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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第54話 僕は君を守る
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54-13

「おいッ!! 何が起きた!?」

「報告を!! こっちで分からなくても、自衛隊なりにでも問い合わせろ!!」

「駄目です! 電子機器が完全に使用できない状態です!!」


 災害対策室庁舎はやにわに喧噪に包まれていた。


 上空へと駆け上がったペイルライダーが必殺の「ペイルライダー・キック」の予備動作である時空間リングの展開をして、天から地へと伸びる時空間エネルギーのトンネルを作った時、なぜか地上の白いデスサイズは回避する事はせず、ペイルライダーが作り上げたトンネルに真っ直ぐ繋げるように地から天へと伸びるトンネルを作っていたのだ。


 そして白い死神と紅蓮の魔法少女は共に光のトンネルへと飛び込んでいた。

 時空間エネルギーの斥力によって2人は加速され、トンネルは砲身へと変わる。


 ほぼ同時に自身が作り出したトンネルへと飛び込んでいたペイルライダーと2人は激突し、その結果、H市は光に包まれていた。


 ペイルライダーとデスサイズ、両者が作り出したトンネルによって激突のエネルギーは逃げ場を与えられる事なく、内部の空気をプラズマと化し、役目を終えた砲身が姿を消した後も立ち込めるエネルギーは周囲の大気を自由イオンへと変じさせて連鎖反応的に爆発的に周辺へと衝撃波を伝えていったのだ。


 さらに激突によって生じた電子たちはそれ自体が散弾のように飛び散り、周辺の電子機器の回路にサージ電流を起こして使用不能へと追いこむ。


 明智は気を失っていたのだろうか?


 災害対策室庁舎屋上の手すりを掴んで友人たちの戦いを見守っていた彼が覚えていたのは自身の体に不可視の、空気の壁が叩きつけられたところまで。


 気が付くと彼は屋上に仰向けで寝ていた。


 後頭部を打ち付けないようにだろうか?

 ハドー獣人の宇佐がヘッドスライディングのように飛び込んできてくれたがために彼の頭部は守られ、宇佐の背中を枕にした状態で彼が意識を取り戻した時、明智の視界に飛び込んできたのは青い空だった。


「……そうだ。誠は? 羽沢は?」


 三半規管が半ば麻痺しているのか、明智はよろめきながら立ち上がり、目を回したままの宇佐をうつ伏せの状態から仰向けにしてやり、状況を把握しようと右往左往する災害対策室職員たちをしり目に光のトンネルがあったほうへと目を向ける。


 激突の余波か、未だビジネス街の上空には白い靄が立ち込めて状況は窺い知れない。


「明智さん! あれ!!」

「誠ッ!? 気を失っているのか?」


 西住涼子が慌てた声を上げて白い靄のさらに上を指さす。


 ゆっくりとスローモーションに見えるのは明智の感覚的な問題だろうか、それとも何らかの力の作用によってであろうか?


 上空からゆっくりと地面へ向けて落下していく白い人影。

 間違いなくそれはデスサイズこと石動誠である。


 白い死神はまるで糸の切れた操り人形のように気流に揉まれながら落ちていく。


 だが、すぐに白い靄の中から赤い流星が現れて死神を自由落下から救い出した。


「羽沢も無事だったか……」


 炎を纏って飛ぶ魔法少女は手にしたバトンを放り投げて意識を失っている死神を抱きかかえる。


 腰と両膝の下に手を入れて魔法少女に抱きかかえられる白い死神。

 ちょうどお姫様抱っこの形だ。


 2人の無事を確認して安堵した明智はふと、今のお姫様抱っこの状態を石動誠を知ればどう思うか考えてクスリと笑った。


 だがキノコ雲のように立ち込める白い靄の中から飛び出してきたのは魔法少女だけではなかった。


「なっ……!?」


 再び姿を現した終末の騎士、ペイルライダーの姿に思わず誰しもが言葉を失う。


 全身を覆う重厚な装甲のほとんどは失われ、ハゲワシの嘴のように長く伸びていた両の肩アーマーも右側は支持架を失ったのか垂れ下がって先端に設置された時空間エンジンも喪失している。

 顔面の大きく歪んだ骸骨の仮面も溶けてもはや元がどのような形であったかという名残はない。


 だがペイルライダーは未だ飛んでいた。

 溶けた装甲を撒き散らしながら遮二無二、死神を抱く魔法少女へと向かって。


 もはや武器すら呼び出す事もできないのか、その尖った指先だけを向けてまっすぐに空を駆けるペイルライダー。


 一方の魔法少女は白い死神を抱きとめるために武器であるバトンを放り投げたばかり。


 そのまま両者は再び激突するかに思われた。


 だが、力なく垂れ下がっていた死神の右手が上がったかと思うと、手元に愛用のビームガンが現れて発射される。


 本来はデスサイズのビームマグナムにも耐える終末の騎士の装甲も、今はそのほとんどがすでに無い。


 そして死神の放ったプラズマ・ビームは真っ直ぐに伸びて終末の騎士を、平行世界の自分自身の頭部を完全に撃ち抜く。


 脳を破壊されたペイルライダーは今度こそ力を失い、そのまま地表へと落下していく。


「……やれやれ、やっと終わったか」


 魔法少女が死神の腰の下に入れていた手を両脇へと回す形に動かし、骸骨の仮面へとそっと唇を寄せていくのを見て明智は手にしていた双眼鏡を下した。

以上で第54話は終了。

次回から本編最終話となります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の一撃はせつない… ずっと追って来て良かったな!って感じです!
[良い点] 最後の悪あがきも無駄だったな、ペイルライダー。 今度こそ安らかに地獄に落ちてくれ。 >>ちょうどお姫様抱っこの形だ。 普通やる側逆じゃね?とも思ったけど、なんかこっちの方がデスサイズらし…
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