24 結ばれる二人
ルビーロザリアを出てから数年後。
妖精の国にある祭場にて。
七色のステンドグラスがはめ込まれた窓がある、白色の壁の天井の高い建物の中。
部屋の中央に真っすぐと敷かれた赤い絨毯。
その両脇には多くの人々が立っているが、誰も一言も話さない。
そんな厳かな雰囲気の中、婚礼衣装を身に纏った青年と少女が、赤い絨毯の上を歩いて行き……。
「………‥」
「…………」
青年と少女は赤い絨毯の終点、部屋の最奥へたどり着く。
そこには、木製の机と立派な髭を生やした礼服の老人が立っていた。
青年と少女は足を止めた。
それを見た礼服の老人は、何も言わずに一つ頷くと……。
「これより、婚礼の儀を執り行う」
部屋の中に響く低い声で、そう告げた。
「…………」
青年は真正面を見据えたまま、固い表情を見せている。
だが切れ長の目には、穏やかな光が満ちていた。
「…………」
少女は少し下を俯いたまま、優しい笑顔をしている。
目は閉じているが、とても満ち足りた雰囲気がしていた。
「…………」
そんな中、少女は顔をあげて、ゆっくりと青年の方を向いた。
「…………」
その行為に合わせて、青年も少女の方を向いた。
窓から差し込む七色の光によって、青年の顔は見えなくなってしまう。
「……あなた」
少女ははにかみながら、そう告げた。
「……これからも頼むぞ。マール」
少女の可憐で恥じらう仕草に、青年は優しくそう告げた。
「…………」
「…………」
そして二人は、お互いの口づけを交わし、誓い合った。
こうして少女と青年は結ばれた。
誰もが二人を祝福し、新たな人生の門出を喜んだ。
それからしばらくの時が経った。
地上のある場所にて。
「大丈夫ですか? 今治しますね」
そこは他種族から侵攻を受けており、それらを食い止めるために戦い、傷ついた兵士達が居た。
マールは怪我人を見つけると、他の治療役と交じって兵士の介抱をした。
「お前さん、治療師か? 回復の魔法は使えるのか?」
地上はすっかり回復魔法が主流となっていた。
治療師=回復魔法の使い手という認識と言っても過言では無かった。
「いいえ使えません。ですが、私には薬学がありますっ!」
少し前のマールだったら、そこで自分自身を卑下していた。
しかし、最高の理解者を得た今となっては、周りの評判は彼女にとってどうでもいいモノとなっていた。
「そうだ、俺の嫁はかなりの腕前だぞ」
「そうか……、すまない頼む」
すかさず傍に居たアルベルドが腕を組みながらそうフォローすると、兵士は安堵した表情でマールの治療を受けた。
「あなた、本当に良かったのですか?」
「何がだ?」
「私が妖精の国から抜け出して、こうやって冒険しているのを」
マールは治療の進めながら、少し意地悪な笑みを見せてそう言った。
マールとアルベルドは、妖精の国を度々抜け出してはこうやって傷ついた人々を治療していた。
回復魔法を使わず、薬のみで傷を癒して皆を元気にしていくその様は、やがて噂となっていった。
「その姿こそ、俺が焦がれた者の姿なのだ。自らの好きなものを否定して何になろう?」
「ふふ」
アルベルドは何の躊躇いも無くそう答えると、マールの表情は自然と優しいものとなった。
彼女達の冒険は、終わらない。
~ 完 ~




