表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/181

テラーズ7星系 ‐ ウィキパディア

ウィキパディア-フリー百科事典

ページ/ノート

―――――――――――――――――――


テラーズ7星系

―――――――――――――――――――――――――――


テラーズ7星系(テラーズセブンせいけい、英語:Tarras7(Seven) Planetary system)とは、太陽系から450光年の距離にある惑星系である。星系は全域がテラーズ7星系政府に属しており、地球合衆国連邦政府(英語:Federal government of the Earth)に加盟している。


公用語:英語

首都 :ルナ5

人口 :35,302人(3153年統計)

民族 :太陽系・ケンタウリd系・その他

―――――――――――――――――――――――――――

目次


1.特徴

2.惑星系

3.行政

 3.1星系政府

 3.2地球合衆国連邦政府

 3.3星系行政区分

  3.3.1テラーズ7

   3.3.1.1ルナ2

   3.3.1.2テラーズ7

    3.3.1.2.1ネブラスカ

 3.4星系軍(連邦軍)

 3.5内務総省管轄の治安組織

4.民族

5.歴史

 5.1前史

  5.1.1テラーズ7星系への人類の到達

  5.1.2テラーズ7の植民化

  5.1.3テラーズ7星系政府の発足

  5.1.4第1次銀河大戦への参加

  5.1.5全惑星への定住化の達成

  5.1.6第2次銀河大戦への参加

  5.1.7総人口80億人の達成

  5.1.8高酸素帯による侵食災害と孤立

 5.2現代

  5.2.1次元侵食

  5.2.2国家総力戦

  5.2.3地球合衆国連邦政府との再交信の成功

  5.2.4テラーズ7の放棄

  5.2.5現行体制の構築

  5.2.6ネブラスカ暴動

  5.2.7第1次記憶抹消

  5.2.8第2次記憶抹消

  5.2.9ネブラスカ戦争

  5.2.10第3次記憶抹消

  5.2.11総人口4万人の回復

  5.2.12ルナウイルス感染症災害

  5.2.13地球帰還派事件

  5.2.14第4次記憶抹消

  5.2.15総人口3万5千人の回復

  5.2.16ルナ7戦術研究所事件

  5.2.17第5次記憶抹消

6.テラーズ7の状況

 6.1次元侵食

 6.2全惑星戦術システム

 6.3テラーズ7への軍事作戦

7.科学技術

8.通信

9.娯楽

10.宗教

11.経済

12.教育

13.食事

14.テラーズ7星系の歌


―――――――――――――――――――――――――――

特徴


テラーズ7星系の恒星であるテラーズη(テラーズ・イータ)のスペクトル分類はG2V。推測年齢は約46億年。中心部に存在する水素の約50%が熱核融合で使用され、主系列星としての寿命期間の約半数を経過していると推測されている。テラーズηはテラーズ7星系の全質量の99.8%を占めている。テラーズ7星系の全天体に重力影響を与えている。


テラーズ7星系を構成する惑星は8個の惑星、5個の準惑星、そしてそれらを公転する衛星、また、多数のテラーズ7星系小天体などから成り立つ。岩石惑星、巨大ガス惑星、巨大氷惑星で構成される。これらの惑星はほぼ同一平面上に存在している。また、多数の小天体も存在している。第4惑星マーズと第5惑星ジュピターの間には小惑星帯がある他、第8惑星ネプチューン軌道の外側にはテラーズ7星系外縁天体(エッジワース・カイパーベルト及び散乱円盤天体)がある。さらに外縁には小惑星の集団があるゼドノイドが存在。星系全体として4個の準惑星もある。テラーズ7星系の最外縁にはオールトの雲がある。


テラーズ7星系は太陽系の地球と極めてとよく似た惑星を持つ。第3惑星がハビタブルゾーン内に存在しており、生物の生命環境を有している。第3惑星の位置に生命が居住可能な惑星が発見された例としては観測史上7番目の例に当たる。この事から、偶然にも太陽系の第3惑星、地球と同じ様に生命が居住可能な第3惑星が発見された7番目の星系という事で、テラーズ7星系と名づけられた。また、テラーズ7星系は太陽系と極めて良く似た特徴を持った星系でもある。中心に位置する恒星は太陽系の恒星である太陽と同じスペクトル分類G2Vの恒星である。


テラーズの名を冠する星系はテラーズ7星系を含めて7つあるが、恒星が太陽と同じスペクトル分類G2Vの恒星の例はテラーズ7星系のテラーズηのみである。


・テラーズ7星系概略

恒星の数   :1

惑星の数   :9

準惑星の数  :4

既知の衛星数 :687

既知の小惑星数:1,165,856

既知の彗星数 :4,402

ハビタブルゾーンの範囲:0.95 - 1.37au

水の雪線までの距離  :2.7au~5au

ヘリオポーズまでの距離:120au

公転速度   :220km/s

公転周期   :2億2500万 - 2億5000万年

中心からの距離:25,000 - 28,000光年

年齢     :約45億6800万年


・太陽系との比較(太陽系概略)

恒星の数   :1

惑星の数   :12

準惑星の数  :15

既知の衛星数 :987

既知の小惑星数:2,362,103

既知の彗星数 :8,402

ハビタブルゾーンの範囲:0.93 - 1.36au

水の雪線までの距離  :2.9au~6au

ヘリオポーズまでの距離:135au

公転速度   :216km/s

公転周期   :2億2500万 - 2億5000万年

中心からの距離:25,000 - 28,000光年

年齢     :約58億2900万年


―――――――――――――――――――――――――――

惑星系


テラーズ7星系には9つの惑星がある。中心に位置する恒星テラーズηの側にある惑星から順にテラーズ7星系第1惑星マーキュリー、テラーズ7星系第2惑星アフロディーテ、テラーズ7星系第3惑星テラーズ7、テラーズ7星系第4惑星マーズ、テラーズ7星系第5惑星ジュピター、テラーズ7星系第6惑星サターン、テラーズ7星系第7惑星ウラヌス、テラーズ7星系第8惑星ネプチューン、テラーズ7星系第9惑星プルートがある。


惑星の名前は、テラーズ7以外の惑星はギリシャ神話から付けられている。


なお、プルートに関しては、本来であれば惑星ではなく準惑星に分類されるのが相当である。しかし、テラーズ7星系への人類の移住が行われた初期の頃において、準惑星に当たるサイズの星が発見できなかった事から、プルートはまとめて惑星に分類された。


しかし、その後に準惑星(ケレス、ハウメア、マケマケ、エリス)が次々と発見された。この事から一時、星系政府はプルートを準惑星へと再分類する事を検討したが、プルートの住民が大規模な反対運動を起こした事からプルートの再分類は見送られた。その為、現在においてもプルートは惑星として分類されている。


以下はテラーズ7星系に属する惑星一覧。


・マーキュリー

マーキュリーはテラーズ7星系第1惑星。恒星テラーズηに最も近い惑星。また、テラーズ7星系に属する惑星の中ではプルートに次いで小さく、衛星なども持っていない。大気は非常に薄い惑星である。詳細は「マーキュリー」の記事を参照。


・アフロディーテ

アフロディーテはテラーズ7星系第2惑星。惑星規模はテラーズ7に最も近い大きさと質量である。大気もテラーズ7と同じ様に存在する。しかし、テラーズ7は非常に乾燥しており、大気圧はテラーズ7の90倍。表面温度は400度を超えている。これはテラーズ7星系の惑星の中ではもっとも高温の惑星である。これらの超高温の環境は暴走温室効果によって起こされている。硫酸の雲が存在する他、硫酸の雨も確認されている。衛星などは持っていない。詳細は「アフロディーテ」の記事を参照。


・テラーズ7

テラーズ7はテラーズ7星系第3惑星。太陽系の地球と極めて良く似た環境だった惑星である。地球生命が宇宙服などの生命維持装置などに頼らずに居住が可能だったテラーズ7星系内では唯一の惑星。太陽系の地球と非常に良く似た惑星であり、第3惑星の位置に発見された生命が居住可能な惑星の中では、人類の発見史上、最も地球に類似した惑星である。


これまでも、第3惑星に当たる惑星に生命が居住可能な惑星が発見されテラーズの名が付けられる事はあったが、大きさ質量共に地球とほぼ同じであり、衛星も1つ有し、しかも、この衛星も地球の衛星である月の大きさと質量共にほぼ同じという様な、ここまで地球と類似した惑星はこれまで発見されてこなかった事から、この惑星はテラーズ7と名づけられただけでなく、衛星に対してもルナ2という名前が付けられた。


テラーズ7は発見時から、地球生命が居住可能な惑星環境が整っていた事からテラーズ7星系における人類の政治経済の活動の中心惑星となった。星系政府の首都惑星として機能した。テラーズ7の詳細は「テラーズ7」の記事を参照。


・マーズ

マーズはテラーズ7星系第4惑星。質量や大きさはテラーズ7よりも小さい。大気圧は6.1mbar(テラーズ7の0.6%)。大気成分は二酸化炭素が主である。惑星表面が酸化鉄に覆われている為、赤く見える。マーズの詳細は「マーズ」の記事を参照。


・ジュピーター

ジュピーターはテラーズ7星系第5惑星。巨大ガス惑星である。テラーズ7星系の惑星の中で最も大きい惑星。質量はテラーズ7の318倍。惑星成分は水素やヘリウムなどから構成される。79個の衛星を持ち、中でも大きな衛星はイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4つ。火山活動や内部加熱の様な地質活動も見られる。また、輪を有している。なお、エウロパの氷の下には液体の海が存在しており、エウロパ固有の生命体の生息が確認されている。ジュピーターの詳細は「ジュピーター」の記事を参照。


・サターン

サターンはテラーズ7星系第6惑星。巨大ガス惑星である。体積はジュピターの60%。質量はテラーズ7の95倍。環を有する。輪は主に氷や岩石で構成される小天体等から構成される。サターンは、大部分が氷からなる82個の衛星を持つ。衛星の内、タイタンとエンケラドゥスは、地質活動に準する活動を有している。なお、エンケラドゥスの氷の下には液体の海が存在しており、エンケラドゥス固有の生命体の生息が確認されている。サターンの詳細は「サターン」の記事を参照。


・ウラヌス

ウラヌスはテラーズ7星系第7惑星。巨大氷惑星。質量はテラーズ7の約14倍。テラーズ7星系の惑星の中では唯一、テラーズηに対して横倒しで自転し、赤道傾斜角度は90度を超えている。輪を有している。27個の衛星を有し、チタニア、オベロン、ウンブリエル、アリエル、ミランダは中でも比較的大型に部類される。ウラヌスの詳細は「ウラヌス」の記事を参照。


・ネプチューン

ネプチューンはテラーズ7星系第8惑星。巨大氷惑星。大きさはウラヌスよりも小さいが質量はウラヌスよりも大きく、テラーズ7の約17倍。14個の衛星を有し、最も大きな衛星のトリトンでは地質活動が起きている。トリトンの地表では液体窒素の間欠泉がある。ネプチューンの詳細は「ネプチューン」の記事を参照。


・プルート

プルートはテラーズ7星系第9惑星。テラーズ7星系の惑星の中では最も大きさ質量共に小さい惑星である。本来は準惑星に分類されるのが相当の惑星である。高酸素帯による侵食災害が起きる前は、テラーズ7星系外縁部において最も工業的に発展した惑星であった事から、プルートはテラーズ7星系の玄関口とも呼ばれた。プルートの詳細は「プルート」の記事を参照。


―――――――――――――――――――――――――――

行政


・星系政府

現在の星系政府は2303年に星系の住民による住民投票と、その住民投票の結果を受けた地球合衆国連邦政府の承認をもってテラーズ7星系憲法が制定された事から発足された。テラーズ7星系憲法により、行政府、立法府、司法府の三権分立を定めている。


テラーズ7星系憲法は議会制民主主義を採用している。星系の長は星系政府大統領である。星系議会は2院制を採用しており議席数は上院、下院の双方が星系人口に応じて変動する方式を採用している。


高酸素帯による侵食災害前は地球合衆国連邦政府下院に対して議員も送り出していた。


3153年現在は高酸素帯による侵食災害及び次元浸食による影響からテラーズ7星系憲法は効力が無期限で停止されている。2952年に現行の非常事態体制に移行された。


現在の体制は2952年に試行された非常事態体制を基に試行されている。以下は現在のテラーズ7星系政府の現行の体制。


国権の最高機関は星系議会であり、1院制を採用している。議席数は13議席で、星系軍の将官クラス階級者の中から選抜で選ばれる。星系の長には星系軍最高司令官、星系政府国防長官、星系政府監察官の3者が就いており3頭政治を採用している。任期は5年。3者は拒否権を有しており、拒否権が行使された場合には法案などの成立を停止できる。


星系軍最高司令官、星系政府国防長官、星系政府監察官の内、星系軍最高司令官、星系政府国防長官は人間が就くが、星系政府監察官は量子コンピューターによるAIが担当する。


星系政府監察官を担当するAIは星系軍の戦術及び戦略の補佐を行っている戦術戦略考案システムである。戦術戦略考案システムは国務総省が管轄しているAIシステム。戦術戦略考案システムELYZA‐2、戦術戦略考案システムENIAC‐2、戦術戦略考案システムPARRY‐2の計3つが存在しており、この3つのシステムが星系政府監察官の議席を5年毎に交代する形で星系政府監察官を担当している。


星系政府監察官の席に人間が就かないのは、効率性の重視の側面や独裁の発生を抑止するのが目的である。


行政府は国防総省及び国務総省の2つの総省が存在し双方の管轄に集約されている。国防総省はテラーズ7への軍事作戦を管轄している他、技術開発を国務総省と共同で行っている。国務総省は主にルナ2や宇宙空間上の内政業務を管轄している。この内政業務には警察活動も含む。


・地球合衆国連邦政府

テラーズ7星系は地球合衆国連邦政府に加盟星系として参加している。テラーズ7星系は地球合衆国を構成する星系の1つである。高酸素帯による侵食災害前のテラーズ7星系政府と地球合衆国連邦政府は多くの点で政治的に繋がった強い共同体であったが、高酸素帯による侵食災害以降は地球合衆国連邦政府による援助が困難となり交信すらも難しい環境となった事から、現在のテラーズ7星系政府は、地球合衆国連邦政府に頼れない状況である為に、高度な独自の判断に基づいて活動している。これは非常事態の処置として地球合衆国連邦政府及び地球合衆国最高裁判所の承認の下、実施されている。


・星系行政区分

テラーズ7星系には高酸素帯による侵食災害以前、459の星系行政区分とそれに内包された各行政区分が存在した。高酸素帯による侵食災害後の現在は大半の星系行政区分は住民が存在しない為に事実上、行政としての機能は存在していない。現在でも行政機能が機能している星系行政区分はテラーズ7関する行政区分である。


テラーズ7に関する星系行政区分は次元侵食以前は惑星(テラーズ7)及び衛星(ルナ2)を含めてテラーズ7星系の首都惑星として区分されていた。しかし、次元侵食以降は、テラーズ7に関する星系行政区分は事実上、大きく分割される事になり、首都惑星の機能はテラーズ7の衛星ルナ2へと移され、テラーズ7は首都惑星としての区分から事実上外されている。


 ・テラーズ7

 テラーズ7星系の首都惑星である。しかし、その細かな行政区分は次元侵食以降、大きく変容しており、次元侵食以前は、星系政府の機能はテラーズ7の惑星地表上に置かれていたが、次元侵食以降はテラーズ7の衛星ルナ2へと首都機能が移転された。テラーズ7のより詳細な行政区分は以下の通り。


  ・ルナ2

  テラーズ7の衛星ルナ2は現在、テラーズ7星系政府の事実上の首都として機能している。ルナ2には巨大溶岩洞が複数存在しており、この溶岩洞内に基地が建設されている。ルナ2の溶岩洞はトンネル状に長大かつ、直径300m以上の広さの区間もある巨大な空間であり、また厚さ40mの玄武岩に覆われている為、何ら人工的な手段が用いられない場合においても、溶岩洞内は-20℃程の温度と安定している。これらの天然洞窟は凶悪な宇宙線や隕石といった宇宙の厳しい環境を阻む防壁として機能している。こうした基地建設に適した天然地形を用いて基地が建設され利用されている。


居住区画、食糧生産区画、資源採掘区画、工業区画などの施設を有しており、ルナ2には現在、7つの巨大溶岩洞(ルナ1からルナ7(※巨大溶岩洞の名前。衛星の名前とは関係無い)までの巨大溶岩洞)を利用して、これらの施設が設置されている。7つの巨大溶岩洞の内、政治的中枢の機能はルナ5に設置されている。ルナ2(衛星)はテラーズ7星系最大の人口と工業力を有している。


  ・テラーズ7

  かつてテラーズ7星系で最も発展しテラーズ7星系政府の首都惑星として政治、経済、文化の中心地でもあったテラーズ7であるが、現在は惑星全域が星系軍によって敵地として認定されてり、テラーズ7星系政府はテラーズ7を軍事作戦を伴う軍事活動が行われる対象の地域として、安全保障上の作戦地域に指定している。


  ・ネブラスカ

  ネブラスカは、テラーズ7星系政府の政治的統制を受けない高度な自治権を有した自治領である。ネブラスカの政治体制は現地のカルト宗教団体 "教団" が行っている。教団は "巫女" と呼ばれる役職の人物らを中心とした団体である。テラーズ7に存在する2本の軌道エレベーターの一つ、エレベーター・ネブラスカ(英語:Elevator Nebrska)がネブラスカである。ネブラスカはテラーズ7星系最大の食料生産能力と水生産能力を有しており、テラーズ7星系政府に食料、水を供給している。


ネブラスカの自治権は食料と水をテラーズ7星系政府へと供給する事と、相互不干渉である事を条件に認められている。人口は2,132人(3153年統計)。


・星系軍(連邦軍)

テラーズ7星系政府は国防を目的とした軍事組織として星系軍(正式名称:テラーズ7星系軍 別名:星系政府軍もしくは連邦軍とも言う)を保有している。兵力は33,170名。ネブラスカの住民以外のテラーズ7星系の全住民は軍に所属する義務を有している。


なお、33,170名の人員の内、約半数の人員は書類上、軍には属しているものの、軍務には就いておらず、軍からの指揮命令権からも除外されている。これら約半数の人員は国務総省に属している。


国務総省の人員は星系軍の軍務には直接的な関与はほぼしないが、星系軍の人員に甚大な被害などが出た場合などに限り、軍の人員を補填する為に、国務総省から星系軍に異動という形で軍務に就く形がとられるシステムとなっている。この際に、欠員が出た軍への補填として、まわされた国務総省の人員は国務総省の職員でなくなるか、もしくは、国務総省の職員としての資格が軍務に就いている間は一時的に凍結される形で軍務に就く事になる。


この人員の融通制度をヒューマン・ワーク・シェアリング・サービス(英語:Human Work Sharing Services)と呼ぶ。


もともと、星系軍は地球合衆国の正規軍である連邦軍(合衆国軍)を構成する軍であった。これは現在においても星系軍は正式には地球合衆国の軍隊ではある。しかし、高酸素帯の侵食により地球合衆国連邦政府とテラーズ7星系が隔絶されてしまっている現在の状況下においては、事実上、現在の星系軍は本国の連邦軍としてよりも、テラーズ7星系の軍隊としての活動の側面が非常に強くなっている。


指揮権も本来は地球合衆国連邦政府に属するが、星系軍は地球合衆国連邦政府及び地球合衆国最高裁判所の承認の下、非常事態の処置としてテラーズ7星系政府の高度な独自の判断に基づく活動が容認されている。


星系軍はテラーズ7星系内で最大の軍事力を持った戦闘集団である。以下は星系軍が保有する主な装備一覧。


[マザーシップ]

概要:全長632mの大型宇宙船。テラーズ7星系内において最大級かつ最大の航続能力を有する宇宙船である。マザーシップは各モジュールによるブロック工法によって成り立っている。宇宙船本体と呼べる部分は、大きく分けて3つのモジュールに分ける事ができる。艦首側から順に中央ブロック、多目的ブロック、メインエンジンブロックの3つである。


