フェンリル・エイル ‐ ウィキパディア
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フェンリル・エイル
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フェンリル・エイルとは太陽系人類においてその大半の人々に神格化されている荒神の機体名称である。
フェンリル・エイルはエウノミアー暦成立以前の神話の時代とも言われる西暦の時代の後期、大大戦の後期の時代に開発された荒神である。生産機数はたった一機でありフェンリル・エイルはフェンリルシリーズの荒神としてもっとも最初に開発された機体だと伝えられている。
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歴史
フェンリル・エイルはエウノミアー暦成立以前の神話の時代とも言われる西暦の時代の後期、大大戦の後期に開発された。大大戦の詳しい情報はその後の社会的混乱によって多くの信頼のおける資料が失われた為に多くの情報が断絶しているが、フェンリル・エイルにまつわる話や資料は多くが残されている。
フェンリル・エイルが開発された当時、西暦の後期の時代は大大戦と呼ばれる人類史上最大の戦乱の時代であった。人類は他の次元の階層宇宙がワームホールを通じて我々の次元の宇宙と接続してしまう大規模な異常現象によって太陽系内に雪崩込んでくる知性を持たない異生物との戦争を行っていた。人類は木星圏にまで進出を果たしており最盛期の人類の総人口は300億人を超えたとされているが、対異生物戦争の激化によってフェンリル・エイルが開発された当時、人口は急激に激減し僅か7億人にまで激減していた。この当時の時代の状況を僅かに記したベーリング大将の伝記には以下の様な一文が記されている。
「...殖民惑星に居住していた人類は既に絶滅し、異生物共の巣窟と化しており、地球も9割の地域が異生物共の手に落ちた。生き残った人々は各地に点々としているドーム都市で細々と生きている...中略...現在、約7億の人類の半数は宇宙空間で生活しているが、その人々ももはや、逃げ場は無い。我が人類宇宙軍は地球圏を中心に金星圏までに球状防衛網を構築してはいるが、その外の宙域はもはや異生物共の領域なのだ...」
「原文:...إن الإنسان الذي عاش على كوكب الأرض قد انقرض بالفعل وأصبح عشًا لجميع الكائنات الحية ، و 90٪ من الأرض قد سقطت في أيدي سكان آخرين. الناس الذين نجوا من العيش في مدن قبة صغيرة منتشرة في جميع أنحاء البلاد ، يعيش الآن حوالي 700 مليون شخص في الفضاء الخارجي ، لكن الناس لم يعد لديهم مكان للهروب. قام جيش الفضاء البشرى ببناء شبكة دفاعية كروية حتى منطقة فينوس حول منطقة الأرض ، ولكن...」
このベーリング大将の伝記の一文にもあるように、当時の人類は異生物に生存領域を圧迫され絶滅の危機に瀕していた。フェンリル・エイルはこの時代にフェンリルシリーズ初の荒神として開発された。操縦者の名前については幾つか説があるが詳細には分かっていない。その為、一般的にはペネムという敬称で呼ばれている。現代まで伝わる伝承や幾つかの書物によれば、フェンリル・エイルは通常ならば一個宇宙艦隊の戦力が必要な異生物の軍勢をたった一機で倒し数々の戦いで活躍して人類を勝利に導いた荒神だとされている。フェンリス・エイルが大大戦期に使用したと記録に残っている最も有名な武装はクトネシリカと呼ばれるナイトソード型の双剣とタカペと呼ばれる槍である。これらの武装の内、現存していた装備はクトネシリカのみとなっている。
大大戦の終結後、フェンリル・エイルは西暦の終わりと同時に組織されたユースティティアにおいて保管されユースティティアの象徴的な扱いを受けた。その後、フェンリル・エイルは次第に神格化されていき、エウノミアー暦50年頃には完全に宗教化し神格の位を持つとまで言われるようになり多くの民間信仰を集めた。しかし、この民間信仰が後に世界を震撼させたフェンリル事件を引き起こす間接的な原因となった。
