マリー・セレストコロニー - ウィキパディア
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マリー・セレストコロニー
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巨大な無人の幽霊船のようなスペースコロニー。中東のエルサレム近郊ベツレヘムへ突如落下して、地上に被害をもたらした。
巨大な残骸は未知の先進テクノロジーを内包しているとみられるが、新たな中東戦争の危機、コロニーの完全破壊を求める市民運動など、さまざまな混乱が広がったため内部調査はほとんど進んでいない。また、最近、残骸の内外で電波障害や精密機器の変調など新たな異変が発生し、本格的調査活動を難しくしている。
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目次
1.概要
2.位置
3.呼称
4.発端
5.スペース コロニー(Space Colony)
6.被害と謎
7.残骸と地名
7.1城塞:フォートレス
7.2白鯨:モビィディック
7.3巨人回廊
7.4その他
8.エルサレム
8.1燃え尽きるべき鉄屑(砲爆撃論の高揚)
9.現在
9.1 新たな異変
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概要
2020年夏、聖地エルサレムの近郊、ベツレヘムへ巨大な人工構造物が突如落下した。
住民2万人以上を死傷させたそれは山や丘のようなサイズがあり、後の調査によって未知の建造者による「シリンダー型(オニール型)宇宙植民地」と判断された。どこでつくられてどのようにして飛来したのか不明だが、十年単位で実際に使用されていたこともわかった。だが、人間は一人も見つからずいかなる動植物も存在しないなど、古い都市の廃墟か幽霊船のようなありさまだった。
建造者の手がかりはなかったが、アメリカやヨーロッパ、ロシア、中国、インド、日本などの有力国、ハイテク産業や先進的研究機関はコロニー残骸に重大な関心を示し、高度なテクノロジーや宇宙開発の貴重なノウハウを得ようと動いた。
しかし、先進国の足並みの乱れや感情的な市民活動、また現地でのイスラエルと地元住民・アラブ諸国の対立が影響して、大災害をもたらした残骸の本格的調査はほとんど進んでいない。
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落下位置
コロニーの主要部分はエルサレムの南方、ヨルダン川西岸に墜落した。
その後の調べで、数百万もの細かな破片が広大な地域に散らばっていることが確認された(イスラエル、ヨルダンのほか、シリア、イラク、サウジアラビア、クウェートなど)。大爆発で飛び散ったような広がりだが、出現したコロニーは空中でも地上でも爆発を起こしていなかった。
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呼称
人類史上空前の巨大無人構造物の墜落事件は、当初、「ルシファーの日」「ルシファー事変」「堕天使墜落」などとマスコミに報じられ、エルサレム近郊に大惨事を起こした巨大な残骸は「堕天使城」と呼ばれた。しかし【悪の化身】を指す言葉で事件・事物をあらわしたことは、その後の緊迫した情勢下でさまざまなトラブルをおこした(後述)。このため現在では先進国や国際機関では「グレート・ワン」と謎のコロニーを呼び、墜落事件そのものは「831事件」と発生月日からあらためて命名された。
・一般的な呼称
「マリー・セレスト・コロニー(事件)」という呼び名は、一般大衆がネット空間で広く使っていたものだったが、先に述べた呼称見直しの混乱の最中、いつしか実社会に定着した。実のところ、マスコミ主導の「ルシファー(堕天使・魔王)」を冠した呼び方は不思議なほど一般大衆に不人気で、さまざまな異名(呼称)が各国で千件以上提唱された(日本国の「コロニー落とし(事件)」など)。「マリー・セレスト」はそのひとつで、オカルト的で欧米圏に偏るとされたが、もっとも多くの国で頻繁に使われていたことから、新たな一般名として受け入れられた。
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発端