中央ブロックは巨大な船体全体を制御する役目を持つ他、非常時には他のモジュールから分離し中央ブロックのみで単独の宇宙船としても機能する。多目的ブロックは居住機能を含めた多目的な機能を有る。多目的ブロックには、重要かつマザーシップの形状的な特徴の要素にもなっている機能としてドッキングがある。多目的ブロックには大きく分けて2つのドッキング要素があり、合計12基の外付けの燃料タンクもしくは格納ブロックをドッキングして搭載する事ができる機能がある他、多目的ブロックの中央部には外付け燃料タンクもしくは格納ブロックに挟まれる形で、3棟のドッキングベイが存在し、この3棟のドッキングベイには大型シャトルをドッキングさせる機能がある。なお、多目的ブロックの居住機能は一見すると、中央部のドッキングベイ付近にありそうではあるが、実際にはドッキングベイから中央ブロック、メインエンジンブロックへと伸びている細い区間に存在する。メインエンジンブロックはマザーシップの推進を担う。外付けの燃料タンクから供給される燃料によって推進力を発生させる。


これら、外付けの機能(燃料タンク、格納ブロック、シャトルなど)を含まない船体がマザーシップの宇宙船本体である。


合計12基の燃料タンク及び格納ブロックは、マザーシップの外部モジュール(外付け)に分類される。燃料タンクや格納ブロックは必要に応じて交換される。燃料タンクはマザーシップの推進に絶対的に必要な燃料を貯蔵しているタンクであり、格納ブロックは外付けの格納庫である。なお、燃料タンクと格納ブロックは互いに機能の違いこそあれど、外見的な違いは殆ど無い。


マザーシップの航続距離はテラーズ7の衛星軌道上からルナ2の衛星軌道上までである。これは実質的にはマザーシップにはテラーズ7圏内から外に出て活動を行う能力は無い事を意味する。マザーシップは燃料に酸素及び水素を利用しているが、非常に燃費が悪く、例を挙げるならば、マザーシップは船体に対してこれだけ非常に大型の燃料タンクを備えつけているにも関わらず、テラーズ7の軌道上からルナ2の軌道上まで向かう場合、片道で燃料タンク約8本分の燃料を必要とする。なお、テラーズ7の軌道上からルナ2の軌道上に到着するまでに必要な航行時間は約3日間である。


マザーシップは現在、USSスターシップ、USSスターライナーの2隻が運用されている。ネブラスカ戦争まではUSSスターファイターが運用され3隻が運用されていた。建造、開発はテラーズ7星系最大の宇宙開発企業スペースX社によって行われた。テラーズ7の放棄の決定時には建造が開始され以降、現在まで運用されている。


挿絵(By みてみん)

※マザーシップの構造簡略図1。外部モジュールを装着した状態の構造簡略図(側面)。下方のドッキングベイにあるのはシャトル。


挿絵(By みてみん)

※マザーシップの構造簡略図2。外部モジュールを装着した状態の構造簡略図(正面)。


挿絵(By みてみん)

※マザーシップの構造簡略図3。外部モジュールが未装着の状態の構造簡略図(側面)。下方のドッキングベイにあるのはシャトル。


挿絵(By みてみん)

※マザーシップの構造簡略図4。格納ブロックを装着した状態の構造簡略図(側面)。この図では艦の後部に設置されている。格納ブロックの発着艦口が閉じている状態。下方のドッキングベイにあるのはシャトル。


挿絵(By みてみん)

※マザーシップの構造簡略図4。格納ブロックを装着した状態の構造簡略図(側面)。この図では艦の後部に設置されている。格納ブロック1基の発着艦口が開いているのが分かる。下方のドッキングベイにあるのはシャトル。


[大型シャトル]

概要:マザーシップのドッキングベイにドッキングする等して運用されている大型のスペースシャトル。連絡艇や物資の運搬船用途の他、テラーズ7への降下揚陸の作戦目的など、多用途な目的の運用方法がされている。大気圏内への突入能力は限定的に有している。


揚陸目的でテラーズ7上への降下に使用する場合、大型シャトルは大気圏内への突入と降下は可能である。しかし、基本的には使い捨ての運用方法がされている。大気圏内へと一度突入させた大型シャトルを再び再利用する事は想定されていない。これはテラーズ7上には飛行場などが存在せず、大型シャトルを再び発射体制に戻す事が困難である事と、テラーズ7地表上への着陸時に地表への強行着陸を行う為に機体へのダメージが不可避である為である。


設計はテラーズ7星系最大の宇宙開発企業スペースX社によって行われた。


[補給機]

概要:全翼型であり双胴尾翼を有した形状の無人シャトル。メイン噴射口を1基有したメインエンジンを1基搭載。単独で大気圏への突入や離脱を行う能力がある。ただし、大気圏内の地表への着陸能力は有さない。


補給機はテラーズ7大気圏内の無人化戦術攻撃システム機への弾薬補給を目的とした機体である。補給機はマザーシップの格納ブロックに搭載され、必要に応じて格納ブロックから発進する。大気圏内への突入後は、無人化戦術攻撃システム機に空中補給を行い、補給後はメインエンジンの出力を上げ、大気圏を離脱しマザーシップへと帰還する。


しかし、補給効率は極めて悪く、一度の補給で爆弾を1発しか補給できない問題点が指摘されている。設計はテラーズ7星系最大の宇宙開発企業スペースX社によって行われた。


挿絵(By みてみん)

※補給機の簡略図。


[投下機]

概要:大型シャトルなどで、惑星上に降下した地上部隊を追加で援助する物資を送る為の装置。格納ブロックから発進する。再利用はできない。基本的には物資の運搬が目的であるが、人員の搭乗も可能である。設計はテラーズ7星系最大の宇宙開発企業スペースX社によって行われた。


[戦闘ステーション]

概要:テラーズ7の衛星軌道上に2基存在する武装宇宙ステーション。32枚のソーラーパネルを有し、ステーションの下部には4基の円筒状のモジュールがあり、モジュール1基につき内部に小型原子炉、バッテリー、エネルギー変換器がそれぞれ1基づつ搭載されている。さらにその4基の円筒状のモジュールの下部には地上攻撃用の重電子砲を1門搭載している。重電子砲は核兵器と同等出力の高威力を誇る。1発辺りの充電には約3週間から4週間程度の期間が必要。戦闘ステーションは現在、テラーズ7の衛星軌道上に戦闘ステーション・ハープ、戦闘ステーション・サタンの計2基が存在。建造、開発はテラーズ7星系最大の軍需産業企業ゼネラル・エレクトリック社によって行われた。


[成層圏プラットホーム]

概要:テラーズ7の成層圏に設置されている全長700mの大型飛行船である。太陽光発電によって稼動している。無人化戦術攻撃システム機の整備点検を行う目的のMk.1プラットホームが6機と、地上部隊を回収する為のMk.2プラットホームが6機の計12機が存在している。


無人化戦術攻撃システム機の整備点検を行う目的のMk.1プラットホームには航空機の発着陸が可能な格納庫が存在し、最大で2機までを搭載できる。プラットホームに着陸する機体は減速しながらプラットホームの格納庫に近づき、充分な減速ができた所で格納庫へと入り着艦する方式である。


地上部隊を回収する為のMk.2プラットホームは、地上の部隊に対して上空から姿勢制御ブースターを搭載したゴンドラをワイヤーを垂らして降下させ、このゴンドラによって地上部隊をプラットホームへと収容する。


上記の両プラットホームは双方ともに航空機の発着が可能な格納庫を有しており、この格納庫は大気圏内シャトルの発着も可能である為、これによって人員や物資は宇宙と成層圏を行き来できる仕組みである。


成層圏プラットホームの建造、開発はテラーズ7星系最大の軍需産業企業ゼネラル・エレクトリック社によって行われた。


[無人化戦術攻撃システム機]

概要:テラーズ7の高度1,2000m‐高度1,3000mに設置されている全長21.03m、全幅52.43m、全高5.18mの全翼機型無人爆撃機。ソーラーパネルとトール機関の双方の発電能力を有したハイブリット航空機であり、攻撃大気衛星に分類される。地上攻撃用レーザー兵器1基、レーザー誘導爆弾10発を搭載。随時、大気圏内を大気衛星として周回飛行し、攻撃時には高度を下げて攻撃する。整備を定期的に成層圏プラットホームで行う必要はあるものの、使用エネルギーを自給できる為、非常に長い間の飛行が可能である。30機がテラーズ7の大気圏内で運用されている。


建造、開発はテラーズ7星系最大の軍需産業企業ゼネラル・エレクトリック社によって行われた。


挿絵(By みてみん)

※無人化戦術攻撃システム機の簡略図。


[大気圏内シャトル]

概要:成層圏プラットホームと衛星軌道を行き来する為に運用されているシャトル。格納ブロックから発進する。設計はテラーズ7星系最大の宇宙開発企業スペースX社によって行われた。


[ハザード・デストロイヤー]

概要:テラーズ7の地表で兵士の活動が可能な様に設計され開発された第1世代型の強化外骨格。トール理論に基づく、搭乗者保護機構を採用している。主力動力機関としては原子力電池を採用。推進剤には圧縮ガスを採用。M134ガトリングガンを2基を標準的に装備している他、必要に応じてグレネードランチャーや、携行ミサイルを装備する事が可能。


トール理論に基づく、搭乗者保護機構を採用した事により、不思議の国のアリス粒子の影響下の領域において個人単位の戦力の作戦行動を可能とした史上初めての歩兵機械兵器。


ハザード・デストロイヤーは稼動時にチャージ式と呼ばれる電力の供給方法を採用している。これは原子力電池が発した電力を別の大容量バッテリーに予めチャージしておき、この大容量バッテリーに充電された電力から強化外骨格を動かすという方式である。これは原子力電池単体が発する電力だけでは強化外骨格の使用電力を賄う事が困難である為で、大容量バッテリーに駆動に必要な電力を蓄えておき、利用するというものである。


理論上、原子力電池により10年間は無補給でも運用できるが、ハザード・デストロイヤーには連続稼動時間問題が存在する。原子力電池が発する電力が、ハザード・デストロイヤーの駆動に必要な電力量に達していない為で、大容量バッテリーの電力を完全に消費してしまえば、最低でも10%の電力を再び充電するまで稼動できない。この原因は、搭乗者保護機構の電力消費量が非常に大きい為である。不思議の国のアリス粒子の影響がない領域で運用する分には連続稼働時間の問題は発生しないが、不思議の国のアリス粒子の影響下の領域で運用した場合には、連続稼働時間はバッテリーがフル充電の場合でも、78時間が限度である。


さらには推進剤に圧縮ガスを用いている事もあり、ガスが切れれば、機動性能に大幅な問題が生じる。また、武装の火力不足の問題もある。これらの問題が大幅に改善したのは第2世代型の強化外骨格が登場してからである。


この為、これらの問題点から第2世代型の強化外骨格が登場して以降は、テラーズ7の地表における軍事作戦には、投入される機会は殆ど無くなっているのが現状である。


[ブレーンス・デストロイヤー]

概要:テラーズ7の地表で兵士の活動が可能な様に設計され開発された第2世代型の強化外骨格。トール理論に基づく、新型の搭乗者保護機構と、トール機関を主力動力機関として採用している。推進にもトール機関を採用。強化外骨格にトール機関を採用した例としては世界初事例。第2世代型の強化外骨格であり、これまでの第1世代型の強化外骨格の問題点であった、連続稼働時間、推進剤問題や武装の火力不足の問題を大幅に解消した。推進にトール機関を採用した事により推進剤は不要となり、連続稼働時間に関しても事実上、搭乗者を含めて完全無補給の環境においても半永久的な稼動時間を実現している。


新型の搭乗者保護機構は、搭乗者に食料や水の供給を不要にした。


武装にはトール理論に基づいたジェネラル・ダイナミクスM‐900可変式連装粒子ガンを2基搭載。ジェネラル・ダイナミクスM‐900可変式連装粒子ガンは機関砲モード、収束投射砲モード、収束照射砲モードの3つの射撃モードを実装。トール理論に基づいた粒子兵器の採用により弾薬補給の問題や火力不足の問題を大幅に解消した。


なお、強化外骨格はテラーズ7の地表だけでなく、ルナ2などの低重力環境の惑星での利用も想定されているが、ブレーンス・デストロイヤーは主力動力機関にトール機関を採用している為、例えばルナ2では、不思議の国のアリス粒子の密度が非常に低い事から、ルナ2上での活動には大幅な制約がある。


また、機体形状に関して、ブレーンス・デストロイヤーはハザード・デストロイヤーの後継機である事から、両者は類似した形状を有している。外見的な違いは、ほぼ武装のみである。


挿絵(By みてみん)

※ブレーンス・デストロイヤーの簡略図。


[ミニ・デストロイヤー]

概要:テラーズ7の地表で兵士の活動が可能な様に設計され開発された第2世代型の強化外骨格。トール理論に基づく、新型の搭乗者保護機構と、トール機関を主力動力機関として採用している。小型の強化外骨格であり、大きさはハザード・デストロイヤーやブレーンス・デストロイヤーと比較した場合、両者よりは小さく、一方でテラーズ7星系で利用されている重型の宇宙服よりは大きい。


第2世代型の強化外骨格であり、これまでの第1世代型の強化外骨格の問題点であった、連続稼働時間、推進剤問題や武装の火力不足の問題を大幅に解消した。推進にトール機関を採用した事により推進剤は不要となり、連続稼働時間に関しては事実上、搭乗者を含めて完全無補給の環境においても半永久的な稼動時間を実現している。


ミニ・デストロイヤーはその外見的特長から、通称でエイリアンアーマーとも呼ばれる。これは頭部パーツが、大昔のエイリアンというタイトルのSF映画作品に登場するエイリアンという架空の生物の頭部の形状の様にミニ・デストロイヤーの頭部も前後頭部が長い形状である事から、この様な通称名で呼ばれる様になった。また、それ以外の外見的特長としては、射撃姿勢を補助する為の2本の尻尾型のアームが特徴。尻尾型アームは、精密射撃時や、重砲火器を運用する際に姿勢を補助する。


使用する武装にはトール理論に基づいたジェネラル・ダイナミクスM‐750粒子重機関銃、ジェネラル・ダイナミクスM‐870粒子収束照射砲を想定している。ミニ・デストロイヤーはハザード・デストロイヤーやブレーンス・デストロイヤーとは違い手にマニュピレーターを採用している為、他の武装を装備する事も可能。


ミニ・デストロイヤーは、テラーズ7において、ハザード・デストロイヤーやブレーンス・デストロイヤーの任務を補助する役目として開発された。ミニ・デストロイヤーの登場には、トール機関の小型化技術の完成の影響が大きく、小型化技術の完成前まではミニ・デストロイヤー程のサイズの装備はテラーズ7では運用できなかった。


なお、ミニ・デストロイヤーのトール機関と搭乗者保護機構はセットでモジュール化されており、取り外しができる。これを原子力電池に換装すれば不思議の国のアリス粒子の影響が少ない領域においても活動が可能である。ただし、その場合、武装は通常火器を使用するか、不思議の国のアリス粒子をチャージした装備が必要である。また、多くの機能が不思議の国のアリス粒子の影響下の領域で活動するのに比べて非常に大きな機能上の制約を受ける。


挿絵(By みてみん)

※ジェネラル・ダイナミクスM‐870粒子収束照射砲の簡略図。ミニ・デストロイヤーはM‐870粒子収束照射砲を操作時、マニュピレーターでM‐870粒子収束照射砲の操作桿を両手で握って運用する。


[M137グリーダ]

概要:デストロイヤーシリーズのモデルとなった強化外骨格。搭乗者を守る装甲などはなく操縦席が外気に露出していたのが特徴。搭乗者は座席にベルトと安全バーにより固定された。2本の太く短いアームユニットと、それと比較すれば細く長い2本のアームユニットがあり、太く短いアームユニットにはZU‐23‐2機関砲がそれぞれ1基づつ搭載され、細く長いアームユニットにはマニュピレーターが採用されこちらは手として機能した。また、M137には2脚の太い足が採用されていたが、この足は歩く行為よりも、備えられたタイヤによって滑走する機能に重点を置いていた。


なお、ZU‐23‐2機関砲に関しては多連装ロケット砲や、地対地ミサイルへの換装が可能だった。また、マニュピレーターを利用して持って使用する為の武装として、アサルトライフル型の形状をとったドラムマガジン式のチェーンガンも採用されていた。


M137は2944年に戦闘にも重機としても使える汎用軍用車両として開発された。現在は、退役しており、少数が作業用重機として運用されている。


[小火器一覧]

 ・拳銃  :M17、M18

 ・短機関銃:MP7

 ・自動小銃:M4、HK416、FN SCAR

 ・散弾銃 :M26 MASS

 ・機関銃 :M249、ブローニング M2HB

 ・狙撃銃 :M110、M107

 ・擲弾  :Mk.19自動擲弾銃、M203、M18発煙手榴弾

      :M84

 ・個人携行:BGM‐71TOW、FBM‐148、FIM‐92

  対物兵器


この装備は星系軍が保有している主な歩兵用小火器の一覧である。これらは主にテラーズ7での軍事作戦などには主だっては利用されず、基本的には宇宙空間やルナ2において配備されている。その他、自衛火器としても採用されている。これらの装備の内、個人携行対物兵器に関しては、テラーズ7での軍事作戦に使用された事も過去にはあるが、現在では主流ではない。BGM‐71TOWに関しては、ネブラスカ戦争においてマザーシップの表面上に装備され戦闘員が直接、宇宙空間で操作し、敵対するマザーシップとの宇宙空間戦闘にも用いられている。現在においても宇宙空間で人間同士の安全保障上の問題が発生した場合にはこの運用方法が取られる事になっている。なお、個人携行対物兵器類は本来は大気圏内で運用する事を目的に開発されたが、宇宙空間でも運用が可能な様に改良がされている。


・内務総省管轄の治安組織

内務総省は内政業務としてルナ2や、宇宙空間での犯罪行為を取り締まる警察活動を担っている。内務総省が管轄する治安組織としては、連邦保安局(USCP)、連邦捜査局(FBI)、食品医薬品局犯罪捜査部(OCI)の3組織が存在する。現在のテラーズ7星系全体の犯罪率は非常に低い。大きな事件は殆ど起こらない治安状況である。以下は、連邦保安局、連邦捜査局、食品医薬品局犯罪捜査部が運用する主な装備一覧。


[小火器一覧]

 ・拳銃  :M17、M18

 ・短機関銃:H&K MP5A4、H&K MP5A5

      :H&K MP5KA4、H&K MP5SD

      :FN P90

 ・自動小銃:H&K G36K

 ・散弾銃 :M26 MASS

 ・機関銃 :M249、ブローニング M2HB

 ・狙撃銃 :M110、M107

 ・擲弾  :Mk.19自動擲弾銃、M320

      :M18発煙手榴弾、M84

 ・個人携行:BGM‐71TOW、FBM‐148、FIM‐92

  対物兵器


[ハザード・デストロイヤー]


[M1Abrams]

概要:戦車。星系軍では運用が完全に終了した装備である戦車を内務総省が引き継いだもの。極少数両を連邦保安局が保管している。稼働状況に関しては戦車の投入の必要性がある事件などは現在に至るまで一度も起ってはいない為、所属が内務総省に引き継がれてから現在まで殆ど非稼動の状態にある。なお、投入される可能性のあった事件として、ルナ7戦術研究所事件があったが、この事件においては、M1Abramsの投入が一時、案には上がったものの、この事件の解決にはM1Abramsは不適当とされ、結局は投入はされる事はなかった。


武装は44口径120mmライフル砲、M256、12.7mm重機関銃、M2、7.62mm機関銃M240、M153 CROWSⅡを搭載。


M1Abramsは、基本的な設計はテラーズ7星系最大の軍需産業企業ゼネラル・エレクトリック社によって次元侵食が起きる前の時代である高酸素帯による侵食災害発生後の混乱期の時代には行われ、その頃から現在に至るまで非常に長い期間、運用された。元々は、惑星大気圏内での運用を想定している設計であったが、テラーズ7の放棄後に改良がされ、現在、内務総省が保有しているM1Abramsは、惑星大気圏内の環境の他、低重力下の真空環境でも運用が可能な様にされている。


―――――――――――――――――――――――――――

民族


テラーズ7星系の現在の住民は太陽系やケンタウリd系からテラーズ7星系へと移住した人々の末裔である。少数ながら他の星系からの末裔も存在する。これは高酸素帯による侵食時点における当時のテラーズ7星系の住民記録から分かっている。


しかし、これらの民族区分について、現在のテラーズ7星系の各住民は自身の民族系統を把握はしていない。これは、次元侵食に伴う社会的混乱などによる影響によって多くの情報が断絶されてしまっている為である。


