46 Hちゃん
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「えっと、今日はなるべくタイムを縮めたいからフォームを少し見直して、帰ってからはいつも通り予習をして…………」
「………………め……」
「あ、先生から書類まとめるの頼まれてたんだった……! 明日までだから家で……それだと勉強時間が減っちゃう……そうだ、朝練よりも前に学校に着てやれば間に合うかも」
「……ひ…………め!」
「その為には……先生に事前に伝えないとダメだよね……落ち着いてやるなら図書室とか使わせてもらう許可取ってみようかな」
「姫っ!!」
突然の大声にびっくりして声の下法を見ると、何かとても怒った感じの美琴が仁王立ちしていた。
「ひゃぅ!? み、美琴……? な、なに……?」
「何じゃない。さっきから呼んでたのに、どうしたの一人でブツブツ言って」
「あ……ご、ごめん! 色々考えごとしてて……えっと、ブツブツ言ってたの? 私……」
「言ってた…………ねぇ姫。前にも言ったけど、変に根詰めすぎ……少しは――」
「だ、大丈夫だから! ほんとごめんね!? 私これから先生に早く来る許可貰ってそのまま部活行くから!」
「ちょっ、姫!?」
また心配されてしまった。
心配されたってことは、どこか不安がある行動をしてしまったってことだよね。
もっと頑張らないと。
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「失礼しました」
職員室を出て、その足で部活に向かう。
翌朝早く学校に来て、図書室を使わせてもらえる許可は、ことのほか簡単にもらえた。
色々手伝ってきたから先生の印象がよかったみたい。
――翌早朝……まだ少し薄暗いし、さすがにちょっと眠いや……。
朝練の前に頼まれごとを済ませようとしたら、本当に早くに学校へ来てしまった。
なかなかこんな時間に来ることがないから新鮮な気持ち。
「朝練の始まる時間まで、一時間ちょっとか……頑張らないと!」
そうして少し量のある書類に手を付ける。
少し進めていると、やはりというべきか、すごい眠気が襲ってきた。
もともと単純作業だし、昨日も予習が少し遅くまでかかっちゃったからね。
――パンッ!
両頬を強めに叩き、気合を入れなおす。
「よし! 頑張らないと!」
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「…………ぇ……」
ふと、目を覚ました。
「あ……!」
目を覚ました、ということは、気合を入れたにもかかわらず、眠ってしまったということ。
慌てて時計を見ると、既に部活の朝練は始まっている時間。
窓から見える校庭ではもうみんなが朝練に励んでいた。
「あ……………………」
急に力が抜けてしまった。
ずっと続けていた朝練もサボってしまい、頼まれていた書類整理も終わった記憶がないまま眠ってしまったので、間違いなく終わってない。
「…………何してるんだろ、私……もっと頑張頑張らないといけないのに……」
――何にも気力がわかないや……。
「……んー……何を持って頑張らないといけないのかはわからないけど、無理してまで頑張らなきゃいけないことなんて、世の中そんなないと思うけど」
「みゃぃ!?」
起きたばかりで全然気づかなかったけれど、私が座っていた長机の斜め向かいに男子が座っていた。
「え? あ、え……えっと……た、確か……鹿島……君? 隣のクラスの」
「だよ。そういうあなたは櫻井さん」
「う、うん……えっと……どうして、ここに……」
「ん、俺は割と……いや、結構早くに学校に来て、教室でゆっくり本を読んで時間潰してるんだけど、今日は本持ってくるのを忘れて。図書室空いてれば適当に借りようかなと思って」
「……じゃあ、教室に戻ってないのは……?」
「いや流石に係の人もいないのに勝手に持ち出したりはしないって。ここで読む分にはいいかなって思ってさ」
「そう、なんだ……」
今までそんなにかかわったことはなかったけど、何となく面白いなと思った。
それで何気なく呼んでる本のタイトルを確認しようと目線を下げると。
「……あ」
「ん? ああ、これ? ごめん、勝手にやっちゃった」
鹿島君の手元には、私が頼まれて朝やろうとしていた書類があって、しかも鹿島君が言ったように、ちゃんと整理されていた。
「ど、どうして……」
「いやぁ、本借りようと思って中入ったら、眠ってる櫻井さんと散らばった書類があったから、ついね。……間違いとか大丈夫? 多分こうだろうってまとめ方はしたんだけど」
「う、うん……それは大丈夫……じゃなくて! ど、どうしてそれ、やってくれたの……?」
「え、なんとなく」
「な、なんとなく?」
「うん。いやまあ、こんな朝早くから作業途中で寝ちゃってたってことは、色々大変なのかなって思ったから手伝ったってのもあるけどさ。基本的には気まぐれだよね」
「そ、そうなんだ……」
もしかして、鹿島くんって少し変わった人なのかな。
――……あ! 手伝ってもらった人に何を思ってるのさ私……!
「あ、えっと、気まぐれでも助かっちゃった。本当にありがとうね? このお礼はいずれ――」
「いやそれはいいんだけどさ……これって、わざわざ朝早くに来てまでやらなきゃダメだったの?」
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