18 Hちゃん
大鹿:――――な感じで、その……美琴には付き合ってることを話した
大鹿:確認もしないで勝手して申し訳ない
SIHK:気にしないで! 大我くんが私の事考えてくれた結果だもん。謝る事じゃないよ
大鹿:……わかった。じゃあ、今後も隠していく形で大丈夫?
SIHK:うん! わざわざありがとう!
SIHK:あ、それとその陸上部だけど明日から一週間は強化期間で……
大鹿:そっか……ならちょっと一緒に帰るのは難しいかもね……
大鹿:うん、わかった。部活頑張ってね。何かあったらDOORで連絡していいから……じゃ、おやすみ
SIHK:うん! ありがとう頑張るね! おやすみなさい!
そう打ち込んでスマホを机の上に置く。
「はふぅ……」
夜、私の中で勝手に日課にしようと決めていた大我くんとのDOORで、美琴が訪ねてきたことを教えてもらった。
私が大我くんとお付き合いすることが出来たことは、なんとなく気恥ずかしかったことと、確実に約一名がちょっと面倒くさくなりそうだったので、今日のお昼では言っていなかったけど、結局一緒に帰るところを見られて、なんとなく感づかれてしまったみたい。
何か、ちょっとだけ隠そうとしたのにアッサリ見つかってしまった感じが、ものすごく恥ずかしい。
――ちなみに、気になったので美琴が来たときの事を一部始終教えてもらったけれど、美琴が私の事を大事な友達と思ってくれていることも嬉しかったし、それを聞いて大我くんが真摯に私との関係を話してくれたことも嬉しかった。ほんとに。
さて、それはそれとして。
「……私、部活の事なんて一切考慮してなかった……」
そう、DOORで大我くんから言われるまで部活の事など頭の片隅にもなかった。
美琴たちに隠そうとしたのも、十割照れや恥ずかしさから来たもので、部活は一切関係ない。
大我くんからは、私が部活の事を気にしてお付き合いしてることを隠しているんじゃないかと気を使ってもらったけれど、むしろ大我くん達の方がちゃんとそのことを考慮して考えてくれていたくらいだ。
確かに言われてみれば、今年の陸上部は本当に力を入れて指導していたし、迂闊に男女交際を始めたことを言わない方がいいのかもしれない。
なので、大我くんの案に乗っかって、お付き合いの事は秘密にしていくことにした。
「それにしても……」
私は手元にあったお面を手に取る。
「偶然とはいえ、お面を被っていたおかげでお付き合いを始めたことを隠せていたかもしれないと考えると……まさしく私のラッキーアイテム!」
美琴にはあっさり気づかれてしまったが、私のお面収集の趣味を学校内で知っているのはいつもの三人くらいなので、他の人に快頭爛馬の中身が私だとは気づかれていないだろう。
つまり、知らず知らずのうちにお付き合いを秘密にできていたと言う事。
今後も付き合っていることを秘密にするならば、こんなに頼りになるアイテムはないと言っていい。
「ふふ、告白の時といい一緒に帰る時といい、本当にこのお面には助けられているなぁ」
メンテを終えた快頭爛馬を所定の位置に戻し、他のコレクションを一通り眺める。
「うんうん。今度は別なお面を持って行ってもいいかもしれない。性能がいいとはいえ、いつも快頭爛馬だと飽きられちゃう!」
――んっ、そういえばあの時は緊張でいっぱいいっぱいだったけど、今思い返せば告白の時、大我くん快頭爛馬を興味深げに見てた気がする! もしや興味がある!?
「だったら今度二人でおめん屋さんに遊びに行くのもいいかもしれない…………むむっ、それはつまり、でーと! ……今度ホントにお誘いしてみようかな…………はっ」
と、今さっき一応お付き合いしてることは秘密って決めたところなのに、あっさり近場でデートを目論んでいる自分に気づき、私はとりあえずベッドにダイブして悶えることにした。