―――――――――――――――――――――――――――

歴史


・前史


 ・テラーズ7星系への人類の到達

 テラーズ7星系に人類が到達したのは、2201年の事である。地球合衆国連邦政府の航空宇宙局(英語:National Aeronaut and Space Administration 略:NASA)の深宇宙探査船アメリカが、人類史上初めてテラーズ7星系に到達した。深宇宙探査船アメリカはテラーズ7星系内を探索し、テラーズ7を発見し地表を調査した他、5個の惑星、1個の準惑星相当の惑星を観測した。これが第1回目に行われたテラーズ7星系への調査である。


テラーズ7の発見は大きな話題となった。特に、地球生命が宇宙服などの生命維持装置などに頼らずに居住が可能な環境を有していた事から、人類の版図の拡大政策を行っていた地球合衆国連邦政府から注目された。太陽系からの距離は離れてはいるものの、開発コストは生命が居住できない惑星に比べれば、非常に安価に見積もられた。


航空宇宙局は翌年の2202年には再び深宇宙探査船アメリカをテラーズ7星系へと派遣。この時には、テラーズ7の惑星地表上に恒久観測基地エンデバーが作られ10名の観測員も滞在した。深宇宙探査船アメリカは、テラーズ7星系内の探査を進め、最終的にはテラーズ7星系には9つの惑星が存在する事を明らかにした。


 ・テラーズ7の植民化

 テラーズ7の植民地化は2204年に地球合衆国連邦政府の議会採決によって全会一致で決定された。地球合衆国連邦政府は植民地化に協力する人々を募り、結果、太陽系とケンタウリd系の惑星開発企業が参加を表明した。参加した惑星開発企業が太陽系とケンタウリd系にある企業であった事から、テラーズ7の植民地化プロジェクトの参加者は必然的に太陽系とケンタウリd系の住民から参加が非常に多くなった。これらの人々が、現在のテラーズ7星系の人類の祖先である。


2207年、第1回目の殖民計画にはテラーズ7星系に総勢10万人近くの人々が参加。2211年には続いて、20万人近くの人々が植民地化に参加。2211年には新たに30万人近くの人々が参加した。これ以降も、テラーズ7星系の住民人口は年々増加していき、また、テラーズ7が人類の生存に適した惑星だった事もありテラーズ7で生まれ育った人々の数も年々急激に増加していった。


また、人工子宮を利用した人工的な手段による人間の製造も行われており、これも人口の増加を手伝った。


なお、テラーズ7星系の名前は2207年に決められた。それまでは座標を示すアルファベットと数字列で呼ばれていたが、第3惑星に生命が居住可能な惑星が発見された例としては観測史上7番目に当たる事から、第3惑星の名前をテラーズ7とし、星系の名前もテラーズ7星系とした。


 ・テラーズ7星系政府の発足

 2409年、テラーズ7星系の人口は人類が活動する領域においては辺境の星系に位置していたにも関わらず、順調に増え、40億人に達した。人口の増加から、テラーズ7星系政府の住民や経済界は地球合衆国連邦政府に対して自治権の拡大を要求した。


なお、当初は、この自治権の拡大要求はテラーズ7星系の住民全体が行っていたものではななかった。しかし、前年の2408年に労働者待遇を巡る労働者と大企業側との大規模な衝突があり、これがきっかけで運動が大きく盛り上がった。大企業側がテラーズ7星系の住民に対して、テラーズ7星系で得られた利益を充分に還元していない事や、労働者に不当な待遇をしているとして各地でストライキやデモ、暴動が多発した。


地球合衆国連邦政府はこの問題を当初は、警官隊を送るなどして押さえ込みを図った。しかし、そもそも、派遣された警官隊の一部も反発しストライキを起こすなど混乱した。また、住民側も地球合衆国連邦政府の強行な姿勢に反発し、テラーズ7星系の住民の反発はより強く激しくなった。


それでも、地球合衆国連邦政府は住民の反発を抑えようとしたが、地球合衆国連邦政府の思惑とは裏腹に事態は収拾がつかなくなっていった。その結果、2409年にはテラーズ7星系の住民側が、地球合衆国憲法の連邦請求権に基づき自治権の拡大を地球合衆国連邦政府議会に対して直接要求する事態となった。この直接要求は他の星系の世論の手助けなどもあり、テラーズ7星系の自治権拡大を問う住民投票が正式に実施される事となった。


投票の結果は自治権の拡大に賛成が87%。反対が17%という投票結果となり、地球合衆国連邦政府はテラーズ7星系の自治権の拡大を承認。


これによってテラーズ7星系の自治権の拡大が認められる事となり、同年中にはテラーズ7星系憲法が住民投票によって制定され、このテラーズ7星系憲法に基づいてテラーズ7星系政府が発足される事となった。


自治権が拡大されテラーズ7星系の地位が星系政府にまで昇華された事により、テラーズ7星系政府は星系内に限り地球合衆国憲法及び連邦法を犯さない範囲内において、高度な立法が可能となった。さらには、地球合衆国連邦政府下院に対して議員を送りだす事もできる様になった。


 ・第1次銀河大戦への参加

 2468年、ミルファク星系政府を筆頭とした17の星系政府が地球合衆国連邦政府からの離脱を一方的に発表。ペルセウス連合を設立した。地球合衆国連邦政府は事態を解決する為に使者をペルセウス連合へと派遣したが、使者が中性子爆弾によって殺害されるという事件が起き、これを受けて、地球合衆国連邦政府は連邦軍の派遣を決定。対するペルセウス連合側も連合軍を結成してこれに対抗した。


人類史上初となる宇宙空間での大規模宇宙艦隊同士の戦闘(CCF‐388744宙域の戦い)が勃発し、これによって地球合衆国連邦政府とペルセウス連合との戦いは人類史上初の恒星間戦争へと発展した。


戦争は拡大の一途を辿った。当初は、ペルセウス連合の領域のみで発生していた戦争は、人類の支配地域の4分の1を巻き込むにまで至った。戦争は大戦となり、この戦争は人類史上初の大規模宇宙戦争として、第1次銀河大戦と呼ばれる事になった。


この第1次銀河大戦に対して、テラーズ7星系政府は一貫して地球合衆国連邦政府を支持した。テラーズ7星系政府は、自領域内の連邦軍を積極的に支援し、志願兵の積極的な募集を実施した。


この大戦において、テラーズ7星系の連邦軍部隊もペルセウス連合との戦いへと派兵されたが、この内、大きな活躍を示したのが、宇宙戦艦エンタープライズ、宇宙戦艦ヤマトの2隻である。この2隻はアロー星系の戦い、メルキオスB星系の戦い、メルキオスC星系の戦いで活躍しテラーズ7星系の英雄と賞賛される事になった。


 ・全惑星への定住化の達成

 テラーズ7星系の歴史において大きな節目となったのが、2472年のアフロディーテへの人類の定住化の達成である。アフロディーテはそれまで、テラーズ7星系の中で唯一、開発が殆ど進んでいない惑星であった。


2201年にテラーズ7星系に人類が初めてやってきてから2世紀余り、アフロディーテはその過酷な環境から、人類の開発を唯一寄せ付けていなかった。それまで、アフロディーテには小規模な無人基地や有人基地しか設置されていなかった。


技術的にはアフロディーテの開発は1世紀前の段階でも容易に可能ではあったが、アフロディーテの開発を行うよりも、テラーズ7星系の他の惑星、準惑星、衛星、小惑星を開発する方がコスト的に安かった。しかし、アフロディーテにワープドライブの製造に必要不可欠な超結晶素材の存在が確認された事で、開発が進められる事になった。


これによってアフロディーテの地表に建設された殖民都市ゲルニカによって、人類はテラーズ7星系の全惑星への定住化に成功した。


 ・第2次銀河大戦への参加

 2511年、39の星系が参加するライジングサン朝銀河帝国(2490年に地球合衆国連邦政府から独立)は地球合衆国連邦政府に対してテルモピュレ星系の領有権を主張した。これに地球合衆国連邦政府は拒否を通告しテルモピュレ星系を保護する為に連邦軍艦隊を展開した。しかし、ライジングサン朝銀河帝国は宣戦布告なしに連邦軍艦隊を襲撃。


これによって、地球合衆国連邦政府とライジングサン朝銀河帝国との全面戦争が勃発し第2次銀河大戦が勃発した。この戦争において、テラーズ7星系政府は地球合衆国連邦政府を全面的に支持。第1次銀河大戦と同じくテラーズ7星系政府は、自領域内の連邦軍を積極的に支援し、志願兵の積極的な募集を実施した。


この第2次銀河大戦は第1次銀河大戦よりも遥かに大規模かつ苛烈な戦いとなったが、テラーズ7星系政府の領域から出撃した連邦軍は、この大戦においても、賞賛される活躍をする事に成功した。宇宙戦艦エグゼキューター、宇宙戦艦アヴェンジャーなどに率いられた地球合衆国連邦軍第204宇宙艦隊は、多くの作戦に参加し多くの戦果を挙げる事になった。


宇宙戦艦エグゼキューターは、ライジングサン朝銀河帝国軍の第1親衛艦隊である旭日艦隊のバンザイ級スーパー宇宙戦艦ショウグンとの死闘を繰り広げた他、惑星リビルを巡る戦い(通称:スペースニンジャウォー)にも参加した。


第2次銀河大戦はライジングサン朝銀河帝国の無条件降伏と地球合衆国連邦政府による再びの人類領域の統一によって幕を閉じた。


戦時中から戦後、地球合衆国連邦軍第204宇宙艦隊はテラーズ7星系の住民から賞賛された。また、戦後に地球合衆国連邦政府の大統領選挙が行われた際には現職候補がテラーズ7星系へと来訪し宇宙艦隊とテラーズ7星系の全住民に対して賞賛と感謝の言葉が述べられてもいる。


 ・総人口80億人の達成

 2518年、テラーズ7星系の人類の総人口は80億人を達成した。これにより、テラーズ7星系は地球合衆国連邦政府の領域内において、人口における上位の星系への仲間入りを果たした。この時期のテラーズ7星系はテラーズ7星系の住民の歴史にとって最盛期の時期である。


テラーズ7星系は地球合衆国連邦政府下院に対しても多くの議員を輩出し中央政治にも大きな影響力を持った他、文化や経済も花開き、地球合衆国連邦政府の領域内の他の星系と比較しても経済的に裕福な星系の1つであった。この様な繁栄ぶりは、高酸素帯による侵食災害が発生するまで続いた。


 ・高酸素帯による侵食災害と孤立

 2699年、前代未聞の大規模災害である高酸素帯による侵食災害が人類の領域のほぼ全域で発生した。銀河系に衝突した高酸素帯(巨大ガス雲)は人類の活動領域とちょうど重なる結果となり、この結果、甚大な被害が人類の領域内全体で発生してしまった。


多くの星系が壊滅し、これはテラーズ7星系も例外ではなかった。テラーズ7星系においては、テラーズ7以外の全ての惑星、準惑星、衛星、小惑星の居住地や設備の壊滅を招いた。ただし、人的被害に関してはテラーズ7星系政府は最小限にする事に成功した。


テラーズ7星系政府は高酸素帯の銀河系への衝突予測が出た段階で、テラーズ7に星系の全住民を収容できるシェルターとシールド発生装置や食料プラントの建設を指示し、自由意志で非難対象地域に残った人々を除いて、約80億人の人々がテラーズ7へと避難する事に成功した。


しかし、高酸素帯による侵食災害は非常に深刻かつ甚大であった。高酸素帯による侵食災害によって人命は救われたものの、高酸素帯による影響からテラーズ7外部との通信や宇宙交通は一切ができない状況に陥った。


さらに、ひとつの惑星に80億人もの人々が居るという状況は混乱も生み出した。各地では暴動が相次ぎ、また、暴動はエスカレートし一部の人々は武装し星系政府の意向に従わない勢力までも現れる事になった。


こうした状況は長期化した。テラーズ7星系内において、高酸素帯による影響が沈静化し、再び宇宙空間へと出られる様になったのは、2世紀余りの時間が必要となった。この間に状況は当初よりもさらに悪化した。


2世紀もの間、外部から孤立していた事により、対テロ戦争は常態化。惑星全土に星系軍が派遣され同じテラーズ7星系の住民同士で争う時代が続いてしまった。それでも、星系軍の活躍によりなんとか、治安を保つ事には成功し大きな紛争は2世紀の内の後半には起こさずに済む事に成功した。


しかし、最もテラーズ7星系の住民に甚大な被害を与えたのは科学技術の大幅な衰退であった。ワープドライブやシールドジェネレーターなど、高酸素帯による侵食災害以前には一般的であった大半の技術が失われてしまった。テラーズ7星系の技術水準は人類の宇宙進出がまだ進んでいなかった時代である21世紀前半のレベルにまで大幅に後退したとされる。


テラーズ7星系の孤立が一部解消されるには次元侵食の最中まで待たなければならなかった。


・現代


 ・次元侵食

 2922年8月7日、この年はテラーズ7星系の全人類にとって忌むべき災厄の年となった。E1地区のE1原子核研究機構において、ワープドライブ技術の研究開発中、原因不明の事故が発生した。施設や周辺への物理的な被害などは一切なく当初は事故が発生している事に誰も気がつかなかった。


E1原子核研究機構を中心とした地域において、精神異常症状を発症する人々や、動物の異常行動が相次いだ。殺人、事故、強盗、暴動などありとあらゆる犯罪が激増した。当初の星系政府は単なる暴動事件として処理し対処に当たっていた。この時点において、星系政府はこれが単なる暴動事件ではないと気づいていなかった。


あらゆる事件がE1原子核研究機構を中心に発生している事がインターネット上を中心に指摘される様になると、E1原子核研究機構も8月14日、会見を開き、E1原子核研究機構が原因であるとの説を否定した。


しかし、8月17日、E1原子核研究機構において、ありとあらゆる物が変異する現象が発生した。建造物などを一切問わず、蛍光色に光る奇怪な様々な植物が発生。さらに、その周辺部では、住民や生物が変異し、到底、元の生物とは思えない様な存在や、もしくは不定形に形の定まらない存在へと変異した。


これらの現象は現在では、フェーズ1(正式名称:兎の穴へ落ちて 英語:Down the Rabbit Hole)、フェーズ2(正式名称:キチガイの茶会 英語:A Mad Tea Party)、フェーズ3(正式名称:誰がタルトを盗んだのか 英語:Who Stole the Tarts)と区分して呼ばれる侵食現象の事である。


フェーズ1は、精神異常。フェーズ2は生物の姿形の変異。フェース3は非生物物質の変異の事。


星系政府は緊急の調査を星系政府傘下の研究機関に要請し、8月22日には調査結果が発表された。E1原子核研究機構を中心に次元空間に著しい乱れがある事が確認され、未知の次元から、未知の粒子が全方位に流出している事が判明した。


科学的コンセンサスはこの時点ではまだ不確かではあったものの、星系政府はこの未知の粒子がE1原子核研究機構やその周辺部で発生している異常現象の原因であると目された。また、星系警察は、E1原子核研究機構の関係者を逮捕しE1原子核研究機構で何があったのかを捜査した。その結果、E1原子核研究機構では事故が発生したと思われる日に、別次元の観測を目的とした実験を行っていた事が判明した。


星系政府はこの実験が原因でこの異常事態が発生したと認定。この現象への対処計画の策定を急いだ。まず、星系政府はE1原子核研究機構を中心とした地域を封鎖、封鎖地域内の全住民の退避計画を実施した。


星系政府の事故調査委員会はE1原子核研究機構を中心に発生している現象は、実験によって作られた次元の穴から別次元の未知のエネルギー粒子が本次元を侵食していると公表。この前代未聞の災害を次元侵食と呼称した。


そして、この現象を引き起こしている未知のエネルギー粒子を、不思議の国のアリス粒子(英語:Alice in Wonderand Particle)と呼んだ。


星系政府はこの異常事態の速やかな解決を目指した。別次元によって侵食された領域内への調査隊の派遣などを行った。事態の発生後、最初の数週間は次元侵食は余り進行せず、小康状態を維持していた。


しかし、その後に突如として次元侵食はE1地区のほぼ全域に急拡大し、テラーズ7の人類社会は惑星全土において未曾有の大混乱となった。次元侵食されたE1地区の0.1%では物体が完全に変異。残りの領域では生命体への精神異常や変異が加速した。


その後も次元侵食は、E1を急激に呑み込んだペースよりは緩やかにはなったものの、着実にテラーズ7の惑星を侵食していった。2923年には、E1地区全域が次元侵食に呑み込まれた。


ありとあらゆる観測データ、事象、被害記録が、次元侵食が人類ひいてはテラーズ7の惑星上の全生命への脅威である事が指し示さられた。2923年中旬には、次元侵食の被害はテラーズ7の惑星の半分にまで拡大。


それでも、この時点ではまだ次元侵食による影響を受けた地域はまだ大半が軽微に影響のみで収まっており、致命的な被害は出ておらず、精神異常を中心としたものだけだった。


 ・国家総力戦

 2923年、星系政府はA1地区において、次元侵食に対する国家総力戦を宣言。次元侵食に対抗する技術開発や体制などの構築を開始した。


不思議の国のアリス粒子による次元侵食は、この時点においては、フェーズ2及びフェーズ3は陸地伝いに侵食範囲を広げる性質があった事から、星系軍が各地に配備され、侵食範囲を広げるフェーズ2、フェーズ3と交戦し侵食阻止を行っていた。


2927年には、不思議の国のアリス粒子を抑制する効果のある特殊電磁フィールド(干渉保護膜)が発見された。星系政府はこの発見を受けてI1地区、A1地区に防衛線を構築する事を決定。電波天文台の巨大電波望遠鏡クラスの大きさの防御装置が各地に設置された。


この時点のフェーズ2及びフェーズ3は陸地伝いに侵食範囲を広げる性質があった事から、AE2大陸の次元侵食を抑制する為にI1地区に。一方で星系政府の政府機能の多くが置かれていたA1地区を守る為にA1地区の沿岸部地域に長大な防衛線が構築された。


しかし、I1地区における防衛線の構築は間に合わなかった。その結果、I1地区の大半は陥落。AE2大陸にまでフェーズ1、フェーズ3の侵食の魔の手が進む事となった。


それでも、人類はテラーズ7の大半の地域を2938年までの凡そ15年間に渡って維持する事に成功した。しかし、AE1大陸、AE2大陸が陥落すると、それまで陸地伝いにしか侵食が進まなかったフェーズ2、フェーズ3が海を越えて他の地域にまで急速に拡大した。


海を越え他の地域をフェーズ2、フェーズ3が呑み込むまでには1ヶ月の時間も要しなかった。星系政府は島嶼部の経済的要所地域へも防衛線の構築も目指していたが、この防衛線の計画の完全な構築はできず効果的な侵食の阻止にはつながらなかった。


2938年時点で、テラーズ7上で次元侵食の及んでいない地域はNA大陸A1地区のみとなった。A1地区は沿岸線に沿った防衛線ち内陸部において正円形状に構築された2重の防衛線で成り立ち、その内陸部に生き残った人類は篭った。この地域には人類が持ち込めるだけのあらゆる設備が集められた。


挿絵(By みてみん)

※テラーズ7の大陸分布図。


挿絵(By みてみん)

※テラーズ7の行政区分図。


挿絵(By みてみん)

※A1地区に構築された防衛線。青い円が最終防衛線。


 ・地球合衆国連邦政府との再交信の成功

 2939年、テラーズ7の通信センターが、テラーズ7星系外からの微弱な恒星間通信波の傍受に成功した。当初は、通信設備の不具合や、天文現象による誤報が考えられた。しかし、再度、検証を行った結果、この微弱な恒星間通信波が通信設備の不具合や、天文現象による誤報によるものではなく、実際に人工的手段を用いてテラーズ7星系外から送信されている事が判明した。


テラーズ7星系が星系外からの通信を傍受したのは、2699年に高酸素帯の侵食が発生以来の事である。これを受けて星系政府は、この通信波の送信元との再交信を目指した。その結果、この通信が、地球合衆国連邦政府から送信されている事が判明した。


地球合衆国連邦政府はテラーズ7星系に対して生存確認の通信を行っており、星系政府はこれに返答。救援を要請した。


テラーズ7星系からの要請に対して地球合衆国連邦政府は要請を受諾したものの、直接救援に向かう事は現時点では不可能だと返答した。理由は、高酸素帯による影響が大きい為で、テラーズ7星系のある宙域は大半が高酸素帯に未だに覆われており、救援に向かう事はできないとの事だった。また、通信が回復したのはテラーズ7星系を覆っている高酸素帯に若干の綻びが発生した為であるからだった。


