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共和国 - ウィキパディア

ウィキパディア-フリー百科事典

ページ/ノート

―――――――――――――――――――


共和国

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政体としての共和国については「共和国」の記事を参照。


ここではエウストピアにおいて前3112年(紀元前1882年)‐教暦808年(西暦2038年)まで続いた最大領土面積が一時、世界の実に50%以上にまで及んだ一国家としての共和国について解説する。現在の共和国については「新共和国」の記事を参照。


公用語:共和国語

首都 :ユニオンパレス

人口 :860,000,000人(推計)

種族 :人類種・獣人種・亜人種・魔人種・妖精種

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目次


1.概要

2.歴史

 2.1前史

 2.2世界帝国へ

 2.3エウストピア大戦(奇妙な戦争)

 2.4崩壊とその影響

3.政治

 3.1内政

  3.1.1軍至上主義

 3.2外交

4.地理

 4.1地方行政区画

 4.2ユニオンパレス

5.国民

 5.1種族

 5.2民族

 5.3言語

 5.4宗教

 5.5教育

 5.7国民性

6.文明と文化

 6.1魔法

 6.2ユニオンパレスの様子

7.経済

 7.1情報及び通信

 7.2交通

8.軍事

 8.1地上軍

 8.2海洋軍

 8.3空中軍

9.国歌


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概要


共和国(共和国語:□□□□)は、エウストピアにおいて、前3112年(紀元前1885年)から教暦805年(西暦2032年)まで続いたエウストピア国家である。


その領土面積が最盛期であった教暦803年の時点において、エウストピアの実に50%以上の広大な領土を有し、地球の世界史上でいう大英帝国に該当する様な世界帝国を形成していた。共和国は他のエウストピア国家を圧倒する強大な軍事力と国力を有し、これを背景に強大な超大国を形成していた。


共和国はエウストピアにおいて唯一の共和制(民主)国家であった。ただし、その政治体制の特殊性から軍事共和制、軍国主義、軍事独裁、軍人貴族主義社会国家などとも呼ばれた。


国名については単に共和国である。これは共和国語の意味でも同様で直訳しても単に共和国を意味する。


幾つかの点を除いて共和国は地球における古代ヨーロッパから中世ヨーロッパ程の文明水準を有した文明国だった。


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歴史


・前史

共和国が一体全体いつ頃、誕生したのかは不明である。共和国の建国神話においては、建国神ティビアキス・ブロンデブロード・ツーが共和国の建国者だとされた。


考古学的に証明されている最古に残る共和国の記録は前3112年(紀元前1885年)にまで遡れる事が判明している。現在の共和国の首都ユニオンパレスがあるユニオン地方に隣接するラタニア地方において、当時、現地を支配していたサラマン朝サラナーナ帝国の住民が蜂起し、この蜂起した住民が共和国を名乗る勢力からの支援を受けていたとする記録が、サラマン朝が残した粘土板に残されている。


これ以降、共和国は歴史上に現れる様になり、ユニオン地方の周辺に存在した複数の国家がその存在を記録に頻繁に残す様になった。しかし、その一方で共和国側が残したもので発見されている最古の記録は前3078年頃の記録である。現在のユニオンパレスが建設される前に同地に存在したとされる丘の上で、第73回目の共和国議会が開かれた記録が残されている。この共和国議会では周辺諸国に対する対応や公文書の厳格な保管や記録が定められたとされる。


なお、第73回となっているが、これは年に1回とはカウントされない。その後の記録で共和国議会は多い時には年に何度も開かれた事もあった為、この73回という回数が一体全体、いつから始まっているのかは不明である。


しかし、前3078年頃のこの記録以降、共和国は公文書や各種記録などを頻繁に残す様になり、多くの歴史的な詳細な資料が残される様になった。この第73回の共和国議会は共和国史において、非常に重視されており、共和国では歴史の始まりとも称され、現在においても称されている。


領土範囲についての記録は前3081年の記録が最古である。ユニオン地方およびユニオン地方と隣接するラタニア地方、パラタニア地方の執政官の記録が残っている。この時期の共和国の領土はあくまで大陸の一地方の国家であった事がこの記録から分かっている。


その後、前3000年までに共和国は圧倒的な軍事技術を背景にエウレーピア大陸の西海岸地方の全域を支配するにまでに、その勢力を急速に拡大させた。この領土範囲は地球における古代ローマの最盛期の領土範囲に相当した。この時点において、すでに共和国の軍事力はその技術力を背景に他の大国を大幅に凌ぐにまで膨張した。しかし、ここまで急速に領土を拡大させた共和国ではあったが、その後、共和国はそれ以上の領土拡大は前2000年まで、ほぼ起きなくなった。


これは通信技術や移動技術が未発達であった為である。広大な領土を抱えた事により内政に様々な問題を抱えた。当時はまだ魔法通信技術や動物への身体能力強化魔法が存在せず、また、船舶もカヌーが主体だった。


しかし、前2000年以降に魔法による通信技術が確立し、さらに新たな水上移動手段として大型の帆船が誕生すると、状況は大きく変わった。共和国政府や行政機関の指示が迅速に遠隔地へと伝わる様になった事によって、国家の統制が強くなった。これによって社会問題や各種問題への対処能力も大幅に向上したとされる。


また、大型の帆船の登場は水上移動において革命的だった。それまでの水上移動の主体はカヌーが主体であったとされ、帆自体は存在したものの、大型の船というものは作られていなかった。しかし、大型の帆船がセルナニカの魔法学者パナカ・セラナニカによって発明された事により、水上交通と貨物の運搬の技術が飛躍的に向上した。


前1900年頃には、動物への身体能力強化魔法の技術が確立した。これによって地球における馬や牛などの家畜にあたる地竜と呼ばれる家畜の身体能力を向上させる事によって、陸上における物流革命も起きている。少ない餌でより遠くに、より多くの物を運べる様になった。


これら一連の技術革新によって共和国は国力を増進させた。そして、領土拡大を再び行う様になったのである。技術革新による社会の変化によって領土拡大が可能になった共和国は再びその領土面積を急速に拡大させた。


元々、共和国は諸外国とは前3000年時点において、領土面積においてほぼ同格の大国でさえも、軍事技術においては圧倒的な優位的な差を有していた。しかし、それまでは共和国内の様々な問題から領土拡大は停滞していたが、前2000年以降に、多くの問題が改善された事で、共和国は対外進出する余力を得た。それによって再び拡張を始めた共和国に対して、周辺諸国は共和国の領土拡張を止める事はできなかった。凡そ1000年の時間があったが、周辺諸国の軍事技術は共和国の水準にまでは達しなかったとされる。


前1800年頃までには、共和国はエウレーピア大陸の支配圏を確立させた。エウレーピア大陸の征服しなかった国も多くが共和国に従属し、ここにエウストピア世界史上初となる1つの大陸の支配圏を確立した巨大国家が誕生する事となった。


共和国の前史は「共和国の前史」の記事を参照。


・世界帝国へ

共和国が世界帝国を形成する様になったのは長い共和国史からすれば、比較的近年の出来事である。ただし、近年とは言っても、後半の教暦103年以降の時代からとなる。共和国は教暦103年に誕生したオクタウィアヌス政権がエウレーピア大陸外への軍事遠征を実施した事を皮切りに、領土を大陸外へと進出させた。


それまで、歴代の共和国政権はエウレーピア大陸外への干渉には否定的だった。しかし、オクタウィアヌス政権はこの伝統的な不干渉政策を放棄し、全世界の共和主義化の方針を打ち出した(全世界共和主義宣言)。また惑星統一政府論を発表。全ての国家と民族が等しく、ひとつにまとまった惑星国家の樹立の必要性を説いた。このオクタウィアヌス政権の全世界共和主義宣言と、惑星統一政府論はその後の共和国の政治に大きな影響を与えた。そして、これ以降、共和国は周辺諸国家への攻撃や関与を強める様になった。これを期に共和国は世界帝国の形成へと一歩を踏み出したとされる。


