38 T君
評価も感想も欲しいけど、まずは読まれることが大事ですね。
どうすれば読んでもらえるのか見当もつかないけれど。
晴れやかな気持ちで目が覚めれば、学校に向かう足取りもより軽くなる。
とはいえ、圧倒的に嫌な授業でもない限りは、いつもそれほど重い足取りではないけれど。
無論今日はそんなものはないので、足取り軽く登校。
「つかなんだったらいつもより十分くらい早いな。これはまた一番乗りかぁ?」
と、勢いよくドアをガラリと開く。
「しましまおっはよう!」
「どわっ……お、おはよ、生島さん」
「うむうむ」
誰もいないと思い意気揚々と教室に入ると、満面の笑みの生島さんに迎え入れられた。
「驚いた……めちゃくちゃ早いね今日」
「ぬふっふっふ、たまにはね! かっしかっしに勝ってみようかと思いまして」
「そうなんだ……それはいいけどあだ名は安定させてもらっていい? ブレブレな上に最後のは絶対言いづらいでしょ」
――……カシカシ、しましま、かっしかっし……もうちょっと捻るか、捻らないならもっと単純なのにしてほしいかな。
「じゃあカシカシで!」
「了解いたしました」
「うむ。では改めて、おはよ鹿島」
「……? ……?? ……お、おはよう?」
――え、カシカシ……。
とりあえず席につき、一人の時と同じように本でも読んでいようかと思ったが、生島さんは俺の前の席を陣取り、ドヤ顔のまま待機していた。
「…………えっと、何待ち?」
「え? カシカシに競争で勝つと何でも言うこと聞けるとかなんとか」
「誰がそんなデマ流した!?」
そしてカシカシ戻ってきた。
「私。今思いついた」
「!? 朝から思考が追い付かない!」
「だってカシカシが本取り出しちゃうんだもん。せっかく来たんだから話そ?」
「ああ……そういう……そうならそう言ってよ……」
「およ? 言わなかった?」
「一呼吸ほども言ってないね」
「思念とかで伝わればうれしいよね」
「そうですね!」
今日は朝から生島さん絶好調だな。
俺の反応にニシシッ! と一笑いした後、話題が変わる。
「そうそう、日曜日なんだけどさ、カシカシ、お面の子と街の方にいた?」
「え、あー……」
そうだった。
最初に待ち合わせ場所を決めたとき、付き合ってるのを隠しているから、人混みに紛れたほうが見つかりにくいと思って街中を指定した。
人が多ければ他人の空似という言い訳も聞くと思ったから。
でも――。
「あのお面目立つよねー! あれは……なんのお面? 動物だったと思うんだけど」
――姫、お面出来ちゃったから逆にすさまじく目立っちゃったんだよなぁ……。
顔はバレてないけど、発見はされるよね。
「……クアッカワラビー、だね」
「くあっかわらびー? どんな動物?」
「んー……素の顔が凄く笑顔に見えるから、世界一幸せな動物って言われてる子……だったかな」
「そうなんだ! いやーお面にもあんな可愛いのもあるのかと思ってね! 馬のお面も好きだけど、リアルすぎてみんな怖がってたし」
「あー……あれね、ちょっと調べたら出てきたんだけど、リアルフェイスモードとデフォルメモードってのがあって、デフォルメモードに切り替えると、リアルな馬のお面からアニメ絵みたいなかわいい感じの馬の顔に変化するんだって」
「なにそれすごい。お面て全部そんなこと出来るの?」
「いや、あのお面だけみたい。最先端技術の集大成みたいなお面らしい、あれ」
「すごー…………およよ? じゃあその子もそのデフォルメモードにしておけばいいのに。私は結構好きだけど、リアルよりはいいと思う」
「それ、本人に聞いてみたら、デフォルメモードは可愛いけど、本来の姿をお勧めしたいってさ」
昨日の夜、ふと気になってお面の事を調べてみてから知ったこのことを、直接DOORで聞いてみたところ、そう真剣な文が帰ってきた。
生島さんには端折って説明したけど、もっとたくさんリアルフェイスモードを進めたい理由が書いてあったのを思い出し、少し苦笑いをする。
――姫はお面のことになると急にテンションが変わるからなぁ……。
「……ふーん、そうなんだ………………で、カシカシはそのお面の子とどれくらいお付き合いしてるの?」
「どれくらいって言っても……へ?」
「ん?」
「今なんて……」
「え? 付き合ってどれくらい? って聞いたんだけど」
「な、なななんで」
「いやいやいやいやカシカシってば、そんな愛おしいものについて話してます見たいな顔しておいて、付き合ってないは無理があるよぉ」
――…………え、え、俺、そんな顔してたの? ……ああ、確かになんか頬緩んでるわ……。
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