地球合衆国連邦政府との交信の成功はテラーズ7星系外の現状の情報をテラーズ7星系にもたらした。テラーズ7星系は高酸素帯による侵食によって甚大な被害を受けていたが、地球合衆国連邦政府との再交信が齎した情報は、テラーズ7星系外でも高酸素帯による侵食によって甚大な被害が発生していたという事だった。


地球合衆国連邦政府の説明では、多くの殖民星が壊滅し夥しい犠牲が出たという事だった。経済的損失は天文学的な数値となり、人類社会は人的、経済的、文化的、交通的、科学的損失を被ったとの事だった。しかし、それでも、2969年時点では、多くの宙域では高酸素帯のガス雲も晴れ始め、多くの星系間で交通や通信が回復し復興が非常に進んでいるという情報が齎された。


また、次元侵食はテラーズ7星系だけの災害だけではない事が明らかになった。いくつかの星系において、テラーズ7星系と同じ様に長期に渡って孤立していた星系がありこれらの星系において、テラーズ7星系と同じ様な理由から次元侵食が発生し、こちらの次元侵食は規模がテラーズ7星系よりも段違いの大きな規模で宙域規模で事態が推移しており、地球合衆国連邦政府は現在、総力を上げて事態の終息に向けて対処に当たっているとの事だった。


テラーズ7星系が求める地球合衆国連邦政府によるテラーズ7星系の救援そのものは、得られなかったものの、こうした星系外との交信の成功の知らせや情報はテラーズ7星系の人類に大きな希望を与えた。これまで完全に数世紀にも渡ってテラーズ7星系は外部と孤立していた為に、テラーズ7星系の人類はもはや自分達は最後の人類なのではないかという大きな孤独感と不安感が長年に渡って続いていたが、これが解消された形であった。


また、次元侵食が自分達だけに振りかかっている災害ではなく、むしろテラーズ7星系外の次元侵食の方が遥かに被害は深刻であり、それに全力で立ち向かっている他の人類の勇猛果敢な姿はテラーズ7星系の人類に大きな励ましとなった。


この交信後、テラーズ7星系政府と地球合衆国連邦政府の間では、高酸素帯の綻びタイミングでの恒星間通信が可能となるタイミングにおいて、双方で情報のやり取りを行う体制が構築された。


しかしながら、この交信体制は非常に脆弱であり、当初、星系政府は長年の孤立によって失われた科学技術を地球合衆国連邦政府の情報支援を受けながら復興させ、テラーズ7の次元侵食に対抗する事を計画したが、高酸素帯による深刻な通信障害による影響から、通信が可能な時間が精々、数分程度であり、さらには、その数分間も通信状況が不安定である事から、複雑なデータのやり取りが事実上困難である事が判明した為、計画は事実上の白紙となってしまった。


また、通信のタイミングである高酸素帯の綻びも、いつ発生するかも分からない為、例えば、あるタイミングで綻びが発生し双方の間で通信が行えたとしても、そのタイミングがどちらか片方にとって、予期せぬタイミングであれば、情報のやりとりに大きな支障となり、また、通信が確立した時に相手に提供する資料などをその時に用意しようとしても、資料を用意できた時にはすでに通信のタイムリミットを迎え、通信のタイミングを逃してしまうなどの問題も起きた。


テラーズ7星系と外部との恒星間通信による相互コミュニケーションが可能になる頻度は年に数回程度の頻度である。


これは現在においても同じであり、高酸素帯の状況次第で通信ができる頻度は大幅に変わる。稀に1年もしくは、それ以上もの期間、高酸素帯に綻びが発生せず、星系外部との交信が完全に不可能となる時期も現在までに数度発生している。この様に、星系外との交信は可能になったものの以降、現在に至るまでその通信は非常に脆弱であった。


だが、星系外との通信が可能になった事は現在にいたるまでテラーズ7星系の人類に大きな希望となっており、テラーズ7星系が星系外の人類社会からは孤立しているとしても、多くの人類が星系外に存在し、さらにはそれらの星系外の人類も各地で大きな苦難に果敢に立ち向かっているとされる様子は、テラーズ7星系の人類の士気を大きく上げる事になった。


なお、テラーズ7星系政府と地球合衆国連邦政府の相互コミュニケーションは上記の理由から、大きく制限がある状況だが、様々な星系から不特定多数の様々な星系に向けて随時一方的に発信されている民間メディアの恒星間通信に関しては、随時、通信波が送信されている為、意図して相互コミュニケーションを行おうとする場合に比べて、恒星間通信が高酸素帯の綻びを抜けられる率が高い状況となっている。


テラーズ7星系と外部との恒星間通信による相互コミュニケーションが、年に数回程度の頻度であるのに対して、民間メディアの通信の受信頻度は相互コミュニケーションを目的とした通信よりも多いのが現状である。


これは、テラーズ7星系政府と地球合衆国連邦政府が、通信を試みる際には、常に通信を送信している訳ではなく、定時の時間に限って通信を試みている一方で民間メディアの通信は随時送信している為、通信が届く可能性が上がっているという違いが存在する。


この事からテラーズ7星系政府は地球合衆国連邦政府に対して、技術情報などを民間メディアと同じ様に、随時送信して受信できる可能性を上げる事を求めたが、地球合衆国連邦政府は技術情報を常に発信し続ける事はテロ組織や宇宙海賊などの反政府勢力などに技術が流出してしまう可能性がある為にできないとしている。地球合衆国連邦政府によると、現在、テラーズ7星系を覆っている高酸素帯のガス雲周辺の宙域は非常に治安が悪い状態であるという。こうした地球合衆国連邦政府側の事情もあり、テラーズ7星系政府は随時の情報発信の要請は撤回している。


なお、現在、こうして受信された民間メディアのニュース映像などは、まともな視聴ができる状態の場合はテラーズ7星系テレビでも放送され、テラーズ7星系の人々に星系外部の情報を知らせる貴重な機会にもなっている。


 ・テラーズ7の放棄

 2943年、フェーズ2及びフェーズ3が、沿岸線の防衛線を突破。これにより次元侵食がさらに進む事となり、人類はテラーズ7上において、もはや後に引く事ができなくなった。これを受けて星系政府はテラーズ7からの部分的撤退を決断。


残存する全国力を持って、テラーズ7星系人類種の生存の為、あらゆる工業設備などを、宇宙空間上に退避させる計画を実施した。退避には軌道エレベーター、エレベーター・ネブラスカが利用され、計画では最終的に全星系人類を工業設備などを含めて2965年までに、すべて脱出させ、残された地上は星系軍が管理する地域とする計画が進められた。


しかし、この計画は完全には達成できなかった。2951年、次元侵食が最終防衛線を突破。退避計画がまだ完了していない段階で防衛線の突破を許してしまった。この突破により僅か2週間足らずで唯一、次元侵食に侵されていなかった地域は混乱に包まれながら陥落した。


宇宙空間へと脱出できたのは全人口の僅か3万人未満に止まり、さらには本来の計画で定められた宇宙開発も殆どが完了できずという結果に陥った。


本来の計画ではルナ2の溶岩洞を利用し、この内部に最終的には100万人単位の人々が自給して居住できる恒久都市を建設する予定であった。ルナ1からルナ7までの7つの巨大溶岩洞内へと工業設備の移転および建設をし、居住区画、食糧生産区画などの建設など、宇宙での生存が可能な環境が整えられる予定だった。ルナ2に恒久拠点を構築し絶対的な安全圏の構築を目指した。


しかし、ルナ2の開発は、非常に難航した。社会インフラに最低限必要な機材こそはあったものの、主に人手不足や、そもそもルナ2に大規模な都市を建設するだけの技術力が不足していた問題によって本来の計画通りの規模の施設は作れなかった。


実際に建設できたものは大幅に未完成であり、宇宙へと逃れた人々を賄う事もやっとな状態であった。


本来は、ルナ2の巨大溶岩洞全体を活用して、1つの巨大溶岩洞そのものを1つの巨大なシリンダーとして捉え、内部に大気を充填し、そこに建造物を建設して都市として運用する計画だった。しかし、大気の充填は星系政府の思うようにはできず、大気密度は非常に低い状態で推移し、酸素ボンベと酸素マスクがなければ、生物は活動できないレベルとなった。


さらに、元々の計画が言わば、巨大溶岩洞内で宇宙服や酸素マスクを着用せずに生物が暮らせる事を前提とした都市の開発計画で進めていた為、建設された建物も多くが致命的欠陥を抱えた。この欠陥を修繕したり、施設の再設計を星系政府は行ったが、もはや計画全体の修正は困難だった。


その結果、本来は巨大溶岩洞内への大気の充填と都市が完成するまでの間の、仮設拠点であった筈の、仮設施設(施設外部が真空状態でも施設内部の生存環境は整える事が可能な施設)が、急遽、恒久施設として利用がされる方向になった。また、施設の増設も必然的に同様の機能を有した施設を作る事になった。


しかし、この時点で、すでに多くの資材や機材を消費しており、その結果として、都市の規模は当初の計画のものに比べれば大幅に小規模のものとなった。その結果として、本来は社会に必要な全ての機能が内包される予定であった都市の能力は限定的となり、食糧生産や水の生産に関してはエレベーター・ネブラスカに大きく依存する事となった。


この状況は現在でも続いており、現在はこの当時の状況と比べれば、多少は改善され施設の規模も大幅に増強されているものの、現在も巨大溶岩洞内の環境は、大気は非常に薄く、酸素ボンベと酸素マスクが無ければ生物は活動できず、また、当初の計画で建設された欠陥のある建造物群が建造途中で放置されている状況にある。


 ・現行体制の構築

 2952年、宇宙へと逃れる事ができた星系人類は、星系軍を中心に非常事態体制へと移行された。星系政府はもはや機能しておらず、この時点において、まともに組織的な機能を有する機関は星系軍のみであった。この時に星系軍によって敷かれた非常事態体制は現在の体制の基盤ともなった体制となった。星系軍は非常事態体制のもと、組織再編や、宇宙空間を拠点とした社会インフラ体制の構築に勤めた。


また、テラーズ7奪還に向けた方針を策定し、宇宙で態勢を整えた後に軍事作戦を速やかに再開する方針が決定された。星系政府はテラーズ7を放棄している現状をあくまでも一時的な避難であるとして、将来的にテラーズ7はなんとしても奪還されなければならないとした。


 ・ネブラスカ暴動

 2959年、エレベーター・ネブラスカにおいて、職員及び民間人を中心とした大規模な暴動が発生した。エレベーター・ネブラスカには、少数の星系軍兵士の他、軍に所属していない民間人の避難民を含めた職員が多く居住しており、これらの避難民や職員を中心に星系政府の教育政策に対する反対運動が起きた。この反対運動は拡大し、最終的には暴動へと発展した。暴動は星系軍によって鎮圧された。


なお、この時、住民が反発した教育政策の内容は現在は非公開。


 ・第1次記憶抹消

 ネブラスカ暴動は、テラーズ7星系人類の社会全体に甚大な動揺と心理的影響を与えた。その事から、星系政府は全星系住民による国民的議論を実施し、その議論の末、希望者に対してトール理論に基づく最新の記憶操作技術を用いたネブラスカ暴動に関係する情報の記憶抹消処置の実施を決定した。


この希望者に対する記憶抹消処置は第1次記憶抹消と現在では呼ばれる。星系政府は希望者に対して記憶抹消を行い、一方で非希望者に対しては箝口令を敷き記憶抹消を行った人々に抹消された記憶に関する事を語る事を禁じた。


第1次記憶抹消に際して、記憶抹消の処置を希望し処置を受けた人々の数は全人口の7割に達した。


 ・第2次記憶抹消

 第1次記憶抹消によってテラーズ7星系の住民の混乱は収まったかに見えた。しかし、2961年に箝口令を破った一部の記憶保持者からの噂話などから、再びテラーズ7星系人類の社会全体に甚大な動揺と心理的影響を与える事態となってしまった。


これを受けて星形政府は再び、全星系住民による国民的議論を実施しする事となり、その議論の結果、希望者に対するトール理論に基づいた記憶操作技術を用いた記憶抹消の実施を決定した。


 ・ネブラスカ戦争

 2972年、星系政府は、テラーズ7への軍事作戦の完全な遂行能力の準備が完了したと発表した。それまで、テラーズ7の放棄以降、テラーズ7への軍事作戦は戦闘ステーションによる軌道爆撃のみに限られていた。これは資源をリソースをルナ2の開発など、社会インフラの整備にまわさなければならなかった為である。


必要最低限の社会インフラの整備が完了した事で、軍事作戦へと資源のリソースをまわす事が可能となった。これを受けて星系政府は将来的なテラーズ7の奪還を目指して軍事作戦の本格再開を決定した。


無人化戦術攻撃システム機に弾薬の供給を本格的に開始し、戦闘ステーションからの軌道爆撃と組み合わせた軍事作戦を展開した。


2975年には、宇宙への脱出後は初めてとなるテラーズ7地表への強襲揚陸作戦フリーダム2975を実施。凡そ160名の兵士がM137グリーダ、戦車、装甲車を用いて、強襲揚陸作戦を展開した。


しかし、この強襲揚陸作戦フリーダム2975は失敗した。原因はテラーズ7脱出時のテラーズ7の惑星環境とこの時の惑星環境が大幅に乖離していた為である。次元侵食がテラーズ7の惑星環境に与えた影響の段階が、すでにこの時にはさらに一段進んでしまっており、テラーズ7の脱出時点では、テラーズ7の惑星環境に次元侵食が与えた影響の段階は現在では、不思議の国(英語:Wonderland)と呼ばれる段階であったのに対して、この時の段階は鏡の国(英語:Through the Looking Glass)と呼ばれる段階だった。


なお、テラーズ7が厳密にいつ鏡の国の段階になったのかは不明である。


強襲揚陸作戦フリーダム2975の時点において、星系政府及び星系軍が知っていた次元侵食の影響は不思議の国までであり、言わば、フェーズ3以上の段階がある事を知らなかった。しかし、強襲揚陸作戦を実施した事によって、この時、初めて人類は、次元侵食にさらなる段階がある事を知った。


鏡の国の状態となったテラーズ7の惑星環境は、一見、不思議の国のフェーズ3よりも安定した状態に見えた。しかし、実際は、鏡の国の状態は、不思議の国のアリス粒子の影響がフェーズ3の状態の時よりも大きかった。


その結果、強襲揚陸部隊が持ち込んでいた干渉保護膜発生装置の防御能力が足りなかった。派遣部隊員達の多くは着陸後、部隊の展開を行ったすぐ直後に、次元侵食のフェーズ1、フェーズ2へと至り、部隊は混乱状態となった。さらには、不思議の国の住民達(英語:Residents of Wonderland)からの襲撃もあり、強襲揚陸部隊はあっという間に壊滅してしまった。


この、部隊員の犠牲は、テラーズ7からの脱出後では、初めての次元侵食による犠牲者となった。星系軍はこの強襲揚陸作戦フリーダム2975の教訓をもとに今後の作戦に生かすとし、対策を練った上でテラーズ7への軍事作戦を継続するとした。また、地球合衆国連邦政府からもテラーズ7星系の人類を応援するメッセージが届けられ、この声援のメッセージに対して、星系軍はテラーズ7星系の人類が健在である事を星系外に広く知らしめよう!と部隊の全滅で士気の落ち込んでいた星系人類の鼓舞を行った。


しかし、この星系軍の方針に対して、多くの犠牲者を出した事で、記憶抹消を受けていなかった住民の一部を中心に多くの人々が反発した。これらの人々はテラーズ7への軍事作戦に反対し、軍事作戦を、いたずらに人命や物資を浪費しているだけだと批判した。


テラーズ7星系の人類には人命を消費する軍事作戦を行う余裕はもはや無いとし、テラーズ7の奪還は諦め、軍事への資源投入ではなく宇宙開発に全力を注ぐべきだと主張した。


この様なテラーズ7への軍事作戦に反対するという現代の価値観で見ると、明らかな人類全体への背信行為、敗北主義、テラーズ7星系を開拓した先祖達への愚弄ととられる行為に対して、当時の星系政府もこれらの批判者を批判。双方の対立は激化した。


対立の激化の結果、2976年、軍事作戦への反対者がエレベーター・ネブラスカにて武装蜂起。武装蜂起には星系軍の一部部隊も加わり、マザーシップUSSスターファイターもこの反乱に加わった。この一連の武装蜂起により、エレベーター・ネブラスカを巡るネブラスカ戦争が勃発した。


ネブラスカ戦争は高酸素帯侵食前にあった様な第1次銀河大戦や第2次銀河大戦の様に、全長数キロや数十キロ単位の超巨大宇宙戦艦同士か強力なエネルギー兵器を撃ち合い、超高速の宇宙空間戦闘機が互いに制宙権を争う様な壮大な戦争ではなく、その規模は過去のそれらの戦いと比べると遥かに小規模かつ原始的な戦いとなったが、それでもテラーズ7星系の人類にとっては、高酸素帯侵食後では初めてかつ、科学技術の大幅な低下後では初めての宇宙空間での本格的な戦争となった。


ネブラスカ戦争は宇宙空間においては、星系政府側が勝利を収めた。USSスターファイターは激戦の末、USSスターシップ、USSスターライナーの攻撃によって撃沈され、制宙権は星系軍側が手中に収めた。しかし、反乱軍はエレベーター・ネブラスカに篭城し、星系軍側の攻撃を退けた。


星系政府はエレベーター・ネブラスカを何としても奪還する方針だった。反乱を起こした反対者の処罰もその理由の一つであったが、エレベーター・ネブラスカは、食料と水の重要な生産基地であり、この施設を奪還しなければ、反乱者以外の全星系人類が食料や水の不足に陥る為であった。


しかし、星系軍はエレベーター・ネブラスカを奪還する事ができないまま、2ヶ月もの時間が過ぎてしまった。その結果、星系政府側の備蓄食料や水が不足しはじめた事で、星系政府と反乱軍は和平交渉を実施。その結果、星系政府はエレベーター・ネブラスカを占拠する反乱軍側に対して高度な自治権を与え以降、星系政府と両者は互いに不可侵不干渉とする取り決めをまとめざるを得なくなった。


これによってネブラスカ戦争は終結。戦争を行っていた期間は凡そ3ヶ月だった。


以降、エレベーター・ネブラスカはネブラスカとして、高度な自治権を有した行政施設となり、ネブラスカは、星系政府に対して、食料と水の提供を条件に自治権が認められる事になった。


 ・第3次記憶抹消

 ネブラスカ戦争は、テラーズ7星系人類の社会全体に甚大な動揺と心理的影響を与えた。その事から、星系政府はネブラスカを除いた全星系住民による国民的議論を実施し、その議論の末、ネブラスカ以外の全星系人類に対してトール理論に基づいた関連記憶の抹消処置を行う事を決定した。


希望者ではなく全住民を対象とした事は大きな変化だった。全住民を対象に記憶抹消を行うとしたのは、ネブラスカ戦争の経緯が大きかった。ネブラスカ戦争のきっかけとなった星系政府への反対運動の中心人物の多くが、記憶の抹消を受けていない記憶保持者だった為である。また、第2次記憶抹消の際も、その原因が一部の記憶保持者が緘口令を守らなかった結果、起こった事も理由となった。


この事から、記憶保持者は社会の不安定化の原因となる脅威とありうるという認識が広まり、国民的議論の結果、記憶抹消を行うならば、すべての住民が記憶抹消を受けなければ脅威は取り除けないとの認識が全住民の間で広まった。この認識をもとに第3次記憶抹消は実施された。


 ・総人口4万人の回復

 2985年、テラーズ7星系の人類人口の総数が4万人に到達。これによってテラーズ7星系の人類はテラーズ7の放棄後としては史上初めて星系の人口が4万人台を回復した。


これを受けて星系政府はこの発表が行われた日は記念として夕食のメニューで全住民に対して1人当たり、100%培養肉のステーキ1切れ、100%培養肉のフライドチキン2個、レインボーケーキ1カットが無料で振舞われた。


 ・ルナウイルス感染症災害

 2992年、ルナ2のルナ4にて、原因不明の肺炎症状を訴える患者が複数人、確認された。当初、ルナ4の医療部門の病院は風邪が悪化したものと診断した。しかし、最初の肺炎症状者の確認から2週間後にはこの肺炎症状を訴える患者の数は、数百人規模にまで拡大。さらには、重度の肺炎や合併症を引き起こし、重症となる患者も発生した。


国務総省管轄の疾病予防管理センター(英語:Centers for Disease Control and Prevention 略:CDC)はレベル4の感染症災害が発生したと発表。ルナ4の全面封鎖を実施し、現地に医療スタッフの派遣と原因究明に全力を注ぐ事を発表した。