431年7月18日、ユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍太陽系外遊機動艦隊の将校らの艦隊が月面に存在したユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍の司令部であるスカイレルムを突如として強襲しクーデターを引き起こした。このクーデターの首謀者は太陽系外遊機動艦隊の司令長官サー・エイベル・ニンフ准将で、クーデター軍がクーデターを起こした理由は腐敗したユースティティアを立て直すというのが目的だったが、エイベル・ニンフはスカイレルムの地下に位置する天空神殿に安置されていたフェンリル・エイルを強奪し、何らかの方法を使ってフェンリル・エイルを数百年ぶりに起動させ、フェンリル・エイルの名の下にユースティティアを立て直すと主張した。この事件はフェンリル事件と呼ばれ、最終的にエイベル・ニンフ率いるクーデター軍は地球駐留機動艦隊によって討伐されエイベル・ニンフはニンフ家から追放されサーの称号と軍籍を剥奪された。しかし、エイベル・ニンフはフェンリル・エイルを所持したまま、クーデター軍残党と共に火星圏へと逃亡した。ユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍は全力を挙げて火星圏へと逃亡したエイベル・ニンフとフェンリル・エイルを捜索したが結局発見には至らず、現在までフェンリル・エイルの所在は不明となっている。
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信仰
フェンリル・エイルは太陽系内において多くの民間信仰を集めていた荒神として最も有名である。フェンリル・エイルを何らかの形で信仰する人々は130億人を超えるとされる。地球においてはフェンリル・エイルを奉った寺院や教会などが各地に多く作られ一般家庭においてはフェンリル・エイルを象った小さな像を置いている家庭も多く存在している。それらの民間信仰の中心地はフェンリル・エイルの実物が置かれたスカイレルムであり信仰者にとってはスカイレルムは聖地となっている。ユースティティアでもフェンリル・エイルへの信仰は広まっている為、スカイレルムの地下には天空神殿と呼ばれるフェンリル・エイルの安置用の神殿が作られ多くの神事が行われていた。フェンリル事件を引き起こしたエイベル・ニンフもフェンリル・エイル伝説の熱心な信奉者であったと言われている。
太陽系騒乱の現在でもユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍領域においては多くの信仰を集めており太陽系騒乱の状況が悪化するに従って信者達のフェンリル・エイルへの信仰はより強くなっているとされる。信者達の間ではこの騒乱はいずれフェンリル・エイルが再び降臨し世界に再び平和と秩序をもたらすと考えている者も多い。
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神事
フェンリル事件によってフェンリル・エイルが失われる前、フェンリル・エイルが安置されていたスカイレルムでは多くの神事が行われていた。フェンリル・エイルの管理はユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍領域から集められたペネムと同様の地毛の髪色の処女達が集められ常に7人の巫女のみがフェンリル・エイルの維持管理を行い、供物のお供え等は12歳未満のユースティティアの50家の貴族の子供3人に凡そ1年間交代で任せられた。また、年交代制で神主も貴族の中から選ばれ年に数度ある祭日に神事を行った。主な祭日としては降臨の日、ペネム誕生の日、災厄の日、大解放の日、正義の日、死者の日が1年に6日存在しており多くの神事が行われていた。フェンリル事件以降はフェンリル・エイルが失われた為に永らく神事はとり行われていなかった。しかし、太陽系騒乱が発生した以降では月面のスカイレルムにおいては巫女がスカイレルムの軍閥の政治的思想的実権を握った事から一部の神事が復活している。フェンリル・エイルに関連する神事は「フェンリル・エイルの神事」の記事を参照。
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機体性能
フェンリル・エイルは高機動戦を得意とした近接格闘型の荒神であると伝えられている。機体色は白銀色を基調とした物であった。フェンリル事件において、フェンリル・エイルは数百年ぶりに起動しクーデター軍の討伐を行った地球駐留機動艦隊に対して猛威を振るったとされているが、この戦闘の際の詳細な記録は一般には公開されておらず不明となっている。クーデターを鎮圧した地球駐留機動艦隊は部隊の消耗率等、戦闘の詳細な情報の発表などはしなかったが、鎮圧後に行われた事件概要の発表の際には種類等は不明だが何らかのフェンリルシリーズを鎮圧作戦に投入したと発表している。また、この際の戦闘によるものかは不明だが、事件当時、地球上からは月周辺での強力な閃光が数回確認された記録が残っており、その閃光は地球上を瞬発的に照らしたとされる。
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歴代操縦者
フェンリル・エイルには歴代の操縦者が2人存在している。以下はその一覧。
・ペネム(本名不明)
