなって……今では陸上部で頑張ってる私を見て本当に喜んでくれてるの! 元気になってうれしいって! だから私は部活ももっと頑張って――――」
「頑張って、それから?」
――……頑張って頑張って頑張って…………それから?
「……ぁ……」
鹿島君が発したのは、頑張ろうとする私の中で浮かんでくる問いかけと同じものだった。
私が、答えられない問いかけと同じもの。
「確かに櫻井さんが頑張っていい成績を残したり周りを手助けしていれば、その時その時で喜んでくれる人はいると思う。でもその頑張りの後に、調子を崩した櫻井さんが残った時、ほんとにみんな喜んでくれるの?」
「それは……」
「頑張って無理して、それを周りみんなに隠すなんて無理だよ。……というか、今の段階でも櫻井さんの事心配してくれた人は絶対いるんじゃない?」
「…………うん」
家ではお父さんやお母さんには疲れは見せないようにしてるけど、やっぱり学校では美琴達には気づかれる。
それすらも頑張って隠そうとしていたけど、正直自分でも隠し切れないだろうなとは思っていた。
――……そうだね、私を心配してくれてる美琴達は、決して喜んでなんかいなかった……。
自分の行いを改めて振り返っていると、鹿島君は申し訳なさそうに続ける。
「…………いや、別にさ。誰かのために頑張ることが悪いわけじゃないし、全部否定はするつもりはないよ……? ただ、誰かの為にやるなら、自分を大事にした方がいいって事だけなんだ。誰かに助けを求めたっていいし、少しくらい休んだっていいと思う」
「助け……休んで……」
沈黙が私たちを包む。
少し気まずくなりかけたけど、鹿島君は少しだけ息を吐いて、おどけたように口を開いた。
「期待してもらうのは嬉しいかもしれないけど、重荷になるなら期待なんて突っ返しちゃえ」
「ええっ、つ、突っ返す?」
「そ。先生に期待してるって言われたら「こちらこそ今後も私が成長できるようご指導お願いします。期待してます」って期待を押し付けてしまえ。失敗したって先生のせいに出来るよ」
「えぇ……それはひどいんじゃない?」
「いーや、そんなことない。そもそも、これから前に進もうとしているのに、期待とか信頼とか責任とか、そんな重たい物を率先して背負う必要なんてないんだって」
「あ……うん……ありがとう……」
なんだろう、今言われたばかりなのに、少しだけ何か軽くなった気がした。
少しだけ――口元が緩んでしまった。
ブクマ、感想、評価、お待ちしておりますですわ!