しかし、ルナ4は封鎖されたものの、ルナ4外の施設においても、この原因不明の感染症罹患者と思われる患者が確認され続け、感染者数は日に日に、増大していった。星系政府は全住民に対して、他者との接触を必要最低限までに制限する事や、社会活動を行う際にはできるだけ、手元にある不織布の医療用マスク、防塵マスク、科学防護マスク、低酸素環境での活動用の酸素マスク、宇宙活動用のマスクなどのマスクを着用する事を求めた。


感染者数が2千人に達した時、疾病予防管理センターは調査の結果、この感染症が一般的な風邪症状を引き起こす5種類のコロナウイルスの内、HCoV‐OC43系統のコロナウイルスが変異した新型のコロナウイルスである事を突き止めた。また、この新型のウイルスは通常のコロナウイルスよりも致死性が高く、重症化率も高い事が明らかとなった。


これを受けて星系政府は感染者を隔離し新規感染者をできる限り抑え込む政策と、予防薬、治療薬を開発し感染症災害の終息を目的としたルビコン計画の実施を決定した。


この新型ウイルスの事を星系政府はルナ2で発生した新型のウイルスである事から以降、ルナウイルスと呼称した。


ルビコン計画は結果的に見れば成功とも失敗ともとれる結果に終わった。感染者数は最終的には全人口の3分の2にまで及んだが、それ以上の感染の拡大は抑える事に成功した。


なお、ここまでの感染拡大となると僅か4万人程度の人口しかいない宇宙空間での生活には多大な支障が出たが、星系政府は軽症者の内、日常生活や業務に支障のない感染者を施設内においては、科学防護マスク、低酸素環境での活動用の酸素マスク、宇宙活動用のマスクの3点の何れかの気密性の高いマスクを着用する事を条件に感染者による社会活動の参加を義務化する事で、社会インフラの維持を行った。


ルビコン計画によって感染者数のさらなる増大は抑制する事に成功した。しかし、治療薬や予防薬の開発には難航し、ようやく疾病予防管理センターが、星系軍との共同研究の成果として第1号ワクチンのファルコンの開発に成功した時、感染状況は自然終息していた。治療薬はついに完成する事はなく、軽症者や中症者の多くは自己免疫や、対処療法の治療で完治したが、重症者に関しては大半が還らぬ人となった。


このルナウイルス感染症災害はテラーズ7の脱出後では初めてテラーズ7星系の人類が経験する宇宙での感染症災害となった。この感染症災害が発生していた期間は僅か6ヶ月間の期間であったがこの間に全人口の内、9,530人もの死亡者が発生してしまった。これによりテラーズ7星系の人類の総人口は31,620にまで減少した。


ここまでの急激な人口の減少はテラーズ7の脱出後はじめての事である。


事態の深刻さを受けて星系政府はクリーンアップ作戦を実施。危険なウイルスの撲滅を掲げて全施設の消毒作戦を実施した。この消毒作業の為に星系政府は消毒液の生産に多くの生産能力を注いだ他、互いに不可侵不干渉とされたネブラスカに対してもクリーンアップ作戦に協力する様に打診。ネブラスカは当初はクリーンアップ作戦に抵抗を示したが、星系政府との交渉により、最終的にはクリーンアップ作戦の実施に同意した。


そして、クリーンアップ作戦は3年の準備期間の後、2996年にテラーズ7星系の全稼動施設で実施され、大量の消毒液を用いて施設内や装備類から、ありとあらゆる細菌やウイルスの撲滅を目指した。


なお、このクリーンアップ作戦に関しては現在、評価が大きく分かれており、肯定的な評価では施設内を徹底的に消毒した事により、以降、細菌やウイルスを原因とする風邪や病気の発生率がそれ以前と比べて大幅に引き下がった事がデータで示されている事から、テラーズ7星系の人類の健康に大きな役割を果たしたとする評価がある。一方で否定的な評価では、クリーンアップ作戦によって人間が本来、かかるべき風邪や病気にかかりにくくなった事で、テラーズ7星系の人類全体の免疫力が大幅に低下してしまったとしており、今後もしも、第2のルナウイルス感染症災害の様な感染症災害が発生した場合に、ルナウイルス感染症災害よりも、より深刻な被害を齎す可能性があるとする評価がある。


 ・地球帰還派事件

 2999年、星系政府はルナウイルス感染症災害を受けて縮小していたテラーズ7への軍事作戦を順じルナウイルス感染症災害前の水準にまで拡大していく方針を明らかにした。これに対して、一部の星系軍将校や士官を中心に、一部の将兵達が反対の意見を表明した。


これらの星系軍将校や士官は、ルナウイルス感染症災害の影響は甚大であるとして、現在の状況はとても軍事作戦を行っている余裕はないとして、地球合衆国連邦政府に救援を要請するべきだと主張した。これに対して星系政府は、高酸素帯によってテラーズ7星系のある宙域は覆われており、地球合衆国連邦政府はテラーズ7星系に対する救援はできない点を指摘した。


するとこの星系政府の指摘に軍事作戦に反対する一部の将兵達は、高酸素帯の綻びによって地球合衆国連邦政府との交信が不安定ながらもできている点を上げ、高酸素帯の詳しい調査を実施すれば、調査には危険は伴うものの、何処かに高酸素帯の切れ目の様な開口部が存在する可能性を指摘した。その様な開口部を発見できれば、そこから、援軍や救援物資をテラーズ7星系に運ぶ事ができ、次元侵食に対する確実な勝利につながると主張した。


この指摘に星系政府は確かに高酸素帯がガス雲である以上、その様な開口部が存在する可能性はあるとしつつも、現在の衰退したテラーズ7星系の宇宙航行技術ではテラーズ7星系を出る事すら、困難である事を指摘し、テラーズ7星系側による調査には限界がある点を説明した。星系政府は次回の通信が回復した際に地球合衆国連邦政府に対して開口部の調査を要請するとした。


しかし、軍事作戦に反対する一部の将兵達は、今まで、交信が部分的にできる様になってから数十年もの歳月が経過しているにも関わらず、地球合衆国連邦政府による効果的な支援が無かった点を指摘し、この状況を打破するにはテラーズ7星系側から直接、地球合衆国連邦政府に対してアクションを起こさなければ事態は変わらないと主張した。


この両者の意見対立はネブラスカ以外のテラーズ7星系の全人類世論を大きく2分させた。星系政府の方針通りに軍事作戦を順じ再開させるべきだという意見。軍事作戦に反対する一部の将兵達の意見に賛同し地球合衆国連邦政府に対して救援を求めるべきたとする意見に分かれた。


両者の意見対立は1年半程続き、その間に星系政府は地球合衆国連邦政府との通信が可能になったタイミングで高酸素帯の開口部の有無を調べる調査を要請した。


3000年、ミレニアムのこの年に、地球合衆国連邦政府からの調査結果が届いた。その結果は全長数キロメートルのサイズの計10隻のアレクサンドリアⅡ級アサルトシップがテラーズ7星系を覆っている高酸素帯の調査を実施したが、交通が可能な開口部の発見はできなかったというものだった。


この調査結果を受けて、多くの世論は星系政府側に傾いたが、軍事作戦に反対する一部の将兵達は納得せず、テラーズ7星系側からのアプローチも行うべきだと主張した。


両者の対立は平行線を辿ったが、この様な根強い軍事作戦に反対する一部の将兵達側の主張に対して星系政府側がこれらの将兵達に対して、高酸素帯の調査を理由に次元侵食から逃げようとしている敗北主義者との批判を行った。


すると、この星系政府の批判に対して、それまでは意見主張のみの活動に限っていた軍事作戦に反対する一部の将兵達は、強く反発し、テラーズ7星系の人類の勝利を同じく求めている同胞に対するそれが星系政府のやり方かと星系政府を強く非難した。そして、この星系政府による批判が決定打となり、軍事作戦に反対する一部の将兵達は武器を手に取り、ルナ2の軌道上に居たマザーシップUSSスターシップを強襲し犠牲者は出なかったもののマザーシップが占拠される事件が起きてしまった。


軍事作戦に反対する一部の将兵達は星系政府に対して、自分達が高酸素帯の開口部を探し地球合衆国連邦政府に対して救援を求めると主張し、その為の探査設備や必要設備の詰め込みを要求した。


この事件に対して星系政府は当初は事件を起こした軍事作戦に反対する一部の将兵達を強く非難したが、星系軍内部からも、軍事作戦に反対する一部の将兵達に対して星系政府が行った敗北主義者との非難は言い過ぎだとする星系政府への批判の声も高まった事を受けて、星系政府は軍事作戦に反対する一部の将兵達に対して、発言の撤回と謝罪を表明した。そして、それと同時に今回の事件は星系政府にも責任があると反省を示し、このまま投降すれば、事件に関係した者の罪は一切問わないとした。


この星系政府の歩み寄りの姿勢を受けて、軍事作戦に反対する一部の将兵達も星系政府に歩み寄りをみせ、両者は交渉を実施した。このUSSスターシップの占拠事件は最終的には星系政府の説得が成功し事件を起こした軍事作戦に反対する一部の将兵達全員が、テラーズ7への軍事作戦の継続を主張する星系政府の方針に全面的に従う姿勢を見せ、投降した結果、無事に終結した。この占拠事件は凡そ9日間に渡って続いた。


 ・第4次記憶抹消

 地球帰還派事件はテラーズ7星系人類の社会全体に甚大な動揺と心理的影響を与えた。その事から、星系政府はネブラスカを除いた全星系住民による国民的議論を実施し、その議論の末、ネブラスカ以外の全星系人類に対してトール理論に基づいた関連記憶の抹消処置を行う事を決定した。


記憶の抹消は第3次記憶抹消と同じ、ネブラスカ以外の全星系人類を対象とした記憶の抹消が初めて踏襲された。


 ・総人口3万5千人の回復

 3021年、テラーズ7星系の人類人口の総数が3万5千人に到達した。これによってルナウイルス感染症災害によって失われた人口の内、3分の1を回復に成功した。星系政府はこの発表日にルナウイルス感染症災害、これまでのテラーズ7への軍事作戦、宇宙での過酷な生活などで失われた全ての人命に対する追悼式典を行い、テラーズ7星系の人類のさらなる発展を祈願した。


また、星系政府はこの発表が行われた日には記念として夕食のメニューで全住民に対して1人当たり、100%培養肉のステーキ1切れ、100%培養肉のフライドチキン2個、レインボーカップケーキ2個が無料で振舞われた。


以降、テラーズ7星系の総人口は現在に至るまで長期に渡って3万3千以上‐3万7千人未満の規模の水準を維持している。


 ・ルナ7戦術研究所事件

 3143年、ルナ2のルナ7にある星系軍が管轄しているルナ7戦術研究所において、研究所の主任研究員ウィリー・ジェイコフ・クリーニーが、故意に研究用に保管されていた不思議の国のアリス粒子を流出させ、研究所の職員をフェーズ1やフェーズ2の状態へと変化させるというテロ事件が発生した。さらにはテラーズ7から研究用を目的に捕獲して収容されていた不思議の国の住民達(英語:Residents of Wonderland)も施設内に解き放った。主任研究員ウィリー・ジェイコフ・クリーニーは事件を起こした動機を、この戦争がもう無意味だと理解したからだなどと敗北主義に傾倒した主張を事件中に述べた。


時系列としては、ルナ7戦術研究所からの通信の一切が途絶するという事態が発生し、施設の管理AIがルナ7戦術研究所を中心にルナ7全体を封鎖している事が判明した。この事態に対して内務総省はルナ7戦術研究所で何が起こっているのかの調査を行う為、事態が発生した48時間後に、連邦保安局(USCP)の特殊部隊チーム、コマンド・レイダー(7名)、コマンド・ウルフ(7名)、コマンド・テイル(5名)の投入を実施した。


これら3個特殊部隊チームの内、ルナ7戦術研究所への突入はコマンド・レイダーが務め、他2部隊はルナ7戦術研究所外のルナ7の安全確保を担当した。


突入作戦はルナ2周回軌道上のマザーシップUSSスターシップから特殊部隊チームを乗せて発進したシャトル3機による3ヵ所の離着陸ポートへの着陸によって始まった。コマンド・ウルフ、コマンド・テイルの両部隊が先行して封鎖されているルナ7へと突入。ルナ7戦術研究所外部の安全確保と封鎖された施設に閉じ込められていた職員を保護した。この際は戦闘などは起きなかった。そして、施設外の安全が確保された事を受けてコマンド・レイダーがルナ7戦術研究所へと突入した。


施設内へと突入したコマンド・レイダーは突入当初、管理AIが暴走し施設を封鎖したものと考えていた。しかし、施設へと突入したコマンド・レイダーの隊員が目撃したのは、フェーズ1やフェーズ2の状態に変異した職員や研究動物達だった。さらには、収容されている筈の不思議の国の住民達が解き放たれている事を確認した。これを受けてコマンド・レイダーは戦闘状態へと突入した。


なお、この際に、このテロ事件を起こした主犯であるウィリー・ジェイコフ・クリーニーは突入してきたコマンド・レイダーを全滅させる為に意図的に施設の奥へと誘導し、そのタイミングで施設内の封鎖扉を開きフェーズ1、フェーズ2、不思議の国の住民達に部隊を襲わせた。


コマンド・レイダーは意図せず激しい戦闘を行う事になった。また、施設内部は持ち込んだ通信機では通信ができない環境であり、増援部隊や救援を呼ぶ事もできなかった。


しかし、それでもコマンド・レイダーは奮戦し、部隊は部隊員1名を残して壊滅状態へと陥ったものの、ウィリー・ジェイコフ・クリーニーを逮捕寸前にまで追い詰めた。この際にウィリー・ジェイコフ・クリーニーは部隊員に事件を起こした動機を言ったという。その後、ウィリー・ジェイコフ・クリーニーは自らフェーズ2へと変異しこの部隊員と交戦。射殺された。


生存していた部隊員は施設内の一室に立て篭もった。そして、コマンド・レイダーの突入から48時間が経過しコマンド・レイダーからの連絡が一切無くさらには施設の封鎖状態も解除されなかった事から国務総省はコマンド・レイダーに不測の事態が発生したと判断し、施設内に連邦保安局から、さらなる増援部隊の派遣をする事を決定した。この増援部隊によって施設内のフェーズ1、フェーズ2、不思議の国の住民達は一掃され、また、生存していたコマンド・レイダーの部隊員は救出された。


このテロ事件はテラーズ7の放棄後に発生したテロ事件として最悪規模の被害を星系政府に与えた。このテロ事件によってルナ7戦術研究所の職員235名が犠牲となり、コマンド・レイダーを含めて内務総省の連邦保安局職員11名が犠牲となった。


 ・第5次記憶抹消

 3153年、ルナ2のルナ5で発生した殺人事件の捜査を行っていた連邦保安局の女性捜査官が、事件捜査の過程において、独自の判断で10年前に発生したルナ7戦術研究所事件の再捜査を行った。この一連の女性捜査官による捜査範囲はルナ2、テラーズ7の衛星軌道上の星系軍や成層圏プラットホーム、ネブラスカといった広域の範囲にまで及んだ。その結果として、殺人事件を引き起こした被疑者の逮捕には成功したものの、10年前のルナ7戦術研究所事件の再捜査の結果を含むルナ5での殺人事件の捜査結果を巡って、テラーズ7星系人類の社会全体に甚大な動揺と心理的影響が発生した。


捜査結果は何者かによって捜査情報が一般にリークされた。本来はルナ7戦術研究所事件の再捜査の内容などは一切公表される予定ではなかったが、これを含む情報が公開されてしまった形である。この捜査情報のリークは当初、ルナ7戦術研究所事件の再捜査を行った女性捜査官に疑いの目がかかったが、情報がリークされた当時、この女性捜査官は連邦保安局の庁舎内で外部とは連絡できる状況にはなかった事が証明されていた為、情報をリークしたのは別の第三者であるとみられた。


テラーズ7星系人類の社会全体に甚大な動揺と心理的影響が発生した事で、星系政府はネブラスカを除いた全星系住民による国民的議論を実施し、その議論の末、ネブラスカ以外の全星系人類に対してトール理論に基づいた関連記憶の抹消処置を行う事を決定した。


―――――――――――――――――――――――――――

テラーズ7の状況


現在、テラーズ7は海や極地以外の惑星全域が、鬱蒼とした森林地帯に覆われており、木々の高さは大半が普通の植物の木々と同程度であるものの、中には高さ100m以上を有する木の存在も各地で確認されいる。湿度が高い地域が多く霧などが発生する事が多い惑星環境となっている。


なお、かつてテラーズ7星系の人類が居住していた惑星ではあるが、かつての発展や繁栄を示す痕跡は殆ど現存していない。唯一現存が確認されているのはNA大陸のA1地区にかつて人類がテラーズ7地表における次元侵食への最終防衛線として構築した干渉保護膜の発生装置である巨大なパラボラアンテナ状の構造物とその周囲の施設の跡のみである。これらの施設跡周辺はかつて、干渉保護膜を大規模に展開していた影響の為か、次元侵食の影響が他に比べて少なかった為、現代においても現存している。


・次元侵食

3153年現在、テラーズ7は惑星全域が次元侵食による影響を受けている。次元侵食に関する概略は以下の通りである。


次元侵食はグランド・ゼロと呼ばれるかつてE1原子核研究機構の施設があった位置を中心に進行している。この地域では次元空間に著しい乱れが発生しており、この次元空間の乱れから、別次元の粒子である不思議の国のアリス粒子(英語:Alice in Wonderand Particle)が流出している。この不思議の国のアリス粒子による影響が次元侵食である。


不思議の国のアリス粒子は我々の物質宇宙の法則を大幅に奇怪な方向に捻じ曲げる性質がある。


不思議の国のアリス粒子が我々の物質宇宙に与える影響段階は大きく分けて、2段階が判明している。1段階目が不思議の国(英語:Wonderland)。2段階目が鏡の国(英語:Through the Looking Glass)である。


1段階目の不思議の国は次元侵食の初期段階である。不思議の国には3段階のフェーズが存在しており、フェーズ1(正式名称:兎の穴へ落ちて 英語:Down the Rabbit Hole)、フェーズ2(正式名称:キチガイの茶会 英語:A Mad Tea Party)、フェーズ3(正式名称:誰がタルトを盗んだのか 英語:Who Stole the Tarts)がある。


これらのフェーズは不思議の国のアリス粒子の総量に比例して発生する。つまりフェーズ1しか発生していない場合はそれだけ不思議の国のアリス粒子の数が少ないという事であり、逆にフェーズ3が発生している地域はそれだけ不思議の国のアリス粒子の数が多いという事である。


細かく見て行くと、フェーズ1は、精神的影響である。不思議の国のアリス粒子には生物の精神に大きく作用する性質があり、このフェーズ1の段階に人が陥ると、錯乱状態となったり、凶暴性や殺戮性、快楽性など、多くの衝動が刺激される。その多くの場合においては生物への殺害欲が増大する。


テラーズ7放棄前に記録されたフェーズ1段階の多くの症例から例を挙げると例えば、街の一般的な青果店を夫婦で経営していた小さな店において、この夫婦は非常に仲が良い事で知られていたが、フェーズ1に陥り、婦人が、夫を殺害し夫の体から肉を削ぎ落とした後に笑顔で青果コーナーに並べ、さらには店に通りかかった人までも笑顔を浮かべ笑いながら無差別に襲い、殺害した後に同じように青果コーナー並べていた例。


人が大勢いる往来の場において、自分自身に灯油をかけて火をつけた上、笑いながら周囲を走り回り、近くの人々に次々と燃えた状態でハグをして犠牲者を増やした例。


集団で商店街のアーケード街の天窓の金属製の支柱を使って一斉に首吊りを行った例。


幼稚園や、エレメンタリー・スクール、ジュニア・ハイ・スクールなどで発生した児童同士による猟奇的な乱交行為の例。この例では、大抵の場合、多くの犠牲者が出た。


フェーズ1による混乱を終息させる為に投入された星系軍の部隊員や警察の警察官のなかでフェーズ1を発症し味方や周囲の人々を意味不明なわめき声を上げながら無差別に発砲した例。


これらの例はフェーズ1で発生した症例のほんの極一部である。これよりも遥かに猟奇的かつ凄惨な例もテラーズ7では至る所で発生した。フェーズ1へと至った生物の攻撃対象は家族や友人なども一切問わない場合が多かったとされている。