教暦400年までに共和国はその領土面積をエウストピアの実に30%にまで広げた。その後も共和国は領土を着実に拡大していき教暦803年までにエウストピアの実に50%以上の地域を支配した。


なお、この様に世界帝国を形成した共和国であったが、その間にその共和制は大きく変化した。


教暦430年から教暦530年までの期間は戦渦の一世紀と呼ばれ、エウストピアの実に30%以上の地域を支配する広大な世界帝国を舞台に様々な理由から内戦が各地で勃発した。内戦や内乱自体は共和国のこれまでの長い歴史からすれば珍しい事ではなかったが、国力や勢力をここまで増大させた共和国の内戦はそれまでの内戦や内乱とはスケールが違った。共和国のほぼ全体が内戦や内乱に何らかの形で巻き込まれたとされ、それが凡そ1世紀もの間続いた。凡そ1世紀もの間、共和国のほぼ全体が内戦や内乱に巻き込まれた事は長い共和国の歴史上でも例がなかった。


戦渦の一世紀は共和国軍最高司令官のバシレウス・アウトクラトール(人名)に率いられた軍事政権(バシレウス軍事政権)によって終わりを迎えた。バシレウス軍事政権は共和国内の反乱勢力や共和国政府を僭称していた全ての勢力を武力によって討伐した。しかし、バシレウス軍事政権は戦渦の一世紀後、内戦や内乱の原因を市民権がいたずらに拡大され続けたのが原因であると述べて、それまでは共和国に住まう全ての国民に対して認められていた市民権を大幅に制限する改革を行った(バリレウスの法制改革)。国民は市民と庶民の区分に分けられた。これによってそれまでの共和制に代わって新たに形成された共和国の共和制(軍至上主義)は教暦805年の共和国の崩壊まで続いた。


・エウストピア大戦

西暦2032年9月9日、地球上において日本国、マダガスカル共和国、スリランカ民主社会主義共和国の3カ国を残して他の全陸地が消滅し代わりに通称異世界とも称される未知の惑星を起源とする陸地群が出現した(異世界転移事件)。


この事件によって地球上に出現したのが共和国の存在した世界であるエウストピアである。エウストピアはもともと、巨大ガス惑星( テノ )の衛星として存在していた。この巨大ガス惑星は太陽系における天王星や海王星の様に美しい青色をした巨大ガス惑星で、これに土星の様な輪を持ち、この輪の中にエウストピアの本来存在していた衛星は存在していた。この衛星上からエウストピアは地球上へと転移してきた形である。共和国で用いられていた暦である教暦にして教暦802年の出来事である。なお、エウストピアが本来存在していた衛星と巨大ガス惑星の座標は地球人類の既知の範囲内の宇宙にあるのか、そうでないのかは不明である。


共和国と地球国家は転移後すぐには衝突しなかった。これは共和国との接触が当初は起きなかった為である。地球国家は共和国以外のエウストピア国家との関係を最初にもった。しかし、後に地球国家の存在を知った共和国は地球国家との接触を図った。この当初の共和国の判断としては、地球への自国の転移現象の調査活動としてだった。共和国では地球における18世紀から19世紀頃ほどの水準程度にまで天文学が発展しており、自分達が未知の惑星上に転移しまった事をエウストピアにおいて唯一自力で突き止めた国家だった。


しかし、地球国家側の政治体制の詳細が共和国政府に伝わると共和国政府は地球国家に対して、共和国から資源の輸出許可を出す事を条件に、市民権の範囲縮小を求め、さらには日本国に対しては立憲君主制の廃止を求めた。共和国側は君主制を野蛮な制度と非難した。また、この際、共和国側の外交使節は天皇に対して来日時に首相の前で公然と罵倒を行い日本政府や日本国民を激怒させた。


日本国は共和国の要求を拒絶したが、マダガスカルとスリランカは深刻な食糧難からやむを得ず共和国の要求を了承し市民権の大幅な縮小を行った。両国の国民からはかなりの反発があったが、当時の両国の国内の資源や食料事情はそれだけ深刻であった。共和国は困窮する両国に対して食料の輸出を約束した。


しかし、共和国側から送られてきた食料はマダガスカルとスリランカが要求していた量よりも遥かに少ない量だった。これに両国の政府が共和国に対して抗議したが、共和国は両国に対して、食料がこんなに必要な筈がないと返答した。この回答に激怒したマダガスカルとスリランカの両政府は市民権の範囲を元に戻す事を宣言した。これに対し共和国側も激怒、食糧の輸出や外交関係の断絶を表明した。


その後、共和国は一切の宣戦布告行為無しで西暦2033年5月2日に突如としてマダガスカルとスリランカの両国に攻撃を仕掛けた。さらに翌月の西暦2033年6月1日には、マダガスカルとスリランカの情勢とは距離を置いていた日本国に対しても突如として攻撃を仕掛けてきた事でエウストピア大戦は勃発した。


「ともあれ地球国家は滅ぶべきであると考える次第である」地球国家への攻撃を決めた共和国の議会ではこの様な声が多く聞かれたという。共和国は地球国家に対して共和制に対する認識の違いから激しく反発していた。


エウストピア大戦は最終的に地球国家および、共和国と対立していた国家により結成された連合国と、共和国との対立構造となった。戦火はマダガスカルやスリランカの本土や、エウストピアの全体に及んだ。


エウストピア大戦の詳細は「エウストピア大戦」「奇妙な」「奇妙な戦争」の記事を参照。


・崩壊とその影響

エウストピア大戦は技術的に圧倒的な優位な立場を持っていた日本国を筆頭とした地球国家の存在により、共和国の敗戦によって幕を閉じた。皮肉にも、共和国は、それまで数千年間に渡って他勢力よりも進んだ圧倒的な高度な軍事技術によって、他勢力を圧倒してきたが、その共和国が共和国よりも圧倒的に進んだ軍事技術によって圧倒された形となった。


最終的にはエウストピア大戦は日本国によるユニオンパレスへの強襲作戦によって共和国軍の最高司令官ガイウス・アエミリアヌスが拘束された事で終結した。


敗戦によって共和国の広大な領土の内、エウレーピア大陸外の領土は大半が独立した。幾つかの地域は日本、マダガスカル、スリランカの共同管理地域とされたものの、多くの地域は独立し、ここに事実上の世界帝国としての共和国は終焉を迎えた。


エウストピア大戦に敗北した事はその後の共和国に深刻なダメージを与えた。敗戦後、共和国は連合国によって占領統治がされたものの、連合国による占領統治政策は事実上、失敗してしまった。


エウレーピア大陸において、占領軍に対する住民や旧共和国軍による抵抗が各地で相次いだ。旧共和国軍の兵站を支えていた黒色球は占領軍によって接収されたものの、共和国時代に生産され国内に溢れていた大量の武器弾薬装備がそれに拍車をかけた。その結果、共和国は事実上崩壊し連合国が承認する共和国政府は旧庶民層からの高い支持はあるものの、連合国が承認する共和国政府の執政下にある地域は前3000年頃の領土範囲にまで縮小してしまった。


あまりにも領土範囲が縮小した為に、連合国が承認する共和国政府の執政地域外に住む共和国国民は連合国が承認する共和国政府の長である大統領の事を、ユニオンパレス市長と揶揄した。


連合国が承認する共和国政府はユニオンパレスにある共和国政府が唯一であるが、エウレーピア大陸内には大小様々の共和国政府が乱立した。この状況に日本、マダガスカル、スリランカの各種メディアはエウレーピア大陸の状況をエウストピアのアフガニスタンと称した。


また、世界帝国としての共和国の急速な終焉はエウレーピア大陸外でも混乱を引き起こした。いくつかの地域では王政や貴族制が復古したが、これに対して共和国時代に共和制を経験した人々が反発し内戦や内乱状態へと陥った地域もある。また、連合国の支援によって共和制国家が成立した地域もあったが、これらの地域の多くでは、市民権がすべての国民に与えられたが、これに対して共和国時代に市民権を持っていた人々からの反発も起こり、一部の地域では内戦や内乱状態へと陥った地域もあった。


