神聖にして不可侵たるガレア=テドル帝国 - ウィキパディア
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神聖にして不可侵たるガレア=テドル帝国
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神聖にして不可侵たるガレア=テドル帝国(略:ガレア=テドル帝国)は2023年に地球上に突如として出現した浮遊陸地群を領土とする帝国である。浮遊陸地群と共に出現した。2037年までは既存の地球人類国家との交流を行っていたが、中国による侵攻後は地上との全ての交流を断ち完全な鎖国政策を行った。
公用語:ガレア=テドル語
首都 :ンガラークデイ
人口 :36,973,457人(※2035年統計)
民族 :ガレア人・テドル人
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目次
1.国旗
2.歴史
2.1ドラケニアにおける歴史
2.1.1 死期戦争による地上世界の荒廃と滅亡
2.1.2 浮遊大陸への脱出
2.1.3 二大浮遊国家の誕生
2.1.4 実用的錬金術の発明と産業革命
2.1.5 第一次ガレア=テドル統一戦争
2.1.6 妖精による第一次浮遊大陸群侵攻
2.1.7 ドラケニア同盟の発足
2.1.8 第二次ガレア=テドル統一戦争とガレア=テドル帝国の成立
2.1.9 妖精による第二次浮遊大陸群侵攻
2.1.10妖精による第三次浮遊大陸群侵攻
2.1.11魔機構機人の発明
2.1.12妖精による第四次浮遊大陸群侵攻
2.1.13テドル動乱
2.1.14テドル散民政策の実施
2.1.15平和文化革命時代
2.1.16妖精による第五次浮遊大陸群侵攻
2.1.17妖精による第六次浮遊大陸群侵攻
2.2地球における歴史
2.2.1 地球への転移と混乱
2.2.1.1地球側の対応
2.2.1.2ガレア=テドル側の対応
2.2.2 国連による調査
2.2.3 ファーストコンタクト
2.2.4 国連主導による交渉
2.2.5 ガレア=テドル帝国の国際連合加盟
2.2.6 交流事業の拡大
2.2.7 国連安保理による反重力鉱石の提供要請
2.2.8 反重力鉱石密輸未遂問題
2.2.9 浮遊陸地群の浮遊回廊問題とガレア=テドル帝国の反発
2.2.10ユーラシア大陸諸国によるガレア=テドル帝国への威圧
2.2.11外交関係者及び研究者に対する事実上の幽閉
2.2.12中国軍によるガレア=テドル帝国への侵攻
2.2.13ガレア=テドル帝国の国際連合脱退
2.2.14地球人類の追放と大陸封鎖令の発令に伴う鎖国体制への移行
2.2.15アルゼンチン事件
2.2.16アメリカを主導とした和解事業
3.国民
3.1種族と民族
3.2医療
3.3言語
3.4宗教
3.5文明
4.地理
4.1地方行政区分
5.政治
5.1内政
5.2外交
6.経済
7.技術
7.1魔術技術
7.2錬金技術
7.3科学技術
8.軍事
8.1翼空衛士軍
8.2ロイヤル・エア・ガード
9.参考資料
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国旗
黄色を背景に槍を構えた頭が鷹の男が黒色で描かれている。地球でこれに近い姿をしているのは古代エジプトで信仰されていたホルスが該当する。国旗の意味は、鷹の男がこれまでに死んだ多くの名もない戦士達を表し黄色は彼ら彼女らの尊い犠牲の上に作られた希望の光を意味する。
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歴史
・ドラケニアにおける歴史
国連の交流事業を通してガレア=テドル帝国の地球に転移する以前の歴史はある程度が伝えられている。本項目ではガレア=テドル帝国が本来存在した世界(ドラケニア※ガレア=テドル帝国人が呼称している彼らの本来の世界の名前)の歴史を紹介する。
・死期戦争による地上世界の荒廃と滅亡
統一暦-650年頃から-600年頃(※統一暦とは帝国が使用している暦)ドラケニアの地上世界において地上における支配種族アールヴ族の国家が戦争を引き起こした。アールヴ族はこの戦争中に生物兵器として妖精を使用した。その結果、アールヴ族の国家による戦争は早期に終結したが、妖精が暴走しあらゆる地上生物に対して攻撃を仕掛けはじめた。地上世界の多くの種族は生存をかけた妖精との防衛戦争を開始。しかし、戦争は地上生命の敗北という最悪の結果をもたらし地上世界は荒廃し地上に生きる全生命は滅亡した。この生存戦争を死期戦争と呼ぶ。この戦争によって全ての元凶である妖精を生み出したアールヴ族は完全に滅亡した。
・浮遊大陸への脱出
統一暦-608年頃、死期戦争の敗北を悟った一部の人々は地上世界からの脱出を図った。ドラケニアの世界には浮遊大陸と呼ばれる浮遊陸地群が存在しており、妖精の脅威から逃れるために、この地への移住を行った。この脱出にはエルベールという竜神族の高位錬金術師が重要な役割をしたと伝えられており、彼は地球世界におけるヘリウムガスの発明を成功させ飛行船を発明した。この飛行船によって浮遊大陸への生存者の輸送を可能とし多くの人々を浮遊大陸へと脱出させた。また、このエルベールの飛行船はドラケニアにおける初めての飛行機械の発明であるとされる。この脱出によって生存を勝ち取った者達は58種族3万5682人であったとされる。また、死期戦争を引き起こす原因であったアールヴ族はこの脱出にはその他の種族の人々に参加する事を許されずに滅亡した。
その後、脱出した人々は協力して浮遊大陸の開拓事業を行った。統一暦-550年までに人口は急激に増加し総人口は100万人を越えた。人口の増加と共に浮遊陸地の各地にはポリスが形成され浮遊陸地同士は飛行船による貿易活動が活発となった。これが航空貿易の始まりであるとされる。
・二大浮遊国家の誕生
多くの浮遊陸地にできたポリスは当初、統一意識を持った一つの国家もしくは集団に近い存在であったとガレア=テドル帝国の歴史家は考えている。しかし、航空貿易の拡大とポリスの発展は統一意識を薄れさせ、既得権益の拡大をもくろむポリスの出現を生んだ。これらのポリスは勢力拡大に力を入れ経済的に弱いポリスは淘汰されていった。その結果、浮遊陸地群は2つの経済圏のポリスに分け隔てられた。この二つの経済圏をガレア経済圏とテドル自由経済圏と呼ぶ。この二つの経済圏の違いはその体制にあり、ガレア経済圏はこの経済圏の中心地であるガレア市によるその他のポリスを経済的に支配する一強支配経済体制で、テドル自由経済圏はテドル市を中心に複数のポリスによる自由な貿易活動を目指す経済圏であった。
そんな情勢下の統一暦-409年、ガレア経済圏においてガレア市行政官にして高位魔術師のアレクサンドロス・トロマンによってガレア帝国の建国が行われた。アレクサンドロスは自身を神聖にして不可侵の唯一の地上世界の継承者である事を宣言し全浮遊陸地群の領有権を宣言した。しかし、これに対してテドル自由経済圏は反発し翌年の統一暦-408年にテドル自由共和国の成立を宣言した。ここにガレア帝国とテドル自由共和国の二大浮遊国家が誕生し両国の対立は経済的な対立から軍事的な対立へと移行した。
両国はその後、国境空域における大小の紛争を繰り広げたが、当時は空における移動手段が木材と布の塊である飛行船のみであり、戦闘における被弾は飛行船にとっての直接の死に繋がる可能性が高く、飛行船は建造コストがかかった為に戦争と経済を考えた場合に経済への負荷が大きすぎる為に全面戦争などは引き起こされなかった。当時発生した最大規模の紛争でも両国のいずれかに属するポリスを空域封鎖して経済制裁をかけるなど全面戦争とは言えないあくまで局地的な戦いだった。
・実用的錬金術の発明と産業革命
統一暦-398年、ガレア帝国の宮廷錬金術師ウィッカ・ル・ウィッチクラフトは錬金術の実験中に偶然、火薬を発明した。魔術を使わずに強力な爆発力を引き起こす火薬はすぐにガレア帝国中に広まり飛行船から投下する為の航空爆弾として利用される様になった。しかし、火薬の発明当時はまだ、錬金術が未熟であった為に量産にはコストがかかりすぎた。さらに、この時期には地球におけるフランキ砲や鉄砲の原型とも言える武器も発明されたが、金属資源の希少性から大量には生産できなかった。その為、火薬が登場しても暫くはこれらの兵器が利用される事は少なかった。
だが、統一歴-350年にテドル自由共和国の国家錬金術師グレーテス・ルマリアが画期的な錬金術の法陣の発明に成功した事で状況は大きく変わった。グレーテスが発明したこの新しい法陣は様々な鉱石を実質、土と水さえ存在すれば再構築する事ができるという画期的なものだった。その為、この錬金術は発明国であるテドル自由共和国において当初、ガレア帝国との国力差を埋めるには充分すぎる発揮をした。この時期にはすでにテドル自由共和国にも火薬の生成技術が伝わっており、テドル自由共和国の軍はこの新しい錬金術を使って鉄砲や大砲を量産し軍事力において統一歴-340年頃までにはガレア帝国を追い抜いた。その象徴にテドル自由共和国はこれまで木材と布を使った飛行船を使っていたが、錬金術で生成したアルミ合金や複合材料を利用した飛行船を開発しこれまでの飛行船とは比にならない防御性能と火薬兵器による圧倒的な火力を有した飛行船を就役させた。
この状況に危機感を感じたガレア帝国はこの新しい錬金術の獲得をする為に錬金術の技術研究を急いだ。統一暦-332年、ガレア帝国の翼空衛士軍兵器工廠が浮遊陸地群の反重力を発生させている反重力鉱石を利用した新型飛行機械、航空艦の開発に成功した。この翼空衛士軍兵器工廠の研究はテドル自由共和国との国力差を縮める為に進めていたが、航空艦の登場は国力差を埋めるには充分だった。これまで使われてきた飛行船がヘリウムを利用してその巨体に比べて搭載量や防御面で限界があったのに対して、大地をも浮かせるエネルギーを持った反重力鉱石を動力とした航空艦は例え当時の大型飛行船(当時最大規模の飛行船は全長200m程)と同規模の大きさであってもその重量は飛行船の比ではない規模に達する事ができ、飛行船よりも強力な火砲を多く搭載する事ができた。ガレア帝国は最初の航空艦として史上初の航空戦艦アラファトを就役。このアラファトは全長130m、艦全体が装甲で覆われ艦重量は3,500トンに及び、兵装は90トン単砲塔2基、15cm水平砲10門、7cm水平砲8門を搭載した。この航空戦艦アラファトの就役後、ガレア帝国はさらにアラファトに続いてミーティア、ケットシー、クワイガンを建造した。当時、ガレア帝国はこれらの航空艦の建造に自国の国力の殆どを注いでおり、これらの戦艦の建造期間内は新たな飛行船の製造が全て取りやめられている。また、製造後もこれらに搭載されている兵装の弾薬を製造する為に国内の製鉄所は全てこちらに回された。これらの方針は翼空衛士軍の最高司令官であるホーソイ・アラファト大元帥の発案によるもので、彼は数でテドル自由共和国軍に対抗する方針を放棄し航空要塞の概念を作り、航空艦を要所に配備して1隻の船で30隻の飛行船の攻撃を防ぐという新ドクトリンを構築した。このドクトリンの体制下において航空艦が最初にその威力を発揮したのが、統一暦-328年にガレア帝国領アレク浮遊大陸市をテドル自由共和国軍が空域封鎖したアレク事件での事である。テドル自由共和国軍は強大な国力を背景にした圧力をこの時期、ガレア帝国に仕掛けており、テドル自由共和国はガレア帝国に対して領土割譲を度々求めるなどしてこの時点で6つの浮遊陸地群を喪失していた。このアレク浮遊大陸市に関してもテドル自由共和国は領土割譲を求めていたが、ガレア帝国はアレク浮遊大陸市が帝国の穀物生産の拠点である事を理由に拒否した。するとテドル自由共和国は軍を派遣してアレク浮遊大陸市の周辺空域を空域封鎖し帝国に領土の割譲を迫っていた。この事態にガレア帝国は航空戦艦アラファトを派遣し武力による空域奪還を試みた。この時の両者の戦力がガレア帝国側が航空戦艦アラファトと護衛の飛行船2隻であったのに対して、テドル自由共和国の航空艦隊は飛行船49隻である。航空戦艦アラファトは敵の飛行船に対してその圧倒的な武装の威力を発揮しテドル自由共和国の航空艦隊を事実上1隻だけで全滅させた。この戦いは飛行船の時代に終止符を打ち航空艦の時代を開いた戦いだと現在では伝えられている。
これらの航空戦艦の登場はテドル自由共和国に衝撃をもたらした。両国は航空艦が飛行船とは比にならない脅威である事を認識した。アレク事件の後、テドル自由共和国はガレア帝国に対する領土要求をする事は無くなり、両国は暫く睨み合いの時代となった。だが、当時の資料によれば、テドル自由共和国はこの時、実際には軍事力においてもガレア帝国を総合的には上回っており、現在の歴史家はもしもテドル自由共和国がアレク事件の後に全面戦争を挑んできていればガレア帝国の敗北必死であったと考えを述べている。
ガレア帝国やテドル自由共和国はその後10年間に渡って自国の保有する技術的なアドバンテージを保護した。しかし、これらの技術は両国の密偵などによって双方が知る事になり、その結果、統一暦-310年代に入った頃には両国の技術的に大きなアドバンテージは失われた。だが、両国の新技術による生産効率の実現は後世において産業革命と呼ばれ、それ以前の時代の技術や経済規模と一線を画した。
・第一次ガレア=テドル統一戦争
統一暦-299年、ガレア帝国において皇帝の暗殺未遂事件が起きた。事件は未然に防がれたが犯人がテドル自由共和国からの密偵であった事が判明し同年2月、ガレア帝国はテドル自由共和国に対して大規模侵攻を開始した。第一次ガレア=テドル統一戦争の勃発である。この戦争で両国は様々な近代兵器を投入した。両国は戦力にしてガレア帝国側が航空艦23隻、飛行船169隻。テドル自由共和国側が航空艦21隻、飛行船258隻を投入し全面戦争へと至った。この戦争は統一暦-293年に終結しガレア帝国による戦略的勝利をもたらしたが、激しい戦闘によって両国の国境地帯であった浮遊陸地群の都市は荒廃し無人地帯へと変貌した。領土的割合としてはガレア帝国が戦争前の領土の約3分1が無人化。テドル自由共和国は戦争前の領土の約3分2が無人化した。この全面戦争によって戦争前の総人口が2千万人を超えていたと推計されていたのに対して、戦後は1千百万人足らずの人口しか残らなかった。この大量の死者を出した原因は両国の物流事情だとされており、当時、各浮遊陸地群の都市は経済の効率化に合わせて第一次産業や第二次産業のどちらかを専門的に行う都市が多かった。第二次産業を主体とする都市は第一次産業を主体とする都市から食料品を貿易によって入手していた。その為、第二次産業を主体とした都市では食料自給率が低く、空域を敵の手に抑えられた場合は物流が完全に停止してしまった。その結果、長期にも及ぶ戦争によって、封鎖された都市では餓死者などが急増した。さらに戦争中、両国には戦争における人権保護の観点の条約等が無かった事もあり双方で住民への無差別爆撃や虐殺、略奪などが横行した事も死者の増加を招いた。
