テルース2 ‐ ウィキパディア
ウィキパディア-フリー百科事典
ページ/ノート
―――――――――――――――――――
テルース2
―――――――――――――――――――――――――――
テルース2(現地語:பூமி2)は、新地球における大州のひとつ。またはテルース2を構成する土地が新地球に転移する前にあった平行世界の地球の事を指す。ここでは主に大州での意味のテルース2を解説する。
テルース2は北半球に位置しており、日本国のあるテルース1を中心に見た世界地図では、テルース1から凡そ40,095kmの位置に存在する。新地球暦86年(現地暦:2677年)までは総面積5.100656×108km2にも及ぶ新地球洋と呼ばれる世界最大の海洋だったが、新地球暦86年に転移現象が発生し平行世界の地球世界から陸地が転移してきた事で誕生した。
―――――――――――――――――――――――――――
目次
1.名称
2.概要
3.構成国
4.ドーム
5.地理
6.環境
7.人種・民族
8.経済
9.通信
10.言語
11.宗教
12.文化
13.新地球との関わり
13.1転移と接触
13.2協力
13.3パチャディ作戦
13.4パチャディスキャンダル
―――――――――――――――――――――――――――
名称
テルース2の名称は新国際連合が新地球暦87年(現地暦:2678年)に決定した。それまで、地球と言えば、新地球の誕生以前の地球の事か、もしくは、新地球に唯一存在する地球国家である日本国の事を指した。
しかし、新地球洋上に平行世界の地球から大量の陸地群が転移してきた事によって、単に地球という言葉だけでは、どこの地域や場所の事を指しているのか判りにくくなった。その為、新国際連合は日本国の提案により、大州としての地域名称を付ける事を提案した。
これによって名称は決定され、元から世界に存在した日本列島を含む周辺の諸島部はテルース1と命名され、そして、新地球洋に転移してきた平行世界の地球世界はテルース2と命名された。
ただし、これはあくまで間違いを防ぐ為の国際名称であり、現地においてはテルース1においてもテルース2においても自分達の住む地域の事は単に地球と呼んでいる。
―――――――――――――――――――――――――――
概要
テルース2は平行世界の地球世界である。平行世界の地球の地理環境がほぼそのまま新地球上に転移してきた事で誕生した。ユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、南極大陸など、新地球誕生前のテルース1の地球時代における地理環境とほぼ同じ地理構成をしている。例を挙げれば日本列島も存在する。
新地球に転移してきた規模としては新地球の誕生後では観測史上最大規模の転移である。
テルース2は特筆すべき点として、現代日本から見た場合に、テルース2はテルース1の平行世界であるという事、未来の世界である事、文明が崩壊している事の3点が挙げられる。
転移災害によって複数の世界が入り混じり、それまでの地球から新たに生まれ変わった新地球では、そこに転移してきた陸地はそれまでは、いずれも地球を起源としない別惑星や別世界の陸地が主であった。しかし、テルース2は別惑星や別世界を起源とする土地ではなく、平行世界ではあるものの、地球の土地である。さらには、テルース1から見た場合に未来の世界でもある。
テルース2の暦は転移時点において西暦2677年だった。これはテルース1の現代日本から見れば6世紀近く先の未来の世界である。
そして、最も特筆すべき点としては、テルース2の文明は現地時間で約2世紀ほど前にドームと呼ばれる地球外生命体の構造物による攻撃を受けて崩壊しているという事である。その為、テルース2で暮らす人々は文明が崩壊する前の技術を細々と利用して生活している。
―――――――――――――――――――――――――――
構成国
テルース2には国家と呼べる体制は存在していない。これは国家機構が壊滅している為である。その為、その代わりに各地域に共同体と呼ばれる小規模なコミュニティが存在しており、これが国家的な役割を持っている。
―――――――――――――――――――――――――――
ドーム
ドーム(குவிமாடம்)とはテルース2の世界において、2490年(現地暦)に突如として出現しそれまでの既存世界を破壊した地球外生命体の構造体である。テルース2の地球文明を破壊し、その後もテルース2の人類や野生動物を組織的に大規模に拉致殺害している。
ドームは圧倒的な科学力と軍事力を有しており、これを背景にドームはテルース2で活動をしている。ドームはテルース2各地に17箇所が存在し、それ以外にもドームが建設したLNG採掘施設等が各地に確認されている。詳しくは「ドーム」の記事を参照。
―――――――――――――――――――――――――――
地理
新地球誕生前の地球の地理とほぼ同じである。大陸はユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、南極大陸の6大陸が存在し、その他にも様々な新地球誕生前の地球に存在した島嶼部がほぼ存在する。
ただし、一部の島などの地域は地球温暖化や浸食(洪水や土砂崩れなど)等の自然現象によって海面上から消滅してしまっている土地も存在する。
また、北米大陸のノースウェスト・テリトリーズには人為的に引き起こされた大規模な地形変動の痕跡も確認できる。テルース2のノースウェスト・テリトリーズはテルース1のノースウェスト・テリトリーズに比べて、地形が広域に渡って抉れる様に変貌しており、大地の起伏が激しい地形となっている。これは大小様々な多数のクレーターが存在している為である。
この地形はテルース2の人類が恐らくはドームによる侵攻が始まった当初にドームの戦力に対抗する為に行った集中核攻撃の痕跡であるとみられている。日本の国立研究機関による地質調査及び環境調査によって核兵器によって形成された地形である可能性が非常に高い事が判明した。