また、少数事例ではあるが、種族差別政策を行い市民権を特定の種族に絞る国家も現れた。これらの地域ではそれまで市民権を持っていた人々が反発しこちらでも内戦や内乱状態へと陥る地域もあった。


この様に共和国の崩壊による混乱はエウストピア全体に波及した。


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政治


・内政

共和国はその名の通り共和制国家だった。国権の最高機関は共和国議会であり共和国議会は上議院と下議院が存在。議席数はそれぞれ上議院110議席、下議院450議席で構成された。議員の任期は上議院、下議院の双方共に4年。議員はすべて市民権者による選挙への立候補と投票によって選出された。


共和国議会には複数の政党が存在し、教暦805年時点では、突撃党、祖国防衛党、祖国英雄党、軍人と軍経験者のための社会保障組合、軍人未来党、祖国環境保護同盟、権利同盟党、竜王政会、魔法使い組合の9政党が存在し、この内、最大議席を有する政党は突撃党で、突撃党は、軍人と軍経験者のための社会保障組合、軍人未来党と連立政権を組んでいた。


突撃党、祖国防衛党は保守政党に分類され、祖国英雄党は右派よりの保守政党。軍人と軍経験者のための社会保障組合と、軍人未来党は、中道左派政党。祖国環境保護同盟は環境保護を第一に掲げる環境保護政党。権利同盟党は社会主義を掲げる左派政党。竜王政会はアルミラ教系の保守政党。魔法使い組合は、魔法使いの権利向上を目指す左派政党に分類された。


国家元首は共和国軍の最高司令官が務め、最高司令官は地上軍、海洋軍、空中軍の3軍による承認と共和国議会による承認を経て任命された。最高司令官の任期は4年。共和国軍と共和国議会による承認を得れば、何度でも就任する事ができた。最高司令官は共和国議会議長を兼任した。


共和国政府は立法府、行政府、司法府の3つの機関によって成立し、三権分立が成り立っていた。立法府は共和国議会。行政府には国防省、市民省、庶民省、魔法省、社会福祉省、地方省、交通省、差別撤廃省、農業畜産省、神官庁、公文書庁、会計検査庁、債務奴隷庁、治安維持庁、共和国政府銀行の計15機関があった。司法府には共和国軍軍事法廷があり、共和国軍軍事法廷は最高軍事法廷、高等軍事法廷、控訴軍事法廷、地方軍事法廷の4段階に分かれていた。


法廷は共和国軍軍事法廷と共和国軍の名が冠されているものの、共和国軍とは明確に分離した独立機関だった。


 ・軍至上主義

共和国ではバリレウスの法制改革以降、国民の階層が大きく二つに分けられた。それまでの、共和国ではすべての国民として扱われている人々に対して市民権が与えられていた。市民は自分たちの政治家を選ぶ権利や立候補権、社会保障を受ける権利。言論の自由の権利。信仰の自由の権利。納税の義務などを有していた。しかし、バリレウス軍事政権はこれを市民と庶民に分けた。


市民はこれまで通りの権利と義務を持つ。一方で庶民は義務は市民と同じだが、就ける職業が制限され、子供が就学する場合の学費の全額負担、医療費の全額負担、公共施設を利用する場合は利用料金が必要(市民は無料)、言論の自由の制限、信仰の自由の制限、免税を受ける事ができない、魔法放送の視聴料徴収など市民と比べて多くの制約があった。


市民権は軍に志願し6年間の兵役を終える事で得る事ができる様にされた。また、軍に所属している間は、6年間の兵役を終えなくても市民ほどではないものの、庶民よりも優遇処置が受けられた。6年間の兵役を終えた後も現役で軍を続けた者には市民よりも税制面や公共サービス面で優遇を受けられた。


なお、満18歳になるまでに障害者認定を受けた庶民が軍に志願し万が一、障害を理由に採用されなかった場合は、その庶民には例外庶民という地位が与えられ、一定の優遇処置が受けられた。


共和国により武力併合がされた地域における共和国軍への志願の受付は原則、併合後10年が経った後に志願が解放された。ただし、この原則は共和国政府が特例法などを作った場合には適応されず、併合後すぐに現地住民に志願が認められた地域もあれば、併合から1世紀がたっても志願が認められない地域もあった。


これによって形成されたそれまでの共和国とは一線を画す共和制は言わば、一般庶民は冷遇され、現役の軍人や軍経験者に対しては広く自由が約束された社会となった。


このバリレウスの法制改革後、市民権を持つ市民と庶民の格差は時代と共に、かなり広がった。市民権を持つ者はバリレウスの法制改革以前の市民よりも多くの優遇を受けられた。例えば、公衆浴場や劇場などの公共施設が無料で利用でき、学費の免除、税制面での優遇、公共魔法放送の無料視聴などができた。


これらの様子から、日本を含めた地球国家では共和国の事を軍事共和制、軍国主義、軍事独裁、軍人貴族主義社会国家などと呼んで批判した。また、軍至上主義は共和国内でも、主に冷遇されていた庶民層を中心に多くの批判や不満を共和国国内でも生んでいた。しかし、庶民が市民に対して政治的な主張をする事は許されておらず、もしもした場合は、共和国軍や治安維持庁の警察によって逮捕され最悪の場合は債務奴隷に堕とされた。


この様に庶民の権利や自由は大きく制限されていた。


しかし、批判的な意見が多い一方で、この体制には副次的な作用として共和国の種族間の関係に大きな影響を与えたという評価も存在する。


バリレウスの法制改革以前、共和国では市民権は人類種にのみに与えられていた。他種族は国民として扱われなかった。エウストピアの国家では基本的に1つの種族が国家を独占的に支配する事が通常だった。これは共和国においても同じで、共和国は人類種によって建国された国家であり、建国以来、共和国は人類種が独占的に国家を運営していた。


そして、さらに言えば、共和国は建国以来、人類種以外の種族に対して非常に厳しい姿勢の国家だった。これは当時の記録から、教暦後は若干の改善がみられたものの、教暦以前の共和国は、諸外国と比べても格段激しい種族差別があった事が分かっている。教暦以前の共和国において、人類の住む都市においては、人類以外の種族は徹底的に差別され、人類の都市に入る事もできず、さらには外国軍などからの防衛目的などではなく、共和国の都市には他種族を都市内に入れない様にする為に城壁を建設するなどしていた記録も残っている。


教暦後にはここまでの種族差別はいくらか改善され、人類種の都市に他種族が労働力として居住する事ができる様になったものの、国民としての権利は殆ど与えられず、その一方で税はかけられ、公衆浴場や劇場などの公共施設の利用もできなかった。


なお、当時の共和国の人類の感情としては、明確な差別とは表現として適切ではないとの指摘がある。共和国外における種族間感情は非常に差別的な感情が根底にあると指摘されるが、共和国においては、当時の公的記録において、共和国の人類種の住民は他種族に対して、他種族の持つ人類にはない特殊な身体能力を非常に恐れていたとする記録が残っている。これは古代から続いた共和国人特有の感情だとする指摘がある。


いずれにせよ、共和国では人類種以外の他種族を国民として、まともに扱っていなかった。共和国にとって他種族は単なる労働力にしか過ぎなかった。しかし、バリレウスの法制改革は、この状況に大きな変化を与えた。


バリレウスの法制改革は真の意味で平等に適応された。共和国に住む全ての種族が対象となった。このバリレウスの法制改革の前では人類種であっても、他種族であっても兵役を終えなければ、平等に市民権は与えられず、等しく同じ庶民となった。


共和国軍は人類種以外の他種族からも志願を人類種と同じく平等に受け入れた。また、共和国軍は兵士の配備について、種族ごとの分離などを一切しなかった。軍においては、全ての種族が平等に共和国軍の兵士として扱われた。共和国軍内には兵士が差別などをした場合、軍紀を乱したとして厳しい罰則もあったという。これは共和国軍では出身がいかなる者であっても共和国軍に志願した以上は皆平等に共和国の兵士であるというバリレウス軍事政権がバリレウスの法制改革以前に内戦の指揮に当たる中で形成された軍の体制だった。


