ノルドの妖精 ‐ ウィキパディア
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ページ/ノート
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ノルドの妖精
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ノルドの妖精とは聖方大陸の最南方に位置するモスクヴァダ法国領のノルド地方に住む妖精の事である。ノルドの妖精は現在確認されている妖精種族の中でも最も奇妙な文化及び社会を持っている事で知られている。
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概要
ノルドの妖精はモスクヴァダ法国領のノルド地方に住む妖精である。ノルド地方は聖方大陸の最南方に位置しており夏は気温は高いが、冬は気温が-40℃に達する気候帯に位置している。また、ノルド地方は文明人による開拓が一切行われていない広大なノーマンズランドの一角に位置しておりノルド地方は文明人の最も近い入植地からも約622ファルサフ離れた文明未開の密林地帯となっている。このノルド地方に住むノルドの妖精が発見されたのはファラリス教歴2311年の事である。ザサール王国の宮廷画家ファティマ・ンズラ・エディモンが数人の従者と共に33年にも及んだノーマンズランド探検中にノルド地方へと到達しその際に接触した。ファティマはこの接触後、この妖精族との間で友好関係を結び6年もの間、ノルド地方に留まり、ノルドの妖精に関する研究を行った。その後、ファティマは王国へと帰還しノーマンズランドで体験した出来事をまとめた自伝「彼の地」を発表した。この自伝は各国で写本が作られるなどして多くの国々で有名となり今だ未開の地である広大なノーマンズランドの様子を伝えた。
その後、ファティマ以外にノルドの妖精と接触に成功した事例は妖精王国の宣教隊派遣が最後の事例である。妖精王国はファティマの自伝によってノルドの妖精を含めたノーマンズランドに住む妖精族の存在を知るとファティマの自伝の発表から僅か数ヵ月後には宣教隊の派遣を決定し自伝の発表から1年後にはノルド地方へと向けて宣教隊が派遣された。この宣教隊の任務はノーマンズランドにおける宗教実態の調査や宣教、場合によっては実力行使による宣教を行う事だった。宣教隊は出発から16年後のファラリス教歴2333年にノルド地方へと到達しノルドの妖精と接触した。しかし、この際、宣教隊とノルドの妖精が交戦する事態へと発展し宣教隊は敗退し撤退した。これがノルドの妖精に関する最後の接触事例であり、これより以後はノルド地方への探検が行われない。もしくは行われてもノーマンズランドの天候や自然環境上の問題によりたどり着けないなどの理由によってノルドの妖精とは最初の接触から一世紀近くたった現在でも再接触はできていない。
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生物的特徴
ノルドの妖精の姿は人間を掌大の大きさまで小さくした背中に玉虫色の4枚の羽を備えた姿をしており、また性別も雌しか存在していないとされる。これは一般的な妖精種と変わらない姿である。また種族的な観点からも極一般的な妖精族と同一の種であると考えられている。また、個体数は一般の妖精族の巣と比較した場合は非常に多いと推計されておりファティマの自伝によるとノルドの妖精は7万から15万も個体を有しているとされる(一般的な妖精族の1巣の有する個体数2万から3万程度)。ここまで個体数が多いのは過去に他の巣を吸収した事がある為だとされる。
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文化及び社会的特長
ノルドの妖精に関して最も特筆すべきはその文化及び社会的な特長である。この特徴から一般ならば妖精は何処に生息していても名称はただの妖精だが、ノルド地方に住む妖精に関してはノルドの妖精と呼ばれる由縁となっている。ノルドの妖精の文化と社会は一般の妖精の妖精王を中心とした宗教観や魔法観を逸脱しているとされる。ファティマの自伝によると、ノルドの妖精は自らの巣をサヴィェート・フェーイャリズム・ソチアリズム・リスプーブリカ(直訳で評議会妖精思想集団思想民衆協力国を意味する)と奇妙な名称で呼んでいるという。また、彼女らは従来の妖精王を中心とした宗教観を放棄しているとされ、また、いかなる宗教ですらノルドの妖精の間では厳しい掟によって宗教を持つ事も広める事も禁じられている。ファティマによればノルドの妖精は宗教の代わりに古ぼけた赤い本を崇拝しているとされ、その本はノルドの妖精がサヴィェート・フェーイャリズム・ソチアリズム・リスプーブリカを名乗る以前に巣の近くの鍾乳洞で偶然発見したとされる多数の本の中にあった本の一冊で、この赤い本は現在は巣の中に作られた祭壇にて厳重に保管されているのだという。この赤い本の中身はファティマの知らない奇妙な文字で書かれていたとされ、ノルドの妖精たちによれば、その本にはマルクシズム・レニニズムという思想が書かれているのだとされる。ファティマはノルドの妖精達はこの思想に沿った文化及び社会を形成していると著書で解説しており、その様相はファティマから見て人間や亜人種の国家とも引けをとらない非常に高度な社会を構築していたという。
