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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第15話 嵐の後
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15-2

 20XX年4月28日未明より東京都H市に突如、襲いかかった超次元海賊ハドーの総攻撃。被害があったのがH市とその周辺地域のみと比較的、狭い範囲であったために第2級災害にされるに留まったが被害は甚大であった。だが駆けつけた市内外のヒーロー、自衛隊、警察、在日米軍等各機関の活躍により人的な被害は最小限に抑えられたと言えよう。なお28日午前10時49分、ハドー旗艦の撃沈。同10時58分に異次元ゲートの消失が確認され事態は鎮静化されたが、なおも潜伏した残党に対して警戒が必要である。(日刊H新聞5月1日号より)




 また地球人類たちは知るよしも無かったが、被害があったH市以上にハドー本国のその後の混乱は激しかった。


 地球攻撃船団より恒久的な大規模異次元ゲートの開設の可能性の情報がもたらされてから数ヵ月。地球移住計画が立案され、その橋頭堡を築くべく大部隊が編成されて、いよいよ計画が実行に移されてほどなく派遣部隊との連絡が途絶したのだ。


 そもそもハドー本国のある世界は使える資源をほぼ使い果たしてしまった世界である。であるからこそ余所の次元に乗り出してまで資源を強奪しているのである。交易に使えるような資源など無かったし、加工品貿易など彼らの思考回路には存在しなかった。

 今回の地球移住部隊が彼らにとってどれほど貴重な物であったかは言うまでも無い。


 その精鋭中の精鋭と言っても差し支えの無いような大部隊が消失した。

 ハドー本国においても様々な憶測が囁かれた。「異次元ゲートとは我々を誘き寄せるための撒き餌で、派遣部隊は一網打尽にされてしまったのではないか?」とか「地球の戦力を測り損ねたのではないか?」「いや、闇髭がそんなミスをするハズが無い! 第一、地球には10年以上もいたのだぞ!」「もしや、消息不明だった最強のヒーロー、プリティ☆キュートが出たのでは?」といった具合である。

 喧々諤々の議論は終わることもなく、地球へ再派兵など行える状況ではなかった。ハドー本国の誇る科学力をもってしても大型戦艦並みの大出力炉のエネルギーをもって、極短時間に小規模な異次元ゲートを空けるのがやっとなのである。本国の経済状況を鑑みるに採算の取れない世界への派兵は行えるはずもなかった。


 かくしてハドー首脳部は地球への以後の干渉を行わないことを決定した。




「そんなわけで参ったよ~! ゴールデンウィークの前半はハドーの連中に付きっ切りでさ~!」

「誠君も大変だったのね~」


 いつもと変わらぬ通学路。僕は真愛さんと明智君と共に通学中だ。


 28日の土曜日にハドーの総攻撃があって、スーパーブレイブロボがハドーの旗艦を落として、僕がロボット怪人を倒してロキに半永久機関を取られて、異次元ゲートが消えて戦いの趨勢が決まったのが午前中。だが、それからも残党狩りやら救急隊の護衛やらで午後からも日曜も祝日の月曜も働きづめだったのだ。


 だが日本で一番、特怪災害の多いH市の住民は慣れたもので、火曜と木曜は予定通りに学校があるという。いくらなんでも休校にしたらいいんじゃないかと言ってみたが。


「こんなんで学校を休みにしてたら、夏休みが短くなっちゃうわよ?」


 と真愛さんは良く分かっていないようだった。


「いや、誠はこっちに越してきたばかりだから不思議なんだろう。余所の市町村なら、この規模の被害があったら休校になるだろ。普通は」

「だよね~!」

「へ~」


 明智君が認識の差を教えてくれたので真愛さんも納得してくれた。

 恐らくH市民にとってはハドーの総攻撃は震度6弱とかそのくらいの地震と大して変わらないのだろう。いや、余震の心配がある分、地震の方が厄介かもしれない。


「それにしてもさ、Hタワーの異次元ゲートが閉じて皆の無事を確認してたら、明智君から通信が入って『メシ食いに行こう』って言うから行ったら、そのまま午後からも働かされるとは思わなかったよ」

「そりゃ、お前、羽沢みたいに大物蹴散らしたらとっとと帰る奴もいるからな。使える奴はしっかり押さえとかないとな」


 土曜日、タワーに入ったマックス君、アーシラトさん、山本さんの他に何故か栗田さんもいて、しかも栗田さんは何でかカップヤキソバを持っていた。

 山本さんと栗田さんは組員の待つ大H川中に戻り、僕とマックス君、アーシラトさんは災害対策室にお呼ばれして御昼ご飯を食べに行って、炊き出しのカレーを食べてたら明智君が来て有無を言わさず地図を広げて午後からの配置について説明を受けたのだ。

 そんなわけでなし崩し的に3人でチームを組んで戦っていたのだった。


「もう、とっとと帰るだなんて酷いわね! それは何て言うか……、アレよ! 新人さんのメシの種を取ったら不味いでしょ!?」


 真愛さんの言う事も一理あるような。例えばハドーだと怪人は手強いけど、雑兵の戦闘ロボは手ごろに弱いんだよなぁ。


 タッ! タッ! タッ! タッ!


