27 T君
姫と思われる爆弾が荷物置き場に走っていき、どうしたものかと思っていると、俺の携帯が振動していた。
「……ん? ……ああ」
もしかしてわざわざ連絡してくれたのか。
そう思い、DOORを立ち上げる。
SIHK:大我くん! も、もしかしてもう見に来てる!?
大鹿:うん、急にどこか練習から外れるからどうしたのかと思った
SIHK:え、あ、あれ私だってよくわかったね
大鹿:うん……何故かはわからないが……
SIHK:あはは、わかってくれてるならわざわざ連絡しなくてもよかったかもね
SIHK:トレーニングボムを使った練習は急遽決まったから、大我くんもビックリしてるかなって思って
大鹿:いや、ビックリはしてる
SIHK:あはは……とにかく、私練習頑張るから!
そう返信があった後、再び姫は練習に戻っていった。
俺はそのまま少しの間、練習を見ていた。
俺と同じように興味深そうに見ていた生徒もチラホラいたが、姫を含めた他の部員が普通に練習をしていることや、顧問の式見先生がこの状況を黙認していることから、異常な事態ではないと思ったのか、徐々に見学も減っていった。
――しかし………………。
「ほんっと、楽しそうに走るなぁ……」
お面を被っているので表情は見えないが、なんとなく雰囲気から、楽しんでいると感じられた。
もちろん自分の勘違いの可能性だって大いにあり得るが。
『――――だからだよ……』
「…………ん……?」
――今、何思い出した……?
「何を思い出そうとしたのか思い出せないとか、記憶障害かっての」
というか、本当にそう思う。
姫は告白してくれたのは、一目ぼれじゃない。
俺と言う人間に接したからこそ好きになってくれて、告白もしてくれた。
つまりは俺と姫は前にも会ったことがあるってことだ。
「……お面の下の正体を知ろうと頑張るより、自分の記憶をたどっていった方がいいんじゃないのか……? つか……付き合ってもう何日もたつのに顔も名前も知らないってなんなんだ俺……」
――…………ダメだ、少しネガティブになってる。少し落ち着こう。
と何気なく時計を見るため携帯を開くと、メッセージが入っていた。
「……? 伊調のおばさん……『今日珍しく来ないのねぇ、野菜のタイムセールの時は毎回三十分前にはいるのに』……野菜……今日、曜日…………しまっ!!」
曜日を一日勘違いしていた!
学校通っててこれって、本当に記憶障害あるんじゃないのか!?
自分にキレつつ、姫に途中で帰ってしまうことを詫びるメッセージを打って慌てて走り出す。
「わっ」
「っとぉ! ごめん大丈夫ですか?」
慌てすぎて近くにいた人とぶつかりかける。
危なかった。
「あ、はい。大丈夫です」
「よかった、それじゃあ」
「ぁ………………」
こうして俺は、それこそ陸上部顔負けの走りを見せる。
――タイムセールに間に合えっ!!
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