セキセイ ‐ ウィキパディア
ウィキパディア-フリー百科事典
ページ/ノート
―――――――――――――――――――
セキセイ
―――――――――――――――――――――――――――
セキセイ(大陸共通語:□□□□□ 生誕:??? ‐ )は降臨世界において、現在より凡そ2万年以上前の時代に、十八勇者を構成するひとりの勇者として別世界より召喚された人物。
長らくその存在は、確認されておらず、降臨世界国家においては、遥か遠い昔の存在として伝説的に語られるだけの存在であり、地球国家においては架空の存在だとさえ思われてきたが、中央暦23008年(西暦2044年)にその存在が、ドルネア軍事国のダンジョンシティおいて、伝説上に語られる内容を除けば、初めてその姿が確認され、実在する人物であるという事が証明された人物である。
現代の地球上において、天使の存在を除けば、世界最高齢の人物。
―――――――――――――――――――――――――――
目次
1.名前
2.容姿
4.種族
5.能力
6.性格
7.性別
8.過去
9.発見
10.現在
10.1契約
10.2召喚獣問題
10.3魔獣活性化問題
11.記憶
12.セキセイの行動論理
13.召喚前
14.セキセイによって生み出された種族
15.天使による見解
16.疑惑
17.編み物
18.周知
19.注釈
20.出典
―――――――――――――――――――――――――――
名前
セキセイ(大陸共通語:□□□□□ 英語:Sekisei)の名前の由来は地球における鳥綱インコ目インコ科セキセイインコ属セキセイインコが由来であるとされる。
セキセイ本人は自身の名前については、殆ど興味を持っていないとされており、地球国家のメディアで唯一、セキセイ本人への取材に成功したフランスメディアのFrance24によると、セキセイは自身の名前の由来について、恐らく召喚前の当時、セキセイインコが好きだったからセキセイにしたのだろうと回想しており、現在は、自身の名前は特に決まったものは持っておらず、呼ぶ者に好きに呼ばせていると語っている。
なお、セキセイは本来は本名ではないそうだが、すでに本名は忘れてしまったと語っている。
現在、セキセイが存在する事は広く知れ渡ってしまっているが、セキセイ本人が自身の呼び名の事を自由にさせている事もあり、周囲の人々からは、セキセイの他、死鳥、死地の王、獣の王、獣王、古の王、古き者、勇者、十八勇者、欠番、欠番勇者、失格勇者、失敗勇者など様々な呼ばれ方をしている。
―――――――――――――――――――――――――――
容姿
基本的な容姿は栗色の髪色をしたポニーテールと、無機質な印象を受ける色白い肌の色をした少女型の球体間接人形である。地球の日本のサブカルチャーにおけるアニメ調の姿に近い容姿をしている。身長は156cm。
セキセイは他者からの目は特に気にしない性格であるとされ、ダンジョンシティにおいては、存在が世間一般に知れ渡る前は、襤褸切れの様なフード付のマントで、その下には何も着ずによく過ごしていたとされる。また、この様な姿で、ダンジョンの深層によく行っていたという証言が残っている。洗濯などは特にしていなかったとされ、カビ臭く正体を知らない者たちからは身なりの汚い浮浪者の様な扱いを受けていた。
ただし、所属しているレアーギルドの仲間や、少数のセキセイを知る者達からは服装に関して注意を受けていたとされ、これらの人々と居る時などは、しっかりとした衣服を着ていた。注意を受けた後は上記の様な服装の頻度はある程度は減ったとされるが、知人の目が無い時は上記の様な服装を着る事も多かったという。
なお、ダンジョン内など戦闘の際には必要に応じて装備を付けていたとされる。
セキセイは存在が知れ渡る前は、認識阻害の魔法によって自身の正体を知らない者に対しては顔を人間の顔に偽っていた。
上記の様な服装や装備の付け方などは、セキセイが自身の正体をなるべく知られない様にする為に隠くれる目的でしていた。
しかし、その存在が、死鳥戦争事件などによって、その行動の異常性や異端性から世間一般に知られる様になると、セキセイは自身の正体を隠すのは殆どやめて、必要がなければ上記の様な正体の隠し方もせずに十八勇者伝説にも克明にその姿が画かれている様な装備を普通に着用する様になった。
セキセイのこの際の容姿は青やシルバー等を基調とした色の、まるで日本のサブカルチャーにおける萌えジャンルであるメカ少女の様な姿である。最もな特徴としては腰周りにある4本のブースターユニットの様な外見の装備と、浮遊する4つの浮遊砲台。自身の身長と同じかそれ以上の大きさのメカ風の大剣などが挙げられる。
これらの装備は十八勇者伝説においても、頻繁に使われたとされる伝説に残る装備である。
ただし、これらの現代のセキセイの着用する装備の状態に関しては十八勇者伝説で伝えられている装備の様子とは異なっている点もあり、現在のセキセイの持つ、これらの装備は酷く破損や劣化している様に見える状態となっている。ブースターユニットの様な外見の装備の内1基が明らかに大きく壊れて機能していない様に見えたり、空を飛ぶ際などには、1基の噴射口から出る光が途切れ途切れにも見える。
これらの状態について、セキセイ本人は一切気にはしておらず、France24の取材に対して何ら問題は無いとしている。この様な状態となった事については、恐らくは長年放置をしていた為に少しずつこうなったと答えた。本人によれば、これは外見だけの話であって、機能には一切の問題も無いという。外見は修復しようと思えば、いつでもできると本人は語っている。
なお、セキセイは存在が世間に知れ渡ったあと、この様な伝説にも書かれている装備の姿を隠くさなくはなったが、いつもこの様な姿でいる訳ではなく、本人としてはこの姿で街などを歩いていると人目が鬱陶しいと感じる事が良くある為、普通の服や、存在が知れ渡る前の様な格好もよくしてセキセイだと分からない様にしている事もあるという。
なお、戦闘の際は、必ず上記の様な装備であるという訳ではなく必要に応じて装備は変えているとされる。右手、左手、右足、左足、胴体、頭の全てに別々の装備を身に纏っている姿等も目撃されている。
―――――――――――――――――――――――――――
種族
セキセイはオートマタと呼ばれる種族に分類される。魂を持った生きた人形の種族である。ただし、種族としてのオートマタは、十八勇者の召喚の際にセキセイが召喚されるまで、降臨世界においては存在していない種族だった。
現在ではセキセイが過去または現代に行った召喚によってオートマタは降臨世界地域の各地に少数が存在しているが、セキセイは現在、世界に存在しているオートマタの始祖的存在である。
―――――――――――――――――――――――――――
能力
セキセイは強大な魔力を持っており、物理法則に縛られない強力な力を保持している。また、セキセイの魔力は、降臨世界の人々が扱う魔力と同質のものであると見られているが、その利用方法は一切が既存の魔法学的には不明な手段によって利用されているとされる。
セキセイはこの様な、不明な手段による魔力の利用によって、力を行使している。
セキセイの行使する能力は膨大である為、その多くを記す事は困難であるが、例としては、アイテムボックスと呼ばれる、異空間に無数の所持品を大きさに関係なく瞬時に収納したり、出したりする能力の他、十八勇者伝説でも語られる装備(まるで日本のサブカルチャーにおける萌えジャンルであるメカ少女の様な姿の装備)には、大剣からは非常に強力なビームを放出したり、浮遊砲台からも非常に強力なビームを放出する能力がある。
セキセイが行使する能力の多くはセキセイが所有する所持品による所が大きく、セキセイの所有する所持品には様々な能力がある。
ただし、セキセイ個人にも強力な能力があり、あくまでセキセイ本人による申告ではあるものの、本人は特別な所持品無しでも、800以上の魔法を行使できるとしている。行使可能な魔法の中には、使用条件は秘匿されている為、不明なれど転移魔法と呼ばれるテレポーテーションを起こす魔法すら存在する。また、アイテムボックスも所持品の力に由来しないセキセイ個人の能力である。
セキセイは所有する装備や魔法によって空を自由自在に飛ぶ事もできる。西暦2044年にフランス空軍のラファール戦闘機と対戦形式の演習を実施した際には、その演習結果は公表されなかったものの、フランス空軍の発表によれば、ラファール戦闘機の飛行と同様の事が可能であった。
セキセイは従者と呼ばれる自身の命令に服従する存在を召喚可能である。従者は、恐らくは十八勇者伝説における召喚獣の事だと考えられる存在である。召喚には対価が必要だとされるが、それ相応の対価と時間さえあれば、無尽蔵に従者を召喚できるとされる。
セキセイが召喚可能な従者は多くの種類がいるものの、ここでは例として十八勇者伝説に頻繁に登場した存在として2種の従者及び、死鳥戦争事件で召喚された従者及び、六方聖方として召喚された従者を紹介する。
1種目は、ボールと呼ばれる十八勇者伝説において射る球として知られるオートマタの従者。ボールは白い球形状で、機械チックな見た目をしている従者で、カメラのレンズの様な目を持ち、正面に4門のエネルギー弾の連射機構と、サーチライトの様な明るい光を発光させる事が可能な1基の発光機構を持っている。ボールは空中を自由自在に移動可能であり、空中の高速移動の他、空中静止、高速での直角移動や急な静止行動ができる。セキセイによれば、召喚前に自身が見た映画の中に出てきたドローンを模して自身でデザインしたとされる。
2種目は、トライポットと呼ばれる十八勇者伝説において三脚の巨王として知られるオートマタの従者。全長35mの巨大な身長で、3本の長い足と直線的な菱形の大きな頭を持っている。1つの強力な熱線ビームを放つ触手器官を持っている。非常に機械的な見た目をしている。セキセイによれば召喚前にHGウェルズの宇宙戦争の周年記念イベントで入手したとされる。
上記2種は死鳥戦争事件においても召喚された。
3種目は、ナウエルと呼ばれる死鳥戦争事件において召喚されたオートマタの従者。全身が緑色で、4脚の足を持ち旋回する胴体に2門のエネルギー弾の発射砲身機構を持っている。全身のサイズは2tショートトラックとほぼ同等サイズだが、戦車砲かもしくはそれ以上威力の強力な砲撃が可能。セキセイによれば、ナウエルはレアーギルドに入ってから、しばらくたった時に暇潰しとして自身でデザインし作成したのだという。なお名前については、特に意味はなく、思いついた言葉を適当につけたとされる。
六方聖方として知られる従者は6体存在する。死鳥戦争事件後に召喚された。白羊宮、金牛宮、双児宮、巨蟹宮、獅子宮、処女宮の6体。種族としては半天使(※降臨世界の天使とは一切関係ない種族)。外見としては6体全員が美しい少女の様な外見であり、それぞれが違った容姿を持ち、違ったドレス、違った能力、違った武器を持っている。ドレスは、それぞれの従者が基調とする色を持っている。名前は恐らくは黄道十二宮の天使からつけたと考えられ、姿はセキセイが召喚される前にデザインし作成したものだという。六方聖方は上記の3種と比べて非常に強力な戦闘能力を有している。
セキセイが召喚した従者は基本的にはセキセイの命令を遵守する。しかし、降臨世界の各地では時間経過と共に殆どの個体がセキセイの指示を守らなくなったり、暴走状態となっている。この原因についてセキセイは、当時の事は余り覚えていないが、召喚後に自身が殆どの従者と関わりを持たなかった為に狂ってしまったのではないかと自身の考えを述べている。