この様に軍が広く入隊への門徒を開いた姿勢だった事から、市民権を得る為に他種族の住民からの志願兵が相次いだ。その結果として市民権を得た他種族の住民が増加し、それまでは政治への参加が一切できていなかった他種族の住民の社会と政治への進出が急速に進んだ。


また、同じ軍で働いたという経験から仲間意識も同時に形成されたとする説もある。


これによって共和国内において種族間の融和が時代を経る毎に急速に進んだ。その結果、共和国は教暦800年代において、エウストピアにおいて法制度面において種族間差別を唯一撤廃する事に成功したと評価される国家となった。エウレーピア大陸における種族間差別はほぼ根絶されたと考えられており、それ以外の地域においては根強い差別などは依然としてあったものの、共和国という絶大な国家の前に平等に扱われた。


なお、こうした共和国の種族間融和の社会は他のエウストピア国家からは異端的に見られていた。


・外交

共和国はエウストピアにある一部を除いて殆どの国家と国交関係を持っていた。共和国は各国に大使を派遣し大使館を置いた。しかし、その外交は非常に独断的であったとされ、共和国の方針に従わない国家に対しては強硬的な処置を連発していた。


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地理


・地方行政区画

地方行政区画は主に5つの地域に区分された。共和国特別行政管区、共和国州政府、共和国特別自治管区、共和国独立都市、共和国通常自治体の5区分である。


共和国特別行政管区は、首都ユニオンパレスのあるユニオン地方であり、共和国政府の直轄地である。共和国州政府は共和国全土に218存在する州である。共和国州政府は、高い自立性を持っており、共和国政府の立法や決定の範囲内で独自の法律を施行できた。共和国特別自治管区は共和国州政府よりは低い自立性であるものの、ある程度の自治を認められた地域である。名目上は共和国州政府の管轄下に置かれていた。共和国独立都市は、共和国州政府と同等の高い自立性を持った都市である。共和国通常自治体は日本における市町村に当たる自治体である。共和国州政府、共和国特別自治管区の地域に内包されていた。


共和国特別行政管区、共和国州政府、共和国特別自治管区、共和国独立都市、共和国通常自治体の5区分の内、共和国州政府、共和国特別自治管区、共和国独立都市、共和国通常自治体の4区分では、いずれの地方行政区分でも市民による自治が行われていた。市民による選挙によって選ばれた議員による議会を開催し各種の取り決めを行った。いずれの場合も議員の任期は4年に定められた。


・ユニオンパレス

共和国の首都は共和国特別行政管区に属するユニオンパレスに置かれていた。ユニオンパレスの人口は350万人。都市の建築様式などは地球でいう古代ローマや古代ギリシャの建築文化に酷似したものを有しており、古代ローマや古代ギリシャの様な街並みが形成されていた。


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国民


・種族

共和国は多種族他民族複合国家である。広大な領土を抱える世界帝国であった。その為、多くの種族を内包しており、人類種、獣人種、亜人種、魔人種、妖精種が居住していた。人口比率は人類種23%、獣人種24.7%、亜人種9.3%、魔人種24.4%、妖精種18.6%だった(教暦800年統計)。


なお、留意点として身長10cm以下の妖精種を含めた場合は、統計データは存在しないものの、推計では妖精種が人口の全体の80‐90%を占めるとされる。また、総人口も大幅な増加となる。


ただし、身長10cm以下の妖精種は文明社会の構成員としてはエウストピアではみられていない。エウストピアにおいて、文明社会の構成員として扱われる妖精種は身長が少なくとも30cm以上の妖精種である。身長が10cm以下の妖精種は、そもそも、それ以外の種族とは社会が完全に分離しており、エウストピアにおいては、地球における蜂(虫)の様な扱いを受けている。これは共和国においても同様である。


現在、地球国家においても、国内に流入し定住化した身長10cm以下の妖精種の扱いが問題となっている様に、身長10cm以下の妖精種は、知性はあるものの、本能に非常に忠実(地球国家では有名な例え話として、この様な話がある。「身長10cm以下の妖精種を地球の生物で例えるならば、社会性昆虫が喋っているが、あくまで、その行動は社会性昆虫だということ。」という例え話である。この例え話は、身長10cm以下の妖精種の種族性を的確に表しているとされる)である事から、共和国を含めエウストピアでは文明社会の構成員としては古くからの時代から認められていなかった。


・民族

共和国には大小様々な民族が存在しその数は1113に達した。


・言語

公用語は共和国語が用いられた。共和国語は共和国全域で使用された。共和国語は地球におけるラテン語体系に近い独自の言語であり、前3600年代‐前3000年代頃にかけて4つの古代言語体系が自然に統合された結果、奇しくも地球のラテン語体系に近い体系の独自の言語として生まれた。これは古代の文献からも明らかとなっており、4つの古代言語が統合された結果、地球のラテン語体系に近い体系が形成された過程が言語学的にも明らかとなっている。特にこの影響が顕著となっているのが、人名であり、地球における古代ローマや古代ギリシャの単語と非常によく似た単語が人名として使用されていた。


公用文字も共和国語文字であり、地球でいう古代ピクト語文字風の独自の文字が使用されていた。一方で多数の地方言語も抱えており2000を越える地方言語を有した。


・宗教

多神教のテトラ教が国内で最大の信者を抱える宗教である。その他、各地に様々な宗教が存在した。共和国は信仰の自由を認めていた。しかし、それは市民権を持つ者に限られており、庶民はテトラ教の他、共和国政府が承認した14の宗教のいずれかへの信仰が強制されていた。


・教育

識字率は比較的高かったとされる。共和国における識字率は70‐80%に達した。ただし、就学率はそこまで高くはなかった。共和国全体の就学率は10‐20%程だったとされる。これは学校教育機関が共和国全体にまでは普及していなかった為である。学校教育機関は主に都市において設置された。各都市には学園が建設され、市民は無料で教育を受ける事ができた。一方で庶民は学費が全額負担であった。


共和国全体で見た場合における就学率は低かったが、都市部における市民の就学率は非常に高かった。都市部や都市近郊に住む市民の就学率は80%‐90%に達したとされる。一方で庶民の就学率は都市部においても地方とほぼ変わらずに低かったとされる。


国民全体で見た場合に就学率が低いにも関わらず、識字率が比較的高い要因は通信教育によるものである。共和国では魔法放送によって読み書き計算などの授業が放送されていた。さらに庶民の視点に立った場合でも、就労をする上で読み書き計算ができた方が、できない場合に比べて比較的良い職につけたとされる。その為、庶民は読み書き計算を自ら進んで学んだ。


・国民性

地域性を伴う為、一概ではないが、共和国人は明るく陽気な国民性であると他のエウストピア諸国からはみられていた。日本においても、この評価は同様で、日本においては地球におけるラテンアメリカ諸国と似た国民性の国だと見られていた。


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文明と文化


共和国は地球でいう古代ローマや古代ギリシャに類似した文明を有していた。これは建築文化に色濃く表れており、共和国で建設される建物の多くは古代ローマや古代ギリシャの建物文化と良く似た建築物が多く建てられた。一方でエウレーピア大陸外の併合された新しい州などにおいては、地球でいうアジア風の建築文化やペルシャ風の建築文化、地球では類似するものがない独特な建築文化などが普及していた地域もあった。


一方で、衣服や食の文化は地球における1970年代から1980年代のアメリカ合衆国と非常に良く似た文化を持っていた。食文化は地方に関しては、入手可能な食材などの関係もあり、国全体で一律の食文化が行われていた訳ではなく、地域ごとに独自の食文化もあり、食事の文化自体は一律ではなかったが、衣服に関してはほぼ、1970年代から1980年代のアメリカ合衆国のファンション文化と類似したファッション文化が共和国全体で地方にまで広がっていた。