・妖精による第一次浮遊大陸群侵攻
統一暦-292年、統一戦争の影響で無人地帯となった浮遊陸地群において、ガレア帝国・翼空衛士軍の航空戦艦ケットシーが、巡視中に消息を絶つという事件が起きた。この件に対して翼空衛士軍はテドル自由共和国の関与を疑い航空戦艦6隻、飛行船12隻からなる航空艦隊をケットシー捜索艦隊として派遣した。翼空衛士軍の航空艦隊は無人地帯の空域において、テドル自由共和国軍の航空艦隊と遭遇。ケットシーの消息不明が当初からテドル自由共和国の仕業と考えていた翼空衛士軍の航空艦隊はこれと交戦した。しかし、両国軍の交戦中に両艦隊は蝶の様な姿をした正体不明の謎の生物群による襲撃を受けた。
両艦隊は互いに戦闘行為を停止し正体不明の謎の生物群への対処をおこなった。戦闘はかろうじて翼空衛士軍とテドル自由共和国軍の勝利に終わったが、艦隊は壊滅状態となった。その後の調査で無人地帯において同様の正体不明の謎の生物群が多数存在する事が明らかになると、ガレア帝国とテドル自由共和国は緊急協議を行い、ケットシーの件にテドル自由共和国が関与していない事が判明した。テドル自由共和国の説明によると当時、テドル自由共和国軍は無人地帯において、ケットシーと時を同じくして行方不明となっていたテドル自由共和国軍の航空戦艦リュグドーの捜索に来ていた。その後、両国の懸命な調査によって無人地帯における正体不明の謎の生物群の正体が、約300年前に地上世界を滅ぼした妖精である事が判明した。これまで、妖精は高高度の空を飛べないと考えられていた為に妖精の浮遊陸地群への侵攻は考えられていなかったが、これが現実化した事を受けて両国は緊急の対応を迫られた。
両国は連合軍を結成し、妖精の侵攻に対して対処。統一暦-292年から統一暦290年までの間、この妖精掃討の作戦はおこなわれ戦死者は30万人に達し、負傷者は55万人にも及んだが、両国は妖精の侵攻を耐え抜いた。この戦いを第一次浮遊大陸群侵攻と呼ぶ。しかし、この第一浮遊大陸群侵攻後、戦闘が行われたガレア帝国とテドル自由共和国の国境地帯の広い地域は原因不明の濃雲が多発する空域となった。
・ドラケニア同盟の発足
第一次浮遊大陸群侵攻の後、ガレア帝国とテドル自由共和国は軍が受けた甚大な被害を受けて統一暦-290年、妖精の侵攻への対処を両国が共同で行う事を定めたドラケニア同盟が発足した。また、妖精に対する研究も開始する事が決定され、この同盟の締結後、両国の誕生以来より続いていた戦争状態及び緊張状態は解消された。
・第二次ガレア=テドル統一戦争とガレア=テドル帝国の成立
ドラケニア同盟の発足後、妖精が再び襲来する事は無くなった。同盟の発足当初から約150年間は妖精への危機感から両国は協力していた。しかし、その後、妖精が襲来する様な事が無くなった事もあり、両国は再び緊張の時代へと突入した。統一暦-140年から第二次ガレア=テドル統一戦争が勃発する統一暦-100年までの間、両国は冷戦状態へと至り、軍拡を続けた。そして統一暦-100年6月11日、テドル自由共和国軍の艦隊が国境線上で演習と称したガレア帝国側への越境を行い、これに対してガレア帝国の翼空衛士軍が艦隊への攻撃を行った事でその後、100年にも及んだ第二次ガレア=テドル統一戦争が勃発した。
第二次ガレア=テドル統一戦争は戦争勃発後すぐに両陣営は膠着状態へと陥った。原因は浮遊大陸群の無人地帯が広大であった為である。両軍の主力であった航空戦艦は航続距離こそ燃料が不要であった為に広かったが、食料や弾薬は補給が必要であった。しかし、人口がほぼ0に近い地域が広大であった為に補給に支障が出ていた。また、浮遊陸地群に設置された要塞の技術的な進歩も戦況に大きな影響を与えた。この時期、両軍は本来であれば妖精への対策として各地に設置していた要塞の高射砲を戦争における浮遊陸地の防衛兵器として転用した。これらの高射砲は半自動装填を実現化しており、浮遊陸地を攻撃する航空戦艦にとって非常に脅威だった。この為、戦争の劇的な戦況の変化は発生せず、戦争勃発後は両軍による一進一退の状況が長く続いた。
しかし、統一暦-49年にガレア帝国が航空艦よりも遥かに小さく機動力のある飛航艇を完成させると、戦況に若干の変化が生まれるようになった。飛航艇は登場後、すぐにテドル自由共和国も同じ技術を獲得するが、ガレア帝国は飛航艇と航空艦を使った戦術に秀でており、その後、終戦までの間、ガレア帝国は支配地域を一進一退を続けながら、じわじわと拡大させていった。
統一暦-3年1月にはテドル自由共和国首長の娘、シャン・ル・テドルがガレア帝国に密航し、テドル自由共和国国内の政治家と軍人の腐敗と戦争による国民生活の惨状を訴えてガレア帝国による統一を支持するシャン・ル・テドル首長女殿下亡命事件が起きた。ガレア帝国はシャン・ル・テドルを頂点に同じくテドル自由共和国からの亡命者で構成されるテドル自由共和国正統政府を結成。テドル自由共和国政府に対する反政府活動を活発化させた。そして、統一暦-1年2月19日にテドル自由共和国の首都テドル市で腐敗する政府に反発する市民による大規模な暴動が発生しこの暴動は22日には他の都市へも伝播。3月8日にはついに革命へと発展しテドル自由共和国議会は崩壊した。この革命後、テドル自由共和国正統政府が翼空衛士軍の護衛でテドル市へと降り立ち戦争の終結宣言を行った。そして戦争の終結宣言から9ヵ月後の12月29日にガレア帝国がテドル自由共和国の併合を発表し、ここにテドル自由共和国は消滅。両国は統一しガレア=テドル帝国が成立した。しかし、戦争自体はその後も統一を認めない旧テドル自由共和国領の浮遊陸地群や、国境地帯の無人空域で行われ完全な終戦自体は統一暦58年に翼空衛士軍が発表した掃討宣言まで待たなければならなかった。
・妖精による第二次浮遊大陸群侵攻
統一暦103年1月、翼空衛士軍の戦術情報収集局は戦術予知によって8月までに旧テドル自由共和国領アーン州に妖精が飛来する可能性を予知した。翼空衛士軍は393年ぶりとなる妖精の襲来に備えてアーン州に4個師団と1個艦隊を派遣しこれに備えた。しかし、約400年ぶりの妖精の襲来に翼空衛士軍の上層部は妖精の脅威度を低く見積もっていた。当時、翼空衛士軍は妖精に関して最新鋭の兵器で充分に対処が可能であるとの見方をしていた。統一暦103年9月19日、アーン州に第一次浮遊大陸群侵攻の際に飛来したタイプと同じ妖精が襲来。翼空衛士軍はこれと交戦し一時的な優勢状態を得るが12日夜、妖精が卵を浮遊陸地に卵を産卵し投下。この卵から多数の触手を有した新種の妖精が孵化し陸上部隊を襲撃した。この事態に陸上部隊は大混乱に陥り13日朝までにアーン州に展開していた4個師団と中核都市に避難していたアーン州の住民198万人がほぼ全滅する事態となった。この緊急事態に事の重大性をようやく理解した翼空衛士軍は陸上部隊60師団と10個艦隊の派遣を決定。妖精に占領されたアーン州の浮遊陸地群の奪還に乗り出した。この第二次浮遊大陸群侵攻での戦闘は統一暦111年まで続いた。この妖精侵攻に翼空衛士軍は勝利し浮遊陸地群から妖精を完全に排除する事に成功した。しかし、この第二次浮遊大陸群侵攻での戦死者数と被害は第一次浮遊大陸群侵攻を遥かに超え、戦死者は軍民合わせて405万人、破壊された都市の数は19にも及び、アーン州は壊滅的被害を受けアーン州と隣接したイイイ州にも戦火は及んだ。戦後、翼空衛士軍は初期の対応に誤りがあったとして、当時の軍上層部の多くが更迭され軍務大臣も辞任に追い込まれた。
・妖精による第三次浮遊大陸群侵攻
統一暦113年13月18日、翼空衛士軍の戦術情報収集局は第二次浮遊大陸群侵攻から僅か2年しか経っていないこの日、戦術予知によって統一暦114年7月までに旧国境空域において妖精が飛来する可能性を予知した。この事態に前回の戦いから僅か2年しか経っていなかった事もあって全浮遊陸地群は恐怖に包まれた。翼空衛士軍は戦術予知が発表されてから1ヶ月後の1月中には前回の反省を受けて大規模徴兵を実施。戦術予知によって妖精の飛来が予知された空域に翼空衛士軍の陸上戦力のほぼ全軍に当たる凡そ100師団の兵力を展開。さらに航空艦隊も20個艦隊が派遣された。
そして、統一暦114年1月22日、妖精が飛来しこれによって、第三次浮遊大陸群侵攻が幕を開けた。翼空衛士軍は前回の侵攻の経験から妖精の上陸を徹底して防御する戦略をとり、上陸がされた場合は軍を要塞もしくは、要塞がない場合は浮遊陸地から速やかに撤退させ航空艦や飛航艇による上空からの徹底した空爆戦と砲撃戦を展開した。この第三次浮遊大陸群侵攻は前回の侵攻を踏まえた翼空衛士軍による徹底した戦術によって、勝利。統一暦114年から統一暦117年まで続いたが、第一次、第二次の侵攻に比べて短期での勝利を収めることに成功した。また、事前に行われた避難活動によって民間人の死傷者は僅か9867人にまで抑えられた。しかし、前回の侵攻に比べてこの侵攻は妖精の規模が大きかった事もあり、軍が受けた被害は甚大だった。戦死者は参戦した約230万人の将兵の内、98万人にも及んだ。
これらの第二次浮遊大陸群侵攻、第三次浮遊大陸群侵攻を受けたガレア=テドル帝国の経済的、人材的な損害は甚大であり、これは第二次浮遊大陸群侵攻前の総人口が約2900万人であったのに対して、第二次、第三次での戦死者は合計で約504万人。負傷者や長期の戦闘に伴う飢餓や伝染病などの副次的な影響を受けた一般人の被害者も含めた被害者数は約800万人にも及んだ。これに伴った影響は非常に大きく、戦後、ガレア=テドル帝国は財政的な危機を向かえ、凡そ40年間に渡って景気の低迷期に突入した。また、膨大な戦死者を出したことによって国民は軍への不信感を増大させ、兵役拒否を訴えるデモが各地で多発した。この事態にガレア=テドル帝国政府は国民の不満を抑える事ができなくなり、統一暦132年には徴兵制の廃止を決定するに至った。
・魔機構機人の発明
長期的な不景気に突入したガレア=テドル帝国において、その転換点とも言える画期的な技術が統一暦145年に登場した。テレパテ市の町工場の魔術技士、セレナ・クルヴァが死霊を魔術回路に組み入れ鎧に定着させる技術を完成させ、契約者の命令通りに鎧を操る、地球におけるロボットである魔機構機人を完成させた。魔機構機人は登場当初こそは大道芸の見世物でしかなかったが、これを見たテレパテ市の行政官が魔機構機人に先見性を見出し、慢性的に不足していた労働力の回復を狙って魔機構機人の大量生産をセレナ・クルヴァに要請し、セレナ・クルヴァには多額の研究補助金と市営工場が与えられ開発と量産化が進められた。魔機構機人は生産コストこそは高かったが、長期的な観点で見た場合、経済的にプラスであり、テレパテ市の労働力不足の解消に活躍した。このテレパテ市での魔機構機人の活躍を受けてガレア=テドル帝国政府もこの魔機構機人に注目し、帝国全土での魔機構機人の拡充を目指した。
この魔機構機人は主に公共事業などで利用され土木作業や建築業などで重い資材を運んだり組み立てるのに帝国全土で活躍した。また、徴兵制の廃止後、兵力不足に悩まされていた翼空衛士軍では魔機構機人を兵力の穴埋めとして利用する事を決め、統一暦151年には魔機構機人軍を構成していく事になる。
・妖精による第四次浮遊大陸群侵攻
統一暦198年7月、翼空衛士軍の戦術情報収集局は戦術予知によって12月までに旧テドル自由共和国領デデデリル州に妖精が飛来する可能性を予知した。翼空衛士軍はこの予知を受けてデデデリル州に魔機構機人で構成された陸上部隊を300師団。航空艦は20個艦隊の派遣を決定した。第四次浮遊大陸群侵攻は統一暦198年から統一暦200年まで続いたが、この第四次侵攻において、ガレア=テドル帝国側の人的被害はこれまでの第一次、第二次、第三次侵攻を大きく下回り、戦死者はこれまでの規模から考えれば僅か33,498人、民間人戦死者は約10万人に納まった。これは、陸上戦の戦力の大半を魔機構機人の兵に置き換えた為であり、妖精によって破壊された魔機構機人の数は2,983,899体に及び、これは300師団投入された魔機構機人の内、約半数が失われた事を意味している。だが、前線の陸上部隊の兵士を魔機構機人に置き換えた事によって、人的被害を過去最小限に治めた事は世間から高い評価を受ける事につながり、翼空衛士軍は民衆からの支持を再び回復させた。
しかし、後に明らかになる、第四次浮遊大陸群侵攻中、デデデリル州アルキデンデ市において、同市の守護についていた魔機構機人の兵団が起こした暴走事故は、統一暦203年のテドル動乱の引き金となってしまった。
・テドル動乱
統一暦199年11月22日、翼空衛士軍の魔機構機人部隊によって守護されていたデデデリル州アルキデンデ市において、魔機構機人部隊が同市の住民14万人の内、10万人を虐殺する事件が発生した。アルキデンデ市は民族主義運動が活発な地域であり、統一戦争後も最後までテドル自由共和国軍が抵抗していた中核都市であった。アルキデンデ市の市民は妖精の侵攻に備えるという点では翼空衛士軍の駐留を許可したが、協力的ではなかった。市内では駐留に反対する民族主義者が各地でデモを行った。そんな最中に突如として同市を守護していた魔機構機人部隊が暴走し住民への発砲を開始し大半の住民が殺害される事件が起きた。この虐殺は同日の夜には異常に気がついた翼空衛士軍によって停止したが、すでに甚大な死傷者を出した後だった。戦後、この事件は翼空衛士軍によって隠蔽されたが、統一暦201年に旧テドル自由共和国圏内で虐殺を生き延びた一部の民族主義者がこの事件を暴露し、この事件の真相をガレア=テドル帝国政府による意図的な虐殺であるとして、帝国からの分離独立を唱えた。この分離主義運動に帝国政府は危機感を覚え、統一暦202年2月1日には魔機構機人部隊の暴走事故の事実を公表。また、当時の責任者を査問委員会にかける事を公表した。ただし、分離主義運動が主張する意図的な虐殺は明確に否定した。