セキセイは自身の行使する能力について、セキセイのみにしか現状適応されない表現で表現しており、セキセイは自身の力について、プレイヤーレベル、種族レベル、職業レベル、魔法レベル、スキルレベル、信仰レベルという6つの概念で説明している。セキセイによれば自身のレベルはこの内、プレイヤーレベルは100で、自身が到達できる上限に達し、それ以外のレベルも自身の戦闘スタイルに最適なレベルとなっており、これらが複雑に組み合わさって強力な能力を行使できているとしている。
ただし、セキセイ本人はこの様な能力がどの様な仕組みによって行使されているのかは、本人も分からないと語っている。セキセイは感覚的にこれらの能力を行使している。
また、セキセイは自身の能力について、召喚前は、自分の強さは周囲の者達と比べれば、中の上くらいの強さだったと自身の強さを評している。
なお、上記の能力は強大な魔力や所有物の能力による所が大きいが、魔力や所持品の能力を使わなくてもセキセイは強力な腕力や怪力を有しており、普段においては、必要が無い場合は魔力などは使わない事が多い。セキセイは常人では持つ事が困難な非常に超重量の物を容易に持ち上げたり、扱う事ができる。例えば常人では到底、持つ事もできない程の重量を有し、さらには自身の背丈と同等か、もしくはそれ以上の長さを有する様な大剣も容易に扱える。
セキセイは自身のレベルを490であると述べている。なお、セキセイが召喚した従者にもこのレベルという概念は適応されている様で、例としてボールが55、トライポットが80、ナウエルが55、六方聖方が各個体280であるとされる。
従者もまた、セキセイと同じ様に、物理法則に縛られない強力な力や、利用方法の一切が既存の魔法学的には不明な手段による力を行使するとされる。
―――――――――――――――――――――――――――
性格
現在のセキセイは非常に無感情であるとされる。口数も物静かで必要な事以外は余り喋らない。喜怒哀楽などの感情表現も殆どを示さず、セキセイと直接会った者は見た目通りの無機質な人形の様な感覚を覚えるとされる。セキセイが何を考えているかは、親しい者でも分からない事が多いとされる。セキセイが感情を表現する際はよっぽどの事であるとされている。
セキセイは非常に自己中心的な行動をする事で知られる。セキセイの行動論理は自身の目的の完遂であるとされており、その障害となるものは徹底的に無視をしたり、排除をしたりしようとする傾向にあると考えられている。
例えば、セキセイによればセキセイが日常での普段の生活で社会の決まりを守るのはセキセイがそれを守らない事によってセキセイの目的の完遂に支障となる恐れがあるからであり、決まりを守らなかった事で支障が発生した場合にその支障を取り除く手間が面倒であるからであるとされる。
セキセイは特定の物欲や金銭欲などの欲も殆ど無いとされる。唯一、あるとすれば特定個人への強い執着心は確認できる。
現在のセキセイの精神状態については、解離性同一性障害である可能性が指摘されている。普段は非常に無機質的に無感情な印象であるが、死鳥戦争事件を筆頭に数は非常に少ないとされるが、性格や雰囲気が豹変し、普段のセキセイとは全くの別人の様になる事が極稀にあるとされている。こうなった状態の自身の事をセキセイ本人は部分的にしか覚えておらず、この事から解離性同一性障害である可能性が指摘されている。
現在のセキセイはこの様な性格であるが、十八勇者伝説に書かれているセキセイはこの様な性格ではなかった。十八勇者伝説におけるセキセイは若干の内向気はあったものの、喜怒哀楽も感情も普通の人と同じ様にしていたと記されている。また、食事を愛していたとも記されている。この様な事から、セキセイのその姿は伝説中では、生きる人形と称される程、外見が無機質な印象を受けるにも関わらず、非常に人間的だったという。
天使の中には、十八勇者伝説の時代にセキセイと面識のあった者も居るが、そうした天使からは現在のセキセイの様子は全くの別人の様だとする声が非常に多い。
―――――――――――――――――――――――――――
性別
セキセイは自身の性別に関して分からないと回答している。肉体的には女性であるが、精神に関しては召喚当初は男性であり、しかし、魔王ルキフェルの討伐の遠征の最中に、男性としての感情も希薄化し、肉体が女性であるからか、女性的な感情が増しはしたが、かといって完全に女性の感情にもならなかったとしている。
現在は性別を聞かれた際は面倒な為、女性であると述べている。
―――――――――――――――――――――――――――
過去
セキセイが現代で発見される前の来歴に関しては確かな証拠としての明確な記録等は殆どが現存していない。これは、セキセイが最後に確認された頃の時代から既に2万2千年以上もの時間が経過している為に当時、存在した如何なる国家も現代には現存しておらず、組織や団体に関しても大半が現存しておらず、さらには多くの歴史史料も時代の流れと共に次第に失われてしまった為である。
その為、現代でセキセイが発見される以前のセキセイの来歴については、伝説として残る十八勇者伝説と、天使の証言にその殆どが依存している。これらの信憑性を巡っては降臨世界では歴史的事実として広く受け入れられている一方で、地球国家内では客観性や信憑性に欠けるとする意見も少なくはなく、意見が分かれているのが現状である。
地球国家の歴史学者の間においては十八勇者伝説の内容を巡っては、当初は、史料としてよりも創作物的側面が非常に強いとの見方がされていた。セキセイも架空の人物であると考えられ、伝説中に登場するセキセイやセキセイ以外の登場人物達が使う様々な不可思議な力も架空のものだと考えられていた。しかし、セキセイが実在した事が判明した事で、地球国家の歴史学者の間でも十八勇者伝説の内容の信憑性は非常に高かく再評価される事になり、歴史史料としての見直しが進んだ経緯がある。
その為、現在では、地球国家においても、十八勇者伝説の内容は若干の脚色がされている可能性はあるとしつつものの、概ねの内容は歴史的事実を下地に書かれている可能性が非常に高い歴史史料との考えが支持を集めつつある。
セキセイの過去に関しては「セキセイ(十八勇者伝説)」「十八勇者伝説」「死地」の記事を参照。
―――――――――――――――――――――――――――
発見
セキセイの存在は中央暦23008年(西暦2044年)にその存在が世間に知られるまで、伝説上の存在だった。降臨世界諸国では遠い昔、遥か昔の古の存在であると認識され、地球国家では、空想上の人物だとする見方が大勢だった。
しかし、中央暦23008年に、ドルネア軍事国のダンジョンシティにおいて、その存在が周知され、セキセイが現代の時代に実在する存在である事がはっきりする事となった。一般に公表されているセキセイの発見までに至る経緯は以下の通りである。
中央暦23006年に死地の辺境の地に住む白茶狼族の少年テロ(当時12歳)が冒険者になろうとドルネア軍事国のダンジョンシティへと向かった(ダンジョンシティは降臨世界の地下世界への入り口としては世界トップ5に入る規模の有名都市)。しかし、死地から出る為の船に乗る為に港町へと向かっていた山道の道中、テロは魔獣の群れに襲われ、怪我を負い、崖を転げ落ちた。さらに落ちた先で地面の崩落に巻き込まれると、洞窟の様な場所に落ちてしまった。
この洞窟は奇妙な洞窟で、迷路の様に奥深くまで道が続き、壁には子供が飽きた玩具を散らかしたかの様に様々なテロの見た事のない物が乱雑に積みあがっていたのだという。テロはこの洞窟から出ようとこの奇妙な洞窟を進んだ。すると、壊れかけのボールに遭遇し慌てて来た道や出口の事など一切考えずに必死に逃げたという。この時の事をテロは後に回想しボールは確かにゆっくりと追って来たが、不思議とテロを攻撃する事は無かったのだという。そして、逃げた先でテロはガラクタの山の中に鎮座する壊れかけの少女人形を見つけた。
この少女人形の正体がセキセイだった。この洞窟はセキセイの棲家であった。
セキセイはテロの存在に気づき、長期に渡る眠りから目を覚ました。セキセイはそれまで、複数の睡眠魔法を自身にかけて眠りについていた。セキセイはテロに対して、何者かと問い、テロは冒険者を志望する者だと自己紹介をしたのだという。だが、そこでテロは体力の限界を向かえ倒れてしまった。次にテロが目を覚ますと、テロはセキセイから看病を受けていた。テロはその後、数週間、その場所で過ごす事になったのだという。セキセイによれば、テロの体は恐らくは襲われた魔獣によるものと思われる呪がかけられ体を蝕んでいたのだという。
セキセイはテロにかけられた呪いに僅かだが興味を示したとされ、セキセイの知らない呪いだと言ったという。セキセイは異常なほど無口で、無感情であったそうだが、そんなセキセイに戸惑いながらもテロは、セキセイと親交を深めたのだという。
その後、魔獣による呪いの治療を終えたテロはセキセイに連れられてセキセイの棲家より出た。セキセイによれば、棲家で眠りについてから、どれほどの時がたったのかは覚えていないが、初めて外に出たのだという。セキセイは周囲にいた魔獣を倒すと、魔獣を見て、自身が眠っている間に色々と変わった様だという趣旨の事を言った。
その後、セキセイはテロに付き添い港町のすぐ側まで一緒に行ったのだという。そしてテロと別れる間際、テロに対してセキセイは、冒険者になるなら、その様な粗末な装備では戦う事は無理だとテロの装備を咎め、アイテムボックスから上質な鉄の一般的な短剣を与えたという。テロはこの別れの際、セキセイにお礼と、立派な冒険者になったらまた戻ってくるという趣旨の事を言って別れた。
テロは船に乗ってダンジョンシティへと向かったが、一方のセキセイはテロには特には何も言わずに、ダンジョンシティに飛翔して向かったという。ダンジョンシティにおいて、セキセイは正体を隠して容姿の項目でも解説した様な服装で街で過ごした。
セキセイはダンジョンシティにおいて、街に居る間は街の浮浪者と同じ様に路地などで過ごした。セキセイはダンジョンシティを中心に活動し街の周辺を探索したり、ダンジョンに潜ったりしていたという。
セキセイはこの期間に数名の天使と経緯は公表されていない為、不明だが交流を持ったとされる。そしてこれらの天使のギルドからの依頼などを受け、通常の冒険者では引き受ける事ができない、秘匿性の高い依頼などを引き受けてダンジョンに潜ったという。
しばらく、セキセイはその様な生活をしていた。しかし、テロから別れてダンジョンシティにやってきてから1年近くの後、セキセイの存在はダンジョンシティの有力ギルドの1つであるセミトギルド(テフヌト神に仕える天使セミトの冒険者ギルド)に知られる事となった。
セミトギルドは、ダンジョンにおいて、前人未到とされていた地下第8層への大規模遠征を行っていた。この際に、セミトギルドの遠征隊は地下第8層で98番目に発見されていたダンジョンフロア、フロア98に陣を張っていた。
セミトギルドは上位冒険者を中心とした戦力の他、風石砲を数門、持ち込んでいた。この時、セミトギルドの遠征隊はかなり疲弊していた状態であり、フロア98で事実上の篭城をしている状態で、隣接するフロアから来る魔獣の攻撃をバリケードを築き防ぎつつ、後方にいる別動の遠征隊が地上からの補給物資を運んで来るのを待っている状態であった。
しかし、そんなセミトギルドの遠征隊の目の前にダンジョンの更なる深層よりの方面からセキセイがひとりでやってきた。セキセイは天使からの秘匿性の高い依頼で深層に入っていたと後に語っている(依頼の詳細は不明)。
状況としては、フロア98に籠城する遠征隊が、魔獣の群れと交戦していた。そこにセキセイが現れ、魔獣の群れをそれまでの冒険者達の常識から外れた攻撃によって倒したのだという。セキセイ本人は助けているというつもりは一切無かったそうだが、結果的に遠征隊を助けた形となった。遠征隊はセキセイに同行を求た。フロア98の陣でセキセイはなぜこの様な深層に1人で居るのかや、先程の小隊を助けた力について聞かれたという。これに対してセキセイは依頼に関する事は答えなかったが、他の質問には大して興味を示さず答えたのだとう。なお、この時のセキセイの答えを理解できた者はこの時は誰ひとりとしていなかった。