核攻撃は数回に分けて行われたと考えられ、使われた核兵器の総量は戦略核弾頭に換算して数百発から数千発分に相当するとみられている。ただし、テルース2の人類が攻撃を行った背景や、ドームのどの様な戦力に対してこの様な規模の核攻撃を行ったのかは現在では不明である。
その他、テルース2の各地には2490年までに築かれたテルース2の人類の建造物群が遺跡としてその多くが現存している。しかし、多くは過去の戦闘や自然の侵食によって崩壊が年々進んでいる。これらの遺跡の存在は、ドームの侵攻の影響によって文化や歴史などの知識などに甚大な情報断絶を引き起こしているテルース2の人類の歴史を紐解く上でも非常に重要かつ貴重な史料だとみられているが、テルース2においては、ドームが存在する為、現地の情勢から落ち着いた調査を実行するのが大変厳しくなっており、遺跡の学術調査を妨げる大きな要因となっている。
テルース2は新地球における大州の中でも最大の面積を有しており、テルース2の総面積は新地球の表面積の実に9.78%を占める。
気候分布はテルース1の新地球誕生前の地球とほぼ同じである。例に漏れず、テルース2も他の新地球の地域と同じ様にレイラインの影響により、転移前と同じ気候環境を維持している。テルース2の詳細な気候に関しては「テルース2の気候」の記事を参照。
―――――――――――――――――――――――――――
環境
テルース2の自然環境は植生や動物の生息分布は概ねがテルース1の新地球誕生前の地球における地球環境と類似する。しかし、ネコ科動物やカラス科動物やテントウムシ科昆虫を含めた複数種類の生物の絶滅が確認されているなど、過去のテルース2の人類による自然破壊の影響か、もしくはドームによる攻撃が影響しているかは不明だが、環境破壊の深刻な影響の痕跡は散見される。
しかし、過去の環境破壊の影響の痕跡は現在も見られるが、現在のテルース2の自然環境はテルース2の人類人口の激減と文明の崩壊の影響によってテルース1の地球における産業革命前の水準にまで大幅に回復しているとみられている。各地では非常に豊かな自然が復活しており新地球誕生前の地球よりも遥かに自然環境は豊かである。
しかし、こうした豊かな自然環境ではあるが、ドームによる自然への介入行為も確認されている。ドームの半径1,000km圏内ではドームの大型無人機による自然に対する様々な栄養剤や発育剤の類とみられる薬剤の散布の他、動物に対する人工餌の散布が大量に定期的に行われている事が確認されており、これらの行為によって、ドーム周辺部の自然環境は異常な発育や増殖をみせている。
また、数例ではあり生息数自体も1種( グンタイウミウシ )を除けば非常に少ないものの、こうしたドームによる薬剤の散布による副作用とみられる影響を受けた生物の存在も確認されている。例としては眼球が12個と尻尾が3尾ある非常に凶暴な犬科動物が確認されている他、テルース1の地球における伝説上の食人木の様な大型動物を捕食する木の存在や、陸上の洞窟内や空洞内の天井や壁に張り付く様に群体で生息しそこを通りかかった大型動物を集団で襲い狩りを行う体長10cm程の肉食のグンタイウミウシなど。こうした生物は散布された薬剤の副作用によって遺伝子異常を引き起こした為に生まれたと推測されている。
なお、日本の京都大学はテルース2の人類の姿がドームの薬剤による遺伝子病や遺伝子異常によって引き起こされているという可能性があるとして、ゲノム解析や遺伝子解析による数万人規模を対象とした大規模な調査を行った。しかし、テルース2の人類は少なくとも数百年もしくは千年以上は遺伝子やゲノム上に目立った変化を起こしていない事が分かり、また、細かな変化を除けば、外見上の大きな変化も1万年単位で目立った変化を起こしていない可能性がある事までも急浮上した。
この調査によって、ドームの薬剤散布がテルース2の人類の遺伝子やゲノムに対して及ぼしている影響はほぼ無い事が分かっている。
また、ドームの侵攻当初にドームの戦力に対して行われたノースウェスト・テリトリーズにおける核攻撃の影響から北米大陸は全域で放射能による汚染が確認されている。しかし、北米大陸の放射能汚染は人体に深刻な影響を及ぼす程の汚染は確認されていない。これは、皮肉なことにドームの大型機が定期的に放射能除去効果のある液体を広域に渡って散布している様子が確認されている事からドームの活動によって環境がここまで改善された為だと考えられている。
―――――――――――――――――――――――――――
人種・民族
テルース2には現地では人類と呼ばれている7種類の知的生命体が居住している。7つの知的生命体はテルース2外における、獣人と似た様な姿をしており、体の大部分の姿形は人間とほぼ変らないが、頭の部位(耳や角)や尻尾や手足などに動物の様な外見的特長がある。
種類としては虎人、猫人、犬人、馬人、牛人、栗鼠人、地鳥人が存在する。
耳や尻尾、稀に手足に虎の様な外見的特長を持った虎人。耳や尻尾、稀に手足に猫の様な外見的特長を持った猫人。耳や尻尾、稀に手足に犬の様な外見的特長を持った犬人。耳や尻尾に馬の様な外見的特長を持った馬人。耳や尻尾、角など牛の様な外見的特長を持った牛人。耳や尻尾に栗鼠の様な外見的特長を持った栗鼠人。体の部位に鳥の様な外見的特長を持った地鳥人の計7つである。
これらはテルース2においては、テルース1における黄人、白人、黒人などの人種カテゴリーの様に人種カテゴリーに入れられている。あくまで人種的なカテゴリーであり、別々の種類の知的生命体とは現地では見られていない。
つまりは、これら7つの知的生命体はテルース2においては総じて人類(人間)とされている。なお、これがテルース2がテルース1の平行世界である最大の由縁でもあるが、テルース2にはテルース2外において一般的な人類(人間)は一切存在していない。テルース2における人類とはこれら7つの知的生命体の事である。