しかし、この発表後も旧テドル自由共和国圏内における分離主義運動は拡大し統一暦203年3月にかつてのテドル自由共和国の首都であったテドル市において市民が武装蜂起しこれを鎮圧しようとした翼空衛士軍と武力衝突に至ったことでテドル動乱は発生した。分離主義運動はすでに多くの都市で起こっており、このテドル市での武装蜂起の動きはその後、旧テドル自由共和国圏内のほぼ全域に波及して拡大していった。この動乱の発生に帝国政府は速やかな鎮圧を翼空衛士軍に命令し、翼空衛士軍は統一暦4月20日、魔機構機人で構成された陸上部隊100師団、航空艦隊10個艦隊を旧テドル自由共和国圏に派兵した。当時、帝国政府はこの動乱は早期に解決できると考えており、妖精をも退けた圧倒的な兵力を有する翼空衛士軍の魔機構機人に絶対的な信頼をおいていた。戦況は当初こそ、帝国政府の予測通りに進んだ。テドル動乱が勃発してから半年で翼空衛士軍は戦死者を一人も出さずに分離主義運動が発生し武装蜂起した分離主義者によって支配された浮遊陸地群の内、半数以上を支配し旧テドル自由共和国圏内の内、3分の2を奪還する事に成功した。
しかし、動乱が終息すると思われた矢先の統一暦204年11月12日、魔機構機人兵を一括してコントロールしていた首都ガレア市の魔法省の本庁舎で分離主義者が魔術効力を妨害する機能を有した特殊爆弾によるテロ攻撃が行われた。このテロ攻撃は戦略的に行われたものであり、午前11時32分に菓子パン屋の屋台に扮したテロリストが本庁舎前で特殊爆弾を起爆。これによって午前11時32分から午前11時34分までの凡そ2分間。本庁舎で使用されていた全魔術の効力が妨害され機能停止した。このテロ攻撃によって魔機構機人兵の契約魔術が機能を停止し、2分間に渡ってテドル動乱の対処に当たっていた100師団分の魔機構機人兵が全て停止した。だが、テロはこれで終わっておらず、旧テドル自由共和国圏で午後11時33分に凡そ18箇所で同時多発的に高位魔術士による契約書換えが行われ、特殊爆弾の効力が完全に消滅した午後11時35分には、なんと100師団分もの魔機構機人兵のコントロールが分離主義者の手に渡ってしまった。翼空衛士軍は占領地での占領政策も全てを魔機構機人兵に全てを任せており、事実上、これまでに奪還した全ての占領地域を喪失した。
この前代未聞の非常事態に帝国政府は大混乱に陥った。分離主義者によって奪われた100師団分もの戦力は翼空衛士軍が保有する陸上部隊戦力の凡そ8割にも当たり、これは翼空衛士軍と分離主義者の戦力均衡が崩壊した事を意味していた。分離主義者はかつてのテドル自由共和国のほぼ全域を事実上支配化に置いた事で統一暦204年11月14日、テドル市において分離主義者のリーダー、イクシプロン・ルーガン・クレドールは分離主義者による軍事同盟、独立都市連合の発足を宣言した。イクシプロン・ルーガン・クレドールは独立都市連合では全ての都市が主権を持つと宣言し旧テドル自由共和国圏内において、強大な支持を集めた。そしてイクシプロン・ルーガン・クレドールは全都市の開放と自由を目指すとして帝国の打倒を宣言。これによって両者はこれ移行、全面的な戦争状態へと至った。
統一暦204年11月21日、独立都市連合軍は武装した輸送航空艦を主体とする艦隊を編成して混乱続く帝国政府の支配空域への攻撃を全面的に開始した。この事態に翼空衛士軍は戦力的に優勢であった航空艦隊で上陸の阻止に動き両者の攻防戦が勃発。しかし、一旦上陸されると、圧倒的な戦力差がある陸上部隊では殆ど抵抗する事はできなかった。統一暦206年までに激しい攻防戦の末、独立都市連合は全浮遊陸地群の内、3分の2の浮遊陸地を支配下もしくはその影響下に置くことに成功した。陸上戦力的には翼空衛士軍を圧倒していた独立都市連合軍であったが、独立都市連合軍が戦闘の過程で住民と兵士を見分けずに大量の一般市民が殺害していた事や、占領後の統治政策を殆どせずに民間の物流がストップした事で多くの餓死者を出していた事で、多くの住民は翼空衛士軍に自発的に協力し徹底抗戦を続けた。そのかいもあって統一歴207年には戦線が完全に膠着。両者睨みあいの状態が続いた。しかし、航空艦隊戦力では独立都市連合軍を圧倒していた翼空衛士軍であったが、陸上部隊戦力は圧倒的に不足しており大規模な反撃作戦はできなかった。そんな状況下において、翼空衛士軍は状況の打開を模索し、統一暦208年9月に戦争の勝敗をかけた作戦として独立都市連合軍の戦力の主力である魔機構機人兵を操っている高位魔術士18人の暗殺を計画し、この暗殺の為に特殊な手術を受けたとされる15歳から16歳の少年少女100人からなるサランサラン大隊を編成し独立都市連合軍の支配地域に潜入させた。そして統一暦209年2月3日、最初の暗殺が実施され魔機構機人兵を操っていた高位魔術士の一人を殺害する事に成功。その後も暗殺の成功が相次ぎそしてついに統一暦209年12月27日、最後の高位魔術士が暗殺され、これによって独立都市連合軍の中核を担っていた魔機構機人兵を操る高位魔術士全員が暗殺された。この結果、独立都市連合軍の魔機構機人兵は機能を停止し独立都市連合軍はその戦力の大半を喪失した。この暗殺を行ったサランサラン大隊は戦後英雄として扱われたが、この作戦に参加した少年少女達には魔術士を殺害すると同時に手術によって埋め込まれた特殊な魔術回路によって殺害した魔術士を通じて魔機構機人兵を再起不能にする術が命を引き換えに発動する仕組みが行われており、戦闘で死亡した者や暗殺に成功した者を含めて生還した者は皆無であった。だが、いずれにせよ魔機構機人を使用不能に追い込んだ事は戦況に大きな変化をもたらした。
独立都市連合軍の主力たる魔機構機人兵を使用不能に追い込んだ事で軍事力のバランスは再び翼空衛士軍に大きく傾いた。翼空衛士軍は魔機構機人軍が機能を停止すると、すぐに独立都市連合への反撃にうって出た。航空艦隊戦力で大きく負けていた独立都市連合軍の支配空域はすぐに縮小を見せ、戦線は大きく引き戻され独立都市連合域内へと至った。独立都市連合は状況の打開を目指してグレーテル市上空で艦隊決戦を挑んだが、敗退。その後、熾烈な陸上戦や空爆を経て統一暦210年1月に独立都市連合は自然消滅。テドル動乱は終息した。
この一連のテドル動乱による両陣営の軍民を合わせた死亡者の数は約1598万人。これは第一次ガレア=テドル統一戦争の被害を超える甚大な被害となった。死亡者の内わけは半数近くが餓死者。残りが戦闘による死亡者や、無差別爆撃や虐殺が原因である。これらの非人道的な行為は双方の陣営で行われ、第二次ガレア=テドル統一戦争では互いに人道的見地から虐殺や無差別爆撃などはしなかった双方であったが、テドル動乱では双方が報復に次ぐ報復を繰り返していった結果、膨大な犠牲者を生み出す事になった。この動乱に生き残った住民は双方を合計しても僅か1416万人。これは動乱前の総人口の半数以下であった。この動乱による膨大な死者は戦後もガレアとテドルの双方の地域において住民同士に大きな禍根を残す事となった。また、戦後、多くの人々にトラウマを植え付けた魔機構機人兵は乗っ取られた場合の危険性から翼空衛士軍での使用が全面禁止された。また、一般向けの魔機構機人に関しても使用されなくなった。この状況が回復するのには第二世代型の魔機構機人が登場するまで待たなければならなかった。
・テドル散民政策の実施
テドル動乱後の統一暦212年3月19日、帝国政府は人手不足から占領軍の監視が疎かになったテドル地域における情勢不安を受けて、帝国政府テドル散民法案を可決した。この法案は名前のとおりテドルの住民を強制的に各地に散民させる法案で、再び軍事的な蜂起ができないようにさせる事が目的だった。翼空衛士軍は統一暦212年から統一暦214年までの間にテドル地域に住む住民、総勢約538万人を強制的に連行して各地の浮遊陸地群に分散して住まわせた。また、10歳以下の子供に関しては強制的に親元から引き離され児童教育施設や里親に出された。さらに、魔術士や錬金術師などの技術者はこれとは別に拘束され、その後、その殆どが死ぬまで強制収容所に収容された。
・平和文化革命時代
テドル動乱後、大きな紛争は起こらなくなった。また、妖精による浮遊陸地群侵攻も起こらなかった為、しばらくの間、平和の時代が訪れた。この時代、主に統一暦235年から凡そ3百年間に渡って、平和な時代であった事もあり人口が急激に増加。それに伴って縮小した経済も拡大し大衆文化が大きく花開いた。さらにこの時代に白黒フィルムの映写機が発明(統一暦298年)された事により映画や音楽が広く大衆に広まった。この時代の文化や経済の拡大を平和文化革命時代と呼ぶ。この長期にも及んだ平和の時代はガレアとテドル双方の住民の蟠りを終息させるには充分な時間であり、この時代に両住民の融和が進んだ。人口は統一暦511年までには2800万人を突破。テドル動乱によって失われた人口の大半を回復させた。また、この時代にガレア=テドル帝国の首都はガレア市から現在のンガラークデイ市に移転されている。
・妖精による第五次浮遊大陸群侵攻
統一暦512年9月から統一暦512年12月までの短期間に妖精による第五次浮遊大陸群侵攻があったとされるが、ガレア=テドル帝国はこの資料を提供していない。
・妖精による第六次浮遊大陸群侵攻
統一暦514年から浮遊陸地群が地球へと転移してきた統一暦532年までの長期間、散発的な妖精による第六次浮遊大陸群侵攻があったが、ガレア=テドル帝国はこの資料を提供していない。
・地球における歴史
・地球への転移と混乱
浮遊陸地群は2023年7月8日14時13分にカザフスタンのアトバサル上空に突如として出現した。この出現には前触れや前兆と見られるような現状が一切観測されておらず、浮遊陸地群は唐突に地球上に出現した。多くの証言では瞬間的な強烈な突風をアトバサルの住民は感じており、突風が収まってから上空を見上げるとすでにそこには、無数の浮遊陸地群が空高く浮遊していたと証言している。ただし、当時、アトバサルの気象観測台ではこのような瞬間的な突風を観測していない。この突風を感じた住民は当時、農作業などで屋外にいた実に200人以上にものぼるが、この突風がなんなのかは未だに分かっていない。また、出現と同時にカザフスタン防空軍、地上軍、民間航空のレーダーが、広範囲に渡って強力な電磁障害によって機能しなくなった。この電波障害によってカザフスタン上空を飛んでいた多くの航空機が近隣の飛行場やルートの変更を余儀なくされた。また、後にこの混乱の際に中国国際航空の495便、エールフランス航空の377便、アエロフロート・ロシア航空の478便の計3機の旅客機が乗員乗客合わせて622人を乗せたまま現在まで行方不明のままとなっている。これらの旅客機はその後、残骸などが一切、見つかっていない事から、一部の科学者は浮遊陸地群が出現した際の現象に巻き込まれ最悪の場合、浮遊陸地群が元々存在した世界に転移してしまった可能性を指摘している。
14時22分、カザフスタン防空軍はレーダー上に突如として出現した電磁障害が発生している空域に向けてSu‐27戦闘機3機をスクランブル発進させた。14時24分、カザフスタン防空軍のパイロットは浮遊陸地群を目視で確認する。ただし、浮遊陸地群に接近すると強力な電磁障害によって通信機やレーダーが機能しなくなった事から基地へと帰還した。その後、カザフスタン軍と政府は事態を把握し、この異常な事態に大混乱に陥った。
14時48分、ロシア連邦軍が早期警戒機と爆撃機がカザフスタンの領空を侵犯。カザフスタン政府はロシア政府に抗議するが、ロシア軍は安全保障上の問題としてカザフスタンの主張を退けた。また、それと同時にロシア政府はこの異常事態がロシア連邦の領空へも影響を及ぼしていた事から、共同対処を申し出た。すでに大混乱に陥っていたカザフスタン政府は自国のみでの対処は困難であると判断してロシアの申し出を受け入れた。また、カザフスタン政府は国際連合へもこの異常事態を通達した。
14時59分、アメリカ、中国、NATOが、カザフスタンへこの異常事態への対処の協力を申し出た。カザフスタン政府はNATO以外のアメリカ、中国の2者の協力を了承する。その後、ロシア、アメリカ、中国の三カ国の調査団が7月10日までにカザフスタン入りした。そうした最中の15時12分、浮遊陸地群の周辺を偵察していたカザフスタン空軍とロシア空軍の警戒機が、人工物と思われる未知の飛行物体を目撃した。
この一連の事態は翌日には全世界で報道され世界的な注目と大混乱を発生させた。ニューヨークタイムズは一面で「カザフスタン上空に未確認飛行物体群出現」と報じ、ワシントンポストも一面で「カザフスタン政府は国家非常事態宣言を発令」と報じ、世界各国のメディアがこの異常事態を報じた。初期のカザフスタンやロシアなどの周辺諸国の対応の詳細は「Қалқымалы континент」「Появление плавающих континентов」の記事を参照。
一方でガレア=テドル帝国側でもこの異変によって大混乱が発生していた。もとの世界では地上世界は荒廃し砂漠化した大地と僅かばかりの黄色い海が広がっているのみであったが、この異変後、浮遊大陸群の下にはかつて滅んだ地上世界が突然復活したように見えたことで政府や民間に大混乱が広がった。さらに市民達の間では妖精による大規模侵攻の前触れではないかという噂が広がり、市民達は恐慌状態に陥った。
・地球側の対応
カザフスタンを含め浮遊陸地群の影響を受けていたロシアは浮遊陸地群の出現した地域や空域に軍の部隊が派遣された。アメリカ、欧州、中国も調査団をカザフスタンへと派遣する動きを見せ、7月12日には全ての調査活動の名目が国連の主導になった。
・ガレア=テドル側の対応
ガレア=テドル帝国側の政府資料によると当時、ガレア=テドル帝国政府はこの事態が妖精による大規模侵攻の前触れではないかという疑惑が市民から噴出した事から翼空衛士軍に対して事態への緊急の対処を要請した。これを受けて翼空衛士軍は政府の要請を受けて全土で警戒態勢を厳重にし、軍の動員を開始した。
・国連による調査