2018年8月13日、聖地エルサレム近郊の夕暮れ時。何の前触れもなく核爆発のような閃光が上空に広がり、巨大光球の中から長大な影があらわれた。異常なスケールの人工構造物は、無数の破片を撒き散らしながらそのまま地上へ墜落。中東の広大な地域に轟音と振動を撒き散らした。どこから飛来したのか不明で、イスラエルの防空システム、アメリカ軍やNASAのレーダー観測網、国際的な隕石監視ネットワークなど、どの国家・組織も何も前兆を捉えていなかった。
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スペース コロニー(Space Colony)
墜落した巨大人工物は、いくつかの特徴からシリンダー型(オニール型)の宇宙植民地=スペースコロニーと判断された。
全長30キロ、直径6キロものサイズの中空の円筒で、推定重量1500万トン以上。基礎構造は、高品質の合金とセラミック、人工繊維、岩石でできていた。21世紀初頭の技術力、生産能力では、作ることも大気圏内を運ぶことも到底不可能だった。内部の居住区画(円筒内の空間)は1000万~3000万人が生活していたと考えられたが、墜落時、完全に無人の廃墟となっていた。
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被害と謎
大質量落下による被害は甚大だった。地上激突の瞬間、現地の住民たち数千人が即死。その後の24時間以内にさらに2万人が死傷したと見られ、メガスケールの残骸に下敷きにされたり「轢かれた」ことで、少なくとも28の町村やユダヤ人入植地が崩壊した。だが、世界の有識者たちはあまりにも「ささやかな被害」に困惑した。これほどの大質量が宇宙から地上へ激突したなら、巨大隕石に等しい災厄が起こり死者は億単位になるはずだった。実際の現場には小さなクレーターさえ出来ず、のちにある調査関係者は「 高度数百メートルの空中に、無人のコロニーが「ぽん」とあらわれて地面へただ落ちたかのようだ 」とのべた。さらに不可解だったのは、コロニーが無人(無生物状態)だったことだ。少なくとも1000万人いたと見られる居住者や管理要員は死体も見つからず、動物はもちろん昆虫や魚、草木さえどこにもなかった。少量の灰が各所でみつかったが、高熱の痕跡はなく、生物消失との関係性ははっきりしなかった。
なお、墜落現場一帯には、無人コロニーの内部にたくわえられていた土壌や淡水がばらまかれたが、結果的にバイオハザードの危険は回避された。また、生物消失(灰化?)とおそらく同じ原因で、コロニー内の電子機器はことごとく損傷していた。これらを引き起こした破壊エネルギーの正体はわからなかったが、機器の中枢回路や記録媒体が変質・溶融し、自動ドアの開閉記録に至るまで電子情報は破壊されていた。このため、謎の無人コロニーの建造者や製造年代、完成の経緯、設計情報、所属する組織やもともとあった位置(軌道)など、基本的で重要な情報はほとんどわかっていない。
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残骸と地名
巨大なシリンダー型宇宙植民地は地上へ胴体着陸したさいに大破し、幾つかの大きな残骸に分かれた。巨大すぎる外殻や基礎的骨組みは、墜落後、自重によってさらに崩壊していったが、同時に、メガスケールの金属とセラミックの残骸は新たなランドマーク、新たな国境線となった。
・ 城塞: フォートレス
エルサレム近郊、ヨルダン川西岸のベツレヘムへ落ちた小山のような巨大残骸。シリンダー型スペースコロニーの後端で、いわば「胴体着陸」したさい円筒本体(居住区)からもぎ取れて取り残された。指揮管制・情報・動力・生産・宇宙港などの重要機能が集中していたとみられるが、現在は迷路のように入り組んだ危険な廃墟と化している。激しい激突で完全に潰れた区画や出入りできない密室の区画。地上激突時に機械設備が設置場所からもぎ取られて跳ねまわった施設。コンテナが崩れて瓦礫や障害物だらけの区画。さまざまなガスや液体が流出して、いつ爆発や腐食液の流出がおきてもおかしくない区画などが無数に存在している。未知の技術サンプルが見つかる可能性が最も高い場所でもあり、一攫千金を夢見る個人や野心的研究者を刺激している。イスラエル軍は墜落直後の予備調査で、崩壊途上の自動工場から数種のマニピュレーターとバッテリー、金属繊維のロープ、照明パネルを回収したとされるが、現在も頑なに調査結果の 公開を拒んでいる。