その為か、新地球の人類はテルース2の人類から宇宙人等と呼ばれる事もある。これはテルース2の住民から見て新地球の人類には動物的な外見的特長が無い為である。
なお、テルース2の人類が敵対しているドームにも地球外知的生命体が居るとされるが、その姿は写真や映像等は無い為、詳細な姿は不明である。しかし、文字情報や口伝などによる情報は現代に伝わっており、それによると、ドームの地球外知的生命体の姿は、大よそはテルース2の人類とよく似た姿であるとされる。しかし、ドームの地球外知的生命体には動物的な外見的特徴が無いとされる。この動物的な外見的特徴が無いのがドームの地球外知的生命体の姿の最大の特徴である。
この様に、ドームの地球外知的生命体の姿がこの様に伝わっている事から、テルース2の人類がテルース2外の新地球の人類を見たときに宇宙人と呼んだ理由の一つにはこうした要因もあると考えられている。
―――――――――――――――――――――――――――
経済
テルース2の経済活動は他の大州に比べて極端に低い。これはテルース2の地域人口が関係している。テルース2の地域全体の人口はドームによる影響と文明の崩壊の影響によって僅か5,837,800人(新地球暦100年統計)しか存在しない。この人口密度は新地球上の他の大州と比べても、広大な地域面積を有しているにも関らず極端に低い。新地球誕生前の地球の総人口が70億人を超えていた事を考慮してもテルーズ2の人口が極端に低い事が分かる。
さらに、この人口はテルース2各地に広域に分散している。分散した人々は小規模なコミュニティを各地で形成しているが、これらのコミュニティは近隣同士のコミュニティ間では交流はあるが、距離が離れている場合は、地理的な要因によって多くの場合は殆ど交流も無い。
テルース2は転移後、新国際連合によって各地のコミュニティ間の交流の促進が、船舶、車両、航空機などの提供や輸送支援によっても行われているが、ドームの活動によって経済活動は大きく抑制されており、新地球暦100年現在でも、広域に分散したコミュニティが小さく固まった状態には余り変りは無く、経済活動は非常に限定的で経済交流も非常に閉鎖的である。
―――――――――――――――――――――――――――
通信
テルース2ではドームに傍受される危険性がある為、単純な電波を利用した通信は行われていない。代わりに転移に一緒に巻き込まれてきたレーザー通信衛星システムが利用されている。
新地球の誕生の際、それ以前にあった地球(テルース1)の衛星網は新たにできた新地球の直径がそれ以前の地球とは大きく変わった為に、全てが地表に墜落したか行方不明となったが、テルース2のレーザー通信衛星は非常に高度な自立型制御システムが搭載されており、転移直後に自動制御によって軌道が自動で調整された為に失われなかった。
このレーザー通信衛星システムは長距離通信に利用されている。
また、レーザー衛星通信システム以外では傍受される可能性が低い有線による通信や、軍用に主に利用されている極短距離通信と呼ばれる短距離通信が利用される。この極短距離通信とは、受信距離が短距離しかない通信の事で、受信距離を短くする事でドームに傍受される可能性をできる限り低くする方式の通信である。通常は複数の極短距離通信機と有線通信のシステムの併用によるリレー方式による方法で長距離の通信を実現している。
新地球への転移後には、新地球から齎された魔力通信も利用されている。ただし、テルース2の住人には魔力が存在しない為、魔力通信は魔法具によって行われている。魔法通信はドームに傍受される心配が無い為、現在ではテルース2の住民間の中距離通信や長距離通信の役割を担っている。
―――――――――――――――――――――――――――
言語
テルース2では共同語と呼ばれる言語が地域全体で話されている。この共同語はテルース1におけるタミル語と同じ物である。日本語、英語、フランス語などのテルース1において馴染み深い言語も存在するが、これらは全て旧言語と現地では呼ばれており、一般会話では殆ど使われない。
一体、テルース2においてどの時点から共同語がその他の言語に代わって利用される様になったのかは不明であるが、少なくとも現地暦で2490年の時点では既に利用されていたとされる。なお、旧言語については各地に残されている遺跡の様子から、2490年までは世界的に広く利用されていたと考えられている。
―――――――――――――――――――――――――――
宗教
テルース1の地球と同じくキリスト教、イスラム教、仏教、儒教、ヒンドゥー教、神道、サタニズム、ヒューマニズム、心霊主義など様々な宗教がある。概ねは新地球誕生前の地球(テルース1)にも存在した宗教と同じ宗教が信仰されている。宗教の信仰地域の分布図も概ねはテルース1と同じである。
しかし、文明の崩壊や人口激減等の影響によって消滅した宗教も存在しており、ゾロアスター教、シク教、道教など複数の宗教が信者が居なくなった事によって文献上にのみ残された存在となっている。
―――――――――――――――――――――――――――
文化
テルース2の文化は概ねが新地球誕生前のテルース1の地球の文化との類似性がある。これらの類似性はテルース1の地球における文化の地域性とも一致して類似しており、例えば、テルース2の北米大陸ではテルース1の北米大陸でも見られた文化と類似する文化が見られ、テルース2の中国では、テルース1の中国で見られた文化と類似する文化が見られる。
しかし、特筆すべき点として、食文化が挙げられる。奇妙な事にテルース2ではテルース1におけるタミル料理と酷似した料理が地域全体で食べられている。地域性による味付けの違い等はあるものの、これ以外に料理にはレパートリーが存在しておらず、日本食、イタリアン、フレンチ、アメリカン、コリアン、トルコ、中華などの料理は存在していない。