国連の主導によって行われた浮遊陸地群の調査は航空機や人工衛星、レーダー等が駆使された調査が展開された。これらの調査によって国連は7月14日までに浮遊陸地群は西北西方向に約4,900kmの範囲で出現している事を把握。また、浮遊陸地群の周辺では強力な電磁障害が発生している事も確認した。また、地上から浮遊陸地間を多数の人工物と思われる飛行物体が航行している様子が確認され、衛星写真でも多数の人工建築物と思われる都市も浮遊陸地群上に確認され、これによって地球人類は7月10日までには、浮遊陸地群に何らかの知的生命体が生息している事を把握した。
・ファーストコンタクト
ガレア=テドル帝国と地球人類がファーストコンタクトを行ったのは7月14日午前9時14分の事である。ガレア=テドル帝国の翼空衛士軍は地上世界に探索部隊を派遣する事を軍最高議会は決定した。午前8時30時、航空戦艦ルノワール3世が地上世界探索の為に出発。午前9時03分、カザフスタン地上軍の監視部隊が、地上に向けて降下してくる航空戦艦ルノワール3世を発見し司令部に通報した。これを受けてカザフスタン防空軍はSu‐27を4機、Mi‐24を15機、Mi‐8を10機をスクランブル発進させた。また、カザフスタン地上軍司令部は現地に展開している全部隊に向けて攻撃準備命令が伝達された。
この防空軍がスクランブル発進させた機体の内、Mi‐8ヘリ2機には、事前にアメリカ、ロシア、中国と協議で想定していた地球外生命体との初接触の為に大型電光板を装着していた。このヘリ2機にはアメリカの言語学者のジェフリー・ルイス教授とアイラトヴナ・シチュレイコフ教授がそれぞれ乗り込んだ。このスクランブル発進した部隊の目的は飛行物体の迎撃ではなく、あくまで平和的な対話を実現する事が目的で、攻撃準備命令は万が一の事態に備えたものだった。
そして、午前9時14分にアルカルイク近郊の原野にて、ついに地球人類とガレア=テドル帝国は初接触した。Mi‐8ヘリ2機は航空戦艦ルノワール3世に接近。これに対して航空戦艦ルノワール3世の乗組員側は見た事もない飛行物体の出現に動揺したとされ、艦長は迎撃準備を命じ、主砲を旋回させヘリに対して照準を合わせた。一方でMi‐8ヘリ2機は航空戦艦ルノワール3世より600m離れた地点でホバリング。そして、Mi‐8ヘリ2機は大型電光板にて光信号によるメッセージの送信を開始した。この際に航空戦艦ルノワール3世に対して送信されたメッセージの内容は、基礎的な数学や文法、また、アレシボ・メッセージをモデルにした地球に関する情報と、対話を求めるメッセージを送信した。このメッセージに対して航空戦艦ルノワール3世はこの時、反応を示さなかったが、これが今日に言う地球人類とガレア=テドル帝国とのファーストコンタクトである。航空戦艦ルノワール3世の艦長や士官はこの地球側からの光信号を何らかのメッセージだと気がつくと、これを記録し9時38分、当初の任務であった地上世界の探索を一時中断する決断を下し、一時的に帰還した。
航空戦艦ルノワール3世が基地に帰港し地球から発信されたメッセージを司令部へと伝えると、翼空衛士軍はルノワール3世の艦長や士官が強くこれはメッセージであると主張した為に、これを受けて全土から著名な学者、魔術師、錬金術師を招集。この地球からのメッセージの解読に乗り出した。一方で翼空衛士軍の軍最高議会はこの地球からのメッセージの意図についての議論が起こった。
そして凡そ13時間後の22時頃、翼空衛士軍はこのメッセージの解読に成功し、地球側が対話を求めている事を把握した。このメッセージはすぐさま、皇帝や帝国議会にも提出された。7月15日に開催された臨時帝国議会ではこのメッセージを巡って、妖精が帝国を騙そうとしているや、交渉をしてみるべきだ等の議論が巻き起こり議会は紛糾した。その後、ガレア=テドル帝国が地球との対話を決定するのは議会の議論が落ち着いた2週間後の事になる。
・国連主導による交渉
8月5日、ここまでファーストコンタクトから凡そ2週間に渡って、ガレア=テドル帝国から地球に対して動きは殆ど何も無かった。この間にカザフスタンやロシアには世界各国から各メディアが押し寄せ取材などを活発化させていた。そんな最中の8月5日午前9時24分にロシア航空宇宙軍はカザフスタン方面に飛行する3機の飛行物体を発見した。ロシア航空宇宙軍はこの情報を直ちにカザフスタン防空軍に通報。カザフスタン軍は厳戒態勢を取った。そして午前12時32分、3機の飛行物体はファーストコンタクトを行ったアルカルイク近郊の原野へと内、1機が着陸。2機は空中にて待機した。
これを受けて国連はアフガニスタンに派遣していたリチャード・ソルシャン宇宙生物学教授以下、学者2名(ミチオ・カクズ博士、フィリップ・コッコーニ博士)とアメリカ軍、ロシア軍、カザフスタン軍から3名武官を地球の全権大使として派遣する事を決定し、現地に派遣した。12時51分、大使一向はカザフスタン軍兵士数名による護衛を受けた上で着陸した飛行物体の近くに接近。2時54分、飛行物体からタラップが降ろされ、そこから、降りてきたガレア=テドル帝国の全権大使が降りてきた事で人類は史上初めて地球外を起源とする知的生命体と直に接触し第五種接近遭遇を成し遂げた。この際に行われた会談は外に仮設のテーブルと椅子を用意する事で会談場とした。会談は二進法で進められ、地球側はガレア=テドル帝国側にタブレット端末を手渡し、その端末にインストールされていた特殊な会話アプリで進められた。最初の会話は数学に関する事から進められ、その後は互いの会話の為の文法の交換と説明が行われた。会談の時間は凡そ18時間にも及んだ。
この時の接触について、後に大使のメンバーに入っていた学者の3人は報道機関に対して「非常に興奮した。まるで、地球の動物を人間の姿にした様な彼らがあの羽のない飛行機の様なUFOから降りてきた時は非常に驚いたが、間違いなく人類が遭遇した初めての地球外生命体だ。我々は歴史的な瞬間を目にしている」と証言している。
その次に行われた会談は互いの会話文法の解析の時間を取る為に日を空けた8月10日に行われる事になった。2回目の会談は8月10日の午前11時15分に最初と同じ場所にて、行われた。2回目の会談に際しては地球側からテントや専用の机、椅子などの設備が持ち込まれて行われた。2回目の会談では、互いの言語の正確性の確認や文化の紹介や一般的な会話が行われた。この会談にてガレア=テドル帝国の大使が自身らをガレア=テドル帝国と名乗った事から、これによって人類は初めて浮遊陸地群の知的生命体の国家を知る事になる。会談時間は凡そ8時間だった。
3回目の会談も同じ場所で行われた。8月12日の午前11時03分に会談が開始。地球側の大使らによってガレア=テドル帝国側の地球訪問も目的が聴かれた。これに対して、ガレア=テドル帝国の大使は地球側の質問の意味を理解せずに、逆に地球側に対して、なぜ荒廃していた地上が復活したのかを聴いた。互いの会話が噛み合わなかった為に、会談は一時休憩を挟んでから再開。その結果、両者が大きな誤解をしている事が判明した。
まず、地球側は、ガレア=テドル帝国が意図的に自分たちで何らかの手段を使って地球にやって来た地球外文明であると考えていた。しかし、会談で明らかになった事実はガレア=テドル帝国が自分たちでやって来たくて地球に来たわけでは無いという事だった。ガレア=テドル帝国からすれば今回の事態は原因不明の異常事態であった。
一方でガレア=テドル帝国側はそもそも、自分たちが別の星に居る事を理解していなかった。彼らは、地上の世界が突如として異変を起こしたとみていた。当初、ガレア=テドル帝国側は地球側がここは地球だと説明しても理解できなかった。その原因はガレア=テドル帝国文明において天文学が全くと言って良い程に発達していない事が原因だった。そもそも、ガレア=テドル帝国には天文学という学問が存在しておらず、ガレア=テドル帝国人にとって、元の世界での天文とは1つの太陽と2つの月の周期のみであり、価値観としても世界とは自分たちが住まう空の世界の事のみであった。その為、ガレア=テドル帝国では地球への転移の当初、太陽と月が一づつ減った事に多くの市民が驚愕しこれは災厄や妖精の大規模侵攻の前触れだとしか考えていなかった。つまりは、ガレア=テドル帝国が有する天文学的な知識では自分たちの置かれた状況を正確には把握できなかったのである。
この互いの誤解はこの会談によって明らかとなり、地球側はこの誤解を解くべく著名な天文学者を呼ぶなどして天文学の解説をする必要性に迫られた。地球側は天文学者を呼び8月13日、8月14日、8月15日に連続して天文学の講義をガレア=テドル帝国側の大使に向かって行った。地球側のこの主張にガレア=テドル帝国議会は当初、これを妄言であるなどとしていたが、ガレア=テドル帝国政府によって結成されていた著名な学者による調査チームが地球側の天文学を受け入れる表明をした事で、ガレア=テドル帝国議会もこれに追認せざるをえなくなり、8月17日の会談でガレア=テドル帝国は地球側の主張を検証が必要ではあるがとしながらも概ね了承した。そして、ガレア=テドル帝国政府は8月20日にここが本来の世界ではなく地球という世界である事を国民に公表。また、ガレア=テドル帝国議会は8月23日に地球との交流をするべきか否かの決を採り、僅差で賛成が反対をうわまった事から地球との交渉の本格化を決定した。その後、ガレア=テドル帝国と国連は事務的な協議をカザフスタン、ロシア、ウクライナなどで断続的に継続した。
また、この流れで9月11日には国連の代表団としてアメリカ、ロシア、中国、カザフスタン、イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、日本、オーストラリアの学者、外交官、武官で構成される38名がロシア連邦領バシコルトスタン共和国のウファから翼空衛士軍の賓客船パルーム号に乗り込み翼空衛士軍の最新鋭航空戦艦アラファト、ミーティア、ケットシー以下、航空戦艦6隻に護衛されて、ガレア=テドル帝国の本土、つまりは浮遊陸地群へと向かった。そして、9月12日の午前7時38分に国連の代表団はガレア=テドル帝国の副首都ガレア市へと到着。代表団は地球人類として史上初めて浮遊陸地群の大地を踏んだ。
・ガレア=テドル帝国の国際連合加盟
浮遊陸地群の出現から1年ほどの期間がたつと、国連はガレア=テドル帝国に対して国際連合への加盟を呼びかけた。これは浮遊陸地群が再び転移現象を引き起こして地球上から消える可能性が低いと考えられた為であり、地球で住まうならば、国際連合に加盟していた方が、今後の交流事業や外交面で国連のサポートを受けられると判断した為だった。この主張はアメリカ、ロシア、中国、日本、イギリスによって行われたものであり、この国連からの呼びかけにガレア=テドル帝国議会は2024年7月10日、賛成多数により国際連合に加盟する事を承認した。そして、ガレア=テドル帝国政府は7月12日に国連に外交官を通じて国際連合への加盟を打診。これを受けて国連は臨時総会を開き、国際連合総会決議としてガレア=テドル帝国の国連加盟を認めるか否かの決議を獲った。結果は賛成98カ国、反対83カ国、棄権12カ国で、ガレア=テドル帝国の国連加盟は承認された。
その一方でガレア=テドル帝国の国連加盟に伴い、国際法上の国家の要件に関する問題が噴出した。ガレア=テドル帝国の領土である浮遊陸地群は地球上を回遊しており、この際に各国の領空を侵犯する事からこの扱いに関する国際的な議論が巻き起こった。
・交流事業の拡大
ガレア=テドル帝国の国際連合の加盟からガレア=テドル帝国と地球国家は互いの交流事業を段階的に拡大させた。国際連合の加盟によって国連加盟国が個々にガレア=テドル帝国と交渉ができる様になった為に、地球上の様々な国々がガレア=テドル帝国の大使館を誘致したりなど交流事業を通して情報収集を拡大した。その一方で2027年頃からは民間交流も開始され、浮遊陸地群と地上との民間路線が開設され、両者の民間人による交流が活発になった。地球国家にはガレア=テドル帝国からもたらされた地球外を起源とする様々な植物や物品が取引され、その一方で地球国家はガレア=テドル帝国に天文学を初めとした多くの学問や民間製品をもたらし、この影響は非常に大きく、ガレア=テドル帝国において、民間の交流が本格的に拡大され一般市民にもその影響がでてくる2028年になると、地球産のカラー映像機器で撮影、編集されたガレア=テドル帝国史上初のカラー映画や携帯ゲーム機などが、大都市圏を中心に大ブームを引き起こした。また、ファーストコンタクトをした相手国でもあるカザフスタンの文化や食事も輸入され首都ンガラークデイでは若者を中心にカザフスタンの音楽や風土、食事、芸術品を求める空前のカザフスタンブームが巻き起こった。2032年にはカザフスタン政府の主催で開催した交流イベントで、カザフスタンの著名な歌手などが参加すると、会場には実物の音楽を聴きに来た多くの若者らが、つめかける騒ぎになり、あまりの熱狂ぶりに、これには翼空衛士軍が暴動と間違えて出動する事態にも発展した。
日本においては、2027年に日ガ通商友好条約を締結し浮遊陸地群が日本列島の近辺を回遊してきた際にはガレア=テドル帝国の民間航空交易船によって人と物の交流が盛んになった。それでも、日本を含めた全ての国では旅行などができる訳では無かったが、学者や研究者、探検家などが、浮遊陸地群を訪れた。2035年の統計では浮遊陸地群には1366人の日本人が滞在していた。日本企業はガレア=テドル帝国にカメラ、映像機器、工業用ドリル、掘削用ドリル、ソーラー充電式の携帯ゲーム機などを輸出し莫大な利益を得た。2035年までにこの利益は日本円にして総額6800億円規模にまで成長した。この日本の取引総額は1位のアメリカの総額8200億円規模に続いて世界第2位の規模であり、3位のロシアが総額2800億円規模であった事から3位とは約4000億円の差があった。ガレア=テドル帝国と交易を行っていた国の数は世界38カ国であるが、取引総額が100億円を超える国は順位準にアメリカ(総額8200億円規模)、日本(総額6800億円規模)、ロシア(総額2800億円規模)、中国(総額870億円規模)、フランス(総額598億円規模)、カザフスタン(総額507億円規模)、韓国(総額103億円規模)のみである。
・国連安保理による反重力鉱石の提供要請