これら、地球における1970年代から1980年代のアメリカ合衆国と非常に良く似た衣服や食の文化は共和国においては伝統的なものであり、古代の時代から脈々と続いていた。時代によって多少の変化は有りつつも、変化を起こしてはまた戻るという流行の波を繰り返した事が考古学的に明らかとなっている。


なお、共和国以外のエウストピアの各地域では共和国の様な衣服の文化は他には見られず、共和国以外の地域では地球における古代や中世ヨーロッパの時代風の衣服、古代から中世の時代の中華文明風の衣服、地球には類似するものが確認できない衣服等が着られていた。


娯楽文化に関しては、共和国各地には古代ローマの様に公衆浴場や劇場が建設され、市民や庶民に娯楽を提供していた。公衆浴場や劇場は地方各地にも建設された。また、地球におけるテレビ放送と同じ意味合いで魔法放送も行われていた。魔法放送では地球のテレビ番組と同じ様に、ニュース番組、教育、映画、ドラマ、バラエティ、アニメ、歌など様々な番組が放送されていた。


魔法放送は魔法省によって管理され、魔法省の職員が定期的に各家庭をまわり、夜間になると照明として使える照明魔法とセットで家に魔法放送を受信・映し出す事ができる魔法がかけられ、各家庭で照明と共に魔法放送が受信可能な環境が整えられた。魔法放送は市民や庶民を問わず広く普及していた。普及率は80‐90%にも達していたとされる。魔法放送は国民的な娯楽であった。


しかし、共和国における魔法放送は、地球におけるテレビ放送とは違った。共和国において、魔法放送は日没後から日出までの間に放送された。日が昇っている間はニュース番組以外の番組は一切放送されなかった。これは魔法放送を昼間にも放送した場合に労働者が魔法放送ばかりに熱中し労働効率が落ちると考えられていた為である。また、共和国政府は魔法放送をプロパガンダとして非常に頻繁に活用していた。軍の賞賛。軍への志願を薦める広告。軍の職場は明るくクリーンで働きやすい、やりがいのある職場であるという広報がコマーシャルや番組内容などで広く頻繁に行われていた。


共和国における魔法放送の文化の歴史は非常に長く、地球におけるテレビ放送の歴史よりも遥かに長かった。少なくとも前1900年以降には既に始まっていたとされる。当初は、地球における映画館の様に劇場で演劇と一緒に上映されるという形で魔法放送は行われていたが、時代経過と共に、魔法放送は劇場では行われなくなり、地球におけるテレビ放送の様な放送形態へと姿を変えた。


共和国の魔法放送によるメディア文化は他のエウストピア諸国とは大きく一線を画していた。他のエウストピア諸国では魔法放送は技術としては多くの国が持っていたものの、共和国以外のエウストピア諸国では魔法使いは社会において特権階級層である事が多く、共和国の様に魔法放送を魔法の使えない庶民の家庭にまで行渡らせる様な事はしていなかった。行われていたのは、せいぜい、身分の高い者や富裕層が自宅等に娯楽目的で魔法使いに多額の報酬を払って魔法をかけてもらい魔法放送を利用していたか、あるいは劇場の様な公共施設でのみで使われていた。また、その放送内容にも大きな違いがあり、共和国ではメディア文化が現代地球のメディア文化と比べても遜色ないレベルで発達していたのに対して、他のエウストピア諸国では、その様な発展は殆どしておらず、魔法放送はあくまで、その国の公的な発表の場としての利用や、娯楽として使ったとしても精々、演劇などを中継する事ぐらいの利用用途だった。


社会運動文化に関しては言論の自由が認められていた市民に関しては現代地球と非常に良く似た発展した社会運動文化を有していた。例えば、環境保護活動、障害者支援を含めた様々な社会福祉活動や社会奉仕活動、ボランティア、ポリティカル・コレクトネスなど、その他にも様々な社会運動文化があった。これらは、おおむね現代の地球において存在していた運動とも差比は殆どなかったとされる。


しかし、特筆すべき点として、この様な運動があったにも関わらず、共和国の社会では、軍至上主義に対する反対運動や市民や庶民との格差是正を目指した様な運動は市民の間では極一部の例外を除いて殆ど無かった。ただし、市民は庶民を救おうというムードは殆ど無かったが、これらの発展した社会運動文化の影響か、もしくは、市民自身が庶民からの出身である為か、庶民を露骨に差別する様な市民は殆どいなかったとされる。例えば、市民の中には庶民と一緒の職場で働き互いに友人同士になる市民もいれば、学園の周辺において、市民と庶民の学生が友人関係になって近くの飲食店で飲食や買い物をする光景などは極当たり前の光景として共和国中で見られた。


政治思想に関しても現代の地球と遜色ない発展を遂げており、さらに言えば地球よりも遥かに長い1000年単位の歴史があった。共和国の根幹でもある共和主義を主軸に、保守主義、共産主義、社会主義、リベラリズム、フェミニズム、ナショナリズム、環境主義、無政府主義、宗教などの政治思想が発展していた。


これらの社会運動文化や政治思想はエウストピアにおいて最も先進的かつ進んだ水準を有していた。


この様に一部では、現代地球の文明や文化とも類似する文明や文化を有した共和国であったが、その一方で、共和国の技術水準などは魔法技術を抜かせば、地球における古代や中世ヨーロッパ程の水準しかなかった。例えば製鉄技術や繊維技術や製紙技術や機械技術は地球における中世ヨーロッパ程の水準でしかなかった。


国民の生活水準は魔法技術等によって齎されているものを除けば、地球における古代や中世ヨーロッパ、もしくは18世紀から19世紀のヨーロッパ相当の水準だった。これは都市部と地方部によって違う傾向があり、都市部においては、豊かなインフラや物流によって18世紀から19世紀のヨーロッパ相当の生活水準を持っていたのに対して、最低限のインフラや物流しか整備されていなかった地方では、古代や中世ヨーロッパ相当の生活水準の地域が多かった。


ただし、日本における食品衛生法や、労働基準法や、社会保障など(※ただし労働基準法や社会保障は市民が保護の対象)の様な国民の健康を守る非常に現代地球的な法整備も数多くがされていた事から、一概には地球の水準には当てはめられない生活水準であった事には留意が必要である。


 ・魔法

共和国では他のエウストピア諸国と同じ様に魔法が発展していた。特に、共和国の魔法技術はエウストピアにおいて、第3位に数えられる水準に達していた。


共和国内では魔法通信技術、身体能力強化魔法、治癒魔法、風魔法、情報保存魔法の技術が発展し、高度に発展した魔法通信網や物流網を有した。


また、治癒魔法によって市民の平均寿命は75.3歳を達成していた。この平均寿命は市民に限られるとはいえ、他のエウストピア諸国ではみられない高い平均寿命だった。これは、他のエウストピア諸国では魔法使いが特権階級層であり、治癒魔法を受けられるのが、富裕層や身分の高い者に限られた傾向が非常に高かった為である。一方で共和国では魔法使いは特別な技術者としてある程度の優遇は受けられたものの、共和国政府から与えられる権利は他の国民と同じだった。その為、多くの人々が治癒魔法による治療を受けられた。


風魔法は、帆船の速度向上や風車を動かすなどの目的の他、戦争において使われ、戦争では熱気球を矢から守ったり、投石機の弾頭の射程能力向上などをした。


情報保存魔法の分野の魔法技術は共和国がエウストピアで最も進んだ水準を有していた。共和国では市民権を持つ国民とそうでない国民を明確に区別する為にこの分野の技術が進んだとされ、地球でいうIDカードの様な身分証明書を魔法技術的に作成する技術が発展した。共和国の身分証明書技術は非常に高い水準に達し、違法な偽造や複製や改竄、本人や行政や行政と提携する民間以外の人間が、情報を違法に盗み見たりする行為はほぼできない技術水準にまで達していた。この魔法による身分証明書の作成技術は、地球における既存のIDカードの作成技術すらも情報の秘匿性の面で凌駕した水準を持っていた。また、他のエウストピア国家ではこの分野の魔法技術研究は殆ど進んでおらず、共和国が事実上、この分野の技術を完全に独占した状態だった。