考古学的には、テルーズ2で現在、普及している料理のレパートリー以外の料理は、遺跡の様子から、テルーズ1と同様のレパートリー(日本食、イタリアン、フレンチ、アメリカン、コリアン、トルコ、中華など)が過去に存在していた事を示す痕跡が各地で広く確認されているが、2490年以降はその存在をほぼ確認できなくなっており、この頃、情報が断絶したものとみられている。
―――――――――――――――――――――――――――
新地球との関わり
・転移と接触
新地球暦86年、新地球全土で転移予兆現象が観測された。全世界各地で低周波地震が同時に観測され、オーロラが全世界各地で観測された。これが3.32時間続いた。そして、予兆現象が終息した直後に転移現象が発生。全世界各地で空が青白い光に覆われる様子が凡そ3秒間、観測された。転移現象発生時に夜の時間帯であった地域では昼間と同レベルにまでに瞬間的に屋外が明るくなった。
転移現象の発生を確認した国際社会は新国際連合の国際規定に則り、何処の地域に転移が発生したのかの確認作業を行った。その結果、それまで世界最大の面積を有する大洋であった新地球洋上に多数の未知の陸地群が存在する事が様々な観測方法によって明らかになった。
観測後、国際社会は転移してきた土地の規模に騒然とした。これまで、一つの大陸が丸ごと転移してくる事はあったが、この時、転移してきた土地は複数の大陸であり、転移規模としては観測史上最大の転移だった。
しかし、それとは別の理由でさらなる混乱を引き起こしたのが日本国だった。日本国は自前の人工衛星網によって早期に転移してきた土地を確認する事に成功していた。しかし、日本国が人工衛星によって撮影した転移してきた土地の姿は、この年から数えて86年前、新地球が誕生する前の地球の地理と殆どまったく同じ構成の土地群だった。
この事に日本政府は大混乱に陥ったとされる。新地球誕生時、日本国以外のそれまでの地球国家は未知の場所へと転移していき、それ以来、行方不明だった。今回の転移で地球の地理環境が出現した事で、日本政府は86年前に消えた地球の土地が戻ってきたのではないかと考えた。しかし、情報の精査を進めると、何故か新たに転移してきた土地の中には日本列島の様な形状をした土地も含まれる事が明らかになった。この事は、86年前に消えた地球の土地が戻ってきたと考えた日本政府の関係者を大いに混乱させた。
これらの混乱が終息したのは、国際調査後の事である。
国際調査は当初、範囲が余りにも広大すぎるが故に難航した。さらに調査部隊は転移してきた土地の住民との接触を図ろうとしたが、中々見つける事ができなかった。文明の痕跡は確認されたが、大半は廃墟であった。なお、衛星写真によって17の超巨大構造物( ドーム )の存在が確認されていたが、こちらは接近への危険性がある可能性を考えて調査部隊は接近を避けた。
だが、調査開始から3週間後に日本国の調査隊が日本列島に酷似する形状の諸島の正体を探る為に向かった際に現地に住む住民との接触に成功した。さらに、これと時を前後してアフリカ、南米に当たる地域でも他国の調査隊が現地住民との接触に成功した。これが新地球とテルース2の住民とのファーストコンタクトである。
ファーストコンタクトは非常に混乱したものになった。まず、テルース2の住民は新国際連合から派遣されてきた調査隊に対して、特にテルース2外における人類を見た際に敵対行動をとる事が多かった。テルース2の住民はテルース2外における人類に対してエイリアンだと言い恐れ攻撃した。この誤解の解消には各調査隊ごとに様々な相当な努力がされた。
次にテルース2の住民に加えて調査隊側も互いの常識の違いに直面した。テルース2外においては動物的特徴の身体部位を持つ人型知的生命体は獣人と一般的に呼ばれ、動物的特長の身体部位を一切持たない人型知的生命体は人類(人間)や亜人などと呼ばれるのが普通であったが、テルース2の住民は見た目がテルース2外における獣人と殆ど同じであったが、自分たちの事を人類だと呼称していた。こうした認識の違いは混乱を生んだ。
ファーストコンタクトとそれに伴う混乱の終息後に、各国の調査団の報告でテルース2の様子が世界各地に伝わる事になったが、この際、日本国内では、テルース2は獣人が人類という平行世界の地球であった事からネット上ではケモミミアースなどとも呼ばれた。
・協力
テルース2の住民がドームによって齎されている危機的状況は詳細が明らかになるにつれて新地球の全世界を震撼させた。文明を一度滅ぼしたとされる地球外知的生命体のドームの存在はその危険性が全世界に共有された。
ドームの存在を知った事で、新国際連合は緊急国連総会を開催し今後の対応を協議する事になった。新国際連合はドームがテルース2の外に進出し新地球各国を侵略する最悪の可能性を考えた。これを防ぐためにも、ドームに抵抗するテルース2の住民への支援は重要であるとの認識が広まり、新国際連合はドームの打倒を掲げるテルース2最大の武装勢力、解放軍(விடுதலை இராணுவம்)を支援する事に決定した。
新国際連合と解放軍は協力体制の構築で合意した。
・パチャディ作戦
新地球暦88年、日本の従軍ジャーナリスト、ジミー悟(本名:城内緑輝)氏がテルース2の日本列島における活動中に撮影した映像が大きな波紋を呼んだ。
この日本のジミー悟氏の撮影した映像は日本国内において非常に大きな影響を与えた。それまで、テルース2におけるドームの危険性はすでに日本国民にも知らされていた事だったが、これが特段に何か国民的感情に繋がる事はそれまではなかった。テルース2での出来事はあくまで、新聞記事やテレビニュースの文字情報や言葉で伝えられる情報程度しかなかった。これは現地の情勢上、取材記者が取材に行きにくい環境であった為である。
