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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第36話 ベリアル死す! サクラ、怒りの閃光魔術!!
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サクラよ 亡き戦友のために哭け 3

 ARCANA-No.13「死神」のデスサイズ。


 極々小規模な組織であったにも関わらず日本中を混乱の渦に叩き込んだあの秘密結社ARCANA。

 ARCANAの幹部級改造人間シリーズである大アルカナ。

 その最後の生き残りがデスサイズだった。


 確か彼はARCANAに両親を殺され、兄ともども拉致されて改造手術をされたのだったか。

 その後、先に組織から逃げ出した兄、デビルクローを倒すために再改造を受けたデスサイズは執拗に兄を付け狙って幾度となく死闘を繰り広げ、奇跡的に洗脳が解けたものの一時的にデビルクローは行方不明になり、兄が死んだものと思った彼は兄と両親の仇を討つために戦いの道を選んだのだったハズ。


 その来歴と戦いぶりから誰が付けたか二つ名は「復讐鬼」。

 咲良のいる子羊園でもご多分に漏れずデビルクローは男女を問わずに人気のあるヒーローだったのでドキュメントビデオのDVDをリビングに置いているのだが、その続編となる「デスサイズ編」のビデオはまだ幼い子供たちが見れば泣き出すわ、見た後でオネショするわで半ば封印状態となっている。

 もっとも3巻目となる「デビルクロー&デスサイズ編」では兄デビルクローと合流した後の出来事なので大分マイルドな展開となっていて人気はあるのだが。


 だが、すでにデビルクローは反物質爆弾搭載ICBM「エンド・オブ・ワールド」と共に宇宙で蒸発している。

 そして兄を失ったデスサイズは天涯孤独の身となったようだが、いつの間にかこのH市に移り住んでいたようだった。


 あのハドー総攻撃と呼ばれる動乱においてもデスサイズは敵に占拠されたHタワーへの奪取部隊に参加し多数のハドー怪人と異次元ゲートの発生装置を守るロボット怪人を撃破している。

 しかし彼はハドー総攻撃発生直後には姿を見せず、敵の根拠地が判明した後に現れて他の事には脇目もふらずにHタワーを目指したのだという。


 咲良にはそれが合理的ではあるが、どこまでも苛烈で冷酷なデスサイズの本性が垣間見えるような気がして

 いた。

 あの日、冷たい雨に打たれながら燃え盛る街を避難していた咲良だからそう思うのかもしれない。だが事実はどうなのであろうか?


 そのデスサイズが咲良たちの前に現れたのだ。

 彼の姿を見るのはこれが2度目。昨日もヤクザガールズと戦っていた忍者が逃走を図ったところ突如として空から舞い降りてあっというまに捕縛していた所を目の当たりにしていたのだ。

 だが、それは忍者が民家の屋根から屋根へと飛び移り、大分、小さく見えるようになってからの事。

 目と鼻の先の距離に現れたデスサイズは想像していたとおり、いや、想像していた以上に恐ろしく、咲良は砕けた膝の痛みも忘れて背筋に鳥肌が立っていくのを感じていた。


 かちゃり。

 かちゃり。

 かちゃり。

 マントに包まれてなお分かる病的に痩せた長身の死神が階段を下りて大広間の面々を見る。

 言葉は無い。

 まるでその大鎌で切り裂く哀れな犠牲者を選んでいるかのようであった。咲良が襲われている身が凍るほどの緊張感を味わっているのは風魔の忍者ソルジャーたちも動きを止めて固唾を飲んで剣呑な乱入者を見つめている。

 だが、何が気に入らないのか死神は咲良に目を向けてしばらくそうしていた。


「……ああ、ゴメン。咲良さんにシスター智子さん?」

「ひゃ、ひゃい!」

「助けに来たよ!」


 不意に死神が言葉を発した。その声は中世的で珠を転がしたように可愛らしいものであったが、やはりどこか冷たいものを感じさせる。

 そして、その言葉は同時に風魔軍団の忍者ソルジャーたちにとっては死刑の宣告と同義であった。


 妖しい青白い光が死神からほとばしると死神のマントが嵐に吹かれたようにはためき、デスサイズは砲弾と化したように敵集団に突っ込んでいった。


「高田さんを殺ったのはお前かッ! お前か!? それともお前か~!?」


 死神が叫び大鎌と洋鉈を振るう度に命が失われていく。

 見た目は酷く脆そうな姿をしているのに風魔の炭化タングステン製の手裏剣ではデスサイズの装甲には傷すら付けられず、光学迷彩のスクリーンで隠れている者もデスサイズの目からは逃げられないようだ。