フェーズ2は、生物の姿形の変異である。多くの場合、到底、元の生物とは思えない様な存在や、もしくは不定形に形の定まらない存在へと変異した。なお、この場合の不定形に形の定まらない存在とは、アメーバの様な不定形生物の存在を指している訳ではない。


フェーズ2における不定形に形の定まらない存在とは、常に様々な物へと変化を繰り返す状態の事である。この時に変化する物は生物、非生物を問わない。例としては、人間がフェーズ2を発症し、不定形に形の定まらない存在へと変異をした場合、多くの場合において人間は、下半身よりも上半身が変化する場合が多いが、この時、上半身は卵型に大きく膨れ上がった様な姿となる。


そしてこの状態において、テラーズ7放棄前に記録されたフェーズ2段階の多くの症例から例を挙げると例えば、もともと40代の男性であった人物がフェーズ2へと至り、上半身が卵型に膨れ上がり、顔が巨大化しそして、その口の中から別の人物の顔が現れ、さらにその別の人物の口の中から別の人物の顔が現れては消えるのを繰り返す例。


22歳女性だった人物がフェーズ2へと至った例では、同じ様に上半身が卵型に膨れ上がり、顔が巨大化しそして、その口の中から別の人物の顔が現れるが、その顔の口の中からは、上記の例とは違い、大きな靴やテーブル、高級バックなどが次々と現れては消えるのを繰り返す例。


これらの例はフェーズ2で発生した症例のほんの極一部である。フェーズ2時の不定形に形の定まらない存在は、現在までに研究により、過去の無数の症例データから、フェーズ2時に現れる体が変化して現れる物体などは、フェーズ2に変化する前にその生物がそれまで経験した人生や思考などに影響して出現しそれに沿ってフェーズ2へと陥った生物は姿形を変えていると推測されている。


到底、元の生物とは思えない様な存在とは、言葉の通り元が例えば人間であっても動物であっても、元の姿から変化したとは到底思えない様な姿に変化した状態である。


この状態のフェーズ2は例えば、例を挙げると、元が人間であったにも関わらず、人間大サイズの大きな猫に姿を変えた例。元が人間であったにも関わらず、自身の自由意識で動く事ができるイスへと姿を変えた例。元が人間であったにも関わらず、人面を持つ巨大な芋虫に姿を変えた例。元が人間であったにも関わらず、手足の生えたトランプに姿を変えた例。逆に元が動物であったにも関わらず人間に姿を変えた例や、元が動物であったにも関わらず意思を持った自動車に姿を変えた例など、無数の事例が存在する。


フェーズ2は総じて当てはまる特徴があり、フェーズ1と同じ様な精神状態に陥っている場合が非常に多い。


なお、元の生物とは思えない様な存在に陥る場合と、不定形に形の定まらない存在の状態に陥る場合の明確な基準は明らかになっていない。


また、フェーズ1を発症していなくても突然、フェーズ2を発症する事もある。


フェーズ2は非常に危険な存在である。フェーズ2が発生している地域では不思議の国のアリス粒子の影響が強い傾向にあり、すでに既存の物理法則が大きく変容している傾向にある。例えば、テラーズ7の放棄直前に星系軍はトランプの兵隊の一団と激しい交戦をしていた記録が残っているが、このトランプの兵隊は槍や剣や弓で武装をしていたが、到底、物体の運動エネルギーや質量などから、星系軍側の戦車、装甲車、航空機などにダメージを与えられる筈も無いにも関わらず、いとも簡単に容易にダメージを与えられた。


これが、不思議の国のアリス粒子によって我々の物質宇宙が変容していっている様相である。


「まるで戦車の鋼鉄の装甲を紙を切る様に玩具みたいな剣が切り裂いた」これはテラーズ7放棄前の戦いの様相を表した言葉の一つである。実際にこの様な事がテラーズ7の至る所で発生した。


なお、フェーズ2を発症している生物を捕獲し不思議の国のアリス粒子の影響が全く無い空間、もしくは低密度な空間に連れていった場合は、上記の様な我々の物質宇宙の物理法則から外れた異常現状を起こす事はない。ただし、フェーズ2を発症している生物自体に関しては、体内で大量の不思議の国のアリス粒子を有している事から、姿であったり形や精神性などは不思議の国のアリス粒子影響下の地域と変わらない。


フェーズ3は、非生物物質の変異である。フェーズ3は不思議の国の最終段階に当たる。


それまで生物の変異までの影響範囲で済んでいた不思議の国のアリス粒子の影響が非生物の物質にまで影響を拡大させた形である。


次元侵食がフェーズ3の段階にまで進行すると、不思議の国のアリス粒子の影響によって、例えば金属製のスプーンが何らかの動物の様な姿へと変異しさらには意識まで芽生えたり、プラスチック製の物が巨木へと変異する様な事が公然と起こる様になる。


フェーズ3の変異によって至る変異後の形態については実質、際限はないと考えられており、動物や植物に変化する事もあれば、非生物の物体から別の非生物の物体へと変化する事もある。非生物の物体から別の非生物の物体への変化は、例えば、金属製のスプーンがレンガのブロックに変化したり、プラスチック製の物が、金属製の懐中時計に変化する様な事も公然と起こる。


フェーズ2の到底、元の生物とは思えない様な存在と同じ様に、フェーズ3での変異後の形態も非常に多種多様である。非生物の物体が別の非生物の物体へと変化した様に一見見えたが、実は、その物体からは手足の様な器官が生え、生物として意識をもって行動する様になる事も当然ある。


フェーズ3の変異には法則性は殆ど見られない。無作為に変異は発生する。唯一の法則性と言えるのは植物へ変異する場合のみである。フェーズ3によって変異し、その後に植物へと変異した場合、その植物は既存の植物学では知られていない未知の植物であったり、見た目であったり、性質を持った植物となる事が共通している。


フェーズ3で発生する植物は、その見た目がまるで御伽噺にでも登場してきそうな見た目の植物であったり、地球系の植物には見られない様な姿形をしていたり、暗くなると蛍光色で色とりどりに明るく輝く種類が多くあったりなど、その種類は非常に多種多様である。


これらの植物は普通の植物と変らない種類もあるが、異常な性質をもつ種類も存在している。例えば、木の実を食べた生物を、その木の幼木に姿を変えてしまう樹木。意思を持ち会話をする花々。徘徊し動物を捕獲しては口で動物を捕食する自由に動き回るキノコ。生物に対して積極的に話しかけてくる花々だが、もしも話しかけられた生物が一定時間以上、その花々と会話をしてしまうと変異を起こし同じ花に変えられてしまう花々。お菓子を実らせる樹木。近づいてきた生物の行く手を通せんぼし、通行を妨害する嫌がらせをしてくる木など。これらの異常性質の例はほんの一例である。


フェーズ3で変異した存在もフェーズ2と同様に不思議の国のアリス粒子の影響下にある空間においては、我々の物質宇宙の物理法則から外れ大きく変容している傾向にある。


不思議の国の段階の次元侵食は、まず最初に、グランド・ゼロから不思議の国のアリス粒子が広域に拡散。そして粒子の濃度が一定量を超えるとフェーズ1が発生する様になり、フェーズ1を発症する生物の数は粒子の濃度に比例し増大していく。


そして、さらに粒子の濃度が濃くなるとフェーズ2が発生し、そして、さらに濃度が上がると最後にはフェーズ3が発生する。


しかし、グランド・ゼロから放出される不思議の国のアリス粒子自体の量はグランド・ゼロ周辺地域をフェーズ2やフェーズ3に変異させるだけの量が放出されているものの、それ以上先の地域をフェーズ2やフェーズ3の状態にするだけの影響力はない。


にも拘らず、なぜ、次元侵食が進んでしまったのかというと、これにはフェーズ2やフェーズ3と不思議の国のアリス粒子の特性が関係している。不思議の国のアリス粒子にはフェーズ2やフェーズ3に変異した生物や物体の行動に帯動する性質があり、これが次元侵食が進行する大きな要因となった。


つまり、フェーズ2やフェーズ3がフェーズ1の影響下の地域へと進む事で、フェーズ2、フェーズ3に帯動してきた大気中の不思議の国のアリス粒子によって、その地域の不思議の国のアリス粒子の濃度がフェーズ2やフェーズ3を発生しうるだけの量に増大させる事で次元侵食の影響範囲が拡大していくという状況である。


ただし、極少数体のフェーズ2やフェーズ3の進出程度では、帯動する不思議の国のアリス粒子の量も少ない為、事態が悪化する事は殆ど無い。


この様な不思議の国のアリス粒子の特性から当初は、テラーズ7星系の人類は次元侵食を侵攻してきたフェーズ2やフェーズ3を軍事的に撃退する事によって次元侵食のさらなる影響範囲の拡大の抑止に成功していた。


しかし、AE1大陸、AE2大陸が次元侵食によって陥落すると状況は大きく変った。上記の様にそれまでは上記の様な、特性で進んでいた次元侵食が突如として、干渉保護膜によって守られていたA1地区以外のテラーズ7の惑星全域へと急拡大した。フェーズ2、フェーズ3を発生させるだけの濃度の不思議の国のアリス粒子がテラーズ7の大部分の地域を飲み込んだ結果となった。


挿絵(By みてみん)

※星系軍海軍の航空母艦ジョージ・ワシントンの最期を捉えた衛星映像。2938年に撮影。洋上を航行していた空母の直下の海中から空母よりも遥かに巨大な人間の顔が真上を向き、大きな口を開けた状態で出現、浮上しそのまま空母を一呑みにする様子が分かる。次元侵食が、AE1大陸、AE2大陸を越えて急拡大した際に生物、非生物の姿を問わずこの様な巨大な物体が短期間ではあったが各地で発生する現象も起きた。




なお、この急拡大の原因は現在でも不明であるが、AE1大陸、AE2大陸が次元侵食によって完全に呑まれた事によって、不思議の国のアリス粒子のなんらかの特性からこの急拡大の事態が発生したのではないかと推測されている。


その後、テラーズ7は最後に残っていたA1地区が陥落した事で惑星全域が次元侵食に完全に呑まれる結果となったが、ここまでが不思議の国の段階である。


厳密には不思議の国とこの後、解説する鏡の国の両段階の明確な境がいつあったのかは定かではないが、現時点で明確に記録されている情報の範囲内においては、テラーズ7が放棄され惑星全域が次元侵食に呑まれた時点を不思議の国の段階と仮定義している。これ以降は鏡の国の段階と仮定義されている。


テラーズ7の放棄後、テラーズ7星系の人類が再びテラーズ7の惑星地表に降り立ったのは2975年の事であり、テラーズ7の放棄が2951年である為、実に24年間もの間、人類は地表には降り立っておらず、この間、まともな次元侵食の状況の観測をしていなかった事が観測データの空白期間を生んでしまった。


2975年に強襲揚陸作戦フリーダム2975が行われ160名の犠牲者を出した事によって、テラーズ7星系の人類はテラーズ7の惑星地表の状況が、自分たちが脱出した時点の状況とは変っている事に気がついた。


このテラーズ7を放棄した時よりも変化していた次元侵食の影響段階の事を鏡の国と呼ぶ。


鏡の国は一見すると、不思議の国よりも環境が安定している様に見える。これは、地表の変異しうる物体をすべて変異しつくした為である。つまりは、新たに変異する物体は惑星外より飛来した物体のみという状況である。またフェーズ2における不定形の存在はテラーズ7の惑星地表からは完全に消滅し、惑星上のすべての存在が何らかの定まった姿形を持っている(※ただし、フェーズ3の植物の説明でもあった様に動植物の異常な性質によって姿を変えられてしまう事はある)。


しかしながら、不思議の国のアリス粒子の濃度が異常に濃く、さらにはその影響力が不思議の国の影響段階に比べて遥かに高くなっている。不思議の国の影響段階下においては、次元侵食の強い影響下にある地域での軍事作戦では、軍隊の兵士を次元侵食の影響から守るには、干渉保護膜を発生させる装置を部隊後方に置き、兵士達自身は、干渉保護膜を発生させる装置を持つ必要はなかった。これでも充分にフェーズ1やフェーズ2に兵士達が変異しない防御が可能であった。


しかし、鏡の国の影響段階下になると、不思議の国のアリス粒子の影響力が強くなり、干渉保護膜の防御性能が大幅に抑制されてしまう事が明らかとなった。フェーズ3をある程度の範囲内で発生させない程度の防御効果は得られるものの、フェーズ1、フェーズ2に関しては、干渉保護膜の発生装置から少しでも離れると、すぐに発症するリスクが非常に高まった。これはどれだけ強力な干渉保護膜の発生装置を持ち込んでも同じであり、鏡の国の影響段階下の不思議の国のアリス粒子の濃度の環境では、フェーズ1、フェーズ2に対する防御力は防御装置から精々、数メートル程度の範囲内までしか防御効果は得られない。


この為、不思議の国の影響段階と同じ次元侵食の対策を行って、鏡の国の影響段階下のテラーズ7で行われた強襲揚陸作戦フリーダム2975は失敗した。現在では、この次元侵食の影響段階(鏡の国)が明らかとなった事から、テラーズ7への降下作戦を行う際には、必ず各個人ごとに防御装置が与えられている。


その他、鏡の国の影響下においては、フェーズ2における、まるで、消えた不定形の存在の代わりかの様な新たな存在の発生の確認がされている。これは、姿形が、全身を黒い泥で作った様な見た目をしており、人型を模したクッキーであるジンジャーブレッドマンや、動物クッキー、もしくはそれらの成り損ないの様な不恰好な見た目の様にも見える外見をした存在達が各地で確認されている。これらの存在はこれらの外見的な特徴に加えて共通する特徴としてギョロっとした印象を受ける瞳を持っている。なお、この瞳はこれら存在の体が黒い泥のような物質で構成されているのとは一転して、非常に生物的な瞳である。この為、これら存在にある瞳は体は黒い泥の様な見た目であるにも関わらず、目だけは、はっきり白目と角膜の色が分かるという姿をしている。


これらの新たに確認された存在の事を、不思議の国の住民達(英語:Residents of Wonderland)と呼ぶ。


不思議の国の住民達は、人間と同等の知性を有しているが、その知性は人間の児童程度程のものとなっている。ただし、知性は有しているが、感情に関しては、喜怒哀楽の内、殆どの場合、喜や楽の感情しか殆どの場合は見せないという特徴がある。これは星系軍側と不思議の国の住民達が交戦をしたとしても、同じであり正常な人間の側から見ると戦闘中にも関わらず、非常に楽しそうに子供が遊んでいるかの様にさえ見える。


不思議の国の住民達は自身の生命に対する執着がある様にも見えず、死や体の破損に対して非常に無関心という特徴がある。


不思議の国の住民達はフェーズ2やフェーズ3と比較して同程度もしくは、それ以上の危険性を有している。不思議の国の住民達が人間と直接対峙した場合、ほぼ100%に近い確率で確実に襲い掛かってくるが、不思議の国の住民達は体を自由自在に縮退する事が可能で、さらには、体をバラバラにしたとしてもバラバラになった体が集まりすぐに元に戻ってしまうという特性がある。


不思議の国の住民達を殺傷するには、通常兵器では事実上不可能であり、トール理論を用いた粒子兵器などで、攻撃を行う必要が絶対的に必要である。この為、トール理論を用いない通常兵器は次元侵食に対する戦闘で使う武器としては、火力不足による2線級装備の扱いに変わってしまった。なお、トール理論を用いた粒子兵器を使っても、完全な無力化には充分な量の攻撃を加える必要がある。


鏡の国の段階へと到った次元侵食はそれまでの不思議の国の段階とは大きく一線を引く脅威をもたらす。


不思議の国の住民達を含めて次元侵食によって生まれた知性を持つ存在(知性を持ち生物的または非生物的もしくは、その両方を兼ね備える姿形の定まった外見を有する存在や、不思議の国の住民達のこと)の多くは、各地で村や町の建設を始める。これらの村や町の姿は、宇宙進出時代以前の地球時代における中世ヨーロッパ時代風の建物であったり、御伽噺に出てくる様な姿をしている。


この町や村の存在はテラーズ7星系の人類にとって非常に潜在的な脅威となっており、発見次第、優先的に破壊し殲滅する目標となっている。


これらの町や村はその建築を放置するとその規模をどんどん拡大させる。そして、次第に建設地点を中心に建物を乱雑に積み上げるかの様に一見、無計画に見えるかの様な増築をしていき、その規模は現在、確認されている最も大きい例でも、標高3,000mを超える規模の突起状の構造物を形勢する。この突起状の構造物の事を、不思議の国の山(英語:Mountains of Wonderland)と呼ぶ。


挿絵(By みてみん)

※不思議の国の山を撮影した映像。動画を再生をするには画像をクリックして下さい。


不思議の国の山は厳密には人類の脅威となる構造物かどうかは実は、はっきりとは判っていない。しかし、この構造物は上空から見ると、開口部を形勢し、その内部に巨大な筒状空間を形勢している。さらに、その開口部がルナ2や戦闘ステーションを必ず、その軸線上に捉える様に建設される。これは地球上、どこに建設されても必ず、この様な建築のされ方をする。この様な様子から、まるで巨大な砲口をルナ2や戦闘ステーションへと向けている様に見える為、星系軍はこれをテラーズ7星系の人類に対する極めて潜在的な脅威と位置づけ、この不思議の国の山が形勢される前に、町や村の段階での破壊する事を方針としている。なお、町や村の段階で破壊できず、不思議の国の山を形成し始めた場合は最優先の殲滅目標となる。


町や村や、不思議の国の山の殲滅作戦は非常に危険である。確実に破壊するには地上部隊を派遣する必要があるが、次元侵食で生まれた知性を持つ存在の人口比率が非常に高い。人口比率は村よりも町の方が高く、町よりも不思議の国の山の方が高い傾向にある。これらの建築物のある地域では、例えば、不思議の国の住民達に到っては、小さな一軒家内に大量の個体が隙間なく、まるで泥のプールの様に詰まっており、人間が近づくと、家の扉を開けて中から大量の不思議の国の住民達の個体が現れるという事すらも起きる事がある。


建設期間に関しては、村や町の状態から不思議の国の山を形成するまでにかかる建設期間は凡そ1年と考えられている。村や町は、すぐにある日突然出現したと言えるレベルですぐに形成される。


実は村未満の建築物などはテラーズ7上の各地に点在しているのが確認されており、一定戸数以上の建物が集まると村と定義される状況になる。しかしながら、テラーズ7星系の人類にとって幸運な事に村や町、不思議の国の山が形成される頻度はそこまで高くはない。1年間に確認される村や町の発生頻度は数件程度である。


人類が次元侵食に対して有効的な対処を行うのが難しい1つの要因として、不思議の国のアリス粒子の特性である、不思議の国のアリス粒子によって変異した物体への保存効果が存在する。


次元侵食の原理をよく知らない人からすれば、一見、次元侵食に呑まれたテラーズ7への軍事作戦は、原子力爆弾や核融合爆弾をテラーズ7上に無制限に投下すれば、地表の脅威は一掃できそうに感じる。しかし、その様な軍事作戦は次元侵食に対して取られていない。理由は、効果が得られない為である。その主たる原因が、不思議の国のアリス粒子の特性である不思議の国のアリス粒子によって変異した物体への保存効果である。


この保存効果は、不思議の国のアリス粒子を帯びないエネルギーが、不思議の国のアリス粒子が一定濃度以上ある空間において、発生した場合に、一定量以上のエネルギーは急速に減衰してしまうという効果である。


銃弾や一般的な爆発物程度のエネルギーでは、この保存効果は発生しないが、TNT換算にして0.5‐1.2kt相当以上のエネルギーが発生すると、この保存効果は発生する。この保存効果が発生すると、発生したエネルギーの急速な減衰現象が発生する。減衰幅は非常に大きく、例えば、どれだけ威力の高い核爆弾を使用したとしても、最終的には通常の航空爆弾程度の威力にまで減衰してしまう。


この保存効果がある為に、原子力爆弾や核融合爆弾による攻撃は選択肢に入らない。原子力爆弾や核融合爆弾を使用しても、通常の航空爆弾と同程度の威力しか発揮できないならば、通常の航空爆弾よりも生産コストの高い原子力爆弾や核融合爆弾を使用するメリットが無い為である。


この保存効果はテラーズ7の放棄前から既に存在が知られており、保存効果の発生も確認されていた。つまり、不思議の国の段階でテラーズ7星系の人類は原子力爆弾や核融合爆弾の強力な破壊力が殆ど無効化されてしまった格好である。


