表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第5話 カレーと部活と娘さん
17/545

5-2

「え、部活?」


 部活という言葉が三浦君から出たのは意外だった。

 三浦君は気のいい友人ではあるし、外見で決めつけるのはどうかと思うけど、三浦君は俗に言う「オタク」だ。それもステレオタイプの最近はあまり見ないレベルの。もっとも、三浦君と「魔法の天使プリティ☆キュート」の話題で盛り上がる僕が言うのもどうかと思うけどさ。


「そういや、中学の時は各部の紹介のガイダンスというかオリエンテーションみたいなのあったけど、高校はそういうの無いんだね」

「もう終わったでござるよ? あ、ああ!」

「誠君の初登校の前の日にあったのよ」

「え?」


「おいーす! 何の話してんの?」


 天童さんが登校してくる。今日も朝から元気だ。


「あ、おはよ。三浦君が部活はもう決めたのか?って」

「うひゃうひゃひゃ! デブゴ~ン! ウチの学校にゃ相撲部は無いって!」


 天童さんが両手で三浦君の脇腹肉を鷲掴みにして揺さぶる。相撲部と言ってるし、もしかしたら相撲のマネかもしれない。


「ぬほほ! 朝から盛大にスキンシップ、キタコレ!

 と、冗談はともかく、天童氏にもお二方にも話だけでも聞いて欲しいでござるよ」


「ん、何だい?」

「ん?」

「この学校の校則では生徒は何か一つ以上の部か同好会に所属する決まりになっているで御座る。掛け持ちはできるでござるが、その場合は体育系と文化系に一つずつまで、要するに野球部と手芸部の掛け持ちはOKで御座るが、野球部とサッカー部の掛け持ちは駄目で御座る」

「あ~、んな事言ってたな~」


 この説明は本題に入る前に、ガイダンスを出てなかった僕のための説明だろう。三浦君、ニクいヤツだぜ!


「ん~と、マンガにありがちな幾つもの運動部を掛け持ちするスポーツエリートはウチじゃできないってのは分かったよ」

「そういう事で御座る」


「お、皆、お早う」


 ここで明智君も登校。


「誠、昨日の星人の報奨金、1体3000円だってよ」

「やったー! 今晩はステーキだー」


 思わぬ臨時収入だ。しかし、前にテレビのニュースで見た話だと、増えすぎて森林環境に悪影響を及ぼすイノシシだかシカだったかも1頭3000円の報奨金だったような?イノシシやシカと同じレベルの宇宙人とは?


「で、何の話してたんだ?」


 明智君の席は僕たちの席から遠いので、壁にもたれかかった状態で話に参加する。


「おお! 明智氏にも是非、聞いて欲しいでござる。拙者が入会するつもりだったヒーロー同好会が人がいなくて潰れそうなんで御座る。もし、文化系に入る予定の無い方、帰宅部をやりたかった方がおったら、拙者を助けると思って是非!」

「待て、文科系に入る予定が無いヤツってのは分かるが、帰宅部志願者集めてどうする?気が変わるほど魅力のある同好会には思えないぞ」

「んなもん、ヒーロー同好会なんぞ、いくらサボってもよかろうで御座る」


 三浦君!?ぶっちゃけすぎでしょう!


「へ~、帰宅部が駄目なら幽霊会員になれってことか~」

「ところで三浦君、今は会員は何人いるの?」

「現在は会長1人、入会予定が拙者1人の2人で御座る」

「ん? じゃあさ、何人集まればいいの?」

「校則では競技種目以外は6人必要で御座る」

「まあ、例えば野球なんか6人じゃ紅白戦どころか1チームすら作れねぇもんな」

「え? そういう時は2、3校で合同チーム作るでしょ?」

「なんだよ? ソレ? マコっちゃん、それ練習とかどうすんだよ~」

「いや、天童。甲子園予選とかだとたまにいるぞ」

「マジかよ……」


 あれ?僕の前に住んでいた岩手県だと明智君の言う通り、県大会くらいなら3つくらい合同チームあったけど、東京だと一般的じゃないのかな?


「アタシはいいぜ~、文科系やる予定は無いしな!」

「俺もそうだな。部活動はやる気はなかったしな。精々、幽霊やらせてもらうよ」

「ん? 明智君、部活で知将キャラやってそうなのに……」


 僕の疑問に明智君がため息をつきながら答える。


「ああ、去年までは知将かはともかくサッカーやってたんだけどな。中学最後の夏は埼玉行ってて、皆に迷惑かけたからな。それ考えるとどうもな……」


 あ~、そうだよね~。夏休み前から僕のことスカウトしにきたりしてたもんね~。

 僕もちょっと考えてみたけれど……


「僕もいいよ! 競技系種目とかだとドーピングどころの話じゃないからね……」

「そ、それじゃ美術部とかもあるよ!」


 僕の自虐に真愛さんが助け舟を出してくれるが、駄目なんだよなあ……

 ペンケースからシャーペンではなく鉛筆を出してプリントの裏にペンケースを模写していく。ネットの動画サイトで見た通りに、高速で。2、3分でハイパーリアリズムのモノクロ画が出来上がる。


