25 Hちゃん
GBVSをやりつつがんばってストックつくります!
送ってしまった。
オッケーを貰ってしまった。
つまり、大我くんが見に来る――私を。
「……ふふ、ふ……今日の私はすごいよ……!」
美琴に宣戦布告をした後、私は自分をアピールするための方法を考えた。
でも私が私を推せるものなんて、陸上しか浮かばなかった。
正直練習風景なんか見せてもアピールにはならないかもしれないとは思ったけれど、それでもそれしか浮かばなかった。
だから大我くんに練習を見に来てほしいってお願いした。
大我くんの言うとおり、確かに付き合ってることを隠してるくせに見に来てほしいとは何事かとは思ったけれど、今はそんなの関係ない。
――美琴のアプローチが始まったら私も危ないかもしれないんだから!!
だけど、練習が始まろうかというとき式見先生が急遽ミーティングを開いた。
なんだろうか。
「みんな練習前に突然済まない。今回急遽ミーティングを始めたのは、皆にタメしてもらいたいトレーニング器具を持ってきたからだ」
そういって先生が取り出したのは、爆弾型のお面だった。
――あれは……。
私以外の皆がざわつく中、先生は自信満々に私達にお面を差し出す。
「これは『トレーニングボム』と言って、頭からかぶって運動するトレーニング器具だ。長々と説明するより実際に使ってもらいたい」
しかしざわついているものの、誰一人それを取りに行こうとはしない。
この反応を見て、先生も「あれ?」と言った顔をする。
さらに部長が私以外の皆を代表するように口を開いた。
「先生、先生は無駄なことをする人ではないのは分かっているので、恐らくそれはしっかりとしたトレーニング器具なんでしょう。でも、流石にそれを被って運動すると言うのは……」
部長がそういうと、皆も同調するように頷き「危なそう」とか「大した効き目はなさそう」とか「見た目が嫌」とか聞こえてくる。
先生も、流石に無理強いは出来ないと思ったのか、申し訳なさそうに鞄にお面をしまいだす。
「あ、ああー……そう、だな、そうよな……ごめんごめん……忘れてくれ」
確かにあのデザイン、私は好きだけど、一般的には受けが悪い。
売り上げが伸び悩んでいる原因の一つだ。
でも、お面収集家として黙っているわけにはいかない。
「みんなちょっと聞いてほしいです」
『?』
「さくらい、さん?」
「そのトレーニングボムは、見た目のせいで売り上げが悪いけど、トレーニング器具としてはすごいものなんです! 私も自主トレ用に持ってるもん」
『え!?』
「え持ってるの?」
「櫻井さん……!」
「そのトレーニングボムは、重さはあるものの、重心をずらせる設定で、立ってるだけで体幹を鍛えることが可能で、お面の機能で酸素の量を調節して、高地トレーニングと同様の効果を得られたり、逆に酸素カプセルのように休憩に使う事だってできる優れものなんですから!」
私が熱弁すると、皆も少し興味が出てきたようだ。
一応部内でもいい成績を残せている私が使っていると言うのも説得力の一つになってるのかもしれない。
すると、部長が恐る恐る尋ねてくる。
「性能面は分かった。しかし安全面はどうなんだ……?」
「それももちろんばっちりです。そもそも多く動き回る人のために、お面型に作られた器具ですので、被ってもらえればわかりますが、視界はかなりクリアです。そして熱中症対策のために、冷却ファンも取り付けられているので安心です。そして何よりこのお面がトレーニング器具として優れている証明が、この頭の導火線にあります」
「ど、導火線?」
「はい。どんなに対策していても体調の変化が起きる時は起きます。そんな万が一のために、首元には常に心拍数を図る機会が取り付けられ、呼吸の回数や体温の変化もすぐに捕え、何か異常があれば、頭の導火線がどんどん減っていくんです。つまり、導火線が短くなっている人は体調を崩していると、はっきりと外から確認できる仕様なんです! 何も付けていなくても遠目で体調の変化は気づきづらいですが、このトレーニングボムはその難点も見事にクリアしてるあんしん設計なんです!」
「そ、そう…………」
性能に関してはしっかり伝えた。
後は見た目の問題だからどうしようもないけれど、一番伝えなければいけないことが残ってる。
「みんな……よく考えてほしいですけど……今説明したような様々な機能が付いたトレーニング器具が、安いわけないんです」
『……? ……ぁっ!!』
そう、私が購入した時でさえ、かなりの値段がした高額のお面。
多分、型落ちの物だとは思うけれど、先生はそれを人数分買い揃えている。
「私の持っているのを考えても、たとえ古いものでも部費では賄いきれないはずです。……先生……」
「え? あー、いや、つてで少し安くしてもらったから、大したほどでは……」
先生は私たちに気をつかわせないように言ったとは思うけれど、そのセリフは、この器具を先生が私達のために自腹で購入したと言ったのと同じだった。
そこからみんなの行動は早かった。
『式見先生!!』
「おう!?」
『すみませんでしたっ! そのトレーニングボム.お借りできますか!!』
「あ、ああもちろんだ」
全員で、もちろん私も頭を下げて、先生からお面を借りてトレーニングすることになった。
当然、部員みんなの評判もよく、そのまま練習が始まった。
「櫻井さん」
「あ、式見先生」
「その……ありがとう。フォローしてくれて。その、もしかしてあなた……」
「いえ、私もトレーニング器具としてこれを使ってて、優秀な器具なのはわかってますから」
「あ、そうね……トレーニング器具として、ね。でもあなたも持っているなら、今度からそれで練習しても構わないわよ? さっきの話を聞いた限り、貴方の持っているのは最新式みたいだし」
「いえ! 先生が私達のために持ってきたこのトレーニングボム、私にも使わせてください!」
「櫻井さん……ッ!」
私はそのままお面を被り走り始める。
「…………よし、いい感じ………………あれ、何か忘れ……大我くん!!」
モチベは感想です!
モラエルトトテモウレシイデス。