・白鯨:モビィディック
城塞からさらに6キロ余西方、ヨルダンとイスラエルの国境線上にある巨大な残骸で、もとは中空のシリンダー型の巨大な居住区域だった。
墜落で激しく接地した際、シリンダー後端の現「城塞」部分と分離し、最終的に現在の位置で静止したが、移動しながら地上の住居やインフラへ最も大きな被害を与えた。墜落現場付近では、ユダヤ人入植地や壁が完全に破壊されて復興や修復が紛争の火種になっている。また、入植地が残骸そのものの下敷きとなった場所では、遺体捜索や早期復興を求める入植地関係者と、コロニー残骸の爆破撤去に反対する政府研究機関やハイテク企業の対立が生じた。
白鯨の呼称は「首を無くし骨となって崩れつつある鯨の死体」という、この廃墟を遠望した米国のテレビレポーターの発言に由来する。
コロニーの円筒形は大破して、内側の人工地盤は折り重なって崩落していった。白鯨の「鯨の骨」とは、断続的に残る円筒の外殻や、基礎フレームのかたちから来ている。「城塞」よりもろく人工地盤から壊れた完全な廃墟で、自重による崩落がなおも進んでいるため分け入るのは大変危険である。だが、数千万人が宇宙生活したとされる居住区(円筒内部)は、見る目のある技術者やデザイナーの手に渡れば、インスピレーションの源となるものが無数にみられる。大きなものは市街地の都市計画や建物の設計。さまざまな家具や調度品、絵画彫刻。小さなものはおもちゃや文具まで情報価値があるとされる。イスラエル軍と抵抗勢力の戦場になるまでは、現地の子供をはじめ、悪質なブローカー、お忍びで訪れた有名デザイナー、企業スパイまでさまざまな人種・業種の人間が無計画に廃虚をあさっていた。
・巨人回廊
コロニーから外れた巨大な反射鏡の残骸。現在、ほとんどかたちを失っている。
反射ミラーは一枚が20キロを超える長さで、三枚あった中の二枚が空中で本体から分離して「城塞」よりもさらに南に落ちた。落下現場の被害は小さかった(板が空気抵抗で減速し、バラバラに壊れながら落ちたとされる)が、反射ミラーの金属箔やシート、セラミックのパネルが広範囲に散乱した。これに自然光がきらめき、事件直後は滑走路のように幅広く、長い光の帯が地上にうまれた。しかし、軽く薄い反射物は、風に飛ばされたり土に埋まるなどして失われた。壊れたミラーの構造材も技術サンプルとしての価値が低く大半が放置された。後者は、地元民が手作業で拾い集めて観光土産などにしたことから急速に失われて、現在では『巨人回廊(反射ミラーの落下現場)』の痕跡はほとんど確認できない。
・その他
マリーセレスト・コロニーの居住区(シリンダー内壁)からは、さまざまな人工地盤が脱落した。地上へ折り重なるなどして「コロシアム」「三角帽子」といった奇妙なランドマークが生まれたが、特徴的な形の瓦礫はざまざまな理由で崩壊し、毎月のように呼称が更新されている。
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エルサレム
宗教都市エルサレムは、コロニー墜落によって住民たちの不安と緊張が高まり、都市機能が損なわれてきている。墜落そのものの被害(落ちてきた小さな金属や衝撃波による建物の損傷など)は軽微だったが、周囲の陸上交通は広い範囲で混乱しさまざまな生活物資が不足した。観光産業が壊滅状態になり、災害難民が押し寄せたことでさらに状況は悪化した。今のところ最低限の物資の供給と治安は保たれているが、医薬品、住居の不足は深刻である。年が変わると周辺の通信障害や精密機械の変調(後述)がひどくなり、デマの流布や暴動を防ぐことが難しくなってきた。こうした状況で、天から落ちたマリーセレストコロニーの巨大な残骸はエルサレム市の内外からよく見えて、市民の心を圧迫している。
・燃え尽きるべき鉄屑(砲爆撃論の高揚)
墜落49日後、聖地エルサレムに有力な拠点をおくアメリカのキリスト教原理主義団体が突如、声明を発した。
「美しく神聖なエルサレムの都が苦しみに呑み込まれています。すぐ外では、中東大戦が現実になろうとしています。われわれは全世界の心ある人に協力を訴えます。災いの源の『悪魔の城』を破壊しなければなりません」
