10 Hちゃん
「今誤魔化した!! 他にキッカケあったでしょ! それが聞きたいんだけど!」
「そうだよ! 一番重要なことだよ!」
「ナンノコトカワカリマセンー」
二人がわーわー言ってくるのを華麗にスルーしていると、一人静かに話を聞いていた美琴が声をかけてきた。
「あ、あのさ、姫」
「ん? なに?」
「それなら…………っいや……それなら姫があいつを好きになったのは内面てことなんだね」
「え……う、うん」
ふと、美琴が言おうとしたことを変えたように感じた。
が、英玲奈たちは特に気づいた様子もなく話に乗ってきてしまう。
「ふむ、確かに! 今確実に隠したキッカケもそうだけど、今の話を総合するに、姫は表面にとらわれることなく、性格を見て好意を向けたわけだね!」
「え? あ、いや」
「おぉ……そう言われるとなんかすごいね! 見た目関係なしに人を好きになるって、ちゃんと人の心と向き合ってないとできない事だ!」
「いや、だからその、ね?」
「まあ、あいつ、なんかこう……地味だからね」
「そ、そんなことないよ!」
美琴の言葉につい反射的に大き目の声が出てしまった。
一瞬静まり、私に集まる視線。
「あー……えーっと………………恥ずかしかったからあんまり言いたくなかったんだけど……その、さっきの補足で……何度か話してるうちに気付いたんだけど…………私、鹿島くんの顔は割とタイプでして………………その、全部が全部、性格とか内面で好きになったわけではないのでして……」
その言葉に、ポカンとしてた顔がだんだんニヤニヤ顔になっていく。
主に英玲奈。
「ふふふふ、姫もちゃんと乙女だってことだねぇ……まあ、大ちゃんは確かに目立たないけど結構整った顔立ちしてるからね」
「うん、帰宅部女子の間でも結構評判いいんだよ」
「だよねだよね! …………帰宅部女子の評判いいの……?」
「急に嫉妬出さないでよ姫……て聞いてないし」
ごめん英玲奈。
今私は鹿島くんを気にかけている女子の情報を仕入れるに必死なの。
――小毬ちゃん、私なら大丈夫とかそう言う話じゃないの……心構えの問題なのよ。
英玲奈も苦笑いをしながら、先程の会話の流れのまま美琴と話し始めるみたい。
「……で、大ちゃんの評価を聞いてどうよみーこ」
「………………地味ってことには変わりないでしょ。英玲奈だって目立たないって言ったし。……それに私だって別に悪いなんて言ってないし……」
「んむ、意外と素直……ねぇみーこ……――――――?」
「……うるさい」