「…………うわぁ……」

「……なあ、サっちゃん、高田さんって誰や?」

「知りませんよ……」

「せやなぁ。でも逆にそれがおっかないなぁ」

「ええ」


 恐ろしいと言えば咲良に思いつくのはあのベリアルだったが、しばらく一緒に過ごしている内に「ま~た悪い事を考えてるんだろうなぁ……」と何を考えているか想像も付くようになっていた。

 だがデスサイズは何を言っているのかすら分からずに目の前のサイバネティックを屠り続けている。

 言っている言葉を聞くに「高田さん」とやらが誰かに殺されたらしいが、そもそも彼には誰が犯人か分かっていないようだ。そもそも風魔軍団の忍者が犯人なのだろうか?

 それなのにワニが獲物を食い散らかすようにクルクルと回りながら荒れ狂うデスサイズは何かとても恐ろしい者のように思われた。


「……チッ!」


 だが、さすがと言うべきか風魔の忍者ソルジャーたちはデスサイズ突撃の混乱から上手く統制を執り直し、左右から飛んできた鎖付きの分銅によってデスサイズの両手は絡めとられて大きく開かされてしまう。


「マズい!」


 思わず咲良の口から声が漏れる。

 デスサイズの武器は全て手で扱う物だったハズ。両腕の自由を奪われては敵に嬲り殺しにされるしかない。

 だが……。


「石動さん! 前に出過ぎですよ!」

「でもおかげで間に合ったみたいっスね!」


 風のように咲良たちの後ろ、階段から飛び込んできた2体のネコ型獣人によって死神を縛る鎖は断ち切られていた。


 1体は女性的なスタイルが美しい大きな耳から長い飾り毛を垂らした獣人。

 もう1体はボディビルダーでもここまで鍛えるのは難しいだろうという肉体を誇る上顎の牙の長い獣人。

 2体とも揃いのチノパンとポロシャツを着ていた。


「メンゴ、メンゴ! ところで宇佐さんは? あの人、担架とか持ってきてたでしょ?」

「担架? え、あ! この子、怪我してるじゃないですか!」

「こんな小さい子になんて事しやがる! もう許さねぇ!」


 咲良の膝の傷を見て怒りに震える2体の獣人だったが、2体はどこからどうみても()()ハドー獣人である。


 さら階段を下って3体のハドー獣人と2人の人間が現れる。

 今度現れたのはウサギ型とクマ型の獣人、それと原形不明だがこちらも他の獣人と同じポロシャツを着た者。さらに同じポロシャツ姿の紛れもなく地球人の女性と人間型だがやたらと色の白い美人だった。


「宇佐! その子を担架に乗せて宇垣さんの所まで!」

「はいは~い! それじゃ皇女サマも手伝ってください」

「うむ。で、涼子は?」

「私は皆と一緒に……」

「それじゃカメ獣人さん! その子を担架に乗せましょう!」

「カメ獣人やないけど助かるわ!」


 ウサギ型の獣人が階段付近で折りたたみ式の担架を広げ、色白の美人にシスター智子、河童たちで咲良を担架に乗せて固定する。

 その間にも他の獣人たちとデスサイズは戦闘を再開していた。


 元は「超次元海賊」の怪人だけあって乱戦はお手の物といったところか、数多の忍者ソルジャーを相手に左右2方向から敵を攻め立てる。


 右方向からはサーベルタイガー型の獣人がその大きな牙で敵を切り裂き、原形不明の黒い獣人が青白く瞬く高圧電流で電子回路を作動不能に追い込んでいく。


 左方向はカラカルキャット型の獣人が躍るように頭部を振るう度に耳の飾り毛が舞い、それに触れた物は何であろうと切り刻まれていた。またクマ型獣人の怪力は装甲に覆われているハズの忍者ソルジャーたちを砂糖菓子のようにくだいていく。


 やがて左右から追い立てられた忍者軍団は大広間の中心に集められる形となる。

 そしてそこには死神が光の円環をいくつも重ねて作った砲身が向けられていたのだ。


 デスサイズは迷う事なく助走をつけて円環に飛び込む。


「デスサイズ! キック!!」

河童「高田さんって誰?」

咲良ちゃん「さあ?」


ワイも今回、途中まで「高“山”」さんって間違えてたのは内緒や!

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