「われわれの正しい教え、われわれの正しい科学はあの『異物』を必要としません。あの『異物』から学ばなければならないことなど何もないのです」
「米露が中東に展開する空爆能力のおよそ10%をあてれば、すべての落下物を無価値な金属屑にかえられます。なぜそうしないのか?なぜ、だれもが武器を人間に向けているのか?」
「得体の知れない墜落物が、世界に悪徳と混乱を撒き散らしています。跡形なく破壊することで平和はとりもどされるのです」
マリーセレストコロニーの完全破壊を求める放送は、エルサレムの発信者の予想をはるかにこえる世界的反響を呼んだ。欧米の多くの一般市民にとって、コロニー残骸の技術的価値は理解しがたかった。突然の石油価格の高騰や中東戦争の危機は理不尽な混乱にしか見えなかった。この時期、偶然にもコロニーからの回収品をめぐる窃盗や強奪事件、密輸といった犯罪が先進国の国内でつぎつぎ表面化し、非合法に手に入れたコロニー残骸から、一流企業が幾つもの特許を申請して利益の独占をはかった事例も明らかになっていた。
「ルシファー事変」「堕天使城」などの不用意につけられた呼び名がこの極論を後押しし、聖地エルサレムを脅かす悪魔的イメージを強調したマリーセレストコロニーの巨大な廃墟のすがた(原理主義団体がつくった加工映像)が流布された。欧米諸国からイスラム圏にも主張は飛び火し、「堕天使城」の破壊(砲爆撃)を求める集会は世界各地で1200以上同時多発的にひらかれるまで広がった(呼称の見直しは、このころ行われた)。
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現状
2019年4月現在、中東情勢は奇妙な膠着状態にある。マリーセレストコロニーに対して沸騰し、先進国の国政を動かす勢いをみせた砲爆撃論は「災害被災地への理不尽な無差別攻撃(ローマ法王の批難声明より)」など、より強い批難を向けられて一応、沈静化した。だが、この騒動は、マリーセレストコロニーの出現以来の科学者や技術者の興奮、国家や企業の利権争いを一気に冷え込ませる効果を生んだ。
一方、イスラエルとアラブ諸国の軍事的緊張は高まりつつある。メガスケールの人工物墜落は、イスラエルの陸上交通を混乱させ、ユダヤ人入植地や国境の壁(さまざまな非難を浴びていた)を破壊した。また、そのままでも巨大な残骸は「地形」のスケールがあり、新たな国境線とその警備が必要だった。マリーセレストコロニーの謎の解明が先送りされ、先進国の関与が弱まると、地域の民族・国家の対立がおさまらなくなった。
・新たな異変
マリーセレストコロニーの巨大な残骸では、新たな異変が起きていた。墜落直後から、緑色の小さな蝋燭の灯りににた謎の発光現象が噂されていたが、通信障害や精密機器の変調もみられるようになった。
当初、異変の規模は小さく断続的で「堕天使城」砲爆撃論を刺激するとして報道されなかったが、4月現在、「城塞」の発光はエルサレムから夜中に視認できるほどになり、闇夜であれば緑の灯火の光点で全体の輪郭をたどれるまでになっている。通信障害や機械の変調の範囲も、エルサレム近郊まで広がった。コロニー残骸(大質量)が横たわる地域では、地域をまたいだ無線通信やレーダー観測が難しくなった。一部の研究者は未知のエネルギーがコロニー残骸(大質量)に滞留し高まりつつあると主張するが、現場の情勢が危険で、新たな異常現象の本格的科学調査は行われていない。
「城塞」「白鯨」など、マリーセレストコロニーの残骸は、イスラエルの国防の大きな弱点になっている。異常現象の影響圏内では軍のレーダーや通信、精密兵器は万全に機能せず、敵国の部隊やテロリストの捕捉や攻撃は相当困難だった。コロニー残骸の中を潜伏場所や移動ルートにされる危険も高かった。イスラエルは欧米諸国のヒステリックな市民活動がおさまり、現地調査の要望が激減すると、現場一帯を封鎖して接近する人間を厳しく制限(排除)しはじめた。マリーセレストコロニーの至近の最前線の警備部隊はとくに強硬で、現地住人やジャーナリスト、科学者への誤射事件が頻発している。通信事情から、現場で迅速な判断を下さざるをえないとしてイスラエル当局は過失を認めておらず、現地の緊張が高まっている。
このマリー・セレストコロニーの記事の執筆はK John・Smithとボイジャーによる共同執筆によって行われました。
【原案:K John・Smith 編集:ボイジャー】