一方で、土魔法は他のエウストピアの魔法技術大国と比べても大きく遅れていた。共和国以外のエウストピアの大国ではその多くでゴーレムと呼ばれる魔法使いによる遠隔操作が可能な土や石塊の大きな人形が作られ利用されたが、これは比較的、新しい魔法技術であり、共和国ではまだ実現していなかった。土魔法の分野において共和国は他国と比較して100年以上の技術的な差が存在したとされる。共和国は土魔法の研究の遅れを取り戻す為に国内の研究機関に多額の援助などをしていた。


・ユニオンパレスの様子

共和国の首都はエウレーピア大陸のユニオン地方に位置するユニオンパレスに置かれていた。ユニオンパレスの人口は350万人で、エウストピアにおいて人口規模で第1位の規模を有した。都市の建築様式などは地球でいう古代ローマや古代ギリシャの建築文化に酷似したものを有しており、ユニオンパレスの街並みは古代ローマや古代ギリシャの様な街並みが形成されていた。


人口の集中と都市化が非常に進んでいた事から、古代ローマのインスラの様な集合住宅が数多く存在した。市内の建物の階数は5階から6階だての建物が普通だった。しかし、古代ローマのインスラとは違い、共和国の集合住宅は強固かつ多機能に建築されている傾向が高く、水道、下水道、暖房などの設備が完備されている物が普通だった。建築資材にはレンガやコンクリートが用いられ、耐火性も高かった。また、こうした共和国の多層建築は集合住宅としての利用方法以外にも地球におけるオフィスビルの様な使われ方もされている建物も数多く存在した。


ユニオンパレスはエウストピアにおいて通称、眠らない都市と呼ばれ、共和国の政治、文化、経済の中心地だった。ユニオンパレスの真価はその夜間に見られると言われ、昼間は比較的、他の都市とも変わらない様子だったが、夜間になると、魔法照明を余す事なく使った光による演出があちこちでされていた。


街のそこかしろでは、地球におけるサーチライトの様な光線状の照明の光が空を照らし、大きく左右に振られるなどして、この様な光の柱がそこら中で見られた。街中には地球におけるネオン街の様な場所が数多くあり、様々な色の照明が街を鮮やかに彩っていた。また、魔法放送で使われる、平面映像を空間に投影する技術を利用した空中に浮遊する平面映像による街頭広告や、さらにはこの技術を応用して作成された立体映像による街頭広告なども存在し街を鮮やかに彩っていた。


ここまで魔法がふんだんに使われ、地球におけるサーチライトやネオン街の様な光で彩られた都市はユニオンパレスを除けば他には共和国国内においても存在しなかった。他の都市では魔法照明による演出がされていたとしてもユニオンパレスよりは遥かに小さい規模であり、サーチライトの様な照明魔法や、魔法による映像投影技術による街頭広告にいたってはユニオンパレス以外では全くされていなかった。


この様な市内では様々な物品が流通し、バザールなどでは世界中から様々な食材や物品が集まり取引されていた他、ファーストフード店の様な飲食店や地球におけるスーパーマーケットの様な食品量販店も数多くが軒を連ねるなど、他のエウストピア諸国では殆どみられない繁栄ぶりを遂げていた。


こうした華やかな繁栄を極めたユニオンパレスだったが、他のエウストピア諸国からは否定的に目で見られる事が非常に多かった。魔法照明や魔法放送の技術は他のエウストピア諸国においても存在したが、他のエウストピア諸国では魔法照明はあくまで暗い場所を照らすただの照明として使われるのが大半で、共和国のように魔法技術を地球における電飾の様には使いはしなかった。エウストピア諸国は共和国のこうした魔法を使った照明文化を、いたずらに魔法技術を乱用する下劣な文化だと考えていた。


一方で地球国家においてはユニオンパレスの様子は各界から非常に高く評価されていた。主に芸術界やメディアやインターネットを中心に夜のユニオンパレス市内の様子はサイバーパンクシティの様だと呼ばれ賞賛されていた。日本においては1980年代に作られた日本のSF映画ASIRAに登場するサイバーパンクシティの様だと言われ賞賛されていた。地球国家からのこうした声はあくまで戦時中ではあったが、エウストピア大戦中に賞賛の声が上がった。


ユニオンパレスの繁栄の様子にまつわる逸話として、共和国の外交団が日本に史上初めて訪れた際の逸話が残っている。


異世界転移事件後、地球国家の様子は転移してきたエウストピア諸国から見れば、非常に進んだ圧倒的な文明に映った。エウストピア諸国からやってきたエウストピアの人々は、地球国家の圧倒的な科学技術力、圧倒的な都市、圧倒的な人口、圧倒的な文化を目の当たりにした。中でも、異世界転移事件後、地球に残された地球国家の中でも唯一の主要先進国だった日本はエウストピアの人々の目に、より圧倒的に映った。


エウストピア諸国から日本の首都、東京へとやって来たエウストピアの人々は、圧倒的な東京を目撃しその文明力の差を嫌でも実感させられた。しかし、共和国からの外交団は東京や日本各地の様子を見ても、大きな反応は示さなかった。それどころか、摩天楼や自動車の存在には驚いたとされるが、ユニオンパレスの方が発展していると本国に報告したとされる。


これは東京の市場の様子や、夜間の様子が原因だった。当時、日本は異世界転移事件の影響によって国内では物資不足から強烈な統制経済をとっていた。その影響はすさまじく、日本全土において公的目的以外で利用される自動車は全て燃料供給を規制され、食料品は配給制であり、工業製品も需要に対して大きく不足していた。電力も節電が呼びかけられていた。日本の経済は異世界転移事件前に比べて遥かに落ち込んでいた。こうした影響は東京においても同様だった。東京は異世界転移事件前の華やかさを大幅に失っていた。


ユニオンパレスは上記でも解説したように、自動車や電車こそ無いものの、市場は世界中からの品物で潤い、夜間になれば魔法照明によって、地球国家から見ても賞賛される程、華やかに彩られていた。この様なユニオンパレスの様子を知る共和国人から見れば、東京の市場はユニオンパレスに比べれば、品物不足で国民が困窮しているという印象が強く映り、さらには夜間の街の様子も、照明などによる演出がユニオンパレスに比べれば遥かにされていなかった為に、マイナス的な印象に映った。外交団は本国への報告で東京の様子を暗く静かな都市と称した。


これらの共和国の外交団による認識は、地球国家と共和国の文明度の差の評価を完全に誤らせるひとつの大きな要因となったと後に指摘されている。


なお、当時の日本の外務省は共和国の外交団の受け入れに際して、共和国も、他のエウストピア諸国と同じく、日本の進んだ文明度に驚愕するだろうという前提で共和国との外交交渉に臨んでいたが、エウストピア大戦後に、上記の様な、当時の共和国の外交団側の反応に関する資料が明らかとなった事で、外務省の想定が共和国に対しては目論み通りには、上手くいっていなかった事が明らかとなっている。


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経済


共和国はエウストピア最大の人口と領土を抱えていた事からエウストピアにおいて、最大級の巨大経済圏を有していた。共和国全体のGDPは18世紀から19世紀の大英帝国に相当、もしくはそれ以上の規模に相当した。共和国内では各地の様々な物品が流通し様々な品物が各地で取引された。


通貨は教暦488年に当時のウェヌス政権によって制定されたユニアヌスという貨幣が使われた。ユニアヌスは、エウロピウス金貨、ガイウス銀貨、ププリウス銀貨、メロディウス銅貨、アウルス銅貨、パウト青銅貨の種類があり、共和国全土で流通していた。ユニアヌスはエウストピアで最も高い価値のある通貨であった。共和国の巨大な経済を背景に、同時に共和国がエウストピア最大の金銀銅の産出国であり保有国でもあった事から、ユニアヌスは非常に安定した通貨だった。


