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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第41話 いあ! いあ! ふんぐるうふたぐん!
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41-1

 ナチスジャパン代表、鉄子は微睡みの中にいた。

 肉体的な程よい疲労と過度な精神的疲労の後の睡眠は未だ彼女をベッドに捕らえて離さない。


 だが清潔だが洗濯糊の効きすぎた固いシーツと枕カバーが柔肌に触れるたびに不快な感触を残し、そして何かがけたたましく大音量で鳴り続けていたのだ。


 一体、あの音はなんなのだろう?


 ライブラリで見たJu-87(スツーカ)のサイレンとも違う。対地ロケット弾が大気を切り裂く風切り音とも違う。


 Biiiii! Biiiiii! Biiiiii!


 断続的に何度も繰り返すその音は調子を変えずに鳴り続け、しかも一向に収まる気配が無い。


(んん……。ああ、そうか、これは警報か……! ……っ、け、警報!!)


 大音量の正体に気付いて慌てて上半身を起こした鉄子は一瞬だけ混乱する。

 そこがようやく慣れはじめた自室ではなかったからだ。

 白い壁に白いカーテン、おまけに寝具まで白一色だった。機能性のみを追求して白一色に覆われたそこは医務室。廃観光ホテルの地下に作られた「UN-DEAD」のアジトの地下1階の1室だ。


(ああ、そうか。アっ君の過去のライブラリ映像を見て具合を悪くして……)


 我ながら情けないという気持ちと、まぁあれだけの事があればしゃあないという気持ちが半々だった。


 この日は午前中に調理同好会の皆と菓子類を作り、食べきれないほどに作った焼き菓子などを市内の児童養護施設にプレゼントしにいったのだ。


 そしてそこであったのが改造人間デスサイズこと石動誠だった。

 あの“死神”、前に「UN-DEAD」の壁新聞で企画されたアンケート調査で「絶対に戦いたくないヒーロー部門」でダントツブッチギリの1位だった自称ヒーローだ。


 菓子を持っていった児童養護施設に何故か来ていた石動誠は噂とは違い、そこまでトチ狂った者には見えなかった。


 しかし、それでも彼の機嫌を損ねてしまえば鉄子の首は胴体から離れていたであろう。

 さらに恐ろしいのは首を刎ねられるという死に方も“死神”の手にかかれば楽な死に方だという事だろう。なんなら、おろし金で大根おろしのように足の先からすりおろされて殺されたとしても恐怖しただろうが驚きはしなかっただろう。


 いや、実際の所、石動誠がそのような人物であるかは分からない。

 だが、そんな事をしてもおかしくはない「ヤベー奴」だと石動誠は思われているのだ。


 しかも石動誠の他にも河童やら悪魔、ハドー獣人と“死神”に勝るとも劣らない厄い連中が児童養護施設に詰めていて、鉄子の神経を大いにすり減らしてくれる。


 その中で彼らの機嫌を損ねないようにしながらもナチスジャパンの代表としての矜持を失わないようにするのは骨だった。

 だが突如として電波ジャックによる「UN-DEAD」の宣戦布告が行われ、しかもナチスジャパン虎の子の秘密兵器であるホバー・ラーテが鉄子のあずかり知らないところで使用されている事を知り、彼女は慌ててアジトへ帰還していたのだ。


 同じく蜂起の事を知らなかったメンバーたちの内、血気に盛んな連中をなんとか他の幹部級と抑えながらも「UN-DEAD」の取りまとめ役であるルックズ星人へ説明を求めに行き、そして見せられたのがルックズ星人の過去の記録映像だった。


 その映像は劇場公開すらされない場末のスプラッター映画さながらのドギツい映像で、しかもルックズ星人の視覚感覚に合わせているためかカメラにブレ補正などの処理が施されていないものだったので鉄子は具合を悪くして医務室に運ばれていたのだ。


 ベッドに横になって鉄子はデスサイズで出会ってから以降の気疲れによってすぐに眠りに落ち、そのおかげか倦怠感こそあるものの医務室に運ばれる前の吐き気などはすっかりと消え失せていた。


 そして今、アジト内に鳴り響く警報(アラーム)音によって鉄子は目覚めたのだ。


 だが、おかしい。


 本来ならばアラームの合間に館内放送でどうのような事態が発生しているかアナウンスされるハズが一向にその気配はない。


 火災なのか、ガス漏れ、発電機の不調、あるいは敵襲か。

 いずれにしても館内放送をする余裕がないのか、それとも事態を把握している者がいないのか。


 とりあえずはすぐに避難に移れるようにベッドに腰かけて半長靴を履き、固く靴紐を結んだところで複数の者が医務室内に駆け込んでくる。


「大変だぁ~~~!!」

「鉄子ちゃん、起きてッ!」

「あ、起きてる? よし!」

「それなら逃げるよ!」

「早く! 早く!」

「脱出するよ!」

「は?」


 駆け込んできたのは6名。

 声だけで分かる。鉄子てつこを「テッコちゃん」と江戸訛りで呼ぶのは「UN-DEAD」でも彼女たちだけ。

 D-バスターシリーズだ。


 だが強大な力を持つ石動兄弟と戦うためにとにかく楽観的に作られているハズのD-バスターたちがこうも慌てるとは一体、何が起こったというのだろう?

≫その中で彼らの機嫌を損ねないようにしながらもナチスジャパンの代表としての矜持を失わないようにするのは骨だった。


新事実! 鉄子ちゃんの中では開幕武装解除(38-1)は誇りある行動だった!?

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