セミトギルドの遠征隊はセキセイの強力な力から、別動の遠征隊が到着するまで、一時的な守備の要員としての協力を求めた。セキセイはこれに対して、当初は否定的であったそうだが、報酬の支払いを約束すると、セキセイはすでにこのダンジョンへと潜った目的でもある先の依頼は終了し急ぎの帰還の用でも無い事から、セミトギルドの求めを引き受けた。セキセイは約束を交わすとすぐに傷ついていたセミトギルドの隊員を魔法によって癒し、その後は守備を行ったという。
しかし、その後、別動の遠征隊は到着予定を2日過ぎてもフロア98に来る事はなかった。これを受けて遠征隊は別動の遠征隊との合流をする為にフロア98からの後退を決定。上級者冒険者とセキセイを先頭に移動を開始。そしてフロア89にて別動の遠征隊が魔獣の群の襲撃を受けて壊滅寸前の状況となっている状況に出くわした。さらにはこの戦闘には終盤にフロアマスターと呼ばれるダンジョンの特定フロアに出現する強大な能力を持った魔獣も現れたとされる。この状況に対してセキセイは多くの魔獣を単独で倒し、フロアマスターも単独で倒したとされる。
セミトギルドの遠征隊は別動の遠征隊が壊滅した事を受けて、地上への帰還を決定した。セキセイはこの帰還に同行し、地上へと戻ると、セミトギルドの本部で天使セミトと面会した後、報酬を受け取り、その場を去ったという。
このセミトギルドとセキセイとの遭遇は一般に公開されている公的な記録上に残る初接触としては最初の事例である。ただし、この情報はセキセイの存在が一般に知られる様になるまで、セミトギルドは秘匿した。
凡そ1ヶ月後。死地の港町の手前でセキセイと別れたテロは冒険者として、ダンジョンシティにおいて、すでに半年以上の活動をしていたが、この時、ダンジョン地下第1層フロア77にて、魔獣オルトロトの群に襲われ瀕死の状態となっていた。テロによると、この時、突然、セキセイが転移魔法によって転移し、テロの目の前に出現し、群がっていた魔獣オルトロトの群を切り伏せたのだという。そして、セキセイはテロを治癒魔法によって治癒した。セキセイとテロはこれによって約1年ぶりに再会した。
驚くテロに対してセキセイは、実はテロと分かれる前にテロに対して守護の魔法をかけ、テロに命の危険が迫った時に、テロの居場所と状態をセキセイに知らせる様にしていたのだと説明した。
セキセイはテロを助けた後、テロに所属しているギルドの場所を聞き、テロが所属するギルドであるレアーギルドの近くへとテロを送り届けた。そして、その時はその場で別れたという。しかし、その後、セキセイとテロは頻繁に会う様になり、再会から数週間後に、セキセイはレアーギルドに入る事を決め、神ネプトゥーヌスに仕える天使レアの契約者となった。
セキセイはレアーギルドに入った後は、レアーギルドの所属としてレアーギルドの面々と、ダンジョンへと入った他、剣や弓の訓練や、ギルドとしての生計が立てられる様にする協力をした。
レアーギルドは、非常に弱小のギルドであり、セキセイが来る前は違法行為によって生活費を稼ぐギルドであったとされる。テロはこのレアーギルドがこの様なギルドであるという事は知らずに、仲良くなったレアーギルドのメンバーに勧誘されて入り冒険者となった経緯があり、入った後にレアーギルドの実体を知ったという。テロはレアーギルドを違法行為をしなくても生計が立てられる全うなギルドにしようと、冒険者としてダンジョンに積極的に入り奔走していたとされる。
レアーギルドの天使レアーは人望が無く、天使レアーはギルドメンバー(天使との契約者)による違法行為をやめさせたかったそうだが、ギルドのメンバーは現実的なギルドの財政難から生活費を稼ぐ為に天使レアーの言う事を聞かなかったという。なお、それでも天使レアーはギルドメンバーから嫌われている訳でなくむしろ好かれていた関係であったとされる。
セキセイがギルドメンバーになってからレアーギルドの財政状況は大幅に改善された。
セキセイは莫大な財産を保有していたが、ギルドやギルドメンバーに対して自身の財産などを別け与える様な事は殆どしなかった。しかし、セキセイがレアーギルドのギルドメンバーとして活動する様になり、ダンジョンの探索や依頼をこれまで以上にこなせる様になった事から、レアーギルドの財政状況は大幅に改善される事になった。違法活動なしに黒字運営ができる様になったとされる。
セキセイはギルドメンバーに対して一般的な冒険者と同等の装備や回復薬などの医薬品も与え活動を支えた。回復薬などの医薬品に関してはセキセイだけが持つ非常に強力な効果のある物が与えられていたという。また、ギルドメンバーへの基礎的な戦闘訓練も教えた。
セキセイはこの時期、貧民街で発生していた児童誘拐事件の解決に関与している。ダンジョンシティの貧民街では人身売買を目的とした児童の誘拐事件が多発していたが、レアーギルドのギルドメンバーの児童1名がこの被害にあった。これを受けてレアーギルドは総力を挙げて誘拐された児童の捜索を行ったが、この時にセキセイ、テロ、女性冒険者の3名が誘拐されていた児童を救出したとされている。
この救出は誘拐組織の拠点にて、セキセイが陽動として誘拐組織のメンバーを襲撃している間にテロと女性冒険者の2名が誘拐されていた児童を救出するという形で行われたとされる。本来はレアーギルドのギルドメンバーの児童だけの救出が目的であったが、結果的にはこの組織の被害に合っていた他児童48名も解放に成功する事となったという。誘拐犯は縛り上げられた後、誘拐組織の拠点に捨て置かれ、ダンジョンシティの治安を守ってるティリタンギルドに通報がされた。一緒に救出された児童48名もティリタンギルドで保護された。
このセキセイを含めたレアーギルドのメンバーの通報によって摘発された誘拐組織は貧民街における誘拐事件の半数近くを行っていたとみられており、この組織の摘発によって結果的に貧民街における誘拐事件の件数は半減したという。
レアーギルドに入った後もセキセイは他ギルドからの秘匿性の高い依頼を受け、ひとりでこなす事もいままで通りにあったとされる。セキセイはこの事をレアーギルドの面々には後になるまで言わなかった。言わなかった理由は聞かれなかったからだと後に語っている。
また、レアーギルドのギルドメンバーとしてセミトギルドを筆頭とした幾つかのギルドからの協力依頼なども受けた。こちらは天使レアーも認めていた活動である。
この様なレアーギルド加入後のセキセイの行動(レアーギルドのギルドメンバーとしての活動や、セキセイ個人の活動)は、1年近く続いた。この間、ダンジョンシティにおいてセキセイの存在を知る勢力はセキセイの存在を秘匿しようと奔走していたとされる。セキセイの存在の秘匿は一定程度の効果はあったとされる。
しかし、中央暦23008年に、配偶の神ニンリルに仕える天使リルの冒険者ギルド、リルギルドがセキセイの存在に気づいたとされる。リルギルドは有力ギルドの一つであり、天使リルは、セキセイを自身のギルドに加入させる事を目的に、自身のギルドのメンバーの動員や他勢力への依頼を通じて様々な謀略を行いレアーギルドを攻撃した。
だが、セキセイはその殆どの謀略を阻止し、天使リルが関与している事も暴き警告も行ったとされる。しかし、天使リルは謀略を止める事はせず、レアーギルドが、かつて行っていた違法活動に目をつけ、これを公衆に晒す事で被害者のいるギルドをけしかけ、ギルド間抗争に発展させた。
レアーギルドは神前裁判にかけられる事になった。神前裁判はダンジョンシティにおけるギルドを運営する天使による裁判の事で、拘束力などはないものの、ダンジョンシティで活動する以上は無視する事のできない、ギルド間の抗争などを解決方法を多数決によって決める場の事である。この場において、多数決の結果、レアーギルドと対立する13の被害者ギルドは、コマンドポスト争奪戦(サバイバルゲームにおけるフラッグ戦に近い決闘)による決着をつける事が決定した。
コマンドポスト戦は演習場として利用されていたダンジョン地下第1層フロア23にて行われる事となった。この決闘には、部外者を追加戦力として呼ぶ事は一切許されず、純粋な当事者間の決闘とされた。その為、レアーギルドは13の被害者ギルドと単独で戦う事となった。さらには、いかなる者もギルドメンバーであれば絶対に参加しなければならないとされた。戦力差はレアーギルドの人員が27名(この内、17名が戦力で、残り10名は戦力にならない孤児)なのに対して、13の被害者ギルド側の人員は2298名だった。
コマンドポスト戦であるとされたが、実際は、この神前裁判の結果は13の被害ギルド側による事実上のレアーギルドに対する死刑宣告であったとされる。決闘のルールには、戦いによる生死は一切問わないとされていた。そして実際、13の被害ギルド側はこの時、レアーギルドのメンバー全員を見せしめとして殺害するつもりであったとされる。
セキセイの存在を知らない者はこの決闘は13の被害者ギルドによる一方的な虐殺になると予想した。一方でセキセイの存在を知る者はセキセイによる一方的な虐殺になると予想したとされる。
そして決闘は予定通り行われた。この時、セキセイは自身の真の姿を露にした。天使レアーはセキセイの身を案じ、正体を明かす事には最後までどうにかならないかと反対したが、セキセイは自身の本来の力を発揮しなくても勝つ事はできるが、その場合、ギルドメンバーの全員を守る事に万が一の事態の恐れもあるとし全力で事にあたるべきだとした。話し合いの末、セキセイは本来の能力を決闘にて明かす事になった。
戦いはセキセイを知る者たちが予想したセキセイによる一方的な戦いとなった。セキセイは本来の姿と装備によって戦い、また、従者であるナウエルを数体召喚した。戦いはレアーギルドが全てのコマンドポストを制圧して終了したとされる。セキセイの圧倒的な力の前に13の被害者ギルド側はほぼ全滅した。
だが、決闘の結末はセキセイを知る者たちが予想した虐殺とはならなかった。テロや天使レアー、その他のレアーギルドのギルドメンバーからなるべく殺してはいけないとセキセイに約束をさせていた為である。セキセイはこの約束を守り、一方的な戦いをしつつも死亡者を出さない様に配慮した。その結果として重傷者は非常に多かったものの、死亡者は0であり、また戦いの後には全員がセキセイの治癒魔法によって治癒された。
この決闘の様子は秘匿された。勝敗結果は公表されたものの、決闘の様子などの情報は一般には隠された。決闘が行われた事実事態は、ダンジョンシティ中に知れ渡ってはいたが、決闘を決めた時の神前会議の際に、この決闘の非公開が決定され、決闘の詳細な様子は神前会議に参加していた天使及び関係者のみが観覧できる様にされていた。また、決闘に参加した者には盟約魔法によって第三者には決闘の事を伝えられない様にもされていた。
つまり、この時点においてはまだセキセイの存在は世間一般には知られていなかった。
決闘後、セキセイの存在を知った各ギルドの天使達は緊急の神前会議を開いた。この会議ではセキセイに関する事が議題とされ、セキセイの扱いに関する事が話し合われた。天使リルはセキセイの強すぎる力を問題視し、また、レアーギルドの様な弱小ギルドがそれを管理する事は問題があると指摘し、有力ギルドが管理をするべきだと主張した。そして自身のギルドこそが管理に最適なギルドであると主張した。