銀行システムが発展していた事から、預金の仕組みも整っていた。共和国政府銀行の利用者は、共和国内においては何処に居ても、共和国政府銀行の窓口から、預金や引き出しをする事ができた。この仕組みを使った税金の自動引き落としのサービスもあった。


共和国では債務奴隷という奴隷制度があった。債務が返済ができなくなった市民や庶民は債務が返済できるまで債務奴隷として売られ扱われた。なお、市民は3回まで債務奴隷になる事は免除された。また、債務奴隷には殺人犯などの重犯罪者、共和国に敵対的な行為を行った者、反逆者、敵国の兵士などもなった。これらの例外的な債務奴隷は身柄が押さえられた後に共和国政府により多額の債務がかけられ債務奴隷とされた。債務奴隷の人口は共和国の全人口の内、10‐20%程を占めたとされる。なお、債務奴隷の人口構成は通常の理由による債務奴隷よりも、例外的な債務奴隷が圧倒的大半を占めた。債務奴隷の出身地域別の割合ではエウローピア大陸外の地域からの出身者の債務奴隷が最も多かったとされる。債務奴隷は共和国において安価な労働力として扱われた。


なお、共和国にはギルドは存在しなかった。共和国以外のエウストピア諸国では冒険者ギルドに代表される様に、通称ギルドと呼ばれる複数の同業者組合が国境を越えて幅広く社会に存在していたが、共和国では、教歴25年に独占禁止法違反を理由に当時のパドリユス政権がギルドの活動を完全に非合法化した事から、以降、共和国内においては、ギルドの活動は完全に消滅していた。


・情報及び通信

共和国惑星公共魔法放送協会、共和国公共魔法放送協会、ユニオンパレス通信社など計3社の公共放送機関が存在し魔法放送による映像放送を展開していた。魔法放送のチャンネル数は120チャンネルを有した。なお、これらは地球におけるテレビ放送に該当したが、地球におけるラジオ放送の様に音声のみの放送は共和国では好まれず行われていなかった。


通信は、魔法通信による交信システムが構築されていた。民間での利用では、各地に設置された魔法省の施設で規定の利用料金を支払えば、地球における公衆電話の様に誰でも魔法通信を利用する事ができた。行政では民間とは別に、秘匿性と利用性の高い魔法通信が利用されていた。例えば、軍で利用されていた魔法通信は、兵士の各個人に魔法通信用のイヤリング型の魔法道具が配られ、地球におけるトランシーバーや携帯電話の様な感覚で通信ができるタイプの魔法通信が利用された。


・交通

共和国内の長距離移動手段は主に陸路と海路がとられた。陸路では徒歩や地竜等の家畜を利用した移動手段が主流だった。海路では貿易商社や運搬業者の船などが利用された他、平時は海洋軍が定期的に定期船を出していた。


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軍事


共和国は共和国軍と呼ばれる国防軍事組織を有した。共和国軍は地上軍、海洋軍、空中軍の3軍によって成り立っていた。総兵力は1,100万人に達し、エウストピアにおいても、地球上においても最大級の兵力を保有した。なお、共和国軍は緊急時には市民から新たに兵士を募集可能であり、市民を予備兵力として捉えた場合の共和国軍の総兵力はさらに増大する。


共和国軍は志願制を採用しており、10代から30代ならば、男女の性別や種族などは一切関係なく志願は受け付けられた。兵役の期間は6年間である。志願者は、その個人に合った部署に配属され、基本的には9割以上の採用率で従軍する事ができたとされる。なお、共和国軍全体における男女割合は男性が6で女性が4だったとされる。障害者も事務作業ができればある程度は採用された。


共和国軍では地上軍、海洋軍、空中軍の3軍を保有したが、歩兵装備的な違いは一切なかった。非戦闘用の制服などはデザイン性や色の違いがあったが、戦闘用の歩兵装備は3軍ともに同じだった。3軍の兵士の見分け方は、海洋軍と空中軍は、腕章やシールを歩兵装備の上から幾つか付けており、地上軍は何も付けておらず、これが所属の見分け方だった。


また、共和国軍の兵士は魔法によって個人情報を記録した地球でいう一種のIDカードの様な、身分証明書を全員が携帯していた。この身分証明書は除隊後には市民証としても機能した。


共和国軍の軍事史は非常に古く、共和国の成立時から共和国軍は存在した。共和国軍のその長い歴史は、行われた戦いの半数以上が内戦や内乱だったとされており、共和国の長い歴史の中で共和国は対外戦争をやっていた期間や回数よりも、国内で起こった内戦や内乱の方が圧倒的に多かったとされる。


・地上軍

地上軍は990万人の兵力を保有した。地上軍の主な任務は国防と治安維持。または公共事業や他国への攻撃を担当した。地上軍の部隊は装甲運動歩兵と呼ばれた。地上軍は通常の歩兵部隊の他、投石機を扱う投石機部隊や、地竜に2人一組で乗り一人が騎手を、もう一人が射撃手を務めて戦う騎兵部隊などを編成した。


・海洋軍

海洋軍は80万人の兵力を保有した。海洋軍の兵士は機動海上歩兵と呼ばれた。海洋軍は多数の帆船やオールで漕いで進む軍艦を保有し海魔も使役した。運用した帆船の種類としてはガレオン船や戦列艦の様な構造の艦船を運用した。


・空中軍

空中軍は30万人の兵力を保有した。空中軍の兵士は機動空中歩兵と呼ばれた。熱気球を利用し偵察や、熱気球を櫓として上空から攻撃を行う部隊の他、飛竜による空中攻撃部隊を運用した。


・エウストピア大戦の敗北原因

これだけの強大な兵力を有していた共和国軍だったが、エウストピア大戦では日本やマダガスカル、スリランカを筆頭とした連合国によって敗北した。この原因には共和国よりも高度に進んだ軍事技術を持った地球国家の存在が最も大きかったが、もうひとつ共和国軍が敗北した原因の指摘として、戦術性と戦略性の無さが指摘されている。


エウストピア大戦中に陸上自衛隊の現場指揮官として参戦していた現在は軍事評論家の紺青葵( こんじょうあおい )氏は、共和国軍の軍事行動について、以下の様に評している。


 ・戦略的に意味も無い場所に大兵力を展開したり投入したりしていた。例えば、共和国軍は連合国への大規模反抗作戦と称してベッサリウス作戦なる60万人もの地上軍兵力を動員して連合国によって最初に奪われた共和国の領土を奪還する作戦を実施したが、作戦が行われた当時において、共和国側はすでに多くの領土を失っており、作戦が行われた対象地域は共和国側からすればすでに国土の防衛上でも戦略上でも重要な地点ではなくなっていた。にも拘らず共和国は他に投入すべき戦線が多い中、この様な作戦を実施した。嘘か真か、共和国軍は最初に奪われた共和国の領土が連合国に奪われてから丁度、1周年だったからという理由でこの作戦を実施したという証言もある。

 ・軍団単位の戦略や戦術行動がまったく出来ていなかった。小さな部隊単位では陣形を組むなどの行為は行っていたが、軍団の規模で見た場合、部隊の細かな配置や細かな作戦などが殆ど行われなかった。精々、細心に気を配られていたのは、フレンドリーファイヤが起きない様にする事ぐらいだった。

 ・兵士の士気ばかり高くて細かな作戦行動などが殆どできていなかった。共和国軍の兵士は多くの場合、どんな状況でも作戦前は何故か士気は非常に高い事が多く、テンションが高かったが(薬剤や魔法や洗脳などによる影響ではなく純粋に共和国軍は全体的に兵士の士気が高い傾向があった)、闇雲に部隊単位で攻撃をかけたりする部隊が多かった。それでいて負けると、士気は大きく下がり、攻撃をやめて、すぐに逃げ出した。