2034年、国連安全保障理事会はガレア=テドル帝国に対してガレア=テドル帝国が保有している航空艦などの浮力の元である反重力鉱石について、常任理事国に提供を認める様にとの要請を全会一致で可決した。ガレア=テドル帝国はこれまで、反重力鉱石の輸出や提供を認めた事は一度も無く、地球側はこれまでも情報の開示を要求していたが、反重力鉱石はガレア=テドル帝国にとって国家安全保障上重要な物質の為、認めた事がなかった。しかし、国連安全保障理事会がこの要請を出した事に対してガレア=テドル帝国は激しく反発。国連を批難した。ガレア=テドル帝国の代表団は国連の要請には従わない意向を表明した。
しかし、その後、ガレア=テドル帝国はアメリカ、ロシア、フランスの3カ国にのみ、反重力鉱石のサンプルとしてそれぞれ300gの鉱石を提供している。この際に提供された反重力鉱石はその後、提供国の研究機関などで研究された。その後、アメリカの国立フリーグラヴィティ・ハディソン研究所やジュネーブのCERN、ロシアのアナトーリ・ブゴルスキー研究所が地球国家における反重力鉱石研究の主力となった。これに、中国は強く反発しており、中国外務省は声明でアメリカ、ロシア、フランスの3カ国に提供するならば中国にも提供すべきだと強く反発した。
・反重力鉱石密輸未遂問題
2035年6月10日、ガレア=テドル帝国の首都ンガラークデイにおいて、中国外交官のリン・センエイが地上への帰還便に搭乗しようとした際に反重力鉱石を地上へ持ち出そうとしていた事実が判明し大きな外交問題へと発展した。リン・センエイは複数の人物と共謀して反重力鉱石3kgを航空船に運び込んでいた。結局、この密輸は翼空衛士軍によって未遂で阻止され、リン・センエイを初めとする中国外務省職員3名、身辺警護6名、密輸に協力したガレア=テドル帝国人の船員23名を逮捕、拘束した。
この事態に中国外務省は6月11日、記者会見で疑惑はでっち上げだとする声明と、中国人の速やかな解放を要求した。これに、ガレア=テドル帝国政府はさらに反発を示し、6月12日、国内にいる全ての中国人の国外退去を命令。大使館は閉鎖され翌日には浮遊陸地群にいた中国人2832名全員が中国に強制送還された。
この強制送還に対して中国政府は国際法違反であると反発。国際司法裁判所への提訴と国連安保理の開催を要求してガレア=テドル帝国に対する安全保障を巡る会議の開催を要求した。また、中国は反重力鉱石を巡って一国がこのような戦略物質を独占する事はあってはならないとも国連で主張した。
・浮遊陸地群の浮遊回廊問題とガレア=テドル帝国の反発
2035年11月3日、中国はアフリカ13カ国と南米3カ国、アジア6カ国の計22と共同で国連総会に対して浮遊陸地群の回遊は現法上、国際法違反であるとの意見を提出した。中国政府はこれまで曖昧になっていた自国の上空を浮遊陸地群が通る時の領空における領有権問題や、電波障害を挙げて、浮遊陸地群は自分で進路を変えられないのであれば、各国の懸念の声を正直に受け入れて浮遊陸地群に国連軍を駐留させ、侵略の危険がない事を証明するべきである。自由な空を取り戻さなければならないと主張した。この中国の突然の提案にガレア=テドル帝国は驚き強く反発。また、中国側が提出した文章で「ガレア=テドル帝国」を使わずに「浮遊陸地群」とした事も波紋を広げた。
これに対してアメリカ、フランス、カザフスタン、日本、オーストラリアは中国のこの主張にガレア=テドル帝国は不慮の事故で土地ごと地球に来てしまった別惑星の国家であり、国際法の範疇には含まれないとして、中国の主張は当たらないと反論した。しかし、その後の決議で浮遊陸地群の回遊航路の問題である浮遊回廊問題を今後も国際社会の場で継続して議論するという内容の決議が中国によって提出され、中国やロシア、フランス、ドイツ、イタリア等の賛成98カ国。アメリカや日本、イギリス等の反対24カ国。棄権71カ国で決定されるとガレア=テドル帝国の国連代表は強く反発し「これは地球人による我々の領土に対する明白な侵略行為だ。議論など許されない。我らの領土は神聖にして不可侵の絶対的な領土であり、これに議論の余地はない。地球人は自分たちの過ちに気づくべきだ」と表明して国連総会の最中にもかかわらず代表団が退出する事態になった。
この国連での決定はガレア=テドル帝国本土でもすぐに伝わり、全土で地球に対する反地球感情が噴出する事になった。ガレア=テドル帝国に大使館を置いており、決議に賛成したロシア、フランス、ドイツ、イタリアの大使館には市民からの大量の抗議の声が押し寄せ、一部の暴徒化した市民の手によって火炎瓶や手榴弾までもが投げ込まれる事態に発展した。特にフランス大使館では11月12日に手榴弾が投げ込まれたことによって駐在員2名が負傷する事件が起きていた事からフランス政府はガレア=テドル帝国に対して警護を厚くするようにと要請したが、翼空衛士軍はフランス政府に対して公式文書で「我々は貴様らの様な下劣で非道な地球人の指図は受けない」とまで言った。このフランスに対する公式文書での発言は世界各国で報道され衝撃を持って受け止められ、フランスではガレア=テドル帝国の発言を無礼だとする見方も広がったが、一方でフランスが中国決議に賛成した事に対しては一部の国民から批判の声も上がった。また、世界各国の有識者や学者も騒動が大きくなるにつれて、声明を発表し始め、異星人の彼らを無理やり地球の法に照らし合わせる事に対する批難の声が多く上がった。特に11月14日に、ファーストコンタクトにおいて地球人の代表として交渉に当たったリチャード・ソルシャン宇宙生物学教授、ミチオ・カクズ博士、フィリップ・コッコーニ博士が共同記者会見を開き、世界各国の記者の目の前で国連決議を全面的に批判すると、学者や科学者らによる国連決議反対の声はさらに高まった。この決議の詳細は「中国決議」「浮遊回廊問題」の記事を参照。
・ユーラシア大陸諸国によるガレア=テドル帝国への威圧
科学者による反発をよそに中国決議の後から中国を筆頭に、ロシア、ウズベキスタン、トルクメニスタン、イラン、トルコ、韓国、ウクライナ、ドイツ、フランス、イタリアといったユーラシア大陸諸国によるガレア=テドル帝国に対する外交的な摩擦は非常に大きくなった。これらの国々は中国と同調して浮遊回廊問題を国際社会の場で取り上げ、この問題に協力しようとしないガレア=テドル帝国に圧力をかけていた。中国はガレア=テドル帝国の孤立化を進めようとカザフスタンなどのガレア=テドル帝国の友好国に対して浮遊回廊問題に距離を置いていた国々に対して議論に参加するように外交的手段や経済的手段によって圧力をかけ、中国などの国々と同調させていった。この結果、2036年6月にはユーラシア大陸諸国の内、バルト3国、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、ポーランド、オーストリア、スペイン、ベルギー、ブルガリヤ、インドを除いた全ての国がガレア=テドル帝国に対して中国決議に従うようにと求めた。ガレア=テドル帝国と外交的圧力で深まるユーラシア諸国との溝はさらに深くなり、ガレア=テドル帝国の反地球感情はさらに拡大の一途を辿った。
この状況に対してアメリカ、日本、イギリス、カナダ、インド、オーストラリアはユーラシア諸国に対して憂慮を示し、世界最大の宇宙学会であるアメリカ航空宇宙学会は声明を発し、反地球感情が拡大するこの状況は非常に深刻な事態を招く可能性があると全世界に向けて異例の警告を発した。
ガレア=テドル帝国政府はアメリカや日本等の友好国に対してユーラシア諸国の動きを牽制するようにと要請したが、アメリカや日本はガレア=テドル帝国の懸念に理解は示したが中国への配慮から主だった動きはしなかった。しかし、これがその後のガレア=テドル帝国とガレア=テドル帝国人の地球人への失望を後に招くことになった。
・外交関係者及び研究者に対する事実上の幽閉
2036年9月9日、ガレア=テドル帝国議会は国家敵対的異星人侵入禁止法を可決した。この法案は政府が敵対的と認定した特定の異星人が政府機関や公的な機関の施設に入る事を例外なく全面的に禁止する法案であるが、ガレア=テドル帝国人にとって事実上の異星人が地球人しか居ない状況下においては、この法案は地球人を対象としたものだった。アメリカ政府はこの法案の可決直後、ガレア=テドル帝国に対して抗議と懸念を示したが、ガレア=テドル帝国政府は一切反応を示さなかった。
9月13日にはガレア=テドル帝国議会はさらに異星人保護法を可決。9月19日までに浮遊陸地群に滞在している全ての地球人を反地球感情に駆られた人々から保護する事を名目に翼空衛士軍によって強制収容された。この時、翼空衛士軍によって保護された地球人の数は35,687人にも上り、事実上、全ての地球人が翼空衛士軍の保護施設に幽閉された。この事態に国連は安全保障理事会を緊急開催し、ガレア=テドル帝国に対して強制収容した地球人の即時解放を要求。世界各国はガレア=テドル帝国政府に対して批難の声を表明した。
これに対してガレア=テドル帝国の国連代表は国連安保理の場でこの一連の政府の行動はあくまで地球人の保護が目的であると説明した。また、この様な保護が必要になったのは全て地球人に責任があるとして逆に地球人に対する批判をおこなった。9月23日、国連安保理は全会一致でガレア=テドル帝国に対する全面経済制裁を決定。ガレア=テドル帝国に対して再度、収容されて居る地球人の解放を要求した。これにガレア=テドル帝国の国連代表は、解放をするには反地球感情を鎮めなければならないとして、浮遊回廊問題の議論を即時停止しガレア=テドル帝国の領土、領空の権利を正当に認めるべきだと主張した。
その後、国連安保理での議論は平行線を辿った。安保理の常任理事国は浮遊回廊問題とこの問題は別の問題であるとし、一方でガレア=テドル帝国は自分たちの主張を曲げなかった。10月になっても解放されないと議論が長期化が予想された。しかし、10月13日、ガレア=テドル帝国政府は突如、保護している地球人の内、一部の国以外の外交関係者や各国企業の関係者の多くを、地上へと強制送還する事を国連へと通達した。そして、この時、浮遊陸地群はブラジルの上空におり、翼空衛士軍はなんと収容していた地球人の内、18,979人をパラシュートを装着させてブラジルの高速道路沿い平原地帯に全員を強制的に降ろした。その後、これらの人々は国連からの通報を受けたブラジル軍が全員を保護し全員の無事が確認された。この一件の後、ガレア=テドル帝国は国連の中でさらに孤立を深めていった。なお、残りの保護されていた人々は強制送還の直後に解放されている。
・中国軍によるガレア=テドル帝国への侵攻
2037年2月8日、中国政府は回遊によって中国の領海上空に入る1ヶ月前にガレア=テドル帝国政府に対して浮遊陸地群の進路先は中国の領空であるとして、進路の変更を要求した。この要求に対してガレア=テドル帝国政府は当初、困惑したと伝えられており、浮遊陸地群を自由に操作など出来ないことを知っているはずの中国がなぜ、この様な荒唐無稽な要請をするのか分からなかったという。2月10日にはガレア=テドル帝国の外交官が中国外交官に対して「不可能であり意味が不明である」と回答している。しかし、中国外務省はその後もガレア=テドル帝国政府に対して進路の変更を要請した。しかし、実際に浮遊陸地群が中国の領空を通る様になると中国外務省は進路変更の要請をしなくなった。
だが、2037年10月31日、浮遊陸地群の最後尾地帯が北京市上空にさしかかると、中国軍は突如、領空侵犯を理由にガレア=テドル帝国に対して攻撃を開始した。中国軍は強力な電磁波空域を飛行するために開発された高度多目的戦闘ヘリJ‐49や、H‐29爆撃機を投入した。中国軍は旧テドル地域のセンタパラス州に電撃的に侵攻し、38の浮遊陸地群に対して強襲上陸をしかけ占領した。この突然の中国軍の攻撃にガレア=テドル帝国政府は混乱。ガレア=テドル帝国の外交官は中国政府に対して抗議した。しかし、中国政府は中国の領空を侵犯した浮遊陸地群を国家安全保障上の理由から危険と判断したにすぎないとして、抗議を受け付けなかった。
この事態にセンタパラス州に駐留していた翼空衛士軍は混乱しながらも、中国軍機に対して迎撃を開始。しかし、駐留軍の保有戦力はこの時、航空戦艦12隻、旧式の飛航艇が24機、陸上部隊が6,000名であったのに対して、後に判明したこの時、中国軍が投入した戦力はJ‐49戦闘ヘリが387機、J‐49輸送ヘリが229機、H‐29爆撃機が60機、上陸部隊が12,675名だった。その結果、駐留軍は敗北しセンタパラス州は中国軍によって占領された。その後、中国軍は輸送ヘリで地上からのピストン輸送を行い、陸上部隊の兵力を増強しその数は5万人にも及んだ。
ガレア=テドル帝国政府は中国軍による突然の侵攻に混乱していたが、センタパラス州の陥落が伝わると翼空衛士軍は緊急事態であるとして軍最高評議会を開催した。この議会で翼空衛士軍は今回の中国軍による侵攻は明確な侵略戦争と判断。全航空艦隊の緊急招集と国家非常事態宣言の発令を行った。
国際社会はすぐに、この中国軍の侵攻に中国に対する批難の声が上がった。国連安保理はアメリカの要請で緊急開催され、中国に対して侵攻を中止を要請する決議を行ったが、中国は領空侵犯を取り締まっているだけであるとして、拒否権を発動し要請を拒否した。
中国軍のこの侵攻は後に中国が反重力鉱石を巡って引き起こしたものだと国連の調査によって判明している。当時、新たな戦略物資として注目されていた反重力鉱石はガレア=テドル帝国以外ではアメリカ、ロシア、フランスの三カ国だけが保有していた。反重力鉱石はそのもつ反重力の性質により、夢の物質とまで言われ、宇宙開発や新エネルギー開発の分野において大変注目されていた。アメリカ国防総省は2030年に反重力鉱石を使った反物質爆弾実現の可能性に言及し、フランスでは2035年に反重力鉱石を使った効率的な核融合発電の理論が発表されていた。反重力鉱石がもつその重要性が世界的に高まっていたのである。しかし、中国は3カ国とは違い、ガレア=テドル帝国から反重力鉱石が提供されなかった。中国は当時、すでにアメリカや日本、ロシアといった貿易上位国にガレア=テドル帝国産の地球外遺伝子情報を基とした遺伝子研究や新薬研究等の生命工学の分野において大きく遅れをとっており、この上、反重力鉱石においても3カ国から大きく遅れをとる事は将来を見据えた国益上、大きな問題があった。中国は当初、外交によってこの状況を打破しようとしていたが、ガレア=テドル帝国にとっても反重力鉱石は重要な国家安全保障上でも重要な物質であり、多くの技術面で地球に大きく遅れをとるガレア=テドル帝国にとって、数少ない、地球人と対抗する事が可能な戦略物質だった為に技術流出を懸念したガレア=テドル帝国政府は提供や輸出を許可しなかった。その為、中国政府は侵攻による強奪という強攻策にうって出た。当時は、技術面で地球側がガレア=テドル帝国を大きく圧倒している為に事が負ける事は考えずらく、さらにあわよくば中国はガレア=テドル帝国を屈服させる事によってより多くの反重力鉱石を得られると考えていた。
