18/40
月夜の灯火
ぽつり そしてまたぽつり
月夜に灯る 静かな祈りの火のように
紅が日ごと 増えていく
昨日まではなかったはずの場所が
厳かに厚い絨毯を敷くかの如く
真っ赤に染め上げられ
見る者は束の間 縛り付けられる
刹那
勢いよく打ち寄せ さんざめく波音が耳に響いた
海辺に咲き 揺れ やがては流れていく様を
吹き抜ける風を想起する
圧倒的な存在感は 何を知らせるためか
明確な秋の訪れか まだ遠い冬の声か
それとも過去から続く想いか
祈りの火が灯るごとに 夢と現の境もまた
幾重にも弾ける水飛沫の向こうへと
溶けていく……