神前会議はリルギルドにセキセイを任せる事に関しては議論が紛糾したものの、天使リルの指摘したレアーギルドにセキセイを所属させ続ける事に関しては否定的な雰囲気となったという。さらには議論が進むに従ってリルギルドに所属させるべきだとする声も上がる様になった。神前会議はこのままではリルギルドにセキセイを任せるという方向になりかけたとされる。
しかし、天使セミトなど、セキセイと交流を持っていた天使や、天使レアーと交流を持っていた天使などが、これまで通りセキセイはレアーギルドに所属するべきだとする反論を展開した。するとこれらの天使と交友関係やギルド間で関係を持っていた他の天使もこの意見に同調した。
議論は紛糾したが、有力なギルドを持つ天使の幾つかが天使セミトなどの反論に同調した為に、セキセイはこれまで通りレアーギルドでの所属の継続が許された。この神前会議の結果に会議後に天使レアーから結果を聞いたレアーギルドのギルドメンバーからは歓声が上がったとされる。
しかし、神前会議が終了して4日後に事件が起きた。決闘に参加したギルドの一つであるレルクギルドの天使レルクが、決闘の結果にレアーギルドに対する恨みを抱いた。そして、秘密裏に報復を計画し、ギルドの数名の弓使いに命じてセキセイ以外のレアーギルドのメンバーをターゲットとした暗殺を計画し実行した。
計画は恐らくはレアーギルドのメンバーが1人もしくは脅威となる人物が周囲に居なくなった状況を狙っていたものと推測されている。
暗殺計画はほぼ同時刻に行われたとされる。レルクギルドの暗殺者は、レアーギルドのメンバーの内、1人で買い物に行っていた女性冒険者1人と男性冒険者1人。道で遊んでいた7歳の男児、6歳の女児、8歳の男児、11歳の女児の計6名を襲撃した。
この襲撃によって最終的に女性冒険者1人、7歳男児、6歳の女児、8歳の男児が死亡。怪我人が2人という結果となった。
そしてこの中の被害者の1人がテロであった。テロは背中から全身に8本の矢を受けた。目撃者によると一瞬の事だった様で気づけば1本の矢がテロに刺さり、次々とテロに後から矢が突き刺さったのだという。テロはその場で倒れた。矢はテロが倒れてからも3本が撃ち込まれたという。しかし、その3本の矢は転移によって瞬時にテレポーテーションしてきたセキセイによって防がれたという。
そして、矢が放たれた方向に向かってセキセイが何か魔法を放つとその魔法によって矢を放った方角にあった建物は爆発、崩壊したという。この攻撃によって暗殺者の1人は死亡したものと見られている。死体が残っていない為、その点は不明である。
セキセイはテロをすぐに治癒魔法で治療すると、レアーギルドの仮の本拠(元々の本拠は決闘前の抗争によって屋根が破壊された為、一時的に仮の本拠の建物を借りていた)へと戻った。そして、テロを寝かせると、重傷を負い意識不明の状態となっていた11歳の女児を治癒魔法によって治療した。襲撃があった事を天使レアーやその場にいたギルドメンバーから聞くと、セキセイは何も言わずに突然転移によってその場から消えたのだという。
結論から言って、セキセイは、その後、暗殺を行ったレルクギルド、そしてリルギルドを本来の装備の姿で攻撃した。ボールとナウエルを数体召喚し、さらには1体のトライポットも召喚した。この時のセキセイの姿を目撃したセキセイの知人達は普段は殆ど一切の感情的表現を見せないセキセイが明らかに激怒し、さらには、普段いつも冷徹であるセキセイが、いつにも増してさらに冷徹さを感じさせる様子となっていたのを見たのだという。
ほぼ同時にセキセイは二つのギルドを襲撃し、レイクギルドとリルギルドの本部や関連施設及び団体を襲った。セキセイは2つのギルドの人間を見つけ次第、皆殺しにした。
この事態にダンジョンシティは騒然となった。現在ではこの時の街の様子は、十八勇者伝説の怒りと滅びの章の地獄の惨状が現代に再現されたと住民の間では語られている。ダンジョンシティの各所では爆発が次々と起き、セキセイやセキセイの召喚した従者による攻撃の音と攻撃を受けた者の悲鳴があちこちで木霊していたのだという。
セキセイによる惨劇はテロの意識が回復しテロが急いでセキセイを止めに入るまで続いた。テロがセキセイを止めに入るまで天使レアーやギルドメンバーもセキセイを止める為にセキセイを説得しようとしたができなかったという。また、セキセイと交流のあった他のギルドの人物も説得を行ったが駄目であった。
この事件によってレルクギルドとリルギルドは壊滅。ギルドメンバーは女子供を含めて大半が殺害された。天使レルクは全身を焼かれ複数の槍によって貫かれ呪いをかけられた状態で発見。天使リルは体を両断された上、舌を引き抜かれ、全身を焼かれ呪いをかけられた状態で発見された。2人とも天使であるがゆえに、その状態でも生存し傷は1ヶ月ほどで完治したが、呪いは消えなかった(※この呪いに関して当初、セキセイは呪いの解除を拒否していたが、後にセキセイによって解呪されている)。
このセキセイによって引き起こされた事件は死鳥戦争事件と呼ばれた。
事件後、セキセイは後の天使レアーによる聞き取りに対して、事件中の事は余り覚えていないと語っている。しかし、自身の行動について冷静な分析をしており、2つのギルドを襲撃した理由については、レルクギルドは実行犯である為に襲撃し、一方で暗殺事件には関与していなかったリルギルドは、そもそもの原因がリルギルドが謀略を働かなければこの様な事件には発展しなかった為に襲撃したのではないかと答えた。
事件はテロの呼びかけによって終息したが、事件後、セキセイの行動は当然、問題視された。レルクギルドに対する攻撃は正当性があるとして不問となされたものの、リルギルドに対する攻撃は問題視された。
神前会議が開かれ、事件を止められなかった天使レアーに対する責任が追求された他、セキセイの扱いが話し合われた。セキセイを都市外へと追放するべきだとする意見。セキセイがテロに対して執心している事から、テロと共に都市外へと追放するべきだとする意見。テロの身柄を拘束しセキセイの行動を制限しようという意見。レアーギルドごと都市外へと追放するべきたとする意見。セキセイを殺すべきだとする意見など様々な意見が出た。
しかし、そのどの意見に対しても、セキセイが報復を行ったらどうするのかとする反対論が出た。セキセイが本気で攻撃を仕掛けた場合、いかなる既存のギルドの戦力でもセキセイを止める事は不可能だとする見方が大勢だった。神前会議ではかつての死地の惨劇が繰り広げられる可能性が指摘された。
報復を懸念する天使は、セキセイが社会のルールなどを気にしていない事を指摘し、普段の生活でセキセイがそれを守っているのはセキセイが己の目的とする行動が、それを破った事によって妨げられる事を嫌がっているからであって、自身の目的とする行動が社会のルールを守っていても、妨げられると判断したらセキセイは社会のルールなどは一切気にしなくなるとこれを例に主張した。
神前会議での議論は紛糾し3週間たっても議論の結果は出なかった。この間、セキセイはレアーギルドの仮本拠での待機を要請されていた。
神前会議の議論に決着がついたのは、会議の開始後、3週間後の事である。神前会議に突如としてドルネア軍事国の皇帝とダンジョンシティ外の有力ギルドの天使数名が参加した。皇帝の名代を任されていた神デーメーテールに仕える天使アルスエルは、セキセイの扱いについて、ダンジョンシティへの出入りは規定人数(10名)以上の天使の許可が無い場合は一切を禁止し、その代わり、ダンジョン内ではセキセイのこれまで通りの自由を保障するという案を提示した。
天使アルスエルは神前会議の場にセキセイとレアーギルドの主要メンバーの召集を提案。この皇帝側から提案に関しての率直な意見を求めた。神前会議に召集されたセキセイはその案では自身の目的に支障をきたすとし、テロの側から離れる事はしないと断言した。天使レアーやレアーギルドの主要メンバーも全員がセキセイだけがその様な扱いを受ける事に反対した。
天使アルスエルは神前会議の一時休憩を提案。これが認められ、神前会議は一時休憩の時間に入った。その後、この一時休憩の時間中に天使アルスエルは別室にいた天使レアーとレアーギルドの主要メンバーと会い会談をしたとみられている。会談の内容は不明で、天使アルスエルが待機室に入っていく様子を他の天使が後に目撃した事を証言している事から、この秘密裏の会談があった事が現在は明らかとなっている。
そして、一時休憩が終わると天使レアーはその場の全ての天使に向けて、新たな案を提案した。新たな案としてレアーギルドのギルドメンバー内、セキセイを含めた主要メンバーのダンジョンへの追放を提案した。つまり、天使レアーは、天使アルスエルによって示されたダンジョンシティへの出入りは規定人数以上の天使の許可が無い場合は一切を禁止し、その代わり、ダンジョン内ではセキセイの行動をこれまで通り自由を保障するという案を、セキセイ個人からギルドメンバーの主要メンバーに拡大させた形の案で提案した。
天使レアーやレアーギルドの主要メンバーはセキセイがダンジョンへと追放されるのであれば、自分達も付いて行くと主張した。
この天使レアーの提案に対してセキセイはテロを見守れるのであれば、何でも良いとする姿勢を見せた。
これを受けてこれ以外に具体的な案がなかった神前会議の場は、この天使レアーによる天使アルスエルの案の拡大案への賛同意見が大勢となり決定された。
この神前会議での決定を受けて、2日後、ダンジョンシティのアユンタミエント(ダンジョンシティの有力ギルドによる街の運営機関)はレアーギルドへの処置を公式声明として発表。また、セキセイの存在を公表した。
この発表をもって、セキセイの存在は一般に示される事となった。
なお、この発表前、ダンジョンシティの一般住民はセキセイの存在は知らされていなかった。ただし、事件後にレアーギルドの周辺を有力ギルドの冒険者が厳重な警備を行っていた事から、薄々とレアーギルドが何らかの形で死鳥戦争事件に関与したものと見られていたとされる。
アユンタミエントによる発表はこれだけではなかった。この日、アユンタミエントを通じてドルネア軍事国も公式声明を発表。セキセイと国防に関する契約を締結したと発表した。
この契約は、ドルネア軍事国に対してセキセイは召喚した6体の従者をドルネア軍事国の国防の為に貸し与えるとし、また、ドルネア軍事国が危機に陥った際にはセキセイは可能な限りの協力をするという契約だった。
この契約に則って、セキセイは発表の前日に6体の従者を召喚し、6体の従者はセキセイの指示によってドルネア軍事国の国土防衛に当たる様に命令された。この6体の従者はドルネア軍事国において現在は六方聖方として呼ばれるドルネア軍事国の6つの管区を守護する立場となった。
この発表によってセキセイの存在は内外にも公式に示された形になり、セキセイという伝説上で語られた存在が今日も存在している事が公式に明らかにされた。
―――――――――――――――――――――――――――
現在
現在、セキセイはレアーギルドがダンジョン地下第2層フロア178の街を拠点に移した事からこの拠点を中心に活動している。これによって地上のダンジョンシティでセキセイの姿が見られる頻度はかなり減ったとされる。
しかし、セキセイは天使10名の賛同があればダンジョンシティに行く事ができるという決定通り天使10名からの許可を受けて、たびたび個人や、レアーギルドのメンバーと共にダンジョンシティにやってきている姿が確認されている。レアーギルド外の人物などとも買い物や散策をしているとの証言もある。
この様なセキセイがたびたびダンジョンシティへと上がってきている状況について、ダンジョンシティの一部の天使の間ではこのレアーギルドに対するダンジョンへの追放処置について、セキセイや天使レアーやレアーギルドと親しい間柄の天使が積極的にセキセイをダンジョンシティへと上がる許可を出して、処置を無意味なものにしていると批判の声が上がっている。これについて、許可を出している天使側は決まりは遵守されているとし、批判を受け付けていない。