センタパラス州へと侵攻した中国軍はその後、センタパラス州を中心に軍事行動を行った。民間航空船舶の破壊や接収。占領地での錬金術師や魔術師の軟禁状態化を行った。後にガレア=テドル帝国政府は国連に対して、中国政府は否定しているが、この際に中国外交筋から、ガレア=テドル帝国に対してこれ以上の侵攻を中止する代わりに、センタパラス州への中国軍の無期限駐留許可と反重力鉱石の無制限の提供と情報提供を要求していたとされる。この事態に翼空衛士軍は、11月3日までにほぼ全戦力に当たる航空戦艦858隻、航空輸送艦780隻、飛航艇6853機をセンタパラス州より約1,300km離れたミレイユ州に集結を開始。センタパラス州奪還の準備に乗り出した。この動きを事前に察知した中国軍は11月5日、翼空衛士軍が行動を起こすよりも早くに行動を開始し、対艦ロケット弾を搭載した攻撃部隊を出撃させた。11月5日から11月11日まで中国軍は断続的に集結中の翼空衛士軍の部隊に対して攻撃。この間に中国軍は翼空衛士軍の航空戦艦115隻、航空輸送艦75隻を、飛航艇513機を破壊した。一方で中国軍の損害はJ‐49戦闘ヘリ28機が撃墜された。この大戦果を受けて中国軍は11月13日にセンタパラス州に集結している翼空衛士軍を充分に撃破可能であると結論づけ、ほぼ全機が参加する大規模攻撃作戦を立案。そして11月15日にこの作戦が開始され、今日では第二次世界大戦中のバトル・オブ・ブリテン以来の人類史上最大の航空戦と呼ばれるミレイユの戦いへと発展した。
ミレイユの戦いで、中国軍はミレイユ州に集結していた翼空衛士軍の艦隊戦力に対して対艦ロケット弾による一斉攻撃を行った。これに対して翼空衛士軍の航空艦隊は密集陣形による防御陣を選択。また、翼空衛士軍が保有する最大級の航空戦艦リャナンシーも艦隊旗艦として投入しており密集陣形をとる艦隊の中央に配置した。この艦隊行動には、航空輸送艦も含まれており、航空輸送艦の多くは本来は非武装艦であったが、翼空衛士軍はこれらの航空輸送艦上に陸上用の高射砲や機関砲を設置して戦闘に参加した。また、周辺の浮遊陸地の陸上への高射砲の設置や岸壁部分に仮設トーチカを設置し複数の高射砲によって対空戦闘の準備を整えた。ミレイユの戦いは凡そ2時間28分もの間、行われた。中国軍は装備面と技術面において、翼空衛士軍を圧倒。ガレア=テドル帝国の技術の粋を極めた翼空衛士軍の切り札でもある航空戦艦リャナンシーすらも大破状態に追い込んだ。しかし、戦闘の中盤に翼空衛士軍は電波機器の効かない浮遊陸地群の特性を活かして侵攻してくる中国軍を下方部、右翼左翼方部から双撃する事に成功し、中国軍に対して大損害を与える事に成功した。中国軍はJ‐49ヘリを、616機中、459機を損失、H‐29爆撃機を60機中、46機を損失した。これは侵攻部隊の主力である航空戦力の半数以上を失った計算である。これによって、中国軍は戦闘の継続を断念しセンタパラス州へと撤退を開始。翼空衛士軍は一連の中国軍の侵攻において、初めて勝利を収めた。しかし、翼空衛士軍の損害も大きかったとされており、翼空衛士軍は航空戦艦を200隻近く失い、航空輸送艦にいたっては、400隻近くを失ったとされる。
ミレイユの戦いで勝利を収めたものの大損害をおった翼空衛士軍だったが、その後、同じく侵攻部隊の主力戦力の半数以上を失った中国軍から和平交渉の申し入れが11月17日にあったとされるが、これを拒否し、11月18日、残存している全艦隊戦力によるセンタパラス州の奪還作戦として中国軍の殲滅を目的とした全面攻勢を開始した。
中国軍はこれを受けて浮遊陸地に上陸させていた対空戦車部隊やロケット砲部隊に迎撃を命令。また、占領地で拘束した魔術師や錬金術師、また、拿捕したり破壊した航空艦から接収した反重力鉱石を中国本土へと移送した。
11月18日、北京上空にて、センタパラス州奪還を巡る翼空衛士軍と中国軍守備隊との間で激しい攻防戦が勃発した(北京上空戦)。戦いは両者、一歩も退かぬ激しい戦いとなり、11月18日から28日までの間、攻防戦が続いた。23日までに翼空衛士軍はセンタパラス州38の浮遊陸地の内、23の浮遊陸地を奪還に成功。しかし、残り5つの浮遊陸地に関しては中国軍の決死の防衛によって奪還に失敗した。11月29日、5つの浮遊陸地の防衛に成功した事を受けて中国政府はガレア=テドル帝国に対して外交筋から停戦交渉を持ちかけた。これ以上の戦いは双方に不利益をもたらすとして、互いに停戦し和平交渉を行おうとした。この停戦交渉に翼空衛士軍はすでに損害が大きくなっていた為に交渉を了承。11月30日、翼空衛士軍の航空戦艦リットンバーグにて翼空衛士軍代表団と中国軍代表団による停戦交渉が開始された。中国軍代表団は現状での停戦状態の構築と互いの戦争捕虜の交換を要求。対して翼空衛士軍代表団は戦争捕虜の交換と、中国が拉致した魔術師や錬金術師、接収した反重力鉱石の返却を要求した。しかし、中国は戦争捕虜の交換については賛成したものの、それ以外の翼空衛士軍代表団の要求を拒否。交渉は翌日に持ち越された。11月31日に行われた交渉も航空戦艦リットンバーグにて行われた。翼空衛士軍代表団は前日の交渉を受けて態度を軟化させ、反重力鉱石の返却の要求は取り下げ、戦争捕虜の交換と中国が拉致した魔術師や錬金術師の返還のみの要求に引き下げた。しかし、中国側は魔術師や錬金術師の返還に消極的であり、再び拒否を示した。交渉はその後も12月2日まで行われたが、ついに両者の交渉は決裂。翼空衛士軍は中国側の態度は不誠実だとして交渉を拒否した。その後、停戦交渉が決裂した為に翼空衛士軍と中国軍は睨み合いを続けた。
その後、両者の睨み合いによる戦線の膠着状態は12月5日まで続いたが、12月6日に中国軍は突如、地上から複数の弾道ミサイルをガレア=テドル帝国の主要都市が置かれている浮遊陸地に向けて発射した。この際に標的とされた浮遊陸地は首都ンガラークデイ、ガレア市、テレパテ市、カルタンゴ市、ハムンナプトラ市、パンゲア市、マンコスル市、デスパテータ市がある8つの浮遊陸地だった。これらの弾道ミサイルが都市に直接的な被害を与える事はなかったが、断続的に地上から発射される弾道ミサイルは浮遊陸地の側面や裏面に命中しその爆発の衝撃によって起こされる微振動は多くの市民に恐怖の感情を与えた。12月9日には浮遊陸地に命中しなかった弾道ミサイルが偶然にも民間の航空客船に命中し乗員乗客1580人以上が犠牲となった。この民間人への事件を受けてガレア=テドル帝国議会は12月10日、午前中の議会で緊急の決議案を採択。帝国法に定められた浮遊大陸放棄法案第六号の発令を決定した。これを受けて午後、翼空衛士軍の軍最高議会は浮遊大陸放棄法案第六号の実行を許可するか否かの緊急動議を行い、軍最高議会の参加者12名中、許可7名、不許可6名の僅差にて浮遊大陸放棄法案第六号の実行が許可された。なお、この法案の発令は浮遊陸地史上初の事だとされる。
そして12月11日早朝の8時12分、中国軍のパイロットの目撃例によると翼空衛士軍は北京上空の中国軍が占領中の5つの浮遊陸地に対して何らかの飛翔体少なくとも5発を発射。この飛翔体が偶然機体の近くを通った際にそれを目撃した中国軍パイロットは飛翔体について、剣の様な形をしていたと証言している。8時13分、飛翔体が中国軍の占領する5つの浮遊陸地に命中し、突如、紫色の閃光が瞬間的に発生。そして、8時14分28秒、中国軍が占領する5つの浮遊陸地が突如、浮力を喪失し地上へと落下した(詳しくは北京壊滅事件を参照)。
この浮遊陸地の突然の地上への落下は全世界に衝撃をもたらした。特にこの落下した5つの浮遊陸地は真下にあった中国の首都である北京市であった。この際に落下した浮遊陸地の総面積は日本の沖縄本島より一回り小さい1,103平方メートル。この規模の大質量が北京市を十数秒後には直撃したのである。当時、北京市の人口は2,159万人。この突然の事態に事件後、生存者はこの際の北京市内の様子について、突然落下し始めた浮遊陸地に多くの人々が逃げ場も無い中、逃げ惑い狂乱状態に陥ったと証言している。この浮遊陸地の落下によって北京市は壊滅。人的被害は北京市だけでも人類史上類を見ない規模のものとなり、人口2,159万人の内、死者行方不明者は2,136万人にも及び生存者は僅か23万人となった。中国政府の首脳陣は当初から戦闘による流れ弾などの懸念から北京市内の軍の核シェルターにて避難を行っていたが、核シェルターはあくまで通常の核戦争や戦争への防御策であり、総面積1,103平方メートルもの面積を持つ大質量の落下には耐えられなかった。この北京壊滅事件によって中国は多くの人民以外にも政府首脳陣をも損失した。さらに大質量の落下の影響は北京市内に留まらず、周辺部の広い地域にも甚大な被害を与えた。
その一方で中国軍の首脳陣は北京市内には居なかった為に落下の被害を免れた。中国軍は一時的に政府機能を臨時的に継承。また、この攻撃を与えたと思われるガレア=テドル帝国への核攻撃を検討した。しかし、浮遊陸地群が中国上空にあるという問題と中国の領空から出ているガレア=テドル帝国の領土がロシア側にあった事によって、放射性降下物による二次的な被害や核爆発そのものへの影響、さらに核攻撃を与える事によって浮遊陸地が地上に落下する可能性の懸念から核攻撃は行われなかった。中国軍は報復攻撃を検討していたが、事態はすでに中国の建国史上最悪の被害を中国にもたらしていた為に中国軍は報復攻撃を白紙にし、被害にあった人民の救出作業に全力をあげた。
この浮遊陸地の落下の後、12月12日にガレア=テドル帝国政府は国際社会に向けて侵略者の撃退と勝利を宣言し、中国軍に対してガレア=テドル帝国へのこれ以上の攻撃行為を直ちに終結させるように要求した。なお、この要求と共にガレア=テドル帝国は帝国への侵略者には容赦しないとして、この要求を受け入れない場合は浮遊陸地を今後も中国へと落下させると警告した。これに対して中国軍は12月13日、ガレア=テドル帝国に降伏。同日中に外交官同士による降伏文書の調印式が執り行われ、中国は今後、ガレア=テドル帝国に対する一切の干渉をしない事を条約として確約させられた。これによって中国軍によるガレア=テドル帝国への侵攻はガレア=テドル帝国の勝利で終結した。
・北京壊滅後の状況
北京壊滅事件によって大きなダメージを負った中国はその後も二次災害に襲われた。落下後、北京市を中心に数百キロ圏内において地盤沈下や土壌の液状化、局地的な地震などが多発した。これは大質量の浮遊陸地が地殻に与えた影響であると考えられた。また、ユーラシア大陸の広範囲に渡って深刻な地球外外来種の繁殖の被害が発生した。浮遊陸地に自生していた動植物が北京市を中心に地球の環境に適応し自生を始めたのである。植物に関しては中国軍が適切な対処を行ったために大半は北京市内で食い止められたが、デスラビット(※英名)と呼ばれる雑食性の、大きさが約90cm程で、姿形が白い兎に似た地球外生物は北京市外に流出し各地で繁殖する事態になった。浮遊陸地群においてデスラビットは人間の6歳児並という高い知能を持った動物で、言葉は喋れないが、高カルシウム成分の自分の糞を固めて包丁の様な武器を作ったり倒木を使って川を渡る船やオールを作るという原始人並みの道具を作る事が浮遊陸地群では古くから知られていた動物だった。浮遊陸地群の人々は、近づいても滅多に危害を受ける事がないこの生物を危険性の低い大人しい動物と考えていたが、後にこれは、ロシアの学術調査によって多くのガレア=テドル帝国人から分泌される動物性フェロモンをデスラビットが危険と認識して自分から避けている為だと分かった。北京市に落下した浮遊陸地からデスラビットが流出するとガレア=テドル帝国人の様にフェロモンが出ない人間は中国各地でデスラビットに襲われ捕食される事態が多発した。2051年現在で、デスラビットの生息分布はユーラシア大陸の広い地域にまで拡大し国際問題となった。ヨーロッパでは2050年3月にフランスのセーヌ川を丸太のボートと木のオールで下るデスラビット2羽が初めて確認され生息域がヨーロッパにまで広がっている実態が明らかになった。現在、デスラビットの生息数は各地で繁殖を続けた結果、中国では北京市を中心に3万羽から10万羽。ユーラシア大陸全体では中国を除いてフランスから東南アジアまでの広い範囲内で4万羽から9万羽程と推計されている。デスラビットの詳細は「デスラビット」「デスラビット問題」の記事を参照。
・ガレア=テドル帝国の国際連合脱退
中国軍によるガレア=テドル帝国への侵攻の終結後、国際社会は最初こそは侵攻をしかけた中国に対して批判的であったが、ガレア=テドル帝国が行った浮遊陸地の落下による大質量攻撃は過剰防衛であると強く批判した。さらに、ロシア等、中国と友好関係にあった国々は続々とガレア=テドル帝国に対して人類史上類を見ない大量虐殺を行い、人道上、深刻な平和に対する罪を犯したとして国際軍事裁判の開催を要求した。
これに対してガレア=テドル帝国は中国による侵略を受けており浮遊陸地の落下は遺憾ながら正当な防衛であったと反論し国際軍事裁判の開催に反対。アメリカや日本などの友好国へも助力を求めた。しかし、これらの国々は助力をしなかった。むしろ多くの国はガレア=テドル帝国が行った行為を批難した。
2038年9月18日、国連総会にてエジプトが国際軍事裁判所の開催案を提出し169カ国がこれに賛成。23カ国が棄権し反対票はガレア=テドル帝国の1国のみであった。これが採択されるとガレア=テドル帝国の国連代表は即座に議場にて反発し演台にて以下の様な演説を普段、演説などで使っていた英語ではなく友好国であったカザフスタンの言語であるカザフ語にて行った。