フェンリル・エイルの最初にして正式な操縦者である。本名は不明で、いつ頃かは分からないがペネムという敬称で呼ばれるようになっている。フェンリル・エイルと共に神格化されている人物である。この操縦者について多くの情報は残されていないが、ユースティティアの母体ともなった人類宇宙軍の兵士であったと言われており、その容姿は薄水色の独特な色の長い髪を持ち三つ編みの髪形をした一見すると女性にも見える美青年であったと言われている。ペネムは大大戦において人類を勝利に導き英雄的活躍をしたといわれる。ペネムに関する詳細は「ペネム」及び「大大戦」の記事を参照。
・エイベル・ニンフ
431年7月18日のフェンリル事件を引き起こした人物であり何らかの手段を使って数百年ぶりにフェンリル・エイルを起動させた人物である。ユースティティアの記録における正式な操縦者ではない。エイベル・ニンフはユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍内において絶大な影響力を誇る50家存在する名門貴族の一家の一つでニンフ家当主の人物である。事件当時は29歳だった。事件後にユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍によって行われた捜査によると、エイベル・ニンフの友人や周囲の関係者はエイベル・ニンフには幼少期からフェンリル・エイルやペネムに対する異常ともいえる憧れがありさらに英雄願望があったと証言している。事件後、エイベル・ニンフの所在は火星圏において分からなくなったが、ユースティティア内惑星治安統制統合宙域軍は捜索を打ち切り既に死亡していると後に発表した。エイベル・ニンフの関する詳細は「エイベル・ニンフ」及び「フェンリル事件」の記事を参照。
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フェンリル・エイルの所在
フェンリル事件後、フェンリル・エイルの所在はエイベル・ニンフと共に行方不明となっている。ここではフェンリル・エイルの所在に関する説を紹介する。
・火星説
エイベル・ニンフがクーデターに失敗後、残存部隊を引き連れて火星圏に逃亡した事からフェンリル・エイルは火星のどこかに埋められている、もしくは何処かに隠されているという説である。
・アステロイドベルト説
火星圏に近いアステロイドベルト帯は多くの小惑星が存在し当時は宇宙海賊などの無法者の組織も多く活動していた為、火星から捜査の手を逃れたエイベル・ニンフがアステロイドベルト帯の何処かにフェンリル・エイルを隠した。もしくは投棄したという説である。しかし、この説は現在ではアステロイドベルト全域に人の手が一度は入っている為、否定されている。
・惑星間空間説
エイベル・ニンフが逃亡した際に証拠隠滅としてフェンリル・エイルを惑星間空間に投棄したという説である。この説が仮に事実であった場合、投棄した際の速度などによっては発見は絶望的であるとされる。
・ミスト海底説
エイベル・ニンフが逃亡した際に証拠隠滅としてミストの海にフェンリル・エイルを投棄したという説である。この説が仮に事実であった場合、見つかったとしてもフェンリル・エイルの回収は技術的に非常に困難であると言われている。
・破壊説
フェンリル事件の討伐の際にユースティティアによる攻撃ですでにフェンリル・エイルがエイベル・ニンフ共々破壊され、その後、フェンリル・エイルを破壊したという民衆からの批判を免れない情報をユースティティアが組織的に隠蔽したという説である。この説に関してはクーデター軍の討伐に参加していたと自称する数名の人物が匿名で主張し一部の宗教団体がユースティティアに対して第三者委員会の設置を求める事態へと発展した。しかし、その後、太陽系騒乱が始まった事によって本格的な調査は結局行われなかった。しかし、現在ではこの説の可能性が最も高いのではないかとフェンリル・エイルを捜索する多くのグループが証言している。
・ユースティティア外惑星治安統制統合宙域軍領域説
エイベル・ニンフはユースティティア外惑星治安統制統合宙域軍領域で発生していた軍閥戦争に非常に興味を持っていたと言われており、クーデターに参加しなかった太陽系外遊機動艦隊のエイベル・ニンフに近かった兵士は証言ではエイベル・ニンフは外惑星治安統制統合宙域軍領域で発生していた軍閥戦争に関する資料を多く取り寄せて、まるで小説を読んで楽しむかのように読み漁っていたという。さらにエイベル・ニンフは視察と称して外惑星治安統制統合宙域軍の領域に何度も足を運んでいた。その為、エイベル・ニンフはクーデターの失敗後、火星圏を経てフェンリル・エイルを所持したままユースティティア外惑星治安統制統合宙域軍の領域へと逃亡し潜伏しているのではないかという説が浮上した。しかし、この説は他の説に比べると最も説得力に欠けるとの指摘が多い説となっている。理由としてはエイベル・ニンフが火星へと逃亡した際にエイベル・ニンフとクーデター軍の残党が搭乗していた装甲艦は大破した状態であり、とても外惑星治安統制統合宙域軍の領域まで航行できる状況ではなかった為である。また、当時の火星圏は地球駐留機動艦隊によって包囲されていた為、包囲網が敷かれている火星圏からの船舶での脱出は容易ではなかった。また、現在までユースティティア外惑星治安統制統合宙域軍領域であった宙域においてフェンリル・エイルの目撃例等は報告されていない。




