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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第17話 それぞれの休日
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17-5  BBQ前編

 市災害対策室での当直任務を下番した僕は駅前の立ち食い蕎麦屋で朝食を取っていた。

 朝の6時には仮眠から起きて引き継ぎの確認をしていたので、起きてから2時間半ほどか。お腹の減っていた僕は朝からカレーライスとかけ蕎麦のセットメニューを食べていた。

 出てきた蕎麦をさっと麺を食べきってカレーにとりかかる。カレーを食べたら蕎麦ツユを一口飲んで帰るのが満足度が高まると思う。

 立ち蕎麦チェーンのカレーの味は胡椒が強めで味が濃く、目が覚めていくような感覚を覚える。そんな中、スマホの通知音が鳴る。見てみるとRINE(リーン)のメッセージが入ったようで、スプーンを持ったまま左手でスマホを操作する。どうやら真愛さんからみたいだ。


『当直、お疲れ様です。皆で遊びに行こうって話なんだけどBBQ(バーベキュー)とかどう?』


 BBQ?

 引っ越してきてから1月ほど、H市のBBQスポットとか知らないんだけど、どんなモンなんだろう? コンロとか炭などの器材や食材を運んだりするのに車とか必要になってくるんじゃないかな?

 RINEで真愛さんに聞いてみるとすぐに返信が帰ってくる。


『BBQは好きだけど、場所とか大丈夫ですか?』

『大H山のキャンプ場を予定しているんだけど、どうかな? そこなら道具とかレンタルあるし、西H駅からハイキング気分で歩いていけると思うんだけど』


 なんだ。僕が心配する必要も無く考えてあるのか。


『それじゃ食材だけ持っていけばいいのかな?』

『そうね。キャンプ場でも売ってるけど、割高だし、あまり良いのは無いのよね……』

『それじゃ食材の買い出しに行かないとね。明日がBBQなら買い出しは今日?』

『その予定だけど』

『それじゃ僕も当直上がったとこだし、買い出し手伝うよ!』

『休まなくて大丈夫?』

『へーき、へーき。何時にどこいけばいい?』

『それじゃ3時頃に迎えに行くから部屋で待ってて』

『オッケー!』


 メッセージのやり取りを終え、スマホで時刻を確認するとまだ9時前。買い出しが15時なら大分、時間が空くなぁ。帰ってシャワーでも浴びて軽く寝ておくか。




「お肉とかどれくらい買えばいいのかしらね~」


 時間通りに僕を迎えに来てくれた真愛さんときたのは商店街の先の大型スーパー。


「人数は5人?」


 水曜日に学校で話していた通りだと僕、真愛さん、天童さん、明智君、三浦君の5人だった。


「ああ、アーシラトさんも行きたいって。京子ちゃんもアーシラトさんに会ってみたいって言うし」

「それじゃ6人か……」


 さて僕は友達とBBQなんて行ったことないから、どれほどの量の食材を用意したらいいものかちょっと悩むな。それ以上に悩むのがアーシラトさんだ。頭の先から尻尾の先まで5、6メートルはありそうなあの人は一体、どれほどの量を食べることやら。ん? 逆に人間より蛇のような変温動物に近かったら思ったより食べない可能性もあるのか?


「ねぇ、真愛さん……」

「なあに?」

「アーシラトさんって、どのくらい食べるの?」

「結構、食べるけど大人の男の人くらいかな?」

「思ったより食べないね」

「その分、お酒を飲むから……」

「ああ、いつも缶ビール飲んでるよね」

「でも、お酒は自分で用意してもらうから安心してね!」

「ハハハ! そりゃそうだ!」


 お酒を飲む人のこだわりというのは、お酒を飲まない人間にはうかがい知れないものがある。普段、好んでいる銘柄があっても、アウトドアのBBQなら別の物を合わせたくなるのかもしれないし。


「とりあえず色々とカゴに入れてってみようよ」

「そうね」


 食品売り場の入り口はどこのスーパーでもそうだろうけど野菜売り場からだ。僕はカートにカゴをセットして真愛さんの後ろを付いていく。

 タマネギ、ピーマン、ニンジンと野菜をカゴに入れる。野菜は今日の内に真愛さんが下拵えしておいてくれるそうだ。

 野菜の次は鮮魚コーナー。エビとイカをカゴに入れる。

 次はメインの精肉コーナー。


「そういえばキャンプ場のコンロって鉄板? それとも網?」

「両方、貸してもらえるわよ」

「へぇ。それじゃ網で串焼きやって、鉄板で焼きそばやったりとかもできるんだ」

「あ、いいわね。それ!」

「それじゃ焼きそば用の肉とかどうする? イカでもいいけど……」

「あっ、ちょっと待って……」


 真愛さんのスマホに通知が入ったようで、何やらスマホを操作しだす。

 真愛さんを待っている間、手持無沙汰になった僕が辺りを見回していると肉の冷蔵ケースの上にBBQ用の金串を見つけた。行楽シーズンということでBBQ用品を一緒に提案しているのだろう。


「あ、誠君、ゴメン! 京子ちゃんからだったんだけど、マクスウェルさんも誘ったら来るって!」

「それじゃ、7人分だね」


 この間、マックス君とヒロ研で大H川中のヤクザガールズ事務所に行った時に連絡先を交換していたようだ。

 あの人も食べる量が分からない人だな。魔族って食事の量はどうなんだろ? パッと見は貴族のような優雅な雰囲気を漂わせている人だけど、魔族ってくらいなんだから「ガハハ!」と肉にかぶり付いて欲しい気もする。


 真愛さんと相談しながら串焼き用のブロック肉と鉄板焼き用の肉を次々とカゴに入れていく。大体、1kgくらいか?

 さらに隣の加工肉のコーナーで骨付きソーセージもカゴへ。


「えっと後は……」

「焼きそばと飲み物と、あっ! タレも買わないと!」

「あと、割り箸と紙皿とかもこっちで買ってった方がいいよね?」

「そうね!」


 いつしかカゴは一杯になり、飲み物のペットボトルは2つ目のカゴに入れることになる。

 お会計は締めてプライズム星人4人分でお釣りがくるくらいだった。


「……なんか買いすぎちゃったかしらね。誠君、半分持とうか?」

「ううん。ここは改造人間の面目躍如ってことで」


 飲み物と食材と袋を分けたものの中々の重さだった。真愛さんみたいな生身の人間が持ったら重さはともかく、レジ袋が手に食い込んで痛くなっちゃうだろう。

 僕は出力調整のeco(エコ)モードを解除して1人でに荷物を持つことにする。


「そういえばライターとかは買わなくて大丈夫だった?」

「大丈夫じゃないかな? 魔法使える人が2人もいるんだし……」

「それもそうか!」


 アーシラトさんだけならお酒のせいでいささか心配だけど、マックス君もいるんだし大丈夫だね!

 いざとなったら僕のビームマグナムかなんかで火くらいは点けられるだろう。




 真愛さんの家の玄関口まで荷物を運び、そこで別れる。


「それじゃ、また明日ね!」

「下拵えとか任せちゃってゴメンね!」

「大丈夫、大丈夫。私、料理とか好きだし……」

「それじゃ、また明日!」


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