この保存効果は不思議の国のアリス粒子を帯びないエネルギーに対して発生するが、一方で不思議の国のアリス粒子を帯びたエネルギーに対しては、この保存効果は発生しないと考えられている。現時点は、原子力爆弾や核融合爆弾程の高威力の不思議の国のアリス粒子を用いた兵器は存在していない為、この点を検証するには到っていないが、以下の不思議の国のアリス粒子の特性からこの可能性は高いものと推測されている。


不思議の国のアリス粒子の影響によって生み出されたあらゆる物体に対して、不思議の国のアリス粒子の影響下に一切ないエネルギーを利用をして攻撃を行った場合(銃撃でも爆撃でもなんでも良い)、その効果性はあまりよくないものとなる。例えば、不思議の国の住民達に対して機関砲を用いて銃撃を行った場合、対象の不思議の国の住民達の個体は攻撃を受けた時こそはバラバラに飛び散るだろうが、しばらくすれば、一ヵ所に集まりまた元通りに戻ってしまう。しかし、不思議の国のアリス粒子を利用した粒子兵器を用いて攻撃すれば、再生速度は明らかに遅くするなり、さらには、通常兵器では絶命させるのに相当量の攻撃を加えなければならないが、不思議の国のアリス粒子を利用した粒子兵器ならば、通常兵器の攻撃量よりも遥かに少ない数の攻撃で対象の個体を絶命に至らしめる事ができる。


これは不思議の国のアリス粒子でできた物体に対して、同じく不思議の国のアリス粒子を使って攻撃を行っているからこそ、この様な結果が得られていると考えられている。


現在、星系軍がテラーズ7の地表での軍事作戦で使用している武装は不思議の国のアリス粒子を攻撃手段に応用した武装が主となっている。


なお、それでも完全に不思議の国のアリス粒子に攻撃手段を依存している訳ではない。通常兵器なども組み合わせて星系軍は作戦を行っている。不思議の国のアリス粒子を帯びない兵器であっても、TNT換算にして0.5‐1.2kt以下の性能であるならば、スペック通りの性能を見せる。


また、先程の解説で原子力爆弾や核融合爆弾を使用しても、通常の航空爆弾と同程度の威力しか発揮できないならば、通常の航空爆弾よりも生産コストの高い原子力爆弾や核融合爆弾を使用するメリットが無いと説明したが、実は厳密に言えば、完全にメリットが無いかと問われると実はそうではない。


不思議の国のアリス粒子を有しないTNT換算にして0.5‐1.2kt以上のエネルギーは、保存効果によってその本来のエネルギーを大幅に減衰させるが、この時、実はエネルギーが発生した瞬間に、強烈な発光現象が発生し同時に衝撃波を発生させる現象を発生させる。衝撃波の規模はもしも使用されたのが戦略核弾頭であった場合には、半径数十kmから数百kmの規模に及ぶ。


この衝撃波は不思議の国のアリス粒子が空間中を急速に移動した為に発生したもので、爆心地から遠ざかる様に不思議の国のアリス粒子が広域に拡散される。爆発の後はそのエリア内の不思議の国のアリス粒子の濃度はそれ以外の地域と比較すれば低い値となる。


空間中の不思議の国のアリス粒子の濃度を低くする効果はある為、完全にメリットが無いかと問われれば嘘となる。しかし、核兵器は生産コストが高く、さらには、拡散されても不思議の国のアリス粒子は一定の期間の後には元通りの濃度に戻ってしまう為、1度や2度の作戦で使うには作戦のコストが高くなってしまうという問題もある。しかも保存効果によって破壊力に関しては殆ど期待できない。


核兵器を使用するよりも、現在のテラーズ7星系の人類にとって最もコストパフォーマンスが良いのは後述する戦闘ステーションの兵器である。


TNT換算にして0.5‐1.2kt以上のエネルギーを発生させる不思議の国のアリス粒子を帯びないエネルギーは威力が大幅に減衰されると解説したが、実はこれも厳密に言えば部分的に例外が存在する。それが星系軍では戦闘ステーションで利用されている重電子砲の様な荷電粒子の事である。


高出力の荷電粒子ビームを一定速度以上で撃った場合、この荷電粒子ビームが不思議の国のアリス粒子の濃度が高い空間に着弾すると、この時の不思議の国のアリス粒子の保存効果によるエネルギーの減衰幅は凡そ最大でも半分から4分の1程度にまで軽減される。戦闘ステーションの重電子砲は不思議の国のアリス粒子が存在しない空間で使用する場合には戦略核弾頭と同等規模の破壊力を発生させる為、単純計算でも戦闘ステーションの重電子砲をテラーズ7の地表に対して使用した場合は充分に戦術核攻撃と同等規模程度の破壊効果は得られる計算である。


これによって戦闘ステーションは半径数kmの範囲内を焦土とする事が可能である。つまり、TNT換算にして0.5‐1.2kt以上の核兵器を使用した場合は威力の殆どが失われてしまうのに対して重電子砲は威力の多くを維持できる。


また、重電子砲による荷電粒子ビームも核爆発と同じ様に、戦略核爆発級の不思議の国のアリス粒子の拡散効果を得る事もできる。以上の理由から、現在の星系軍は核爆弾はコストパフォーマンスの点から作戦には使用せず、また生産も行っておらず、代わりに核兵器級の破壊効果と拡散効果、そして、核兵器は製造コストがかかるのに対して重電子砲は電力を充電すれば無制限に使用できるというコスト面から戦闘ステーションが使われている。


しかしながら、先程、不思議の国のアリス粒子の影響によって生み出されたあらゆる物体に対して、不思議の国のアリス粒子を帯びたエネルギーによる攻撃と、不思議の国のアリス粒子を帯びないエネルギーによる攻撃の違いに関する解説を先程行ったが、戦闘ステーションは前述した様に確かに戦術核兵器クラスの破壊力を有するが、不思議の国のアリス粒子を有さない攻撃手段の為、破壊エネルギーが最も強い着弾地点を中心とした爆心地付近以外では、不思議の国の住民達を含めて、不思議の国のアリス粒子の影響によって生み出された生物に対する殺傷能力は低下してしまう傾向にある。


なお、現在のテラーズ7の不思議の国のアリス粒子の濃度は、現在、星系軍が保有している干渉保護膜の発生装置では、フェーズ3以外のフェーズ1やフェーズ2を一切防ぐ事ができない濃度に達している。その為、地上に部隊を展開する必要がある任務を行う場合には、戦闘ステーションによる重電子砲による軌道爆撃によって不思議の国のアリス粒子を周囲に拡散させて作戦エリア内の不思議の国のアリス粒子の濃度を低くして、星系軍が保有している干渉保護膜の発生装置でも防御効果が得られる様にしてから行われる。


また、戦闘ステーションや大気圏内の部隊を含めてテラーズ7の惑星地表の特定の範囲内を徹底的に破壊したとしても、最短数日から最長でも数週間以内には、村や町や不思議の国の山は、不思議の国のアリス粒子の影響によって生み出された存在達が集まって建設を始めなければすぐには再建される事は無いものの、それ以外の自然環境は殆ど元通りの環境に戻ってしまう(※ただし、荷電粒子ビームなどによって拡散された不思議の国のアリス粒子の濃度が完全に元通りになるには1ヶ月以上の半年未満の時間が平均してかかる傾向にある)


不思議の国のアリス粒子の濃度は、テラーズ7地表部に近づけば近づく程、濃く影響も強い傾向にある。高度1,0000mまでは、不思議の国のアリス粒子を拡散させなければ、人間は干渉保護膜の発生装置があっても活動できないエリア。高度1,0000mから高度1,5000mは、不思議の国のアリス粒子を拡散させなくても干渉保護膜の発生装置があれば人間が活動できるエリア。それ以上の高度は不思議の国のアリス粒子が殆ど存在しないエリアで、人間が生身でも安全な活動ができるエリア。大気圏外のエリアは不思議の国のアリス粒子は自然界には一切存在しない。


・全惑星戦術システム

全惑星戦術システムとはテラーズ7の放棄前に考案され設計され開発、構築された攻撃から整備、兵站までを含めた複合的な軍事システムである。


2943年、フェーズ2及びフェーズ3が、A1地区の沿岸線の防衛線を突破した事で当時の星系政府は宇宙空間への脱出を計画した。しかし、宇宙への脱出とはいっても、技術的な問題から別の惑星への移住はできず、また同様の問題で星系外へと出るという訳でもなかった為、必然的にテラーズ7の衛星であるルナ2が脱出場所となった。


しかし、ルナ2はテラーズ7の衛星であり、テラーズ7に非常に近かった事から、脱出してもテラーズ7だけで、次元侵食の進行が終わるとの確証を得られなかった星系政府は、そこで、宇宙へと脱出した後もテラーズ7に対して軍事作戦を持続的に恒久的に行う事ができる軍事システムの存在を求めた。


これによって開発、構築されたのが現在の全惑星戦術システムである。全惑星戦術システムの計画はA1地区が陥落した事によって当初の計画からは大幅な修正を余儀なくはされたが、基本的なシステムの意義は失われずに構築され、現在でも充分に恒久的な戦術システムとして機能している。


全惑星戦術システムを構成する星系政府が所有する施設は以下の通りである。役割と関係性、概要を解説する。以下の設備が循環的な連携をする事で、テラーズ7星系の人類はテラーズ7での恒久的な軍事作戦の継続を可能としている。


[ルナ2]

役割:次元侵食に対する人類の後方安全地帯。テラーズ7星系最大の人類の居住地。テラーズ7星系の最重要工業製品生産拠点。テラーズ7星系の鉱石資源の最重要採掘生産拠点。燃料の限定的な生産拠点。食料や水の限定的な生産拠点。


概要:ルナ1からルナ7までの巨大溶岩洞内に建設された居住区画、資源採掘区画、工業区画、食糧生産区画からなる施設。


[マザーシップ]

役割:次元侵食に対する星系軍の最前線基地としての機能。シャトル、大気圏内シャトル、補給機、投下機を運用し、テラーズ7に対する軍事作戦を展開する。貨物船としての機能。ルナ2から、エレベーター・ネブラスカ、エレベーター・UAE、武装ステーション、成層圏プラットフォームへの物資や人員の運搬。エレベーター・ネブラスカから、ルナ2、成層圏プラットフォームへの物資の運搬。エレベーター・UAEから、ルナ2への物資の運搬。


概要:テラーズ7への軍事作戦を展開する為の最前線基地としての機能の他、テラーズ7の衛星軌道からルナ2の周回軌道間を物資、人員を載せて輸送ができる星系軍が保有する最大の宇宙船。


[シャトル]

役割:マザーシップの艦載機としてマザーシップとルナ2、宇宙空間にある施設の間での物資や人員の運搬。艦載機としてではなくルナ2の巨大溶岩洞間の物資や人員の運搬。テラーズ2への強襲揚陸作戦時にテラーズ7へと降下し地上に強行着陸し部隊や物資を運搬する。


概要:艦載機、連絡機、強襲揚陸という幅広い使用用途のある大型シャトル。


[大気圏内シャトル]

役割:マザーシップと成層圏プラットホーム間を行き来し人員や物資の運搬を行う。


概要:現在、星系軍が運用している有人シャトルの中では唯一、大気圏内へと突入後にも再利用ができるシャトル。また、成層圏プラットホームへの着艦能力がある唯一の有人シャトル。


[補給機]

役割:マザーシップから無人化戦術攻撃システム機に対する弾薬の運搬及び補給。


概要:無人機であり、AIによる完全なオートメーション作業によって無人化戦術攻撃システム機へ弾薬の供給を行うシャトル。無人化戦術攻撃システム機に対して下方から近づき、ランデヴーを行い、弾薬庫のハッチを開けた無人化戦術攻撃システム機に対して、弾薬を補給する。補給後は速やかにテラーズ7の大気圏内から離脱しマザーシップへと帰還する。


[投下機]

役割:地上部隊への追加支援。地上への物資の運搬。


概要:大型シャトルなどで、惑星上に降下した地上部隊を援助する為の物資を送る為の装置。


[エレベーター・ネブラスカ]

役割:テラーズ7星系の人類にとって最大の食料と水の生産供給拠点。


概要:もともとは次元侵食に対応して建設されたテラーズ7の地表と宇宙を繋ぐ物資運搬用の軌道エレベーター。現在は高度10,791mの地点で、それより下の部分はテラーズ7の放棄時に爆破された為に寸断されて存在しておらず、それより上層の現在のエレベーターはテラーズ7上を巨大な8の字を画く様な軌跡を画きながら空中に浮いている。


エレベーターの本体は筒状の構造物であり、エレベーター・ネブラスカはその筒状構造物にさらに、低軌道ステーション、静止軌道ステーション、高軌道ステーションなどの大型施設を持つ構造。現在はエレベーターとしての機能は使われていないが、エレベーター本体の筒状構造物を利用してテラーズ7の大気を吸い上げ、水や酸素を生産。また、生産された水を利用して、ステーション内の食糧生産施設で食料物資の生産を行っている。


[エレベーター・UAE]

役割:テラーズ7星系最大の液体酸素、液体水素の生産拠点。


概要:もともとは次元侵食に対応して建設されたテラーズ7の地表と宇宙を繋ぐ物資運搬用の軌道エレベーター。建造はエレベーター・ネブラスカよりも早く行われた。現在は高度10,801mの地点で、それより下の部分はテラーズ7の放棄時に爆破された為に寸断されて存在しておらず、それより上層の現在のエレベーターはテラーズ7上を巨大な8の字を画く様な軌跡を画きながら空中に浮いている。


エレベーターの本体は筒状の構造物であり、エレベーター・UAEはその筒状構造物にさらに、低軌道ステーション、静止軌道ステーション、高軌道ステーションなどの施設を持つ構造。しかしながら、エレベーター・UAEはテラーズ7星系の人類が高酸素帯による侵食による孤立後では初めて建設した軌道エレベーターであった為、エレベーター・ネブラスカに比べて規模は小さく、極少数の管理人員を除いては殆ど無人で運用されている。現在はエレベーターとしての機能は使われていないが、エレベーター本体の筒状構造物を利用してテラーズ7の大気を吸い上げ、その大気を材料に静止軌道ステーションにあるプラントにて液体酸素と液体水素を生産。生産した物を最上部の高軌道ステーションにて、マザーシップ用の外付け燃料タンクに供給している。


[簡易スペースドック]

役割:マザーシップ用の外付け燃料タンクと格納ブロックをいつでも、来訪したマザーシップに対して付け外しを行うエリア。


概要:簡易スペースドックは、マザーシップ用の外付けの燃料タンクと、外付けの格納ブロックを宇宙空間上に整列、待機させ、そこに来訪したマザーシップに対して、マザーシップの指示通りに付け替えをするエリア。エレベーター・UAEの周辺宙域及び、ルナ2の周回軌道上に簡易スペースドックは存在し、そこで、燃料タンクや格納庫の付け替えを行う仕組み。


なお、簡易スペースドックと呼ばれてはいるが、明確なドック設備などは一切存在せず、単に外付けの燃料タンクと、外付けの格納ブロックが宇宙空間上に規則正しく整列して存在している環境である。マザーシップからの燃料タンクと格納ブロックの取り外しや装着の作業は、燃料タンクと、格納ブロックに元々備わっている姿勢制御エンジンや低出力エンジンの機能によって行われる。


[戦闘ステーション]

役割:衛星軌道上からのテラーズ7への直接攻撃。不思議の国のアリス粒子の拡散。


概要:テラーズ7の衛星軌道上に存在する戦闘用の宇宙ステーション。


[成層圏プラットフォーム]

役割:次元侵食に対するテラーズ7星系の人類の恒久的な最前線基地としての機能。無人化戦術攻撃システム機の維持管理。テラーズ7の地表へと派遣された部隊の回収。


概要:無人化戦術攻撃システム機を維持管理するプラットフォームと、テラーズ7の地表へと派遣された部隊の回収を目的としたプラットフォームの2種類が存在。


[無人化戦術攻撃システム機]

役割:次元侵食に対するテラーズ7大気圏内における人類の恒久的に飛び続け爆撃機としての機能。テラーズ7への攻撃。


概要:次元侵食によって地上に拠点を失ったテラーズ7の環境において、ソーラーパネルとトール機関、双方の発電能力をハイブリットに利用する事により、飛行等で利用するエネルギーを外部からの供給に依存する事なく、完全に自給自足する事で部品の消耗などの問題を除けば、エネルギー的な理由では、半永久的な作戦行動を可能とした無人爆撃機。非常に長期間に渡って飛行が可能である事から、攻撃大気衛星に分類される。成層圏プラットフォームでの維持と管理を定期的に行う事によって恒久的に飛び続ける事が可能。


なお、無人化戦術攻撃システム機はテラーズ7の放棄直前に完成した兵器である。トール機関が搭載されているにも関わらず、ソーラーパネルが搭載されているのは、無人化戦術攻撃システム機に搭載されているトール機関が、現在のトール機関程の性能がないという性能上の問題がある為である。当時の技術ではソーラーパネルで足りない電力を補う必要があった。


[地上部隊]

役割:テラーズ7地表での攻撃任務の遂行。軌道エレベーターやルナ2では入手ができない資源採集任務の遂行。


概要:シャトルでテラーズ7の惑星地表へと直接降下を行い作戦を遂行する部隊。


・テラーズ7への軍事作戦

星系政府のテラーズ7への軍事作戦の最終目標は、次元侵食の終息と、テラーズ7の奪還である。ただし、これはあくまで最終目標であり、すぐに達成されるべき目標とはされていない。星系政府は現在の人類の置かれている状況は防衛戦の段階であると認識している。現状を維持し星系政府は国力を少しずつ増強する事に重点を置いている。


そして、次元侵食に対する現状の軍事作戦の意義は、次元侵食をこれ以上、進行させない事と、宇宙に脅威を与える可能性のあるものを排除する事としている。


星系軍はこの様な星系政府の方針に則り、テラーズ7への軍事作戦を展開しており、現在、テラーズ7で行われる主要な軍事作戦の大半は、鏡の国の影響段階下で出現が確認された村、町、不思議の国の山の破壊及び殲滅に星系軍は全力を注いでいる。


なお、これらのテラーズ7への軍事作戦は必ず必要ではあるものの、星系政府のあらゆるリソースを大きく圧迫しており、星系政府の方針である現状を維持し国力を少しずつ増強するという目標は非常に遅いペースでしか進んでいない。


テラーズ7への軍事作戦の一連の流れは以下の通りである。なお、以下は地上部隊の派遣を行う場合の作戦の流れを解説する。


まず、テラーズ7上の攻撃目標に対して、戦闘ステーションによる軌道爆撃を行う。必要がある場合はその後に無人化戦術攻撃システム機による爆撃も行う。戦闘ステーションによる攻撃によって、不思議の国のアリス粒子が作戦エリア内で拡散された事を確認した後に、マザーシップからシャトルで地上派遣部隊が降下。展開して攻撃目標を破壊任務を行う。地上部隊の任務中、無人化戦術攻撃システム機や、戦闘ステーションは地上派遣部隊を支援が必要であると認められた時は、追加支援が可能な状況であれば、地上派遣部隊の支援に投入される。作戦の終了後、地上派遣部隊は成層圏プラットフォームによって回収される。


これが現在、行われているテラーズ7に対する地上部隊の派遣を行う場合の作戦の流れである。


地上派遣部隊の装備について。不思議の国の影響段階までは、不思議の国のアリス粒子の影響が現在ほど強く無かった事から、前線部隊の後方に干渉保護膜の発生装置を設置し、その防御範囲内で部隊が展開するという作戦行動だった。しかし、現在の鏡の国の影響段階においては、不思議の国のアリス粒子の影響が大きい為、不思議の国の影響段階の防御対策をしても意味はない。これは強襲揚陸作戦フリーダム2975の失敗が証明している。その為、強襲揚陸作戦フリーダム2975の失敗を踏まえて、現在は、広域の干渉保護膜の発生装置は兵士を守る為ではなく、装備をフェーズ3の状態へと陥らせない為の防御用に利用され、兵士の防御には個人単位で小型の干渉保護膜の発生装置を配備する事で不思議の国のアリス粒子の影響から守っている。


強襲揚陸作戦フリーダム2975までは、地上派遣部隊の装備は、戦車や装甲車、M137グリーダが運用され想定されていた。しかし、鏡の国の影響が判明して以降は、戦車や装甲車は運用がされなくなり、基本的には強化外骨格で構成される部隊の運用が主軸となった。