「これは……」

「……すげぇー」

「さすがで御座る」

「え?え?」

「え~と、僕、自分の脳味噌が半分くらいしか無いんだよね。あとは機械でさ。美術部も吹奏楽部も駄目……駅前の大きな喫茶店に自動演奏のピアノあるじゃん? あれでコンクール出れないでしょ?」


 自分で言ってて泣きたくなってきた。昨日、アーシラトさんに言った「普通になりたい」ってこんなに大変なんだ。


「手芸部とか料理部もね。家に帰れば1人なんだし、どうせ自分で全部やらなきゃいけないんだから、学校でやることないかなって。なら三浦君の役に立ってる方がいいかな」

「……! わ、私も誠君と一緒にヒーロー同好会に入るわ!」


 そんな他人の自虐ネタをフォローしようとしたら、相手が地雷を勝手に踏み抜いたくらいで責任感じなくていいのに……

 真愛さん、将来、悪い男に騙されたりするんじゃなかろうか? その時はきっと「海の貴婦人」が黙ってないだろうけどね!僕も必殺技(デスサイズキック)の5、6発くらいは許されるよね?




 ともかく、僕たち5人とまだ見ぬ会長さんで計6人。同好会の存続に必要な人数は確保できた。放課後に同好会で使っている部室棟の部屋に皆で行くことになった。

 不思議な事に同好「会」なのに「部」室と呼ぶそうだ。これはヒーロー同好会に限った話ではなく、文芸同好会も卓上遊戯同好会も「部」室だった。


「うわ、三浦っち、その人たちはどうしたの!?」


 部室に行くと、すでに会長さんがいた。セミロングの髪を飾り気の無いゴムで止めた女性で、眉は太いが手入れされてて、大きな目と合わせて可愛らしい印象を受ける。もっとも僕より背は高いが。まぁ、それはこの場にいる僕以外の全員すべてに言えることだけど。


「会長! 入会希望者を連れてきたで御座るよ。これで6人で御座るよ」

「マジで!? いや~、助かるよ~。私、2年の草加雅美(くさかまさみ)。よろしくね!」


 会長さんに続いて僕たちも自己紹介をしていく。


「明智元親です」

「天童京子だよ! ヨロシクね! 会長さん!」

「私は羽沢真愛です」

「石動誠です。よろしくお願いします」

「全員、拙者と同じクラスで御座るよ」

「いやあ~、ホント、助かるわ~。三浦っちから聞いてると思うけど、掛け持ちでもユーレイ会員でもいいからさ!」


 ん、さっきから三浦君の事を「三浦っち」って随分と中がいいな。三浦君、教室でいつも天童さんとじゃれてるし、実はリア充!?……んなわけないか!


「あの、実は活動の内容を聞いてないんですが……」


 真愛さんの質問に対し、会長さんは棚から段ボール箱を取り出し中身を取り出す。


「んーとねー、普段は勝手に好きにやってるんだけどね。文化祭の時はこんな風に小冊子を作ったり、イラスト書いて展示したり。去年の卒業生でフルスクラッチで模型作った人もいてね」

「良くできてんな~、おい!」


 天童さんが驚くのも無理はない。箱の中から出てきたのはリアルなデビルクローと、実物よりもメタリック塗装が映えるバスタースーパーブレイブロボ、それに完全ホラーテイストなマーダーヴィジランテさんとアーシラトさんの模型だった。デビルクローの模型なんか僕も欲しいくらいだ。


「イラストの方も中々に上手いぞ」

「あ、これ。誠君も書いてみたら、朝みたいに実際にあるものを書くんじゃなくて、自分の頭の中でイメージしたものを書いてみるの!」

「そっかぁ、その手があったかあ……」


 明智君と真愛さん、そして僕が見ているイラストに描かれているのはプリティ☆キュートを始めとした歴代の魔法少女たちの集合したものだった。中には活動時期が完全にズレている人もいて、つまりこのイラストは作者のイメージで描かれた物ってことだ。

 それなら僕も兄ちゃんと僕の2ショットとか。IFのシーンとか色々とできる!


「何々? 誠君は絵が上手いのかい?」

「はい、とっても! これを見てください」

「凄いじゃん! いや、その魔法少女のイラスト書いたの私なんだけどさ。画風も全然違うし、お客さんに楽しんでもらえると思うよ!」


 朝、僕が書いたペンケースを会長さんに見せて真愛さんが喜んでいる。僕も嬉しい。僕にもできることがあることを見つけて喜んでくれる人がいることが。


「ところでさ、もしかしてなんだけど……」


 思い思いに昨年の展示物を眺めている僕たちに会長さんが恐る恐るといった風に問いかけてくる。


「もしかして貴方たちって、「至高」の魔法少女と「最高」の頭脳、そして「最凶」の死神だったりする?」


 お、さすがヒロ研の会長さん。僕のことも知っているだなんて嬉しいなぁ!


「ええ、僕がデスサイズですけど……、いやあ、最強だなんて……そんな事はないですよ!」

「そ、そうなの」

(おい、アレ「さいきょう」の字を勘違いしてねーか!)

(あわわ)

(おい、三浦! 後で誠のプリン並みのメンタルについて説明しとけ!)

(も、もちろんで御座る)


「あ、そうだ。早速で悪いけど入会届を書いてもらえる?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