セキセイを巡る交流関係については、死鳥戦争事件前とほぼ同じ関係が続いているとされる。ギルドに関してはセミトギルドを含めて幾つかのギルドとは友好関係を築いているとされる。活動拠点が地上からダンジョン地下第2層フロア178の街へと移った事もあり、それ以前にはなかった交流関係も生まれているとされる。
また、セキセイは存在が公表されて以降、自身の正体を曝したまま活動する事も多くなった為、その状態で多くの困難な依頼や活動をこなしている姿を見せている事から地下での冒険者の間での評価は畏怖もされる一方で非常に高い状況でもある。
・契約
セキセイとドルネア軍事国との関係に関しては、現在も契約に基づいて継続中である。セキセイはドルネア軍事国に対してドルネア軍事国側から六方聖方と呼ばれる(セキセイはその様な呼び方はしていない)従者6体を貸し出しており、ドルネア軍事国の領土を脅かす勢力が現れた場合には国防に協力する様に指示を出している。また、セキセイ自身も契約に基づいてドルネア軍事国が危機的な状況になった場合には、ドルネア軍事国に対して可能な限りの協力をする契約を結んでいる。
セキセイはこの契約の及ぶ範囲を現在のドルネア軍事国の領土範囲と定めており、領土の拡張戦争などには一切協力しないとしている。セキセイはこれに関して面倒な事に巻き込まれるのは御免だというスタンスであるとされる。
この契約に基づいた有事への対処は、セキセイ本人による協力自体は、そこまでの危機的状況にドルネア軍事国が陥った事が無い為、1度も行われた事はないが、六方聖方に関しては複数回、契約に基づいて実際の有事に投入されている。
契約に基づいてセキセイによりドルネア軍事国に対して貸し与えられたセキセイの従者6体はドルネア軍事国の6つの管区に配置された。この6つの管区はセキセイの従者を活用するに当たって、ドルネア軍事国の領土内を6つに区分した新たな軍事的な管区として設置された。なお、この6つの管区はセキセイの従者6体の担当地域を示すものである。
六方聖方は現在までに2度のドルネア軍事国の国境戦争と十数回以上のドルネア軍事国領内の治安維持活動に参加している。
国境戦争はモルテナ王国が国境線を突破しドルネア軍事国側に侵攻した国境戦争と、タリティア法国が国境線を突破しドルネア軍事国側に侵攻した国境戦争の2つの国境戦争である。モルテナ王国には金牛宮が、タリティア法国には巨蟹宮が対処にあたり、両名のセキセイの従者は、実質、ドルネア軍事国の軍事力に一切頼ることなく単独の戦力で数千から数万規模の兵力を壊滅させた。
治安維持活動は全てのセキセイの従者が、担当している地域で個別に各自の判断で行われている事が確認されている。活動の内容は主に盗賊団や山賊などの討伐である。
これらセキセイの従者による契約に基づいた活動の内、2つの国境戦争は地球国家側においても大変注目された。国境線を突破し侵攻した2国の内、モルテナ王国軍は地球国家系の麻薬犯罪組織から違法製造の銃火器の供与を受けていたとみられており、大量の半自動小銃と少数の機関銃や重機関銃、ロケットランチャー等を所持していた為である。対するドルネア軍事国軍側の装備は剣や槍や弓が主体であった。この状況での単純な軍事力による衝突であれば、本来ならば、ドルネア軍事国側が圧倒的な不利な筈であった。しかし、セキセイによって貸し出された戦力である六方聖方はこの技術力による戦力差を完全に覆した圧倒的な結果を齎した。
この戦果の結果、セキセイの力は死鳥戦争事件の情報と合わせて地球国家から大変な注目を浴びる事になった。フランス軍事省は、セキセイの脅威度についての報告書をフランス議会に提出しており、仮にセキセイと地球国家が対立した場合の、セキセイ個人の脅威度はセキセイが召喚可能な戦力を含めて、少なく見積もってもロシア連邦軍の総戦力にも匹敵する可能性があるとの試算を出している。
ドルネア軍事国の国内において、このセキセイとの契約に関する評価は非常に高く評価されている。この契約によってドルネア軍事国の国防能力は周辺諸国を圧倒した。ドルネア軍事国の民からも2度の国境戦争を勝利に導いた事から好意的に見られ、各地で盗賊団や山賊を討伐している事からも領内の治安が契約前と比べて大幅に改善した事から、六方聖方を英雄視する人々も大勢存在する。また、これら六方聖方の活躍に伴って六方聖方の主であるセキセイに対しても畏怖の感情は依然、根強いものの、好意的に見る人々も増えているとされる。ただし、ドルネア軍事国の一般の民の間ではこの契約について、皇帝がその知略をもってセキセイを屈服させ、この契約を結ばせたという見方がある為、純粋な好意的な目とは言いがたい側面もある。
一方で、ドルネア軍事国の貴族の一部からはこの契約について批判の声も上がっている。それは、この契約が文書などの形で示された契約ではなく、あくまで、セキセイと皇帝側が接触した際に口頭で契約を締結している為である。また、一部の貴族を除いて議会にもこの話しは通されていなかった。
この為、この契約について批判をしている一部の貴族からは、口頭契約である為に公表されていない秘密の約束が契約に含まれているのではないかとする疑念や、この契約が議会を一切通されずに結ばれた事から、政治経験の無い幼い皇帝の権威を高める為に議会に対抗して皇帝の周囲の人物達が独断で行った行為だとする批判の声が上がっている。
なお、これらの批判に対して皇帝側はこの様な疑惑を否定している。しかし、貴族議員の間では、この契約上にあるセキセイが直接的に関わる項目。ドルネア軍事国が危機的な状況になった場合にはセキセイはドルネア軍事国に対して可能な限りの協力をするという項目について。この項目は実は本当の契約ではドルネア軍事国ではなく、現皇帝が危機的な状況になった場合にはセキセイは現皇帝に対して可能な限りの協力をするという契約だったのではないかとの疑惑が噴出している。
この疑惑に関しても皇帝側は一切を否定している。
・召喚獣問題
死地として知られるロボス大陸を治めるフェンデルツ辺境伯は、セキセイの存在が公表されるとその知らせを知った後にセキセイに対して直接、書簡を送りロボス大陸の各地に生息し見境なく住民や家畜を襲っている射る球( ボール )を止める様に求めた。しかし、これに対して、セキセイは2万年以上前に自身が召喚した従者は既に完全に狂い暴走し、もはやセキセイの指示には従わない為、止める事はできないと返答している。
なお、セキセイは自身の力を使えばロボス大陸に生息する暴走した射る球を駆逐する事は容易だとしているが、これに関してはセキセイは得られるメリットがないとして承諾していない。
・魔獣活性化問題
ダンジョンシティのアユンタミエントは現在、世界的に緩やかに活動が活性化していると指摘されている魔獣の問題について、ダンジョンシティの冒険者ギルドの間においても懸念は共有されていると述べており、今後、ダンジョン内の調査や対策を強化する方針であるとしているが、現地ではこの調査や対策に有力ギルドの多くが参加を表明している事から、レアーギルドないしセキセイも参加するのではないかとする憶測が広がっている。
―――――――――――――――――――――――――――
記憶
セキセイは自身の過去に関する出来事の記憶の多くを忘れてしまっているとされる。例えばセキセイは本来の名前ではないとされるが、本人は本来の名前を覚えていない。
召喚前の事に関しては、他の記憶に比べれば、ある程度の事は覚えている事は多いとされるが、召喚後の記憶はかなりの欠落がある状態であるとされる。
この記憶の欠落の状態が、単なる物忘れなのか、記憶障害の類なのかは不明である。しかし、この点について、フランスのトゥルーズ大学精神医学部の精神科医であり精神分析医でもあるボリス・エティエンヌ・フェリックス教授は、セキセイの記憶の欠落の原因が、セキセイが過去に受けた過度な精神的ストレスを原因とした記憶障害の一種であるとの可能性の見方をしている。
また、ボリス・エティエンヌ・フェリックス教授は、記憶以外にもセキセイが解離性同一性障害である可能性を精神医学的に一番最初に指摘した。
―――――――――――――――――――――――――――
セキセイの行動論理
現在のセキセイの行動論理は白茶狼族の少年テロを中心していると解釈されている。セキセイは自身が死地を遠く離れてダンジョンで活動をする様になったのは、少年テロが冒険者になってこの地に向かったからであると述べており、セキセイはテロの成長を見守りたい旨の主張をしているとされている。
セキセイによれば本来であれば、セキセイはテロと同じギルドに入るつもりなどは一切なく、さらにはテロの目の前に姿を表すつもりも無かったとされる。例えテロ本人に気づかれないとしても近くで見守り続るつもりだったという。なお、この様なつもりではあったそうだが、明確にテロの目の前から姿を隠していたという意図も一切なかったという。
セキセイとしては、テロと直接、会えなくてもそれで良し、直接会ったとしてもそれで良しという、どちらでも良いという考えだったという。
しかし、テロとセキセイはダンジョンシティで再び再会した事で、テロがセキセイに一緒に冒険をする事や、仲を深める事を望んだ為、セキセイはテロの前に再び姿を表す様になり、最終的にはレアーギルドに加入したのだという。
―――――――――――――――――――――――――――
召喚前
セキセイは恐らくは並行世界や並行宇宙に順ずる世界の地球の出身者であると見られている。これはセキセイが扱う単語などに多くの地球由来と見られる単語などが見られる他、セキセイ自身が語る召喚前の自分に関する事から推測されている。
セキセイはFrance24の取材に対してこの点を詳細に語っており、セキセイ本人は永い時を過ごした為に多くの事は忘れてしまっているが覚えている範囲では、自身は、日本という地域に住んでいたと述べており、日本において、サイバーラインという企業の武装警備員として戦闘用強化服を着て企業の施設や設備を他の企業や犯罪組織から守る仕事をしていたという。生まれは貧しく、恐らくは貧困から脱する為に武装警備員となったとされる。なお、この時は普通の人間だったという。
セキセイの暮らしていた時代には恐らくはブレインインターフェースに相当する技術が広く普及していたと考えられ、セキセイは仕事が終わった後に、仮想現実に入る事ができるアースロンド・トロイアクエストと呼ばれるオンラインゲームで遊ぶのが日課であったとされ、現在のセキセイの体は本来であれば、そのオンラインゲーム中の自身のゲームアバターなのだという。
つまりセキセイは召喚前は普通の人間であったが、降臨世界への召喚時には自身が遊んでいたオンラインゲームのキャラクターの状態で召喚された。
召喚前の世界について、セキセイは、海以外の地球の全域が砂漠で覆われ、砂嵐と貧困、そしてその地を闊歩する様々な企業や犯罪勢力による策謀や対立によって多くの一般住民が巻き込まれる世界であったと説明している。なお、地球人の全てがその様な状況であった訳ではなく、一部の人々は荒廃した地球を捨てて宇宙空間に逃れ、これらの人々はイブと言う施設を作って地球の惨状には目もくれていなかったとされる。
セキセイは自身の国籍や本来の名前を覚えていないが、国籍に関しては自身にはそんな物は無かった気がすると述べている。
・召喚直後の降臨世界に対する考え
セキセイは降臨世界への召喚直後、しばらくの間は、自分が異世界に居るとは考えなかったとしている。むしろ、自身が何かの事件に巻き込まれたと考えていたとされる。