社会的にはまず、ノルドの妖精の社会においては生産物や富をすべての巣の構成員に分配する為に生産手段や個人の富などを社会の共有の物とする制度が行われているとされ、統治面においても通常の妖精の社会では女王が絶対的な権利を持つ所謂絶対君主制のような社会が構成されているが、ノルドの妖精の巣ではサヴィェート最高会議と呼ばれる巣の代表者が集い議論と投票を行う所謂、元老院の様な物が巣の最高権力組織となっており、そこで決定される政策などが巣の決定事項として行われるのだという。また、文化的な特徴としては他の妖精族と比べれば非常に多くの違いが存在するが、その中でも奇妙な文化としてファティマはその好戦性を上げている。一般的な妖精は争いを好まない平和的な性格なのに対してノルドの妖精は非常に好戦的であり妖精である事を疑うとまで記している。ファティマによればノルドの妖精はクラースナヤアールミヤと呼ばれる軍隊の様な組織を持っていると記しており、クラースナヤアールミヤには巣の構成員の3分の1が通常では属しているという(一般の妖精は軍隊の様な組織を持たない)。クラースナヤアールミヤは1年の間に5回に渡って楽器や音楽を交えた集団による行進を行うとされ、この行進の際にはクラースナヤアールミヤに属する妖精達が一糸乱れない行進を行い行進を観覧するサヴィェート最高会議の面々やその沿道の妖精達の前を通るのだという。ファティマはこの行進について、妖精達は小さいながらもこの行進を見れば誰もが圧巻にとられるだろうと自伝に記している。また、ファティマはこの行進の際には奇妙な物が多く登場するとも述べている。例を挙げると大きさにしてファティマの両手で持てるほどの大きさで、二本のベルトによって進む一本筒の付いた妖精の魔法で動く奇妙な鉄の箱や、人間の両腕を束ねた程の太さをもつ筒を乗せた8輪の車輪がついた妖精の魔法で動く奇妙な鉄の塊が行進の際に幾つも登場したという。普通の民衆文化に目を向けても奇妙な文化が多く見られるとされ、ノルドの妖精の里には常に赤い旗が幾つも掲げられたり、民衆によって定期的に思想を宣伝する様な集会が開かれたりなどをしているとされる。
また、ファティマいわくノルドの妖精には妖精特有の無邪気さや純粋さが殆ど感じられないとも記している。ファティマによればノルドの妖精の社会は人間社会や亜人国家に見られる社会的な観点から見ても異常であるとしており、ノルドの妖精の社会では彼女らの社会の根幹を成しているマルクシズム・レニニズムを批判したりする様な者や宗教を信じるような者は隣人や友人にさえも密告されカーゲーベーと呼ばれる組織に捕まり殺される者まで居るのだという。それゆえにノルドの妖精は妖精特有の無邪気さや純粋さを失ったのだろうとファティマは自伝で語っている。
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ファティマの見解
ファティマはノルドの妖精に関して、なぜ、ノルドの妖精がこの様な他の妖精とは違う文化、社会形態をしているのかに関してファティマは妖精種の影響されやすい性格をあげており、よく人里近くの妖精は人間を真似てごっこ遊びをする事がる事から、洞窟で発見されたという赤い本を見つけるまでは通常の妖精と同じだった可能性があると見解を示している。ファティマはごっこ遊びが常態化し社会構造化したのではないかと持論を述べている。
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妖精王国の見解
妖精王国はファティマの自伝の発表を受けてファラリス暦2318年に妖精王キュクレイン2世はノルドの妖精に対しての見解を王前会議で発表している。その見解でキュクレイン2世は「この自伝の内容が事実であるとすれば非常に悲しい事である。妖精としてこれは悲劇にも近い…中略…吾はゆえにノーマンズランドへと宣教隊を派遣することにした。過ちは正さねばならない」と述べている。しかし、宣教隊がノルドの妖精と交戦し敗退して戻ってくると、キュクレイン2世はノルドの妖精に対してもはや邪教にも近いおぞましい存在と化していると怒りを述べた。その後、妖精王国は6度に渡って宣教隊をノルド地方へと向けて派遣しているが、気候的な問題やノーマンズランドの魔獣の襲撃などによって失敗している。
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出典
・『彼の地』ファティマ・ンズラ・エディモン作
・『ノルドの妖精』ファティマ・ンズラ・エディモン作
・『ノーマンズランド見聞録 第11巻』ファティマ・ンズラ・エディモン作
・『ノーマンズランド見聞録 第12巻』ファティマ・ンズラ・エディモン作
・『ノーマンズランド見聞録 第13巻』ファティマ・ンズラ・エディモン作
・『ベルランタの日記 第1巻』ベルランタ・フォン・ハッハウ作
・『ベルランタの日記 第3巻』ベルランタ・フォン・ハッハウ作
・『妖精王御前議録』トテロン・ンラ・ンソンソエマソン作