 ん? 後ろから足音が……。


「お~い! 石動ぃ~!」


 あら? 僕を呼んでいる。


 振り返るとクラスメイトの剛力君と前野君、井沢君が走ってきているところだった。


「あっ! 皆、おはよう!」

「おう! おはよう!」


 男子3人は笑顔で駆け寄ってくる。


「石動、土曜から大活躍みたいじゃん!?」

「お前のお陰で大分、被害は軽く済んだんじゃないのか?」

「マジ、凄ぇわ! ありがとうな!」


 3人は口々に僕の事を褒めてくれる。あまりそういうことに慣れていないので何だか恥ずかしい。


「い、いやぁ。それほどでも……」

「いやいや、謙遜すんなって!」

「お前、こっちに引っ越してきてから1カ月でどんだけ活躍してるか分かってるのか?」

「うん。マジ、パネェわ!」


「おっと……、俺らは部活の朝練あるからもう行くわ!」

「じゃ、また学校でな!」

「マジ、アリガトな!」


 そういって、また駆けだしていく3人。


「……ねぇ? 明智君?」

「なんだ?」

「一つ、お願いがあるんだけど……」

「奇遇だな。俺もだ。とりあえず、誠から言ってみろ」


「ハドーの総攻撃が始まった時、僕が寝過ごしてたって内緒にしてほしいなぁ~、って」


 さっきの3人が僕を褒めている時の笑顔を思い出すと、あまり知られたくないような気がする。多分、寝過ごしてたって知っても失望とか幻滅とかはされないだろうけど、それでもやはり世間体が悪い。


「別にいいぞ」


 まあ明智君はそういう事をわざわざ触れ回るような人でもないけど。


「で、明智君の頼みって?」


「ゴールデンウィークの後半、市の災害対策室の当直に半日でもいいから付いてくれないか?」

「もう! 明智君、誠君は引退してるのよ! 緊急事態ならともかく、平時の当直ってどうなの!」


 真愛さんが声を上げると、明智君が状況を説明してくれる。


「済まないとは思うんだがなぁ……。色々と他のヒーローたちも消耗していてなぁ……」

「そんなに?」


 人的被害は最小限に収まったとは聞いていたが、それでも損害は出ていたのか……。


「いや、そんな深刻な話じゃあ無いんだけどな。ん~と、誠の知ってる連中の話で言うと……」

「で言うと?」

「ヤクザガールズは無理が祟って何人か寝込んでるし、スティンガータイタンは85ミリ砲弾を使い果たして開店休業。3Vチームはヴァルカンとヴィクターが研究所(ラボ)送りだし、あっ、修理は可能みたいだぞ。ブレイブファイブのネオブレイブロボも修理が必要みたいだし、これは旧パーツと新造パーツの噛み合わせが悪くて変に摩耗してたみたいだな。あとインセクタスのビートルレスラーはワイハで妹さんが結婚式みたいだし……」


 へ~、皆、大変だな~。……って最後! でも良く考えてみれば命掛けの仕事をしてるんだから、妹さんの結婚式ぐらい行かせてあげたいなあ。


 それよりも気になるのがスティンガータイタンだ。神田君とタイタンを孤立させてしまった事が気になってたんだけど、休業理由が弾切れって……。


「す、スティンガータイタンは砲弾以外には問題は無いのかな?」

「無いだろ? アレは何て言うか……、うん。アレは精密機械じゃないからな! 工事現場の重機と大して変わらんだろ。多分。それよりもアレの砲弾は旧ソ連規格の85ミリ砲だから特注品なんだよ」

「うわぁ……、物凄いタフネス! てか何でそんな厄介な砲を?」


 僕の電子頭脳で見た所、あの85ミリ低圧砲は旧ソ連の兵員輸送車の主砲だ。


「ほんと、何でだろうな?」


 明智君にも分からない事もあるのか!(驚愕)


 まあ、謎ロボットの事は一先ず置いておいて。

 大変な時に寝てたという負い目があるし、当直に付くぐらいなら問題ないかな? 何するかは良く分からないけど。


「当直に付く件は分かったよ。で、いつなの?」

「そか、済まないな。急な話だし、3日から6日のどれでもいいんだが、お前の都合はどうだ?」

「じゃあ明後日の3日はどう? 特に予定がある訳でもないけどさ」

「分かった。それで調整しておく……」


 そう言って歩きながらスマホを操作しだす明智君。


「ほんと、大変ねぇ。誠君は……」

「いやあ。僕の場合はご飯でカロリー取っておけば、後はナノマシンが調子整えてくれるからね! それに土曜日は真愛さんも大変だったみたいじゃん?」


 真愛さんも土曜日に自身の避難場所から大H川中まで明智君に呼び出されて、ヤクザガールズの子たちに魔力を供給していたというのだ。

 しかも避難場所から大H川中までの護衛は3Vチームの残る1体、ヴァリアントのみという手薄な物だったという。


 僕を呼んでくれればHタワーそっちのけで行くのに!


「そんな大した事は無かったわよ? それにお姫様抱っこで空を飛ぶのも初めてだったから、結構、楽しかったわよ?」


 お姫様抱っこ!? 

 え? なに? あのポンコツロボット、真愛さんをお姫様抱っこして空を飛んだって!? そんな時は僕を呼んでよ! 明智君! 

マコっちゃん「なんで、そんな厄介な砲を?」

明智ん「ほんと、何でだろうな?」

作者の趣味です

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