セキセイは召喚前にオカルトや都市伝説関連を扱っているインターネット掲示板で見かけた都市伝説の一つに、企業がゲームプレイヤーをゲームからログアウトできない様にして、金持ちの見世物とする為にデスゲームを秘密裏に開催しているという都市伝説を思い出したという。この事から、セキセイは召喚後の自身の状態を異世界に召喚されたとは直には考えず、何かの事件に巻き込まれたと考えていた。
だが、セキセイは降臨世界の多くの人々や生物を見て、その行動が各個体の独自の意思によって動いている事に気づき、また、召喚当初から抱いていた感覚である、自身の目に見える景色の完成度が生身の体の目で見るものと全く変わらない完成度であるという事とも合わさり、これらの事からセキセイは、これらの事はセキセイの時代の地球の技術的には仮想現実においても再現は可能ではあるが、明らかに予算や設備が掛かりすぎている事に気づいたという。セキセイには企業がこの様な無駄な予算や設備のかけかたをするとは到底思えなかったという。
そして、これに気づいて以降、セキセイは次第に自身の身が元の世界で起きた事件に巻き込まれたのではなく、本当に異世界に召喚された事を理解したという。
これは時系列的には十八勇者伝説における白茶狼族の姉妹に出会う前には既に気づいたとされる。
なお、上記の召喚直後セキセイの降臨世界に対する考えは、現在のセキセイ本人はすでに忘れてしまっているが、上記の事に気づいた当時のセキセイが召喚当初のこの考えに関する事をメモにまとめており、これを現代のセキセイがFrance24の取材を受けた後にアイテムボックスを整理していた所、このメモを発見し、現在も所持していた事が明らかとなった事から、後日にセキセイからFrance24の記者が泊まっている宿宛に、このメモと共に、このメモが見つかった事を淡々の記した手紙と共に送りつけた。これによって召喚当初にセキセイが降臨世界に対してどの様な考えを持っていたかが明らかとなった。
―――――――――――――――――――――――――――
セキセイによって生み出された種族
現在確認されている勇者召喚によるセキセイの召喚と、セキセイによる従者の召喚の双方の行為によって、それ以前までの降臨世界には存在しなかった、降臨世界に新たに齎された種族について。その数は凡そ10種族が存在するとみられている。以下はその一覧。
・オートマタ
概略:十八勇者の召喚によってセキセイが召喚された事によって降臨世界に齎された新しい種族。その後、セキセイの従者の召喚によって多くの数と種類が召喚された。十八勇者伝説に記されている内容を基にした場合は、現在までに非常に多くの種類がセキセイによって召喚され使役されたと考えられているが、現代までに残り、生存が確認されているオートマタは、セキセイと死地に生息しているボールのみである。過去に多くが召喚されたにも関わらず、現在、生息数が少ないのは、オートマタには生殖能力が存在しない為である。しかし、その寿命は半永久的であり、外的要因によって生命活動を停止されるまで、死亡する事は無い。
死鳥戦争事件ではボールの他、トライポットやナウエルが召喚され、この内、ナウエルはセキセイによって直近に新たに創造された言わば新種であったが、トライポットに至っては確認されている限りでは凡そ2万年ぶりに姿を表した。しかし、死鳥戦争事件後に事件中に召喚されたセキセイの従者はセキセイの指示によって同士討ちによって死滅している。
オートマタは魂を持った人形の種族である。地球人から見ると、その姿形は機械的な見た目に見える事が多いが、その内部構造は確認されている死体などから、内部も機械的な外見に一見、見えるものの、これは、あくまで外見だけであり、機械としての機能を一切有していない。オートマタは機械ではなく、むしろ人形に近い内部構造である。
セキセイによれば、セキセイがこれまで召喚したオートマタが機械的な見た目なのは、あくまでセキセイがこれまで使役したオートマタがそうであっただけで、オートマタは必ずしも機械的な外見の見た目や機械的な内部の見た目の種族であるという訳ではなく、セキセイの姿の様に人形的な見た目も本来は多い種族なのだという。魔王ルキフェル討伐の為の遠征中には、人形的な見た目のオートマタを召喚する事もそれなりにあったとされる。なお、セキセイによれば、セキセイの体の内部には、機械的な見た目の構造は無く空洞であるという。
・半天使
概略:半天使は六方聖方が召喚された事によって降臨世界に齎された新しい種族。セキセイによれば半天使は天使と人間のハーフの種族であるとされるが、降臨世界の天使とは一切が無関係の種族である。ここで意味する天使とは、アースロンド・トロイアクエストにおける種族の天使であるとされる。
降臨世界の天使の様な外見的な特長である翼などは半天使は持っていない。半天使の外見は美しい少女そのものである。半天使はオートマタと同じく、その寿命は半永久的であるとされ、また歳もとらないとされる。外的要因による生命活動が停止されるまで、死亡する事は無いとされる。生命活動に関する点に関しては降臨世界の天使が完全な不老不死の存在であるのに対して、半天使は完全な不老不死ではない事から半天使が降臨世界の天使とは全く別の存在である事が分かる。
ただし、翼に関しては、通常時には存在しないが、半天使が特定の能力を解放する際に出現するとされており、また、この際には天使の輪の様なリングも頭上に出現する他、体に模様が表れる。降臨世界の天使が地球における天使の一般的なイメージである天使の輪の様な物を持たないのとは対称的となっている。
なお、降臨世界の天使の中からは、半天使という存在について、天使への冒涜と見る者も一定数存在する。
・天使
概略:十八勇者伝説の魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にセキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族。降臨世界の天使とは無関係の種族でありアースロンド・トロイアクエストにおける種族の天使であるとされる。外見は女性であり翼を持ち頭上に天使の輪を持つ。降臨世界の天使とは違い、不老不死ではなく、天使はオートマタと同じく、その寿命は半永久的であるとされ、また歳もとらないとされる。完全な不老不死でない事からこの天使が降臨世界の天使とは全く別の存在である事が分かる。
天使は魔王ルキフェル討伐の為の遠征中に数体が召喚され戦いに従事し非常に強力な力を発揮したとされるが、降臨世界の天使から激しい反発を受けた為、召喚状態が解除され降臨世界から姿を消したとされる。
・インセクト
概略:ロボス大陸が死地と呼ばる様になった後にロボス大陸から徐々に降臨世界中に広がったとされる種族。セキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族である。インセクトは地球における虫の様な外見と習性を持つ種族である。本来、降臨世界には地球における虫の様な生物は存在しなかった。しかし、セキセイによって召喚された物が死地から降臨世界中に拡散した事で定着した。インセクトは、29種類が確認されている。地球のおけるクモ、ムカデ、ハチ、ゴキブリ、カマキリ、カミキリムシ、ゾウムシ、タマムシ、アリ、コオロギ、ガ、チョウ、ハサミムシの様な形状をした種族。寿命があり、地球における虫と同じく生殖によって増殖する。ただし地球の虫とは違い、その生息数は地球における虫よりは圧倒的に少ない。しかし、インセクトは全種類が猛毒を有しているという特徴がある。
セキセイによれば、インセクトの存在はセキセイにとってもイレギュラーであったと述べており、本来であればインセクトは召喚対象の従者ではなく、セキセイの行使する魔法による攻撃の中に虫に攻撃対象を喰わせる魔法があるが、ここから生まれたのだろうとしている。この魔法は召喚前のゲームの時点では、単なる攻撃エフェクトであり、虫を召喚している訳ではなかったそうだが、魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にこの系統の魔法を使用した際に、出現した虫が消えずそのまま残った事に驚いた事があるという。この時はセキセイとその場に居た者が総出となって逃げる虫を殺しまわり事なきを得たという。
セキセイは恐らくは死地でこの魔法が使われ誰も処理をしなかった為に数を増やしたのだろうと推測している。なお、セキセイはインセクトをコントロールできるかという質問に対して、もとから言う事を聞かない存在の為、不可能だと答えており、一応、魔法をかけた対象のインセクトを一定程度操る事はできるがそれだけだと回答している。
・ファントム
概略:十八勇者伝説の魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にセキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族。実体が無い魂のみの種族であり、古い全身鎧の兜以外の鎧に取り憑いて肉体としている。分裂する事によって増殖する。なお、分裂の際、自我は分裂せず、分裂した新たな個体には新たな自我が芽生える。現在、アロシア大陸のテレス地方に生息し、鎧の国と呼ばれる傭兵国家を築いている。鎧の国は地球におけるスパルタの様な軍事国家。
飲食を一切必要とせず、その寿命は半永久的であり、外的要因によって生命活動を停止されるまで、死亡する事は無い。しかし、現在のファントムは最も古い者でも1千歳程であり、これは多くの戦いに参加し、世代交代が進んだ為である。
現在のファントムはセキセイについて。ファントムの創造主がセキセイである事は十八勇者伝説によって明らかとなっているが、現在のファントムは自身の創造主がセキセイである事を否定しており、独自の創造神と創造神話を崇拝、信仰し自分達はセキセイからではなく、この創造神によって創造されたと考えている。
・食屍鬼
概略:十八勇者伝説の魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にセキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族。犬に似た顔とゴムの様な質感の皮膚をもつ種族。生殖行為によって増える。寿命があり人族とほぼ同じ寿命。現在、タリア島に生息している。
元々は、魔族の軍団を討伐した後にタリア島の住民を守る目的でセキセイが召喚した食屍鬼による重装歩兵軍団が祖先であるとされる。島の住民と共生していたとされるが、世代交代と共に食屍鬼は統率、文明、言葉を失い、島の住民の前からは姿を消し、住まいを森や洞窟に移したとされる。
他種族との関わりが殆ど無い事から不明な点が多い種族である。タリア島の住民からは恐れられており、子供をさらったり、墓地を荒らして死体を食べたり、住民を襲って食べると言われている。
・アトラナート
概略:十八勇者伝説の魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にセキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族。非常に巨大な蜘蛛の様な見た目をしたとされる種族。その寿命は半永久的であるとされ、また歳もとらないとされる。外的要因による生命活動が停止されるまで、死亡する事は無かったとされる。セキセイによって1匹だけが召喚され戦略上、重要な拠点だったとされるトロン島の守護を任されていたとされる。セキセイや十八勇者やその仲間以外の全てを攻撃し島を死守する様に命令されていたとされる。
アトラナートは知性を持つ生物を捕まえると、その生物を人間程の大きさの巨大なインセクトの様な姿に変えて自身の眷属としたという。アトラナートの眷属は知性を持つ生物を見つけると捕まえ、アトラナートの元へと連れて行くか、もしくはその生物の脳髄を食したという。