しかし、ジミー悟氏の撮影した映像は、こうした現地の緊迫度と危険な現状を克明に伝えた。特に映像の一つであった現地の子供が食肉加工を目的とするドームの無人機に捕獲され拉致されていく様子の映像や、母親と子供が無人機によって無残にも殺害されその死体が回収される映像は大きな反響を呼んだ。
テレビや新聞は連日これらの映像を取り上げ、テルース2に対する支援をより強化するべきだとの論調が強くなった。政治家もメディアに出演し、与党系の政党を中心にドームを打倒する必要があるという論調が増え、今後、ドームがテルース2外に進出してくる危険性があり、これらの映像の光景がさらに広がる可能性があると訴えた。
これら与党系の政治家の発言については当初、野党系の政治家がドームを刺激する恐れがあるとして猛反発した。しかし、ジミー悟氏の報道が出た3ヶ月後にテルース2のアフリカ大陸で現地勢力を支援する活動を行っていたアルスタリア皇国軍の輸送部隊がドームによる襲撃を受け、獣人の兵士18名がドームに拉致される事件が起きた。この事件はドームがテルース2外の新地球人を標的にした最初の事例となった。
この時、拉致された兵士の内の一人、魔法使いの士官エレモンド・ロー少尉は、拉致された後、ドーム内から1度だけ、それも恐らくはその最期の間際、魔力通信を行う事に成功した。以下はエレモンド・ロー少尉による最期の通信の日本語訳である。
「―嫌だ!嫌だ!嫌だ!溶ける!溶ける!溶ける!―」
この魔力通信の後、エレモンド・ロー少尉からの連絡はなく現在まで行方不明扱いとなっているが、状況から生還は絶望的だと見られている。通称、エレモンド・ローの叫びと呼ばれるこの最期の通信内容は、公開されるやいなや全世界にドームへの衝撃と恐怖を与えた。なお、エレモンド・ローの叫びは、混乱して不鮮明な内容ではあるものの、ドーム内からの通信としては、2508年以来の成功例である。
この事件を受けてテルース2外の新地球の人々もドームの危険性は無関係ではない事が示された。日本国内ではこの事件は大々的に報道され、ドーム打倒の必要性を訴える意見は強くなり、反対の意見は急速に縮小していった。こうした背景もあり日本国内の世論はドーム打倒に向けて急速に加熱していった。
当時の日本の内閣である水野内閣は報道の映像や犠牲となったアルスタリア皇国軍の輸送部隊についての記者会見を開き、テルース2の状況について、余りにも悲惨な状況だと述べ、直接的な軍事介入が必要か検討すると述べた。
この表明に対して日本のテレビ光月が行った世論調査では、テルース2に対して日本が直接的な軍事支援を実施する事に対する意見を求めた所、軍事介入に賛成の意見が67.8%、軍事介入の反対の意見が22.1%という結果となった。
この世論調査の数値はジミー悟氏の映像が出回る前に行われた同様の世論調査では、軍事介入に賛成の意見が39%、軍事介入に反対の意見が46%だったのとは対照的だった。世論の動向が軍事介入に賛成の方向に意見が傾いたのには、悲惨な現地の映像やアルスタリア皇国軍に犠牲者が出た事が要因であると見られている。
こうした世論の動向もあり、水野内閣はテルース2への軍事介入を閣議で正式に決定し国防軍の派遣を正式決定した。また、日本政府は新国際連合に対しても緊急国連総会を開くように要請し、そして開かれた緊急国連総会の場で日本政府はテルース2のドームを打倒する為に新国際連合軍を結成するべきだと提案した。
この日本の提案は主に人間国家、亜人国家、獣人国家、魔人国家などで意見が割れたものの、獣人国家や魔人国家からの強い賛成意見もあり、最終的には賛成多数によって承認された。これにより、新国際連合は各国の連合軍からなる新国際連合軍を結成した。
テルース2へと派遣される新国際連合軍には提案国の日本国の他、アルスタリア皇国、メルーム帝国、エルキア帝国、エルメストス共和国、エルメトル共和国、神聖ジエール帝国、竜聖ジエール評議国、サタニキア帝国、ブレーメン法国、メール国、アルストロス王国、バルバトス王国、アガレス王国、七王国連合、ハイパーボリア共和国、ロマール王国、ナコタス継承国、ロバ・エル・カリイエ王国、レムリア連合、大和ノ国、オルドロン王国、パール王国、ザンド国が参加した。新国際連合軍の主力は日本国が務める事となった。
日本国を主導とする新国際連合軍はテルース2の解放軍と協力してドームの攻略を進める事になった。最初の攻略対象としてはテルース2の日本列島の東京の位置に存在するドームが最初の攻略対象として選ばれた。
新地球暦89年、ドームの攻略作戦は約半年間の準備の後に行われた。この作戦はパチャディ作戦と呼ばれ、陸海空からの総攻撃によるドームの攻略を狙う作戦だった。なお、この作戦名は当初、神武作戦という名称が使われる予定だったが、国際的なオペレーションである為に現地の伝統料理パチャディに変わった経緯がある。パチャディ作戦には、陸上兵力は解放軍と合わせて3万人が投入され、海上兵力は日本国の国防軍海軍の第1艦隊、第2艦隊、第3艦隊を筆頭に各国による連合艦隊が投入された。
作戦に参加した最も著名な艦としては、原子力空母やまと、原子力空母むさし、原子力空母しなの、護衛艦ながと、護衛艦むつ、戦略原子力潜水艦ふじ、戦略原子力潜水艦たかお、空母アルスタリア、戦艦コモリオム、戦艦イスなどが挙げられる。
海上戦力が最も多く投入されており、戦力の主力を勤めた日本国が投入した海上戦力にいたっては日本国国防軍海軍の保有する戦力の実に半数の艦船が投入された。
これら各国による作戦規模は海軍の派遣規模としては新地球史上、最大の派兵規模となった。
しかし、パチャディ作戦は新国際連合軍と解放軍の軍事的大敗北で終わった。新国際連合軍と解放軍は持てる戦力の最大限を投入した。しかし、ドームの科学力と軍事力はそれを大きく上回っていた。