 ・航空戦力を保有しているにも関わらず、有効的な活用をしない事があった。共和国軍は全軍の一体性が非常に高い軍隊だったが、例えば、ベッサリウス作戦では60万人もの兵力が投入されたが、共和国軍は何故か航空戦力を投入しなかった。ベッサリウス作戦は失敗する事になるが、作戦後、当時の最高司令官タキトゥス・サルスティウスは責任を追求され解任され新たにペラギラ・デルトラが最高司令官となったが、この就任時に特徴的な演説を残している。「共和国軍は確かに敗北した。何故か?それは空爆を行わなかったからだ!私が共和国軍の最高司令官となったからには徹底した空爆を約束しよう!」この言葉のあと、共和国軍の将兵達からは「空爆万歳!共和国万歳!」と賞賛の声が響いた。

 ・的確な戦況分析ができていなかった。共和国軍において情報分析を統括した統合戦略局は地球国家の脅威度を過小評価し続け、何度か地球国家の脅威度を上方修正したものの、結局、大戦に敗北するまで的確な脅威度の分析に到らなかった。

 ・共和国軍のトップである最高司令官は戦時中、軍や議会から責任を追求される形で解任させられ何度もそのトップが入れ替わったが、その度に共和国軍の方針がころころと代わった。その結果、共和国軍全体の軍事行動に大きな影響が出た。最高司令官には戦時中、軍と議会の双方から、軍人や議員の他、歌手(ペラギラ、ポンペイウス、パタゴニア)やダンサー(カエサル、マルクス)やトークショー番組の司会者(トール、ププリウス)や学者が擁立され最高司令官となった(※余談だが、ベッサリウス作戦時の最高司令官タキトゥス・サルスティウスは軍人である。軍人であるにも関わらず、ベッサリウス作戦を主導した。一方でペラギラは軍人ではなく歌手であったが、ペラギラ政権は戦時中、的確な軍の指導ができていたと戦後に評価されている。戦時中の共和国の最高司令官は、その後の評価で、的確な軍事指導ができていたとされる指導者も存在すれば、的確な軍事指導ができていなかったとされる指導者も出身を問わずに存在した)。

 ・軍事的には優秀な海洋戦力である海魔ナク=ナクアの軍事作戦への投入が非常に遅かった。艦艇サイズの巨大な海魔は開戦時点から積極的な利用がされていたが、ナク=ナクアは、明らかに優れた戦力であったにも関わらず、何故か投入しなかった。海洋軍ではナク=ナクアによる船舶や沿岸地域への攻撃の有効性や汎用性や奇襲性を戦争前の遥か前の時点から既に理解していたにも関わらず、汎用性に欠ける大きな海魔を何故か作戦に積極的に投入したいという機運が強かった(ナク=ナクアは船舶だけでなく陸地への攻撃も活動時間には制限があったとはいえ、可能であったのに対して、巨大な海魔は、海魔同士の戦いでは有効に活躍できたものの、汎用性に欠け、海でしか利用できなかった。また、巨大な海魔は地球国家との戦争においては、水中ソナーによって容易に探知されてしまった為、奇襲性も大幅に失われていた)(紺青葵氏は巨大な海魔を利用する事に対する一種のロマン主義が海洋軍において流行していたのではないかと推測している)。


共和国軍のこの様な状況はエウストピア大戦の後期まで続いた。後期になると、多くの面で改善傾向となったが(紺青葵氏は大戦後期の共和国軍については連合国に対して的確に善戦していたと評価している)、共和国軍がこの様な状態だった事について、紺青葵氏は、数千年間に渡って周囲を圧倒する圧倒的な軍事技術を持ち続けた結果、技術と兵力で敵を捻じ伏せるという考えが定着し戦争における戦略や戦術の概念が希薄化した事が原因ではないかと分析している。また、共和国軍をノリと勢いで戦っている軍隊。やる能力はあるのにも関わらず、何故かやらない軍隊と称した。紺青葵氏は、共和国軍を軍事的に見た場合、多くの面で烏合の衆であると称した。


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国歌


教暦602年にポルスカの作曲家ポプラテス・オプマが作曲した「強いぞ!共和国!」が国歌として歌われていた。強いぞ!共和国!は地球におけるコロブチカのメロディーに奇しくも非常によく似たテンポの良いメロディー調の曲だった。強いぞ!共和国!の大元のメロディは共和国の古代民謡ティロマエからきており、ティロマエのリズムやテンポ良くしたものに、歌詞を当てたものが、強いぞ!共和国!となった。以下は、強いぞ!共和国!の日本語直訳の歌詞。


1:我らは偉大なる共和国人!

  広大な領土を持っている!

  偉大なる歴史!我らはそれを持っている!

  サラナーナ人?トルマナ人?すべて我らに打ち滅ぼされた!

  いまやエウレーピアは共和国人のもの!

  オクタウィアヌスは不干渉政策を放棄した!

  全世界共和主義宣言と惑星統一政府論を打ち出した!

  停滞の時代は終わり光の時代がはじまったのだ!

  大いなる時代が訪れた!今こそ統合の時だ!


2:我らは偉大なる共和国人!

  強大な軍隊を持っている!

  共和国人よ来たれ!共和国人は団結せよ!

  強大な共和国軍の誕生だ!

  我らは偉大なる共和国!

  4千年の歴史を持つ共和国だ!

  共和国の外では野蛮な専制主義が蔓延っている!

  我らは専制主義から人々を解放する!我々は偉大なる解放者!

  共和制こそが偉大な体制なのだ!

  共和国軍万歳!共和国市民万歳!皇帝を殺せ!

  共和国に敬礼しよう!


3:我らは偉大なる共和国人!

  無敵の市民を持っている!

  義務を果たした市民を賞賛しよう!

  市民のおかげでこの国は守られている!

  庶民は市民を賞賛しよう!

  軍に志願して義務を果たして市民となろう!誰もにその権利がある!

  義務と責任の時代の到来だ!戦禍の1世紀は終わった!

  共和国軍万歳!共和国市民万歳!

  無秩序な時代はもう二度とごめんだろう?


4:我らは偉大なる共和国人!

  ドノドノは滅び去った!セルティウスは死んだ!

  偉大なる英雄バシレウス・アウトクラトール!

  共和国軍は平和をもたらした!秩序と自由を取り戻した!

  名のある英雄にも名のない兵士達にも全ての歴史の英雄達に敬礼を!

  我ら偉大なる共和国軍!

  数千年の歴史を持つ共和制の守護者だ!

  悪逆非道な専制主義と無秩序から国民を守るために

  専制主義は死んだ!無秩序も死んだ!

  全ての武器を外へと向けよう!

  我々は最強だ!偉大なる共和国だ!

  やろうと思えば絶滅戦争ですら始められる!

  やらないけどね!我々は破壊者ではなく解放者なのだ


5:我らは偉大なる共和国人!

  全世界に秘密基地を作るのだ!

  すごいぞ共和国!強いぞ共和国!

  惑星統一政府を作るのだ!

  偉大なる歴史!強大な共和国軍!無敵の市民!

  共和制の威光を全世界に広げよう!

  全ての市民による安定した社会を作ろう!

  戦争も争いも差別もない世界を作るのだ!

  共和制はそれができる!共和制の盟主である共和国によって!

  この偉大なる戦いに勝利しよう!


6:我らは偉大なる共和国人!

  市民になれば自由だ!あらゆる事が自由だ!

  市民になって政治に参加しよう!頭を使うのだ!

  義務を果たした市民は全ての国民を代表している!

  市民になれば自由だ!市民は全ての国民の代表だ!

  我らは偉大なる共和国!

  全ての市民は偉大なる共和国の頭脳!

  偉大なる共和国に敬礼しよう!共和制万歳!全ての共和国市民に万歳!

  自分の責務をはたして権利を手に入れるのだ!

  市民権は共和国に貢献した証!

  共和国万歳!共和国軍万歳!共和国市民万歳!

  共和国に敬礼しよう!

▼▼▼






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ウィキパディアの裏話や創作活動に関する情報を掲載。月2~3回を目安に更新予定。


https://youtu.be/fTUJFvq7J5o

 

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