アトラナートはセキセイからの命令が解除されなかった事から、トロン島の守護を続けた。しかし、最後の勇者エルフレクトの時代にトロン島の周辺諸国への攻撃を始めた為に、最後の勇者エルフレクトが討伐し、それが成功した事でアトラナートとその眷属は滅びたとされる。
・ヴルトゥーム
概略:十八勇者伝説の魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にセキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族。巨木の様な体を持ち、美しい妖精の様な女性型の花を咲かせている姿だったと伝えられている種族。セキセイによって1体だけが召喚され、戦略上の重要な拠点だったとされるエレメンタル大陸のオルト地域の守護を任されていたとされる。ヴルトゥームはイタカやファントムなど複数のセキセイが召喚した従者を使役していた。
最後の勇者エルフレクトの時代にオルト地域は人族の国セレフニト帝国が治めていたが、この国が周辺諸国への戦争を開始した。幾つもの国が滅ぼされたが、状況を怪しんだ最後の勇者エルフレクトが、セレフニト帝国を調べた所、セレフニト帝国を裏でヴルトゥームが支配していた事が分かった。ヴルトゥームはアトラナートと共謀して、侵略を行っていたとされる。ヴルトゥームは最後の勇者エルフレクトによって討伐され滅びたとされる。
・ウボ=サスラ
概略:十八勇者伝説の魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にセキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族。浮遊する緑色の球形の体を持ち、その表面から1本の植物の芽の様な器官を上に向けて伸ばしてる姿であるとされる種族。不定形であったとされる。知性があるかどうかは不明。セキセイによって1体だけが召喚され、カナリア高地の標高9,833mの山脈にある魔族軍が築いた巨大都市において、ゲリラ戦を続ける魔族軍の掃討を任されたとされる。魔族の掃討後は都市の最深部に安置され、カナリア高地の守護を任されたとされる。
ウボ=サスラは自身の細胞からショゴスと呼ばれる不定形の巨大なアメーバの様な姿をした眷属を作り出す。ショゴスには明確な知性があり、また自由自在に姿を変える事ができるとされる。ショゴスを生み出す事によってウボ=サスラはカナリア高地の魔族軍を掃討したとされる。なお、ショゴスはショゴス単体でも分裂し増殖する。
現在もウボ=サスラが存在しているかは不明だが、ショゴスは現在も存在しており、カナリア高地にある、魔族軍がかつて築いた都市はショゴスの支配する領域であるとされる。ショゴスは非常に非友好的かつ凶暴な生物である事が知られている為、非常に恐れられている。その一方で降臨世界の各地ではショゴスが奴隷として違法に極少数の個体が使役されているとされる。
極僅かではあるが、過去に行われたショゴスとの友好的な接触例から、カナリア高地のショゴスは独自の社会を形成している事が分かっている。ショゴスは地球で言う共産主義的な社会を形成していると推測されている。政治は労働議会と呼ばれるショゴスの議員による議会によって行われているとされる。
セキセイの存在はファントムの社会と同じく既に忘却されているものと推測されている。現在のショゴスはウボ=サスラを自らの創造神として崇拝しているとされる。また、ショゴスの神話では、ショゴスは魔族によって使役されていたが、過酷な労働を課した魔族に反乱を起こし、それによって勝利を収めた事で自由を手に入れたと信じられている。
ショゴスの文化や技術は非常に原始的であるとされている。ショゴスの住む都市は、その都市を本来建設した魔族軍が作り出した物とショゴスが作り出した物とでは、一目見ただけでも、どちらが作ったのかが分かる程の明確な差があるとされる。
・イタカ
概略:十八勇者伝説の魔王ルキフェル討伐の為の遠征中にセキセイによって召喚され、降臨世界に齎されたとされる新しい種族。鉄の巨木の様な巨大な人型の体を持ち、空を自由自在に飛びまわる能力がある種族。生殖能力の有無や寿命等は一切が不明だとされる。十数体がセキセイによって召喚されたとみられている。
イタカは十八勇者の居ない地域の守護を任されていたという。現在は本来の役目である守護の役目は忘れ去られていると考えられ、最後の勇者エルフレクトの時代にはすでに、奇行をしていたという。現在、イタカは世界中の空の上を高速で回遊し、稀に人物を捕まえると、その者を数ヶ月間、生きたまま連れまわし、最後は上空から投げ落とし乱雑に地上に戻すという奇怪な行動をしている。稀に投げ落とされても、運よく奇跡的に生存する者も居るが、その者の肉体は高い空の上の低酸素、低温度の環境で耐えられる肉体に変化されており、地上では長く生存できない。
イタカに関しては2039年に日本国においても被害が出ており、富士山を登頂していた田中明彦( たなかあきひこ )氏がイタカに攫われた事件が発生している。イタカの現在の正確な生息数は不明。
これら上記10種は、セキセイが現れるまでは、これらと似た同様の種族が降臨世界には一切が存在していなかった。しかし、セキセイの召喚とセキセイによる従者の召喚によって新たなる降臨世界に住まう種族となった。現在までに生息が継続して確認されている種族は10種中、7種のみとなっている。また、その生息数は他の降臨世界の種族の数と比べれば非常に小数である。
セキセイは魔王ルキフェルの討伐遠征の期間中に、これら10種以外にも、いくつかの種類の従者を召喚し、使役していたとする記録も残っている。こちらは、姿形状が、降臨世界に既に存在していた種族と類似していた事から、上記9種族の様に新たな種族としては、降臨世界では一般的には、みられていない。
しかし、この点については議論もあり、これらの降臨世界に既に存在する種族と類似した従者達もセキセイと同じ様に、降臨世界の魔法学の知識などを逸脱した魔法の使い方や能力を持っていたとされる記録が残っている事から、それまでの既存の降臨世界の種族と同一視しても良いのかの議論がある。
しかし、それらの既存の降臨世界の種族と、姿形の似たセキセイの従者は、世代交代をする内に凡そ、その殆どが2世代から3代後には降臨世界の魔法学や知識などを逸脱した能力の使い方はできなくなり、降臨世界の魔法学や知識に則した能力や技能の使い方しかできなくなったという。その為、能力的にも見分けは一切がつけられなくなり、さらには、時代経過と共にセキセイによって召喚された従者達および、その子孫と、既存の降臨世界の種族との間でも交配が進み、文化的にも完全に統合していった結果、見分けも一切が付けられなくなった。
この為、現代においては、議論こそあるものの、見分けを付ける事は事実上、不可能とみられている。
なお、上記で挙げた10種族の内、現在も生息しているオートマタ、半天使、ファントム、インセクト、食屍鬼、ウボ=サスラ(ウボ=サスラの眷属)、イタカの内、元から特殊な能力の無かったインセクトを除いたファントム、食屍鬼の2種族も能力や技能については、世代交代によって、降臨世界の魔法学や知識を逸脱した能力や技能は使えなくなり、現在では完全に降臨世界の魔法学や知識に則した能力や技能の使い方しかできなくなっている。
―――――――――――――――――――――――――――
天使による見解
以下の見解はFrance24による天使へのインタビューを元にしている。ただし、以下の見解はFrance24の取材を受けた天使リアの主張であり真偽は不明である事には留意。
セキセイがなぜ本来の人間の姿ではなくオンラインゲーム上のゲームアバターの状態で降臨世界に召喚されたかについては、天空を司る神ジュピターに仕える天使リアは以下の様な見解を述べている。
永遠に失われた古の勇者の召喚魔法は、他の世界より魂を降臨世界へと召喚し、その魂に召喚世界の魔力によって肉体を物質化して授けるという方式の召喚魔法であったのだという。この方式の召喚は召喚時に召喚対象の人物が自身の肉体だと認識している体が召喚世界において再現される方式であったとされ、セキセイは召喚時にブレインインターフェースの類の技術を利用したオンラインゲームのゲームアバターを操作していた為に、魂がゲームアバターを自身の肉体であると認識していた結果、降臨世界での肉体の構築時にもゲームアバターの姿で再現されたものとの見解を述べている。
セキセイの扱う能力に関しては、降臨世界の既存の魔法学的知識や降臨世界、地球の双方の物理法則を無視しているかの様にも見える力の使い方をしている様にも見えるが、これについて、天使リアはセキセイの能力は決して世界の法則からは外れた物ではないとする見解を述べている。
天使リアはセキセイの能力は永遠に失われた古の勇者の召喚魔法の効果によって、世界を満たしている魔力がセキセイの体の再現と同じ様に、セキセイの能力も再現した物であるとの推測している。
永遠に失われた古の勇者の召喚魔法は、召喚した者の姿形だけでなく、能力も再現する力があったとし、例えば、これは本来の勇者の召喚魔法の仕様の想定であれば、もともとの体力の他、特殊な技能等があれば、それらも降臨世界において使える様にする為に、魔力で再現をする機能だった。セキセイの場合はそれが召喚魔法の想定を超えた範囲で再現されたのだとしている。
天使リアによれば、魔力とは、万物の根源であり世界を満たす力の一種であり、もしも、魔力やそれと双璧を成す全ての力を自由自在に操る事ができれば、宇宙すらも作る事ができるとも予想する事ができる強大な力の構成の一つである事から、セキセイの様な存在が召喚され、その異常な能力までもが降臨世界において再現された事は、なんら、おかしくはない事だとしている。
天使リアは自身の見解に対する証拠として、天使への力の行使の点を上げており、セキセイや、セキセイが召喚した従者は確かに既存の物理法則や魔法技術体系を大きく逸脱した様な不明な力の利用方法を行使しているが、それでも、神の使いである天使を殺害する事ができなかった事から、この天使の生命活動を止められなかった事こそが、セキセイがこの世界の法則に則った存在である事の証明であるとの見解をしている。
天使リアによれば、天使は魔力とは双璧を成す力の一つによって生み出されており、魔力やそれ以外の原理の力では天使は決して死ぬ事はないのだという。そして、これは世界の法則であり、セキセイが天使を殺す事ができなかった事こそが、セキセイがこの世界の法則に則った存在である事の証明であると述べている。
天使リアは、セキセイが扱う能力について。今の魔法学では到底理解できない能力の行使の仕方ではあるが、将来的に魔法学さらなる発展を遂げる事ができれば、いずれは原理が解明できるだろうとしている。
―――――――――――――――――――――――――――
疑惑
セキセイは性格的に自身の目的の完遂の障害となるものは徹底的に無視をしたり、排除をしたりしようとする傾向にあるとされているが、この点に関する事に関して、死鳥戦争事件後にダンジョンシティの冒険者一部の間では疑惑が持ち上がっている。
違法薬物の売買行為に関与した容疑でレニスギルドがダンジョンシティの治安を守ってるティリタンギルドによって摘発されたが、このティリタンギルドによる取調べの中で、レニスギルドのギルドメンバーの内、6名が行方不明である事が分かった。レニスギルドのギルドメンバーの多くは行方不明となっている自分たちの仲間について何故、行方不明になっているのか分からないとしたが、この6名との付き合いの長かったとされる男性冒険者の1人が、6名の所在に関しての質問に対して、かなり怯えた様子で取り乱したという。
