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初心者妖精の願い  作者: ゆきのいつき
12/21

---Re:3---

「おはよ~、りなちゃん。朝だよ~、起きてー」


 ぼくは隣で寝てた理菜ちゃんがむにゅむにゅ言って目が覚めそうなのに気付き、とてとてと耳元に近寄り、そこから声をかけた。


「うーん、ママぁ? ふぁ……まだ眠いー」


 りなちゃんは寝ぼけてるのかまだぼーっとしてて、へんなお返事しか返ってこない。

 うー、早くお話したいのに……。


 昨日の夜は、こっちに来るのに精霊さんの力、ほとんど使っちゃったから、せっかくりなちゃんに会えたのにぜんぜんお話できなかった。


 朝起きたらもう小っちゃくなってるし。

 ったく、かくごはしてたけどさ、もうちょっとおっきいままでいたかったのに~。この世界、どんだけ精霊さん少ないんだろ……? きっとみんな人間のせい。ほんと人間ってばかばっかー!


 ううぅ、なんかあたまがしっかり回らない。こ、これもおーさーが言ってたことのせい?

 ここにもどる前、言い聞かされてたことがいくつかあるけど……。


 もう、あたまになんかもやがかかってるみたいだよー!




「――いいかリィン。現実世界は何度も言うが精霊の力が悲しくなるほど弱い。お前が向こうに行けば今の姿を維持することはまず不可能と考えた方がいい。


 そうだな。


 きっと今のその姿の半分以下程度……、いやそれ以上に縮んでしまうかも知れん。そのことはしっかり覚悟しておくことだ。


 だからこそ精霊の力が最も強くなる満月の夜に立つのが良いのだ。そうすることで少しでも精霊力の減少からくる影響の発露を遅らせることも出来るだろうからな。


 それとついでに言っておくが、リィンのその頭の中もそれ相応に影響を受けるだろうから覚悟しておおけよ? なに大したことではない。少しばかり精神年齢が退行してしまうだけのことさ。


 ふふっ、よくよく考えれば今とそう変わらぬかもしれんな? くくっ、怒るな怒るな――」



 

 なんか思い出したらまたむかむかしてきちゃった。


 ぼ、ぼく、変わってなんかいないもんねー!


 って、お布団の上に立ってぶつぶつひとりごと言ってたら、にゅーっと横からなんか伸びてきた。



「ええっーーーー!?


 な、何これー! お人形? かわいー!


 で、でも、あの子は、あの子はどこにいっちゃったの?」


 はわわっ、りなちゃん、つんつんするのやめてー。


 りなちゃんがいつの間にか目を覚ましてて、横になったままぼくのほうを不思議そうな顔して見つめてた。で、興味がおさえられないのか手をのばしてぼくのことツンツンしてくれちゃってた。


 ぼくはそんなりなちゃんの指をかわしながら目をあわした。

 小っちゃくなったぼくには中学一年生とはいえりなちゃんはとってもおっきくて巨人みたいに見える。そのお顔も当然おっきくて、目をあわすとちょっとおじけずいちゃう。うー、大好きなりなちゃんなのに……ぼくの弱虫。


「うわぁ、ほんと小さい~、まるで妖精さんみたいー!

 

 ねぇ妖精……さん、あなた、どうして私の名前知ってるの?

 昨夜のあの子はどこいったの?

 あの子とあなたはどんな関係?

 っていうか、大きさ以外、見た目そっくり……だね? 

 なんで私のところにきたの?

 なんで……」


 りなちゃん、きれいなお目目を大きく見開いてぼくを見て、興奮しまくっちゃって質問がとまらない……。

 ぼくもうたじたじ。


「あ、あの、その、あの……」


 ぼくはりなちゃんの勢いに押されて、なかなか言い返せない。

 で、もじもじしてるぼくにやっとりなちゃんが気付いてくれる。まぁ興奮しちゃうのもわかるけど……。こんな小っちゃな妖精が目の前にいたら驚いちゃうよね。ぼくだって妖精に生まれ変わって、そんでもって、今度はこんなに小っちゃくなっちゃって……まだ気持ちが付いてけてないんだもん。


「あ、ごめんなさい……。私ったら、小さいあなたにまくしたてちゃって……」


 りなちゃんが舌をペロッと出してぼくにあやまる。


「ううん。いいよ。あの……、ちょっとおでこをぼくにかしてください」


 ぼくのこと……、手っ取り早くわかってもらうため、そうお願いした。


「はえっ? おでこを……貸す? ええ?」


 りなちゃんはぼくのいってる意味がわかんないのか、愛らしいお顔をむずかしい表情にして悩んでる。ほんとかわいーな。ぼくは行動あるのみで、よたよたとりなちゃんのお顔のまん前に行く。


 りなちゃんのお目目がぼくを見ようとより目になる。

 ふふっ、これもかわいー!


「こうするのー」


 ぼくは自分のおでこをりなちゃんのおでこにこつんと当てる。そしてぼくのこれまでの想い……、生まれ変わってからのできごとをりなちゃんに伝えるため、体に残ってる精霊さんの力をかき集めて送り出す。

 背中の翅がぷるぷる震え、ほんわかあたたかくなって発光してきてるのがわかる。


「ふみゅー!」


 両手もりなちゃんのおでこに当ててがんばる。

 今や全身が淡い淡い緑色の光につつまれ出してる。


 テルとメイがどこからか現れ、そんなぼくの周りを応援するかのように飛び回る。二人もその輝きは弱まり、大きさも今までの半分くらい……、ぴんぽん玉がせいぜいくらいのサイズになっちゃってる。


 ふふっ、二人ともあんまし無理しないでね。ここじゃぼくと同じで精霊さんからもらえる力はあんましないんだから。

 だから遠慮しないでぼくの力を使ってね。

 ぼくとりなちゃんのあたまの周りをくるくる飛び回ってる二人を見てぼくはうれしいけどちょっと心配。



「なんか変な気分。


 妖精さんからなんかあったかいものが……流れ込んでくる。


 なんだか……、


 私――」


 りなちゃんはそう言ったきり黙り込んじゃう。


 ぼくはかまわずうんうんと想いを伝えるよう、おでこと両手に力を込める。


 体からはどんどん力が抜けていく――。



 りなちゃんの目からいつしか涙がこぼれてきてる。

 ちゃんと想い、伝わってる……かな?



 ぼくもう限界――。



 がんばりすぎ……ちゃった……な。



 ぼくはりなちゃんのおでこにふらふらって、寄りかかるように……くずれおちた。


 テルとメイもそれに合わせるかのようにその輝きを失って、ふわっと消えさる。

 たく、テル、メイ、無理しすぎ。


 ぼ、ぼくもだけど。



 でも想いはしっかり伝えれたと……思う。




「う……そ。



 お、おにい……ちゃん?」



 りなちゃんがそう口にしたような気がした――。



 でももう限界。



 おやすみ……なさ……い――。




次からようやく日常に……突入?


読んでいただきありがとうございます。

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