「原文:...Империя бұл нәтижені қабылдай алмайды. Қытай бірінші кезекте басып кірді емес пе? Неліктен бізге шабуыл жасау керек? Осы соғыста Жапония көптеген сарбаздар мен көптеген жазықсыз азаматтарды құрбан етті. Әзірге мұндай басым шешім қабылданбайды. Мен оны қабылдай алмаймын! Осы резолюцияда біз, империя халқы, барлық жер бетіндегі адамдар біздің империямызға шабуыл жасау үшін күресіп жатқандығын анық түсіндік. Біз көмек сұраған кезде көмекке келген бір ел болды ма? Неліктен біз көмек сұрағанымызға қарамастан бәрін тастадық? Сіз қашып жатқан елдерден кетіп қалдыңыз ба? Достық сияқты сөздер енді әдемі емес. Біз Жерлестер ашкөз басқыншылар екенін білдік. Біз қатты ренжиміз. Енді араласудың мәні жоқ. Сонымен, Жапонияның осы уақытымен біздің Галеа-Тедр империясы Біріккен Ұлттар Ұйымынан шығады...」
「日本語訳...帝国は今回の結果を断じて受け入れる事はできない。そもそも侵略をしてきたのは中国ではないか。なぜ、我々が責められなければならないのか。今回の戦争で我が国は多くの将兵と罪のない多くの市民達を犠牲にした。断じてこの様な横暴な決定は受け入れる事はできない。受け入れる事はできない!今回の決議で我々、我々帝国人は全ての地球人が結託して我が帝国を食い物にし侵略をしようとしている事をはっきりと認識した。我々がこれまで救援を求めた時に助けに来た国が1カ国でもあったのか。なぜ我々が助けを求めたにも関わらず全てを放置したのか。暴走する国々を放置したのか。もはや友好などという言葉は綺麗事である。地球人は欲深い侵略者である事を我々は認識した。我々は大きく失望している。もはや交流など無意味である。よって本日、本時刻をもって我がガレア=テドル帝国は国際連合を脱退する。...」
この演説の後、この突然の国連脱退宣言に国連総会議場は騒然となった。ガレア=テドル帝国は事前に国連脱退について何処の国にも伝えていなかった為である。各国の代表が困惑を示す中、ガレア=テドル帝国の代表は演説を終えると、すぐに自分たちの代表席に座る補佐官を連れて国連総会議場を後にした。この騒動によって国連総会は一時的に休会した。アメリカや日本などのガレア=テドル帝国との友好国の外交関係者はガレア=テドル帝国に国連脱退を思いとどまるようにとの働きかけを行った。しかし、結局、ガレア=テドル帝国政府はこれには一切、反応をしめさずに、ガレア=テドル帝国の国連代表はその後、帰国の日までニューヨークのホテルから一歩も外に出なかった。
・地球人類の追放と大陸封鎖令の発令に伴う鎖国体制への移行
国連総会での脱退宣言から、約1ヶ月がたった10月14日、ガレア=テドル帝国政府は地球人類のガレア=テドル帝国での滞在に関しての審査基準の基準強化を目的とした改訂を行った。この改訂によりガレア=テドル帝国において、滞在が許可される地球人の審査基準は、1に、感染予防の為にワクチン接種を適切に行っている事。2に、如何なる地球人政府及び地球人企業の関係者でない事。3に、ガレア=テドル帝国人の者で身元と居住を証明できる保護者が居る事。4に、特定の住居に居住実体がある事。5に、犯罪行為をしていない事。6に、帝国政府管轄の異星人監視センターから入国許可を得ている事。となった。これによってガレア=テドル帝国に滞在している多くの地球人はその大半が審査基準を満たさずに地上への強制送還の対象となった。特に条件2に当てはまっている者が多く、当時、ガレア=テドル帝国を訪れていた大半の人々は交流事業の一環でやってきていた企業関係者や政府関係の研究機関の人間として入国していた為に強制送還の対象となった。この審査基準の強化は事実上、地球人をガレア=テドル帝国から追放する事を目的としていた事は一目瞭然であった。これによって、10月20日までに、帝国内に残っていた滞在地球人16,708人の内、16,705人は地上に航空便で続々と強制送還された。一方で全ての地球人が強制送還された訳ではなく、3人だけではあるが、カザフスタン人の夫婦2名と日本人1名が審査基準を満たしていた事から滞在を許可され、3人とも無期限滞在の資格を取得していたとされる。
10月22日、ガレア=テドル帝国議会は地球人の強制送還作業が終了した事を受けて、地上との全航空便を10月31日に全面廃止する事を議決し全会一致でこれを決定。さらに、地上の各国に駐在しているガレア=テドル帝国の全外交官に帰国を命令した。この決定の際、ガレア=テドル帝国政府は地上世界との不可侵不干渉を正式に宣言する大陸封鎖令を発表しこれを最後の地上での仕事として各国に駐在する全外交官に伝達し10月24日までに地球上でガレア=テドル帝国と国交を有していた全ての国に対してこの宣言が伝えられた。この宣言には多くの国々が動揺した。友好国であったアメリカや日本でも国連脱退はしても、外交関係など最低限の交渉の場は残すだろうとの見方が多かった。各国の首脳は民間チャンネルどころか外交チャンネルまでもが閉じられるという事態に、テレビ演説などでガレア=テドル帝国に対して対話と交流の重要性を訴えた。
しかし、各国の訴えは届かず、10月31日、ガレア=テドル帝国は帝国議会での決定通りに地上との全航空便を廃止。これによってガレア=テドル帝国と地球国家との交流は全て寸断されるという最悪の結果となった。
この交流の全面停止によって地球側はガレア=テドル帝国から輸入される多くの地球外由来品の輸入ができなくなった。この影響は非常に大きく、特にガレア=テドル帝国からもたらされた地球外由来の植物や動物を使った生命工学の分野。新薬研究や遺伝子研究を行っていたアメリカ、日本、ロシア等の研究機関や製薬会社は大きなダメージを受けたとされており、研究開発に必要な新たな素材が入手できなくなった。日本の製薬会社ではイリポリミニスという植物の果汁に副作用なくガン細胞をほぼ確実に死滅させる性質がある事を確認した事から、通常の薬よりも市販薬程度にまで価格を落とす事ができる画期的な新薬の販売を計画していたが、イリポリミニスが輸入できなくなった事から計画が頓挫した。また、これと同じ様な経緯で開発や研究が中止された新薬の数は全世界で公表されていただけでも203種類にも及ぶ。この中にはイリポリミニスと同じく、画期的とされた糖尿病を完治させる可能性のあった新薬も含まれる。イギリスの医学誌はこの事態を「難病に苦しむ多くの人々にとって、希望が失われた最悪の悲劇」と称した。
・アルゼンチン事件
2048年6月10日、アルゼンチンのメンドーサ州メンドーサ市の上空300mに直径20mの水の球体の様な外見をした奇妙な物体が突如として出現した。当初はUFOとして有名となり警察や軍が出動する騒ぎとなった。しかしこの正体不明の球体は発生から1週間たった6月17日になっても消えずにその場に留まった。この奇妙な現象にアルゼンチンの国立研究機関等が調査に乗り出したか6月20日になってもこの球体の正体は分からなかった。
しかし、6月21日19時17分14秒、球体は突如、波紋を発生させ振動を始めるという奇妙な現象を発生させた。そして振動の発生から凡そ19秒後の6月21日19時17分33秒、球体が突如として直径203mにまで膨張し破裂。破裂した直後に全長50mを超える巨大なモスグリーン色のナナフシと線虫を合わせた様な外見をした巨大な未知の生命体が出現した。この未知の巨大生命体はメンドーサ市の中心部に落下しその後、激しく動き回り市街地の破壊を開始しさらに周辺に居た人々への攻撃や捕食を開始した。この事態にアルゼンチン軍は市街地に展開していた戦車による砲撃を開始。20時23分に砲撃によってこの未知の生命体の動きを停止させたが、アルゼンチン軍が殺害を確認しようとした直後、この未知の生命体の体内から無数のラグビーボール台の虫の様な生物が出現し市内中に広がった。この生命体は先の生命体と同じように人間や動物等を見境無く襲った。これを受けてアルゼンチン軍はメンドーサ市を封鎖。だが、事態はさらに悪化し6月22日午前1時31分、市内各地で、線虫と蟷螂を混ぜたような奇妙な奇怪した生命体が出現し、包囲するアルゼンチン軍を襲った。アルゼンチン軍は朝6時までに空爆や砲撃などによってこれらの生命体の侵攻を阻止しようとしたが、犠牲者は拡大の一途を辿った。これを受けてアルゼンチンはブラジル軍とアメリカ軍に救援を要請した。ブラジルは救援を拒否。しかし、アメリカ軍は救援として空母打撃群の派遣を決定した。しかし、未知の生命体の異常な進行速度に危機感を覚えたアルゼンチン政府はアメリカ軍に対して核攻撃を要請した。アメリカ軍はこの要請に困惑したとされるが、アルゼンチン側はすでに戦線が崩壊し爆発的に未知の生物はその範囲を拡大しているとして、悲痛な訴えを行った。この訴えによって6月22日朝7時39分、アメリカ軍はアルゼンチンのメンドーサ州に対してB83核爆弾を8発に渡って使用した。この攻撃によって未知の生命体の殲滅には成功したが、原因不明の未知の生命体によって39万人近い犠牲者を僅か2日足らずで出す結果となった。詳しくは「アルゼンチン事件」の記事を参照。
この事件後、国連では国連安保理が緊急で開催されアルゼンチンに出現した未知の生命体に関する議論が繰り広げられた。この議論で、一部の有識者がアルゼンチンに出現した未知の生命体の特徴がガレア=テドル帝国が地球に転移してくる前の世界で、地上を滅ぼしたとされる妖精と非常に似ている事を指摘した。この点が指摘されるとこの問題はさらに大きな議論を巻き起こした。一部ではガレア=テドル帝国が人類を滅ぼすために妖精を放ったのではないかという意見も出たが、球体の出現時、ガレア=テドル帝国がアフリカ大陸の上空に居た事や球体の出現の様子などからもガレア=テドル帝国が関わった可能性は極めて低いとして否定された。しかし、この球体がガレア=テドル帝国が元の世界で戦っていた妖精という可能性は残された為に国連安保理は国際研究機関の設置を行い調査を行う事で同意した。また、ガレア=テドル帝国に情報提供を要請するべきとの判断もされた。
しかし、同様の事件はその後、発生していない。
・アメリカを主導とした和解事業
アメリカはアルゼンチン事件の前からガレア=テドル帝国との和解を目指した事業を行っている。大陸封鎖令の発令から3ヵ月後にはアメリカはこの動きを本格化させており、浮遊大陸がアメリカ大陸の上空や同盟国の上空を飛来する際にはガレア=テドル帝国の領空ギリギリまで航空機を接近させるなどして、これに気がついた翼空衛士軍の航空艦が警戒の為に航空機に近づいた所で、光信号などで和解を呼びかけるなどしている。この和解事業にはアメリカの他、カナダ、日本、イギリス、オーストラリア、南アフリカ等の国々も参加している。しかし、2051年現在、ガレア=テドル帝国はこれらの交信の試みを全て拒絶しており、全ての交流停止している状態である。
こうした和解事業が進まない状況に関して、2050年に放送されたCNNの報道番組で、ファーストコンタクトの際に国連から地球人の代表を務めたミチオ・カクズ博士と、アメリカ地上残留ガレア=テドル帝国人会の代表であるオウガシー族のクルゥヴァ・ヴァルヴァル氏は、CNNのインタビューに対して以下の様な内容を語っている。
「日本語訳:…私たち、地球人は彼らに対して何をしましたか?私たち、地球人は彼らの信頼を完全に失ってしまったのです。あなた(※記者に対して)が、彼らの立場にたって考えてもみてください。彼らからすれば私たちは彼らを裏切ったようなものですよ?何処とは言いませんが、私たちは一部の国が彼らにする行いを口では批難しておきながら見て見ぬふりをし、最後には彼らを突き放したんですから。私も含めて私たち、すべての地球人は、もう一度、いや、何度でも自分の胸に手を当てて私たちが何をしたか。どうしてこうなっていまったのか考えなければなりません。そうしなければ、彼らの信頼を取り戻す事など永遠に不可能でしょう。…―ミチオ・カクズ博士―」
「日本語訳:…帝国本土での地球人への不信感と反感は根強いものがある。そう簡単には上手くいかないだろう…―クルゥヴァ・ヴァルヴァル氏―」
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国民
・種族と民族
ガレア=テドル帝国には58種の知的生命体が居住している。その多くは地球上の実在の動物や伝説上の動物等と類似点を持った外見をした人間と同じように二足歩行をする知的生命体である。例を挙げるならば、地球の猫と似た外見的特長を持ったケットシー族。日本での鬼や欧州でオーガなどの様に2本の角を持ったオウガシー族。爬虫類の外見的特長を持った竜神族など、多種多様、様々な種族が存在している。この中には人間と似た姿の種族も存在しており、その唯一の例としてオウガシー族が存在する(オウガシー族は人間の額に当たる部分に2本の角がある)。ただし、人間の男性の様な姿の種族に関してはオウガシー族の中にも存在しない。オウガシー族は生物学的に女性しか生まれる事が無く、さらに、その姿は成長しても身長は150cmにも届かず、地球人の基準からすれば童顔である為に地球人が想像する大人の姿も存在しない。
これらの種族は統一戦争前のポリス(都市)が独立して存在していた時代までは個別の種族意識があったとされるが、統一戦争後はしだいに種族間の融和が進んだ為に同属意識が形成されたとされており、現在では種族間の対立や差別等の問題は存在しないとされる。
・医療
ガレア=テドル帝国における平均寿命は109歳である。テドル動乱後に医療技術が飛躍的に発展し、現在の様な高い平均寿命を獲得した。平均寿命は109歳であるが、医療技術的には事実上寿命が存在しないとされており、最高齢とされる人物は竜神族の男性で、魔術的な医療処置によって393歳である。
・言語