この様子にティリタンギルドは、何故、彼が取り乱しているのかを彼と親しいとされる者達に聞き取りを行った。すると、彼と親しいとされるメンバーの多くも何故、彼がこうなったのかは分からないと回答したが、1人のみが、心当たりがあるとすれば、とする内容を語った。1年近く前に6名が、まだ行方不明となる前に、ギルド本部の酒場で、6名がレアーギルドのとあるギルドメンバー(誰かは不明)との盗品の取引を巡ってトラブルとなっている趣旨の会話をしており、どうしてやろうかなどとする会話をしていた事を証言した。
また、この証言をしたメンバーは、6名が行方不明になった直後に彼と話したとしており、何気なく彼に対して行方不明の6名の姿が見えない件と、酒場で聞いたレアーギルドの件を思い出して言い、儲けられそうな話ならレアーギルドとの話しに自分も混ぜろよと気軽に言ったのだという。すると彼はレアーギルドという言葉を聴いた途端に狼狽し、今まで見た事もない様な剣幕で、レアーギルドには絶対に関わるなと言ったのだという。この証言をしたメンバーは、あまりの剣幕にこの話はそこで切り上げ、そこで終わったのだという。
この証言を元にティリタンギルドは、再び彼に質問をしようとしたという。すると、彼は、レアーギルドという言葉を出した瞬間に最初の怯えようよりも遥かに怯え、何かを恐れた様子となり、余りに取り乱した様子となった為、聴取は中断されたという。
この事から、ティリタンギルドでは6名の失踪にレアーギルドが関与しているのではないかとする疑惑が持ち上がり、特にセキセイが何か事情を知っているのではないか、とする疑惑が持ち上がった。6名が行方不明となった時期に、レアーギルド内でこの6名以上の実力を持った冒険者がセキセイのみであった為である。それ以外のレアーギルドのギルドメンバーはこの時期、冒険者としてのランクも実力もこの6名以下であったとされる。
しかし、証言が得られない事や、証拠も一切が見つからなかった為に、この疑惑は疑惑のまま調査は終了したという。この調査は一切外部には公表されていなかったが、ティリタンギルドのギルドメンバーが酒場で泥酔し複数の事件の調査資料を流出させる不祥事があった事で、この際に、流出した資料の中にこの件に関する資料も含まれていた為に知られる事となった。
―――――――――――――――――――――――――――
編み物
普段、趣味と呼べる行為が殆ど無いとされるセキセイであるが、唯一、周囲の人物から趣味らしい趣味として知られているのが編み物である。セキセイは特に用が無い時などには、稀ではあるそうだが、自身の編み物セットで毛糸を使って編み物を編んでいる事があるとされる。
この趣味は、十八勇者伝説にも記載がある。魔王ルキフェル討伐の為の遠征中に、元々、男性であったセキセイが自身の精神に女性性が芽生えはじめた頃に、仲間の騎士団員が編み物をしている様子を見て、その団員から影響を受けて教えてもらい、以降、暇な時には編み物をする様になったとする記載が存在する。
その為、このセキセイによる編み物の趣味は十八勇者伝説期に比べて大幅に性格が変わってしまった現在のセキセイの以前から変わらない数少ない趣味として知られている。
―――――――――――――――――――――――――――
周知
セキセイに関するこの記事に記載されている程度の知識の一般への周知を巡っては、現状、地球国家と降臨世界の双方で情報量による大きな差がある状況である。
セキセイの名前の知名度は圧倒的に地球国家よりも降臨世界の方が知られている。その一方で、セキセイに関するこの記事に記載されている程度の情報は相対的に見た場合には地球国家の方が詳しい者は多いとされる。
これは、降臨世界側にテレビ、新聞、インターネットなどのメディアが存在しない為である。その為、一般人の間では噂話や世間話程度の非常に精度の低い情報でしか周知されていないのが現状である。降臨世界の地域によってはセキセイが発見された事すら知らない人々も非常に多い。
降臨世界側では、ここにまとめられている知識ですら、かなり知られていない事が非常に多い。これはダンジョンシティにおいても同じであり、セキセイに近い現地ですらも、この記事に記載されている程度の知識程度も、完全な状態で知る人は非常に稀なのが現状である。
一方で地球国家側は降臨世界の伝説や神話は余りメジャーではない為にセキセイの知名度は圧倒的に低い。しかし、フランスメディアのFrance24が現地で多くの取材を元に行ったドキュメンタリー報道により非常に情報量は圧倒的である。
France24によって制作されたドキュメンタリーはフランス国内に居住している降臨世界の天使を含む移住者の間で非常に高く評価されている。在フランス天使地球友好協会の会長を務める天使パルミラ(美麗神アラに仕える天使)はフランスの新聞社ル・モンド紙の取材に対して「セキセイに関する事で、ここまで情報をまとめた例はこれまで一度も例が無かっただろう」としてフランスメディアの取材力を非常に高く評価している。
ただし、その一方でセキセイに関する情報には注意が必要である。これは本記事においても言える点である。本記事の記載の多くは比較的情報の精度が高いと考えられているFrance24による報道やフランス政府の資料を基としているが、セキセイに関する情報を巡っては真偽が不透明な情報に頼らざるを得なかったり、現地の様々な情勢などの事情も複雑に関係している為、本記事の内容も、どこまでが正確な情報なのかは未知数な部分もある。
少なくとも、容姿、種族、能力、性格、性別、過去、記憶、行動論理、セキセイによって生み出された種族、編み物の項目の内容は現状、一般に知られる情報の範疇においては信憑性が非常に高いものと見られているが、発表の項目に記載されている時系列については、一部で疑問点が指摘されている。
発表されている時系列は事実である可能性が高いと目されてはいるものの、この時系列には不鮮明な部分が随所でみられており、何らかの一般には公表されていない内容がある可能性が指摘されている。
―――――――――――――――――――――――――――
注釈
・ダンジョンシティ ‐ ドルネア軍事国に存在する降臨世界でもダンジョンの入口の上に築かれた都市としてはトップ5に入る規模を有する都市。人口は100万人以上の規模を有する(※ダインジョンシティ直下のダンジョン内の人口も含む)。冒険者やそれを志す人々、ダンジョンから産出される様々な物品による交易、集まった人々を対象にした商売をする人々によって栄えている。ドルネア軍事国においては首都ドルネアデスよりも若干、人口規模も多い。ダンジョンシティは2万年以上の歴史があり、その歴史的経緯から、かなりの独自の政体と地位を有する。ドルネア軍事国領内ではあるものの、事実上の独立的地位を有しており、ドルネア法が適応されない。天使の人口比率が非常に高く、多くの大小様々なギルドが存在しギルドを中心とした社会となっている。ダンジョンシティは、かなりの実力社会である事で知られる。
・ギルド ‐ 天使と契約し、その天使が仕える神の信徒となった人々と、その天使を中心としたあらゆる組織の総称。ダンジョンの探索や魔獣の討伐を主な生業とする冒険者ギルドを筆頭に、交易、商業、娯楽、政治、軍事など、ありとあらゆる様々なギルドが大小の規模に関わらず降臨世界各地に存在する。
・アユンタミエント ‐ ダンジョンシティの有力ギルドによる実質の都市運営機関。日本語訳では市参事会と訳される。ダンジョンシティにおける社会ルールなどを制定している。しかし、ダンジョンシティには明確に定まった政府や法律といったものは一切が存在しない。これはダンジョンシティが元々、冒険者が集まって生まれた街であり、明確な統治者が存在しなかった事に由来する。ダンジョンシティにおけるルールは、例え守らなかったとしても法的な問題はないが、ルールを守らない場合、多数のギルドによって成り立つダンジョンシティの社会においては、多くの場合、社会から排除される対象となる。
・神前会議と神前裁判 ‐ これら2つは降臨世界共通の認識で、神殿で行われる会議や裁判の事を指す。ただし、行われる地域や場所の事情によってその用途は一様ではない。ダンジョンシティにおける神前会議と神前裁判は、どちらも法的な拘束力などは一切無い仕様となっている。しかし、ダンジョンシティの社会においては、この会議と裁判の結果は実質的には絶対的に守らなければならないルールであると認識されている。例えば、神前裁判で決闘が言い渡された場合に、決闘から逃れる為に都市を出ても、ギルドによっては都市外まで追いかけて制裁を行おうとするギルドも存在する。そして、ダンジョンシティ外においても、ダンジョンシティでの揉め事にはなるべく不干渉という立場の地域が多い。
・ドルネア軍事皇帝 ‐ ドルネア軍事国の元首号。正式名称は「全ドルネアの最高軍事指揮官にして全ドルネアに住まう全種族の擁護者にして全ドルネアに住まう全種族の絶対的な守護者」。意味合いとしては地球におけるヨーロッパの皇帝号に近い。世襲制。現在のドルネア軍事皇帝は「全名:リリス・ミーシャ・アルスエル・サナエル・セクティエル・マグナティエル・アルナティエル・ワルキューレ・ミーナ・シャルノア・マグナディユス・ドルネア」(略:リリス・ミーシャ・マグナディユス・ドルネア)。現在11歳の女性皇帝である。7歳の時に第155代のドルネア軍事皇帝に即位。余談ではあるが、現皇帝の名前は降臨世界の既存の王名の長さの基準でも非常に長い部類に入る。全名の内、アルスエル、サナエル、セクティエル、マグナティエル、アルナティエルは5名の天使の個人名から付けられており、ワルキューレはワルキューレと呼ばれる41名の天使の姉妹の総称から付けられている。ミーナ、シャルノアは2名の歴史上のドルネア軍事皇帝の個人名から付けられている。マグナディユス・ドルネアはドルネア軍事国の皇族を意味する。
・魔力 ‐ 宇宙を満たすとされるエネルギー。地球文明の科学では、それまで知られていないエネルギーであったが、降臨世界と地球との融合によってその存在が地球人類にも知られる事になった。
・魔法学 ‐ 魔力を技術的に利用する為の学問。6万年以上の歴史を持つとされる。最後の勇者エルフレクトの時代までは、現代よりも非常に進んだ高度な魔力の利用方法が確立されていたが、その後に急激に衰退し現在の水準にまで落ち込んだ事が知られる。
―――――――――――――――――――――――――――
出典
テレビ番組
・『France24』(France 24 2044)2044年12月21日にフランスのFrance24が制作したワールドニュースドキュメンタリー番組でセキセイを主題としたドキュメンタリー番組が放送された。地球国家がセキセイの詳細な報道を行った最も最初の報道。
・『戦後3年 第5集』2044年12月28日に日本のNHKが製作した再構築後に発生した地球国家と降臨世界国家との戦争の完全終結から3周年を記念して放送されたドキュメンタリー番組内で、France24のドキュメンタリーがネット上で大きな話題を呼んでいた事から番組後半で本来は放送予定の無かった ”新たな脅威か?それとも神秘か” という短いコーナーが急遽、放送された。短いながらも日本において、セキセイを取り上げた最も最初の番組。
・『報道特集 神話からの使者』2045年2月1日に日本のTBSSが放送予定のセキセイを主題としたドキュメンタリー番組。France24のドキュメンタリー番組を元にした報道番組。
参考文献
・十八勇者伝説
・アユンタミエント発表
・フランス軍事省報告書
・フランス共和国議会議事録
▼▼▼
▼作者SNSのURL▼
ウィキパディアの裏話や創作活動に関する情報を掲載。月2~3回を目安に更新予定。
https://youtu.be/fTUJFvq7J5o




