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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第39話 日本全国、所変われば……
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39-2

 スマホから聞こえてくる明智君の声はどこか彼らしくなく、ひどく躊躇しているように思えた。


「いや、これは俺の勝手な考えなんだが……」

「うん……?」


 以前に彼から聞いた話では「予想」と「憶測」は違うものだという。

 彼が立てる作戦には多分に突拍子もないものも多いけど、それは彼なりに情報を立体的に勘案して導き出した予測であって、根拠もなしに自分勝手に憶測しているわけではないのだ。


 そして明智君は憶測で話をする事を好まない。

 だが、その彼がこうも言い淀むという事はこれから話す内容はあくまで憶測にすぎないという事なんだろう。


「前にお好み焼き屋でメシ食った時にD-バスターの奴が『UN-DEADのまとめ役はルックズ星人のアっ君』とか言ってただろ?」

「うん。そうだね」

「だが地球でルックズ星人の活動が確認されている事例は1件だけ。オーストラリア紛争の時だけなんだ」

「つまりはその時の生き残り?」


 オーストラリア紛争の時の復讐で日本に来たという事だろうか?


「多分な。でもな、良く考えてみろよ。お前、オーストラリア紛争。香川側の呼称では『第4次饂飩防衛戦争』だが、政府やそれに類するような組織に率いられるわけでもなく、ロクな武器も無しに自発的に戦争を始め、敵の数百倍の損害を出しておきながら『勝利宣言』を出すような連中に復讐なんかしたいか?」

「んん……」


 明智君の話を聞きながら真愛さんのスマホを借りてオーストラリア紛争についての記述を読み込んでいく。


 当たり前の事だけど、日本は憲法によって「国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」としている。


 でもオーストラリアが異星人に攻め込まれいくつかの地域が占領された時、香川県民は「ウドンを守るためだから! 国際紛争を解決する手段じゃないな! うん、良しッ!!」と自発的に渡航して異星人を攻撃し始めたのだという。


 当然、日本政府が派兵を決めたわけでもなければ、豪州側が義勇兵を求めたわけでもない。

 あくまで民間人たちの集団が渡豪していっただけだ。

 そんな彼らに異星人と互角に戦える武器なんかあるわけもなく、あるのは現地で手に入るような刃物や鈍器、なんとか密かに運び込んだ極少数の猟銃や民生用の爆発物だけだったという。


 そりゃ2万も犠牲者を出すに決まってんだろう。


 これは香川県民独特の宗教観によるものか、ウドンを守るため、ウドンに命を捧げた殉教者は死後に「絶える事のない清流のせせらぎが聞こえる、万丈に実る小麦の大地」へと行く事ができるのだそうな。そこで香川県民たちは仲間たちと未来永劫の時をウドンを食して過ごすのだという。


 つまりは明智君が言うような「敵の数百倍の犠牲者」などとは彼らは認識していない。

 死者を思い出して寂しがる事こそあるだろうが、極楽浄土に旅立った仲間たちの事を「損害」だとは思ってはいないのだ。

 紛争後に出された「勝利宣言」もそのような事情による。


「う~ん……。僕なら、復讐どうのこうのってより、2度と関わり合いになりたくないかな?」

「だよな!」


 僕の意見は明智君も同感であったようで、先ほどからためらいがちだった彼が前のめり気味になって僕に賛同する。


「っていうかさ、復讐するにしても、どうやって勝つのさ? 勝利という言葉の意味合いがまるで違うじゃない?」

「非対称戦争の1つの形とも言えるかもな」


 非対称戦争。

 一般的には大国の正規軍に対する小国や非政府組織のゲリラ戦術やテロなどのように敵と同じ戦法では勝ち目がない場合に取られる戦争の一形態。僕自身「暗殺」を目的とした改造人間で、ある種の非対称戦争用の兵器と言えるかもしれない。


 明智君は戦術や戦略のみならず、思想的な面での「非対称」を指摘しているのだろう。

 異星人がキルレシオ1:数百なんて戦果を挙げても、香川の人には蚊に刺されたほどにも感じていないのだから。


「僕も直接は会った事はないけど、ルックズ星人って何て言うかこう……、僕たちの感覚に近い異星人の気がするし……」


 確かに僕を倒すために作られたとかいうD-バスターのあまりのポンコツっぷりは「舐めてんのか!?」と言いたくなるほどだ。


 でも人当りの良いD-バスターの性格は戦闘用アンドロイドという事さえ考えなければさすがは異星の技術力といったもので、僕や真愛さんの他、天童さんや三浦君、子羊園の子供たちもD-バスターには心を許しているように思える。

 そのD-バスターを作り上げたルックズ星人も僕たち地球人とよく似た精神性を持つ異星人だと僕は思っていた。


 他にも異星人ながら「UN-DEAD」のまとめ役を務め、余暇での同好会活動や慰安旅行を実施したりとルックズ星人の人格を推し量る材料はいくらでもある。


「そのルックズ星人が香川にケンカ売るような真似するかな? しかも今回は香川に加えて徳島県民まで……」

「だよなぁ……。やっぱりおかしいよなぁ……」


 僕がルックズ星人の立場なら絶対に四国には近寄らないと思う。

 これまでに判明している情報から「UN-DEAD」の拠点は東京、それもH市とその近郊に集中している事は明らかなのだから。わざわざ四国に手を出す必要がないのだ。


 ここで僕はある事を思い出して、それを明智君に告げた。


「そういやさ」

「うん?」

「おかしいって言えばさぁ、ナチスジャパンの代表が『ラーテを動かす事』も『UN-DEADが行動を開始する事』も知らなかったって言ってたんだよね……」

「なんだと!?」



冷やしウドンの美味しい季節になってきましたね!

今日のお昼は外で讃岐ウドンにしました。

丁度、有線かラジオだと思うのですが大好きな音楽が流れてきて、

イーグルスのホテルカルフォルニアを聞きながらすすり上げるウドンは格別でした\(^o^)/


(↑ウドンは年がら年中美味しい。ギルティ)

(↑音楽を聴きながらなど、無心でウドンと向き合っていない。ギルティ)

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