地上侵攻は日本の国防軍陸軍と解放軍の一部部隊がドームの外堀にまでに到達する事に成功したものの、そこまでであり、ドーム側の守備と反撃によって陸上部隊は壊滅的な被害を負った。海上侵攻は、ドーム側の僅か20機の無人戦闘機によって、新国際連合軍艦隊がほぼ全滅した事で失敗した。新国際連合軍艦隊は東京湾に入る事もできなかった。なお、この時、ドーム側の無人戦闘機20機に対して新国際連合軍はF35Bを筆頭に600機以上の戦闘機、9匹の守護竜と1匹の竜王、各艦艇が連携して迎撃を試みたが、ドーム側の無人戦闘機を1機も撃墜する事はできなかった。
艦隊の壊滅は新国際連合軍の遠隔司令部が置かれていたテルース2のパプアニューギニア司令部に大きな衝撃を与えた。誤報や電波障害が当初は疑われたが、新国際連合軍が受けた被害はまぎれもない事実だった。
この時点で新国際連合軍の艦隊戦力の中で生存していたのは戦略原子力潜水艦ふじ、戦略原子力潜水艦たかお、の僅か2隻のみだった。しかし、この2隻の潜水艦はこの状況に大混乱の状態に陥っていた。
混乱していたこの2隻はドームの無人戦闘機部隊が引き上げて行くのを確認すると、独断でドームに対する核攻撃を実行した。計60発のSLBMが発射され、それに搭載された計180発のMIRV弾頭がドームに向かった。MIRV弾頭1発辺りの核出力は0.5Mtだった。
発射された弾道ミサイルはロフテッド軌道を描きながらドームへと向かった。しかし、ドームは全ての弾道ミサイルを撃墜した。
命令無しに戦略原子力潜水艦が核攻撃を行った事は当然、非常に大きな問題となった。しかし、当時はそれ以上に発射された弾道ミサイル全てが撃墜された事にテルース2のパプアニューギニア司令部には衝撃が走った。当初、命令無しに戦略原子力潜水艦が核攻撃を行った事の第一報が入ると、テルース2のパプアニューギニア司令部には衝撃が走ったものの、それでも、60発もの弾道ミサイルが使用された事でドームには勝ったとの空気が流れたという。しかし、その後の続報で、発射された弾道ミサイル全てが撃墜された事が伝わると、テルース2のパプアニューギニア司令部は大きく落胆した。
その後、テルース2のパプアニューギニア司令部は各国の首脳陣と協議しドームに対する作戦を継続するかしないかの決断が迫られた。参加国の大半が作戦の継続を断念するべきとした。しかし、最大の被害を負った日本国は作戦の継続を主張。陸上方面からの核攻撃によるドームの破壊を主張した。
日本は2つの核攻撃のプランを提案した。ひとつはロケットやミサイル等の飽和攻撃をドームに対して行い、その飽和攻撃に混じって核ミサイルを発射しドームの破壊を狙うというものである。しかし、このプランは既に陸上戦力が瓦解しさらには、この時、ドームの軍事活動が活発化していた状態であった為に不可能だった。2つ目のプランは時限装置を取り付けた核出力の高い核爆弾をできる限りドームに近づけて起爆させるというものだった。こちらの案は反対意見やその有効性が疑問視されたものの、報復を主張する日本側の主張によって決定された。
日本国国防軍は核出力25Mtの核爆弾3発を急遽、日本本国から運搬した。そして国防軍の隠密作戦部隊によって秘密裏に東京のドーム近郊に設置し爆破、ドームにダメージを与える計画だった。作戦実行の日はドームの軍事活動が落ち着きを見せてから行うとされた。
作戦は予定通り、ドームの軍事活動が落ち着いた最初の攻略作戦から実に2ヶ月後に行われた。
しかし、作戦はドーム側に作戦行動中の部隊が露呈してしまい失敗。ドームの部隊によって阻止され、さらには核爆弾3発がドームによって奪取されるという最悪の結末を迎えた。
これをもってテルース2のパプアニューギニア司令部は全作戦の失敗と終了を宣言した。新国際連合軍は残存する作戦に参加した部隊要員の速やかな撤収を実施した。
「国防軍は純粋な科学力の差によって敗北した」テルース2のパプアニューギニア司令部で日本国国防軍テルース2派遣軍の司令官を務めた岡崎健也司令官が撤収時に語ったこの言葉はパチャディ作戦の失敗を象徴する言葉となった。
パチャディ作戦の失敗はその後の国際社会や国際世論に非常に大きな影響を与えた。特に、圧倒的な技術力と資本力によって唯一の超大国として国際的なリーダーの役割を担っていた日本国はこの前代未聞の被害を出した作戦を主導したとして国際的な非難を受ける事になった。また、この非難の声は国際社会だけでなく、日本国内からも噴出し非常に大きな政治問題となった。
特にこの日本国内から噴出した政治問題はその後、後述するパチャティスキャンダルにも繋がる事となり日本や世界をさらに震撼させる事となった。
パチャディ作戦に関する詳細は「パチャディ作戦」の記事を参照。
・パチャディスキャンダル
新地球暦91年、日本国の国防省職員、竹中徹氏がアルスタリア皇国に出国し現地から国際動画配信サービス、ニコニコ生放送を使ってジャパリークスの動画タイトルで、パチャディ作戦に関する政府の内部資料を暴露する事件が起きた。竹中徹氏は無謀な作戦を実行させ多くの将兵を死地に送ったとして日本政府と軍上層部を強く批判した。
この竹中徹氏によって暴露された政府の内部資料はパチャディスキャンダルと呼ばれ、日本や世界を震撼させた。
竹中徹氏によって公開された政府の内部資料は主に二つに分けられる。作戦に到った経緯と作戦中のものである。日本政府はパチャディ作戦を正義の戦いと位置づけていた。しかし、これらの暴露された情報によってパチャディ作戦に対する正当性が大きく揺らぐ結果となった。
内部資料が示した情報は日本政府によるドームへの攻撃の決定は人道支援ではなく国益上の理由からだという事を示した。
日本国は結論から言えば、テルース2における未来の優れた技術とドームの技術の獲得を狙って攻撃を主導した事が明らかとなった。
