43 T君
もっと多くの人に読まれたぁい!!(某妖怪人間風)
…………え、若い方もわかりますよ、ね……?
家につき、ドアの前に立った時点で既に、扉の向こうからイカ天の鳴き声が聞こえる。
どうもここ最近、イカ天のやつ俺が帰ってくるあたりになると、出待ちならぬ帰り待ちしてやがる。
確実にドアの前にいないなってわかってても鍵差し込んだらダッシュしてくる音が聞こえるんだよ。
「……ま、確かに最近は素早く一直線に帰ってくることは減ったしな」
姫と付き合い始めて、家をないがしろにしたつもりはなかったけれど、少しだけ帰るのが遅くなった気はする。
「いや、それにしてもイカ天は甘えすぎだけどな」
ドアを開けるなりひたすら頭突きしてくるイカ天に苦笑いしながら抱き上げる。
「……エビ天はふてぶてし過ぎな」
部屋に入ると、相も変わらずお気に入りのソファーに広々と横たわっているエビ天が目に入る。
俺が帰ってきたことで、一応こちらを一瞥し、再び眠りにつくエビ天。
――……エビ天とイカ天は同じ年生まれで、同じ日にうちに来たはずなんだけど、ここまで正確に差が出るか……いや、それはいいんだけどさ。
とりあえず、何となくそのふてぶてしさが気に入らなかったので、無理やり隣に座ってやった。
――なんか、仕方ねぇな……みたいな顔されて場所開けてくれたけど。
「しかし、美琴までお面で現れたときは、マジでお面が流行りだしたのかと思った」
姫だけじゃなく、式見先生も収集家みたいだし、生島さんも興味津々だったから、よりそう思ってしまったわ。
それにしても、まさか美琴に姫の正体を知らなかったことがバレてたとは思わなんだ。
いやほんと、なんでわかったんだろう。
「……まあ、怒られるとかではなかったな」
最初、俺が美琴に姫の正体を知らないことを隠そうとしたのは、姫の大事な友達だという美琴に話したとき、何も知らないくせに姫の恋人になった不義理な俺を怒ると思っていた。
そしてそのまま姫に伝わってしまうことを恐れてたんだ。
「でもまさか、俺も心配をしてくれるなんてな……」
『私は……大我の幼馴染として、大事な幼馴染が姫を傷つけないように、無理をして付き合ってるかもしれないって思ったからあんなこと聞いた』
『もちろん姫も大事。でもそれ以上に大我が……大ちゃんが、誰かもわからない相手と付き合うことにストレスを感じてるなら止めたいと思っただけ』
思い出した言葉に、思わず頬が緩む。
正直、相手のことを大事な幼馴染と思っていたのは、俺だけだと思っていた。
だからこそ、さっきの言葉は本当に嬉しかった。
やはり俺の幼馴染は本当にいい奴だ。
こんなことなら最初からちゃんと伝えて、助けを求めておけばよかったのかもしれない。
俺は最初から姫が好きって気持ちは、全くぶれてはいなかった。
顔も名前もわからない告白だったけど、ちゃんと受け止めて、受け入れたんだから。
それでもやっぱり傍から見たら顔も名前もわからない相手との交際はいびつに見えるだろうし、姫に伝わったら嫌な思いをするだろうなという考えが、美琴に伝えることを拒んでしまった。
「変な隠し事をするのは、あまりいい気はしていなかったもんなぁ…………美琴にも、姫にも……」
俺は今日、幼馴染の美琴に隠し事を明かしたけれど、肝心の俺の恋人へは、まだ何も伝えていない。
なし崩し的にこうなってしまったが、本来先に姫へ伝えるべきだった。
「明日、ちゃんと話そう。話して、隠していたことを謝って、それで改めて俺の気持ちを伝えよう。…………今度は俺から」
――カチャ!
そんな決意を、全く聞いていないお猫様達に宣言していると、DOORに連絡が入る。
「ん、ちょうど姫からのメッセだ。部活終わったんかな………………え、は……」
『ごめんなさい、別れましょう』
「………………………………えっ」
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