また、地上派遣部隊の人員の人数は現在は基本的には1回の作戦につき60‐160名程が基準となっている。部隊帰還率は20‐40%程。


―――――――――――――――――――――――――――

科学技術


テラーズ7星系の科学技術は大幅に衰退している状況にある。原因は、高酸素帯の侵食によるテラーズ7星系の外界からの長期に渡る孤立による所が大きい。現在のテラーズ7星系の科学技術は21世紀初頭頃程度の水準である。この様な状況は、既に2から3世紀以上もの間、続いている。また、テラーズ7の放棄以降は現在まで、科学技術の多くが停滞傾向にある。この停滞の原因は次元侵食による星系人口の大幅減少、テラーズ7星系の国力の大幅な衰退などが原因である。


ただし、星系政府は技術の発展を諦めた訳ではなく、プロフェッショナルを育成する教育プログラムの実施やAIによる手助けを受けつつ、現状で可能な限りの科学技術の復興策にも力を入れている。例えば、かつての豊かな食環境を取り戻す為の一環の研究として培養肉を含む食糧生産技術のさらなる改善や発展の研究なども盛んである。


しかしながら、星系政府やテラーズ7星系の人類が諦めてはないとはいえ、テラーズ7星系の科学技術の水準の長期に渡る停滞はテラーズ7星系人類にとっての長年の懸案事項となっている。


なお、科学技術全般で見た場合には、この様な状況ではあるが、次元侵食に対処する為にテラーズ7星系が独自に発展させた新たな分野の技術も存在する。それがトール理論である。トール理論とは2940年には人類が次元侵食に対処するなかで確立させた不思議の国のアリス粒子に関する理論の事で、不思議のアリス粒子の抑制方法や、応用方法の理論である。トール理論は、干渉保護膜をより強化する方法や、次元侵食を終息させる為の方法の研究が発展していった結果、集約され理論として誕生した。


テラーズ7星系の人類はトール理論を応用し干渉保護膜の他、不思議の国のアリス粒子の影響下で半永久的に動作する事のできる動力機関であるトール機関を発明した。なお、干渉保護膜とトール機関が実用化されたのは、テラーズ7の放棄前である。干渉保護膜に関しては、トール理論が理論化される前に実用化され、トール機関は2940年には実用化された。


しかしながら、トール理論の誕生後、干渉保護膜の発生装置やトール機関が現在の性能水準にまで発展するのには時間がかかった。干渉保護膜の発生装置は前線で使えるレベルの物はこの当時は、小型トラックのコンテナサイズが限界であった。トール機関もサイズが大型航空機エンジンクラスと非常に大きかった。この問題は強襲揚陸作戦フリーダム2975が行われた時点においても解決されておらず、強襲揚陸作戦フリーダム2975の失敗後は、しばらくの間、地上への降下作戦が実施できなかった程である。


実戦レベルの話となると、現実的な問題として不思議の国の影響段階における不思議の国のアリス粒子の影響対策の効果が、鏡の国の影響段階下においては、効果を得られないと分かったのならば、干渉保護膜の発生装置を個人レベルで装備する絶対的な必要が出てくるが、いかに強化外骨格といえど、小型トラックのコンテナ程のサイズの装置を個人レベルで携行する事は難しかった。


しかし、2982年に星系軍の科学者アラン・ローレン・ラングボーン博士とトミー・ホーベン・イーサン博士が、トール理論を用いた装置がヒエロニムスマシンを参考としたプリズム回路でも動作する事を発見し、この大発見によって一気に干渉保護膜の発生装置やトール機関の小型化技術が飛躍的に向上した。これによって強化外骨格に干渉保護膜の発生装置(搭乗者保護機構)を搭載する事が可能となり、鏡の国の影響段階下のテラーズ7の地表での人類の活動を史上初めて可能にした第1世代型の強化外骨格、ハザード・デストロイヤーが誕生。テラーズ7地表への部隊降下を可能とした。


さらに、その後もトール理論を用いた技術は進歩しており、近年ではトール機関の小型化技術も完成した事から、トール機関を強化外骨格に搭載する事にも成功し、これによってテラーズ7での強化外骨格の活動エネルギー問題を解決。さらには小型化技術だけでなく、不思議の国のアリス粒子を利用した粒子兵器の実用化にまで成功させた事でテラーズ7での軍事作戦の歴史を大きく変える事になった。


なお、不思議の国のアリス粒子を利用した粒子兵器の原理は、文字通り不思議の国のアリス粒子を収束発射するという仕組みである。


これら以外にも不思議の国のアリス粒子が生物の精神に影響を与えるという性質から、この性質を利用したトール理論を用いた人間の記憶精神介入技術の実用化にも成功している。この記憶精神介入技術はテラーズ7の放棄前には確立された。


―――――――――――――――――――――――――――

通信


現在、使用されている通信は、その通信リソースの大半が星系政府によって行政的な目的の為に集中運用されており、国防総省と国務総省が業務で利用している。一般に提供されている通信リソースはそこまで大きくはなく、むしろ行政の通信と比較すると非常に小さい。


一般に提供されている通信は、ニュース番組や子供向け番組を放送しているテラーズ7星系テレビを除けば、インターネット通信としてテラーズ7星系ネットが一般にサービス提供がされているが、通信速度は56‐128kbps程度と非常に低速である。また、これで利用が可能なサービスはメール、電話の他、掲示板サイト、電子図書館、行政機関サイト、行政サービスの紹介サイトやその予約サイトのみとなっている。


一般向けの情報端末には、タッチペン式のパーソナルデジタルアシスタント端末(英語:Personal Digital Assistant 略:PDA)が採用されている。パーソナルデジタルアシスタント端末は、一定年齢以上のネブラスカ以外の全住民に支給されている。


―――――――――――――――――――――――――――

娯楽


娯楽としては、テラーズ7星系テレビの視聴、図書館での書籍の閲覧、テーブルゲーム、アーケードゲーム、映像データ媒体の娯楽作品の視聴、音声データ媒体の娯楽作品(音楽を含む)の視聴、画像データ媒体の作品の閲覧、文字データ媒体の娯楽作品の閲覧、デジタルイラスト、執筆、音楽、ダンス、運動、テラーズ7星系ネットを利用したサービス(掲示板サイトでの交流、電子図書館のサイトで公開されている書籍の閲覧)などがある。


この内、映像データ媒体の娯楽作品の視聴や、音声データ媒体の娯楽作品の視聴、画像データ媒体の作品の閲覧、文字データ媒体の娯楽作品の閲覧は、住民の間でSDカードによる直接的なデータのやりとりで行われている。これはテラーズ7星系ネット上では映像データ、画像データ、音声データがその仕組み上、一般人はアップロードする事はできず、さらにはダウンロードも通信速度の関係上限界がある事から、直接的なやり取りによっての自身のSDカードに欲しいデータをコピーして利用するという形がとられている。


娯楽として広く広まっている映像データ媒体や音声データ媒体の娯楽作品は大半がテラーズ7の放棄前の時代に作られた作品が殆どである。なお、現在までに現存しているテラーズ7の放棄前の時代に作られた作品はテラーズ7の放棄時の混乱を乗りきり奇跡的に現代まで現存し続ける事ができた非常に貴重な文化芸術作品群のひとつでもある。


テラーズ7星系テレビでは、テラーズ7星系のニュースと、テラーズ7星系外のニュースを伝えるニュース番組の他、子供向け番組を放送している。チャンネル数は1つ。


―――――――――――――――――――――――――――

宗教


テラーズ7星系で信仰されている最大の宗教はプラネット・ヒューマン・サイエンス(英語:Planet Human Science)である。プラネット・ヒューマン・サイエンスは科学技術への信仰、グノーシス主義が組み合わさった宗教である。


プラネット・ヒューマン・サイエンスは、テラーズ7の放棄後に誕生した宗教である。それ以前のテラーズ7星系にはテラーズ7星系外を起源とするキリスト教やイスラム教など様々な宗教が存在したが、テラーズ7の放棄後に、それまでの宗教は神による救済が次元侵食に苦しむ人類に対して起こらなかった事からテラーズ7の放棄後には信仰を喪失した。プラネット・ヒューマン・サイエンスはそれまでの既存宗教と置き換わる形で信仰が広まった。


プラネット・ヒューマン・サイエンスに次いで勢力が大きいのは厳密には宗教ではないが、特定の宗教への信仰を有していない人々である無神論である。


無神論の次に規模が大きいのはトゥルースイズム(英語:Truthhism)である。エレベーター・ネブラスカのほぼ全住民が信仰しているとされるカルト宗教。トゥルースイズムは独自の宗教観に加えて、シントウイズム、ブッタイズム、ヒンドゥーイズムの影響も見られるとされる宗教である。


―――――――――――――――――――――――――――

経済


通貨はテラーズ7星系ドル。全ての通貨がプリペイドカードで流通している。なお、テラーズ7星系ドルがプリペイドカードとなったのは次元侵食によるテラーズ7の放棄以降の事である。高酸素帯の侵食災害以前はドルが使用されていたが、高酸素帯の侵食災害によってテラーズ7星系が外部から事実上の孤立状態へと陥った為、ドルは運用が停止された。ドルの運用停止後、テラーズ7星系ドルが導入。


経済は統制経済が採用されている。これは星系全体で人口が少なく、純粋な市場経済では社会、経済の双方を維持する事が困難である為である。企業は存在していない。あらゆる物資が配給制によって成立している。テラーズ7星系ドルは物資の交換時に使用され、ある種の交換券として機能している。


テラーズ7星系ドルのプリペイドカードには交換品の対象によって種類があり、フード・エクスチェンジカード、ドリンク・エクスチェンジカード、ラグジアェリーグッズ・エクスチェンジカードがある。フード・エクスチェンジカードは固形物の食べ物を交換する為に使用し、ドリンク・エクスチェンジカードは、飲料品の交換に使用。ラグジアェリーグッズ・エクスチェンジカードは生存の為には無くても問題のない物資の交換に使用される。


フード・エクスチェンジカードとドリンク・エクスチェンジカードは星系軍で軍務に就いているか、国務総省の職員をしていれば、支給される仕組みである。事実上、ネブラスカの住民以外のテラーズ7星系の全住民が平等に得る事ができる。役職の違いなどによるポイントの優劣も存在しない。


なお、プリペイドカードを使用している事からも分かる様に、プリペイドカードのポイントで品物を交換する訳だが、使いすぎや、使わなすぎなどの行為を防止する為に、フード・エクスチェンジカードとドリンク・エクスチェンジカードに関しては、各個人で1日当たりで物資と交換ができる回数を制限している他、1ヶ月毎にプリペイドカードを使い切っていても、使い切っていなくても回収される仕組みとなっている。そして、翌月にテラーズ7星系ドルがフルで入った新しいプリペイドカードが支給される。


一方でラグジアェリーグッズ・エクスチェンジカードは回収される事はない為、貯金も可能であり、使用にも制限はない。ただし、ラグジアェリーグッズ・エクスチェンジカードは仕事の成果に応じて支給される。これはフード・エクスチェンジカードとドリンク・エクスチェンジカードが全ての人に平等に配られるのとは対照的である。


なお、余談であるが、仕事に必要な物資に関しては全て無償で提供される。


以上がテラーズ7星系の基本的な経済であるが、例外も存在する。ネブラスカの経済に関しては、テラーズ7星系政府とは完全にまったく別の経済事情となっている。ネブラスカには通貨経済は採用されておらず、教団による物資の直接支給によって成り立っている。


―――――――――――――――――――――――――――

教育


テラーズ7星系の教育制度は国務総省が管轄している。テラーズ7星系の教育制度は、義務就学前教育、義務教育、義務高等教育に分けられる。義務就学前教育は、0‐6歳までの児童を対象に行われる。義務教育は6‐15歳までを対象とし、義務高等教育は16‐19歳が対象である。


なお、留意点として、これらの対象年齢はあくまで一般的な基準であり、一部には例外も認められる事には留意。例えば成績優秀者の飛び級や、義務高等教育においては、対象年齢を過ぎていても就学が認められるケースもある。


義務就学前教育には0‐5歳を対象とした幼稚園が設置されている。幼稚園は児童の情操教育を目的としている。義務教育には6‐9歳を対象としたエレメンタリー・スクール(英語:Elementary School)。9‐12歳を対象としたジュニア・ハイ・スクール。13‐15歳を対象としたシニア・ハイ・スクール(英語:Senior hgh school)が設置されている。義務教育は教養を中心とした教育と情操教育を目的としている。義務高等教育には16‐19歳を対象としたアンダーグラジュエ・スクール(英語:Undergraduate school)が設置され、様々な年齢を対象とした大学院が設置されている。義務高等教育はより高度な教育や研究活動を目的としている。


教育制度の対象はネブラスカに住む住民以外の、すべてのテラーズ7星系の住民となっている。これらの教育の内、義務就学前教育と義務教育は、すべての制度対象のテラーズ7星系の住民が受ける教育である。義務高等教育に関しては、各児童のそれまでの各分野での成績などから、国務総省内の教育を管轄する義務教育局の判断により義務高等教育へと進学させるか、教育を終了するかしないかを判断行う。


テラーズ7星系の現行の教育制度は非常事態体制下の情勢の側面が非常に強い。本来、就学前教育や高等教育といった教育は受けるか受けないかを決める自由が受ける側には存在する。しかし、現在のテラーズ7星系では受ける側の自由意志による就学の判断は認められていない。才能や成績に優れた人材は、高度な教育過程を受ける事が義務となっている。これは少ない人口でも社会を維持する為の専門人材を育成する必要がある為である。


その為、効率的に各分野のプロフェッショナルの育成に力を入れている。


なお、義務教育では段階的に児童に対して直接、脳に専門知識の情報を書き込む教育も行っている。これは、全児童に対する一括の専門知識の書き込みの教育の他、児童各個人の技能適正を見極めた上で行われる専門知識の書き込みの教育もある。これらの脳への専門知識の書き込み教育は、卒業後に最大限、能力を発揮する事を目指して行われている。ただし、脳への情報の書き込みは万が一、悪用された場合に深刻な事態を引き起こす可能性がある為、脳への情報の書き込みを行う教育を行う際には国務総省の他、星系軍からなる情報通信委員会によって、厳格な監視と書き込まれる内容のチェックが行われている。


児童の脳への情報の書き込みは、教育を定めた各種法律によって、技術的な専門知識の情報にのみ限り、テラーズ7星系政府の権限によって認められている。


上記の様な教育インフラにより、現在のテラーズ7星系の人類の平均学力の水準はテラーズ7星系史上でも、過去最高峰の水準に達している。ジュニア・ハイ・スクールの段階で児童の平均学力水準は次元侵食前のテラーズ7星系のアンダーグラジュエ・スクールの平均学力水準を大幅に超える水準を獲得し、それ以降の平均学力の水準も軒並み非常に高い水準を獲得している。


―――――――――――――――――――――――――――

食事


テラーズ7星系の人類の食事は現在、植物工場、昆虫養殖工場、培養肉工場などの食物プラントを利用し生産が可能なものに限られている。テラーズ7の放棄前はテラーズ7星系の人類には非常に多種多彩な食文化が存在したが、現在は施設内で生産が可能な物のみとなっている。食事はルナ2においては、星系政府が運営しているビュッフェ形式のレストランか、もしくはファストフード店などで提供される。以下は料理の例一覧(ビュッフェ形式のレストランの場合)。


 ・朝:パンケーキ or ワッフル or パン or ベーグル or ドーナツ or ビスケット(選択制)、パイ、シリアル、ハム、ベーコン、ソーセージ、サラダ、スクランブルエッグ or 目玉焼き or オムレツ or エッグベネディクト or フレンチトースト(選択制)、チキンスープ or 野菜スープ(選択制)、ハッシュドポテト、コーヒー、紅茶、オレンジジュース、ミルク、水。

 ・昼:ハンバーガー or ホットドッグ or コーンドッグ or サンドウィッチ or ブリトー or タコス or ライス(選択制)、フライドポテト、シュガーウォーター、炭酸シュガーウォーター、コーラ、水。

 ・夜:パンケーキ or ワッフル or パン or ベーグル or プレッツェル or ドーナツ or ビスケット or フレンチトースト or ハンバーガー or ライス(選択制)、マカロニ&チーズ、ベーコン or ソーセージ or フライドチキン or バッファローウィング or ステーキ or ハンバーグ or スペアリブ(選択制)、サラダ、コーンスープ or 野菜スープ(選択制)、ピザ、パスタ、グラタン、フライドポテト、ナチョス、BBQ、チリコンカン、ケーキ、アイス、コーヒー、紅茶、ミルク、オレンジジュース、シュガーウォーター、飲用アルコール液、コーラ、水。


上記のメニューは週毎に変更される。上記に掲載されていない料理も存在する事には留意する必要がある。ただし、上記に掲載されていない料理の数は上記にすでに掲載されている料理の数よりも少ない。メニューバリエーションは多少のメニューの内容の変容はあるものの、基本は上記の様な雰囲気のメニュー構成がほぼ毎日である。


現在のテラーズ7星系の料理はメニュー名がテラーズ7の放棄前の時代の料理と、例え同じ名前であったとしても、その多くが、味や食感などが本来の料理の味や食感ではないとされている。これは、本来の料理を可能な限り使用できる材料で再現を目指したものの、完全には再現ができていない為である。上記にあげた料理の例の殆どが人工的な手段によって合成されて調理されている。料理の中には本来の料理に見た目だけ似ていて味や食感は本来の料理には遥かに遠く及ばないと伝えられている料理も存在する。


なお、肉に関しては、培養肉で製作する形と、昆虫などの複数の材料を合成して製作する形と、もしくはその両方を混ぜる形の3種類の肉が存在するが、100%培養肉の味と食感は、多くの料理が偽物と伝えられている中でも、主食のメニューにおいては、ほぼ唯一のテラーズ7の放棄前の味に非常に近い完成度であると言われている。その為、100%培養肉は非常に人気のある食材である。


しかし、100%培養肉は生産にコストや時間がかかる為、その提供は年に1度か多くても2度程度である。肉類の料理は毎日、メニューに載っているが、普段提供される肉類は、昆虫など複数を材料を合成して製作された代用肉か、培養肉と代用肉を混ぜた物の、いずれかが提供されている。


現在のテラーズ7星系の人類の食事事情はこの様な状況である。栄養学的には健康には問題のない食事の提供体制が構築されてはいる。しかしながら、テラーズ7の放棄前の食事事情に比べれば食文化的には非常に悲惨な状況である。なお、悲惨な状況ではあるものの、これでも長年の多大な努力による技術改善や開発によって当初と比較すれば改善された方である。


―――――――――――――――――――――――――――

テラーズ7星系の歌


テラーズ7星系にはテラーズ7星系政府の設立が地球合衆国連邦政府から承認されたされた際に星系の住民によって、テラーズ7星系の歌が制定されている。


テラーズ7星系の歌の歌詞は、テラーズ7星系政府の樹立運動に参加し、地球合衆国連邦政府に対して自治権の拡大交渉を行っていた弁護士のひとりのフランシス・スコット・キーによって書かれた。この歌詞はさらに、当時のテラーズ7星系で人気のあった酒飲み歌である「天国のアナクレオンへ」のメロディに合わせてアレンジされ、最終的には現在の「テラーズ7星系の歌」となった。


テラーズ7星系の歌はテラーズ7星系の人類の揺ぎ無い誇りと自立性と希望を象徴する歌でもある。テラーズ7星系の人類にとって、非常に特別な歌であり、様々な式典の他、行事や催し物などでも演奏や合唱、録音した曲が流れされるなどしている。以下はテラーズ7星系の歌の歌詞。


「…Oh, say can you see, by the dawn's early light,

What so proudly we hailed at the twilight's last gleaming,

Whose broad stripes and bright stars through the perilous fight,

O'er the ramparts we watched, were so gallantly streaming.

And the rocket's red glare, the bombs bursting in air,

Gave proof through the night that our flag was still there;

Oh, say does that star-spangled banner yet wave

O'er the land of the free and the home of the brave?…」


▼▼▼






▼作者SNSのURL▼

ウィキパディアの裏話や創作活動に関する情報を掲載。月2~3回を目安に更新予定。


https://youtu.be/fTUJFvq7J5o

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これはまた壮大な記事ですね。何か色々な意味で突き抜けている感じですね。 [気になる点] 記憶消去してる。これは内容そのものに手入れされてる可能性がありますね。何か都合が悪いことがあるのだろ…
[良い点] SF的なリアリティのある人類側と、なにかの冗談みたいに異質な不思議の国のアリスのコントラストが印象的ですね。 [一言] 今回はウィキパディアの内容に「嘘」が混じってそうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