日本政府はテルース2が転移してきた当初、解放軍のコミュニティから未来技術の取得を目指した。解放軍が生産した物品や文明崩壊前に作られた物品を、物資と引き換えに日本は提供を受けた。これをリバースエンジニアリングする事で、新たな技術の習得を目指していた。しかし、完成品からの技術習得は困難を極めた。技術が高度すぎ完成品からでは、テルース1の日本の技術では再現をする事が困難だった。
そこで日本政府は解放軍が持っている製造設備を日本が提供できる物資や設備と交換する事を解放軍に申し出た。しかし、解放軍にとって製造設備は生命線であり、全ての共同体が難色を示し拒否した。これによって日本政府のテルース2からの技術取得の計画は暗礁に乗り上げた。
しかし、当時の国防大臣だった武藤善彦氏が、ドームの攻略を提案した。武藤善彦氏はドームは解放軍よりも見るからに高度な技術を持っており、敵である事からも攻撃して技術を取得しても問題はなく、これが取得できれば日本の大きな国益になるだろうと主張した。そして、この提案に当時の日本政府閣僚は同意したという。
問題は国防軍の派兵への世論の動向へと焦点が移った。当時の現状のままでは、国防軍の直接的なテルース2への派兵は国民の理解が得られないと考えられた。参戦ムードが必要であると考えた日本政府はジミー悟氏を筆頭に政権に近いメディアと癒着して国内の参戦ムードを高める方策を秘密裏に行った。
これまでは危険性から民間人は立ち入れなかったテルース2への渡航を認めた。そして、ジミー悟氏による報道を起爆剤に日本政府の読み通りに日本国内の参戦ムードは急速に高まって行った。
しかし、こうした参戦に前のめりな政府の対応に対してテルース2で長く活動していた現場の国防軍部隊はドームの脅威度を正しく分析した内容を報告していた。
日本国国防軍の派遣部隊はドームの圧倒的な脅威度と日本軍が現在の軍事力で攻撃しても勝ち目は無い事を正確に上層部に報告した。しかし、政府と日本国国防軍の上層部はこれら現場の意見を全て無視した。これは、日本国国防軍がこれまで新地球誕生以降の歴史で戦いに負けた事が一度もなかった事が原因だった。政府や日本国国防軍の上層部は自分たちが負ける可能性を一切考えず、初めから勝利する前提で作戦を決定していた。
一方でテルース2側では、解放軍は自分たちの戦力と比較しても圧倒的な物量を有する日本軍に期待して協力を鮮明にした。解放軍はドームを倒せるかもしれないと考えたとされる。こうした下地がありパチャディ作戦は実行された。
以上が簡単なパチャディ作戦までの略歴である。これらの情報は一切が国民に知らされなかった。そして、パチャディ作戦中にも隠された情報があった。
パチャディ作戦中、ドームへの攻撃開始後、新国際連合軍に向けてドームの無人戦闘機から、電波によるコンタクトの試みがあった事が記録から明らかになった。この様な事はこれまで一度も無い出来事だった。解放軍側の記録でもドームがこれまで人類側にメッセージを発した事は記録上一度も無かった。
パチャディ作戦中にドームの無人戦闘機から新国際連合軍に向けて発信されたメッセージは、英語、日本語、中国語、ロシア語、ヒンディー語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、アラビア語、ベンガル語、ドイツ語の12ヶ国語で同一内容が発信された。以下はドームが新国際連合軍に向けて発信した日本語メッセージ。
「―こちらは東京、中央警備局です。警告します。貴船団並びに陸上の武装集団は国際福祉都市連合で定めれた国際法に基づく絶対福祉都市の権利を著しく侵害しています。ただちに全ての戦闘行為を停止して下さい。担当官を派遣し所属の開示、戦闘行為の意図を開示し交渉の席について下さい。対応が見られない場合は国際福祉都市連合で定められた絶対福祉都市の防衛権を行使します。繰り返します―以下繰り返し―」
この様なメッセージがドーム側から人類側に向けて発信された。しかし、このメッセージに対して、新国際連合軍はこれを無視した。当時、原子力空母やまとに搭乗していた艦隊司令官の西条雄中将がこの通信を攻撃が既に始まっている事と本国の作戦の意図を知っていた事から無視する事を決定したとされる。
このメッセージは新国際連合軍を構成する他国の艦隊も傍受していたと考えられるが、日本の原子力潜水艦以外の艦船が全て撃沈された事。パプアニューギニアの司令部との交信のやりとりを日本の第1艦隊、第2艦隊、第3艦隊が統括していた事が要因で、他国にはこのメッセージの情報が秘匿された。
このドームからの通信内容は作戦後、国防軍によって秘匿された。しかし、竹中徹氏の暴露によって明らかとなった形となった。
これら、一連のパチャディスキャンダルの資料は日本を含めて全世界を震撼させた。当初、日本政府はこの暴露内容を悪質なデマとして否定し、情報を流した竹中徹氏を名誉毀損の罪で告訴。アルスタリア皇国に対して、竹中徹氏の身柄を日本へと送還する事を求めた。
しかし、アルスタリア皇国は日本政府の要求を拒否。パチャディ作戦に関する徹底した調査を求めた。このアルスタリア皇国の発表に日本政府はアルスタリア皇国が最大の日本の同盟国であった事から衝撃を受けたとされる。こうしたアルスタリア皇国の姿勢に日本政府は経済制裁をちらつかせるなど、脅す姿勢を見せたが、パチャディ作戦に参加した参加国のほぼ全てから日本の姿勢を疑問視する批判の声が相次いだ。さらには新国際連合による日本への事実究明を求める決議も採択された。
日本国内でも事実究明を求める声は高まり、国会議事堂前では2000年以降では初めてとなる10万人規模の大規模抗議デモも起きた。さらに野党からの政府に対する追求の声も高まった。
これらの国内外からの抗議の声によってパチャディスキャンダルが流失した3ヶ月後には政府は主張を一転させ、パチャディスキャンダルが事実である事を認めた。
パチャディスキャンダルを事実と認めた事で国際社会は日本に対する批判の声を強め、アルスタリア皇国も改めて声明を発表し竹中徹氏の身柄の安全を保障すると発表した。多くの犠牲者を出した派兵国の一部では日本企業や日本人に対する排斥運動にまで繋がり、多くの商店や物が破壊された他、アルストロス王国では、パチャディ作戦に同国で最も敬愛されていたエミュレット・モー・アリス姫騎士長がイージス艦オルドローンに搭乗して参加しその後、帰還できず生死も不明の状況となっていた事から、最も激しい排斥運動が置き、日本人113名が暴徒によって殺害される残忍な事件も起きた。
日本国内においては、政府がパチャディスキャンダルを事実と認めた事で、大量の戦死者をパチャディ作戦によって出した事から、この様な無謀な作戦を実行させた政府に対する批判の声がより一層強くなった。日本全国各地で白菊運動と呼ばれる直近100年の間で日本国内で発生した国民運動としては最大規模となる政府に対する抗議運動が発生。全国各地で政府への抗議の象徴として作戦に犠牲になった兵士達に捧げる花として白菊を持った国民による抗議デモが発生し、東京では最大で300万人規模の抗議デモが起きた。
政府批判の声は一般国民だけでなく、軍人やテルース2へと派兵された軍人、国防軍退役軍人会、パチャディ作戦遺族会によっても行われた。国防省内では横須賀基地と佐世保基地において海軍将兵によるストライキも起きた。ストライキを主導した国防軍海軍の田代高野准将はパチャディ作戦について「第二次世界大戦後の日本史上で最大の汚点」と評し政府を批判した。
日本政府は国民に対して謝罪し水野総理は内閣の総辞職を表明。さらには作戦を実行した国防省の幹部全員が辞職する事態となった。
その後、当時の政権与党だった日本連合党は総選挙で歴史的敗退をし野党大3党へと転落。複数の政党も誕生した。これによって 新地球暦30年代から続いていた日本の二大政党制が崩壊する事態となった。これによる日本の政界での影響は甚大であり、国会は新地球暦30年代より前の多数の政党による政治状況に戻ってしまった。
また、野党から与党となった国民連合党は当時の党総裁がライ透氏であった事から、ライ透氏が黒人であった為、これによって現代日本史上初の黒人系の総理大臣が誕生する事となった。また、ライ透氏は、コロンビア系とメキシコ系外国人難民の間の2世であった事から、日本史上初の外国に血筋の明確なルーツを持つ総理大臣となった。総理となったライ透氏はパチャディ作戦の徹底調査を指示し、第三者委員会の設立の他、国防軍の建て直しへの注力。パチャディ作戦参加国及び勢力との関係修復外交への注力。前政権が竹中徹氏に対して行った名誉毀損による刑事告訴の取り下げ等を行った。
水野内閣は退陣後、パチャディ作戦に動員され、テルース2へと派兵された軍人や、国防軍退役軍人会、パチャディ作戦遺族会から、無謀な作戦を実行させたとパチャディスキャンダルの文章内で実名で曝された当時の水野内閣総理大臣やその政権幹部、国防省の上層部に対して、警察庁に業務上過失致死罪による刑事告発が行われた。この告訴は最高裁判所まで争われたが最終的には新地球暦98年に、最高裁判所が当時の水野進内閣総理大臣、武藤善彦国防大臣以下7名を懲役5年、執行猶予8年の実刑判決を下すに至った。
パチャディ作戦中にドームから人類側に向けて発信されたメッセージの秘匿を巡っては解放軍から情報を隠蔽した日本を含めた新国際連合軍に対して抗議声明が発表されている。
解放軍はドームが人類側に対してメッセージを発した事はこれまで無かった事であり、これを無視したばかりか、その情報を共有せず隠蔽した事はテルース2の人類全体への深刻な裏切り行為だと表明した。
ドームが人類側に向けて発信したメッセージの内容については、その解釈を巡ってパチャディスキャンダル後に世界的に議論が紛糾した。ドームとは結局何なのか。一体どの様な存在なのかという謎が世界的に噴出した。ドームが人類側を混乱させる為にメッセージを出したとする説など、様々な説が溢れた。
しかし、こうした議論について解放軍は一部の説に懸念を表明しており、一部では、ドームが発したメッセージの内容と、テルース2の人類に伝わるドームの宇宙人の姿、テルース2の人類の姿から、実はテルース2の人類が宇宙人なのではないかという一部の説が現れていたが、これについて解放軍は正式声明で、これまでドームの被害にあってきたテルース2の全人類を愚弄する愚かな説と批判している。
新国際連合も解放軍の声明に同調し、一部の説について種族差別を助長する恐れがあるとして過度な流言に注意する様に声明を出した。
なお、ドームが人類側に対してメッセージを発した事から、解放軍と新国際連合はパチャディ作戦後にドームとのコミュニケーション確立を目指して電波や光信号等による呼びかけを行ったが、ドーム側は一切の反応を示しておらず、そればかりか発信地点が攻撃される状況と現在はなっている。
パチャディスキャンダルに関する詳細は「パチャディスキャンダル」の記事を参照。
パチャディ作戦とパチャディスキャンダルが、ドームの打倒運動に与えた影響は非常に甚大であり、新国際連合は以降、テルース2への軍隊の大規模派兵は避ける様になった。小規模派兵や解放軍への物資の支援などは継続しているが、新国際連合の加盟国間では国際関係に深刻な溝が生じておりドームに対する積極的な行動は取れていないのが現状となっている。
また、ドームはパチャディ作戦後に明らかに解放軍よりも新国際連合の部隊を優先して攻撃している素振りが指摘されており、パチャディ作戦がドームの戦略や戦術に何か影響を与えた可能性が指摘されている。その為、現在では解放軍はドームによる共同体への攻撃を避ける為に、一定規模以上の新国際連合の部隊を共同体の地域内に入れない方針をとっている。また、その一方で解放軍に対するドームの攻撃頻度もパチャディ作戦前と後では変わったと指摘されている。テルース2全体でドームによるテルース2の人類や動物に対する拉致や攻撃が多くなっている可能性が指摘されている。