公用語にはガレア=テドル語という人工言語が採用されている。帝国の国民の多くはこの言語で日々の日常生活を送っている。しかし、これ以外にも200近い種族言語と呼ばれる言語が存在しており、これらはガレア=テドル帝国人の祖先が地上から浮遊陸地に移り住んだ頃から存在しているとされており、僅かながら現在でも使用されている。
地球人にとってガレア=テドル語は読解に非常に難がある文字である事がよく知られている。ガレア=テドル語文字は多くの人間が見た場合、文字の形状から文字がうねっているかのような錯覚を引き起こす。その為、地球人がガレア=テドル語文字の文章を読んで理解しようとした場合、文字に慣れる為の訓練が事前に必要である。
・宗教
多神教の国である。国民の4割近くが、天空を司る神、聖天神クゥー=ディエィラと浮遊大陸を司る神、聖天神クゥー=テリエルブァルを神として崇め、これが国内で最大規模を誇っている。それ以外にも200を超える神が存在しており各地で信仰されている。
・文明
元々、浮遊陸地群に先祖が移り住んだ当初は種族ごとに独自の文化や文明を有し、それぞれの種族が独自の都市や集落を形成していたが、文化と文明が時代と共に組み合わさった結果、これが現在のガレア=テドル帝国文明の基礎となっている。しかし、奇怪な事にこの結果、生み出されている現在のガレア=テドル帝国の建築物や衣服などは南欧風の文化に大変良く似た文化であり、一見しただけでは地球文明との判別は困難となっている。ただし、旧来の種族文明の影響は現在にも残されており、大都市圏を離れた地方の田舎や一部の都市では種族文明の文化や伝統が色濃く残されている。
技術水準は魔術や錬金術、反重力鉱石を使った航空艦等、地球には存在しない高度な技術が存在する事から、一概には言えないが、科学技術全般に関して言えば一部を除いて地球における1918年から1940年程の技術水準を有していると言われる。ただし、電力類は一般人すべてに普及しているという訳では無く、国連の調査でも半数以上の家庭が電気の無い生活を送っている。また、電気が通っている家でも電気の使用用途は灯りの他、冷蔵庫程度であり、非常に限定的である。地球の一般家庭の様にテレビ等の様々な種類の電化製品がある訳ではない。冷蔵庫は地球への転移前から使われていたが、その他の電化製品の類が使われる様になったのは地球との交流からで、地球から輸入した電化製品を一部の富裕層が使用しているのが状況である。
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地理
進行方向に縦約4,900km、幅は最大で約700kmの範囲内で13,000個以上の大小様々な浮遊陸地が領土を構成している。これらの浮遊陸地群は高度1万4千メートルから高度1万6千メートルの間を浮遊し地球の大気圏内を公転している。公転周期は約365日で地球を1周する速度であり、また、地球を中心とした軌道傾斜角は時計回りに36度の範囲内で不定期に変動している。
また、高い高度にも関わらず、浮遊陸地周辺の酸素濃度は地上とほぼ同じ酸素濃度を保っている。さらに、気温は浮遊陸地群の陸上での平均気温は例え浮遊陸地群が南極上空を飛行していても浮遊陸地群全体での年間最低平均気温が10度を下回る事は無い。ただし、上層の一部の浮遊陸地では気温が低い地域もあり最低気温が毎年-40度にも達する浮遊陸地もある。だが、基本的には地球上における温帯気候に近い気候となっている。季節は春夏秋冬を有しており、夏場の平均気温は28度。冬は上層の浮遊陸地以外では気温がマイナスになる事は殆ど無いが年によっては雪が30cmほど積もる時もある。ただし、赤道直下を1年間浮遊する軌道傾斜角の場合は冬は訪れない。
浮遊陸地群では浮遊陸地群特有の気象現象が発生しており、高い高度でも雲が発生し雨が降る。その為、年間降水雨量は多い時で3,200mm以上、少ない時でも2,800mmを超える。
この様な高い高度にも関わらず、地上と同じような環境を有している理由には諸説あるが、最も有力な説は浮遊陸地群を浮かせている反重力鉱石が何らかの作用を引き起こしてこれらの環境を生み出しているというものである。詳細は「浮遊陸地群」の記事を参照。
また、浮遊陸地群の周辺では非常に強力な電磁波障害が発生しており、特殊なコーティング等をしなければ電子機器などが正常作動しない現象が発生している。これによって電波による通信も浮遊陸地群では不可能となっており、現地では通信手段として念話と呼ばれる魔術師同士を介した遠隔コミュニケーション手段が電波による通信の代わりの役目を果たしている。
・地方行政区分
複数の浮遊陸地をまとめる49の州が存在しその下部区分として統治権(自治権に近いもの)を有した大小様々な都市が存在する。都市の規模は様々であり、5,000人以上の人口を有していればその街は市の名称が与えられ、統治権が付与されている。
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政治
・内政
皇帝を君主とした立憲君主体制が構築されている。政治は帝国議会が行っているが、各都市への帝国議会の影響力は低い。ガレア=テドル帝国の体制は帝国としながらもその実態は連邦制に近く、各浮遊都市は市議会を中心とした独自の政治機構を有しており、軍隊や警察の保有や外交権は認められていないものの、都市内における法律の制定など、高度な統治権を有している。帝国議会は帝国全体としての決め事や方針等を決定する機関であり、個々の都市への影響力は低い。
帝国議会は一院制を採用しており議員議席は470議席。帝国議会議員は選挙などは行われずに各都市の代表者によって選出されるが、ガレア=テドル帝国の都市の数は議員議席よりも遥かに多い。その為、議員は各都市が交代制で代表権を回しており、1人の議員が幾つかの都市の代表を兼ねて議席を得ている。帝国政府の首脳は帝国議会議長が務め、その下に複数の閣僚が設置され各省庁のトップが構成される。
一方で君主である皇帝は政治に関与する権利を殆ど有していない。皇帝は帝国議会の解散権と帝国議会議長の任命権を有しているのみである。しかしながら、皇帝は捜査権を有しており、議会や翼空衛士軍の不正が疑われる場合はロイヤル・エア・ガード内の捜査部を動かす事で独自の捜査を行い、不正が明らかになった場合はこれを起訴する権限を有している。これは所謂、シビリアンコントロールの一種で、これとは別に翼空衛士軍にも捜査権があり、議会や皇帝、ロイヤル・エア・ガードの不正を捜査し起訴する権限がある。議会にも捜査委員会を設置して捜査や起訴を行う権限がある。しかし、議会は建前上、皇帝に忠誠を誓う組織である事から、翼空衛士軍とロイヤル・エア・ガードへの捜査権と起訴をする権利は有しているが、皇帝への直接的な捜査権や起訴をする権利は無い。
・外交
2051年現在、ガレア=テドル帝国は大陸封鎖令によって事実上の鎖国状態下にあり、2038年以来、現在に至るまで地球国家との如何なる外交交渉にも応じておらず、また如何なる交流もしていない。だが、この項目では大陸封鎖令以前の外交に関して記載する。
・アメリカ
アメリカとガレア=テドル帝国は地球国家においてはカザフスタンに次いで友好関係を築いていた国だった。両国の貿易総額は日本円で総額8200億円規模にも上り、民間交流事業や技術者や学者同士の交流事業が盛んに行われた。アメリカにはガレア=テドル帝国から年間1万人近い人々が文化交流するために訪れニューヨークのマンハッタン島では自由の女神像の前などでガレア=テドル帝国の交換留学生がアメリカ人学生と共に記念写真を撮っている姿や、市内を観光している様子などが良く見られ、これらの光景は両国の友好の証として良く知られた光景だった。
・カザフスタン
カザフスタンとガレア=テドル帝国はファーストコンタクトを初めにとった事からガレア=テドル帝国人に特別視され他の地球国家よりも特段に友好的な関係が構築された。貿易総額自体は日本円で総額507億円規模に留まったものの、ガレア=テドル帝国ではカザフスタンの料理や文化が空前の大ブームを引き起こしカザフスタンの有名歌手が交流事業のイベントでガレア=テドル帝国に訪れた際には多くの熱狂的な若者が集まって歓声を上げた。
・ロシア
ロシアとガレア=テドル帝国は技術交流などを盛んに行っていた。民間交流も行われたが、どちらかというと技術者や学者同士の交流事業の方が多く行われた。貿易総額も日本円にして総額2800億円規模と世界第3位を誇っていた。ロシアの技術や知識はガレア=テドル帝国人に大変信頼されていたとされており、ガレア=テドル帝国政府は直接の指名でロシア人のエンジニアや科学者を技術指導の為に派遣の要請をしたりなどしていたとされる。
・中国
中国とガレア=テドル帝国は技術交流や文化交流を中心に行っていたが、これらの事業は他国と比べてあまり盛り上がらなかったと伝えられている。それでも貿易総額は日本円で総額870億円規模に達しており、中国はインフラ等を輸出しこの貿易規模は世界第4位の規模であった。
・日本
日本とガレア=テドル帝国はアメリカの次に友好的な関係を築いていた。日本はカメラ、映像機器、工業用ドリル、掘削用ドリル、ソーラー充電式の携帯ゲーム機などを輸出し、これらの製品は品質の良さから非常に多くの注文があったとされる。さらに、デジタルゲーム機がなかったガレア=テドル帝国に現地に対応したソーラー充電式の携帯ゲーム機を輸出した事は現地で大きな反響を呼び特に富裕層の若者の間でゲーム機ブームを引き起こさせた。2030年には日本のゲーム会社大手のセガと任天堂とDMMの3社が合弁会社をガレア=テドル帝国のンガラークデイで設立し、ガレア=テドル帝国史上初のゲームセンターと、ゲームショップをオープン。現地でゲームソフトの販売に着手し、現地向けのアクションゲームソフト「伝説のスターフィー」「伝説のスターフィー2」「ザ・地球大冒険スペシャル!」恋愛シュミレーションゲーム「真夏の向こう側~あなたに会えて~」「星は見えていますか?」のソフトはそれぞれ1万本以上売れるという地球製の民間むけ製品としては異例の大ヒット商品となった。ゲームショップと共に開店されたゲームセンターには開店前に店の前に人だかりが出来るほど盛況していた。これらの人気を背景に日本製品の人気は現地で大変評判が良かった。貿易総額も日本円で総額6800億円規模にも及び、これは世界第二位の規模であった。交換留学生もアメリカ程は多くなかったが年間多い時で30人程が日本の大学などに留学にきていた。両国は主に民間交流を中心に交流を深めた。
・フランス
フランスとガレア=テドル帝国は技術交流と研究者の交流事業を中心に友好的な関係を築いていた。フランスの原子力研究機関はガレア=テドル帝国政府に研究のための観測施設を帝国各地に設置する事を承認するなど、両国は学術的な交流事業を中心に行っていた。
・イギリス
イギリスとガレア=テドル帝国は貿易総額の面で言えば、総額100億円未満の取引額であったが、イギリスとガレア=テドル帝国は外交面で友好関係を構築していた。
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経済
ガレア=テドル帝国はもともとの世界において地上世界が滅び1100年以上にも渡って浮遊陸地群のみで完結した文明社会を築いていた為に、その経済体制は浮遊陸地群のみで完結した多種多様な産業を有している。これは第一次産業、第二次産業、第三次産業に関わらず、非常に多角化したものとなっている。
帝国内では独自通貨の統一通貨ペンネが流通しており、これは地球におけるダイアモンドが通貨として流通している。ガレア=テドル帝国では錬金術が成立している事から円筒状のダイヤモンドを貨幣局が製造してそれを通貨として使用している。通貨単位は600統一ペンネ、300統一ペンネ、100統一ペンネ、600統一マース・ペンネ、300統一マース・ペンネ、100統一マース・ペンネ、50統一マース・ペンネ、10統一マース・ペンネ、5統一マース・ペンネ、1統一マース・ペンネとなっており、100統一ペンネ=10000統一マース・ペンネの水準である。地球国家と交易関係を有していた頃はこの貨幣がダイヤモンド製である事から地球の貨幣とのレート問題が起きたが、国際通貨基金の調査によって現地ではダイヤモンドの価値が地球における金と同等のレベルであった事から国際レートは1ドル=85統一マース・ペンネに設定された。これによって、600統一ペンネは世界で最も高額の貨幣として記録にものった。
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技術
・魔術技術
ガレア=テドル帝国には地球では空想の産物だとされてきた魔術が技術として存在している。ガレア=テドル帝国の魔法省が地球に提供した資料によると、魔術は魔力と呼ばれる魔術師の体内に存在しているエネルギーと霊体を鉱石を媒介として力を発現させるとされる。簡易な術では魔術は、体の不調を治したり、念話と呼ばれるテレパシーの様な魔術師間の通信、火起し、水起し、風起し、身体能力の強化等の様々な現象を発生させる。高度な術になると、若返りや寿命の延長、魔機構機人等の非生物に魂を定着させて地球におけるロボットの様な存在を作り出す事もできる。
魔術技術は先天性の物でガレア=テドル帝国人のみが扱う事ができる技術であり生物学的、魔術学的にも地球人の習得は不可能であるとされる。そもそも魔術を行使できるガレア=テドル帝国人の数は全人口の10%程である。しかし、2030年時点ではガレア=テドル帝国では魔術を巡って大きな問題が発生している。地球への転移後、ガレア=テドル帝国人の新生児が保有する魔力の容量が急激に減少傾向にあるとされており、魔法省はこのままでは2080年代前半には魔力を持った新生児の出生率が0%に陥ると警告していた。
・魔機構機人
魔機構機人とは魔法省が地球に提供した資料によると、死霊と呼ばれる存在を魔術的に呼び出し、金属類で作られた体に魔術回路を構築して、その死霊の魂を定着させる事で動力無しに、自立可動させる事ができる所謂、地球で言うロボットの技術である。大きく分けて第一世代型、第二世代型の魔機構機人があるとされ、現在、利用されている魔機構機人は全て第二世代型となっている。第一世代型と第二世代型の違いは契約方法と自立性であるとされ、第一世代型は魔機構機人が契約者と呼ばれる個人と契約魔術で魔術的に同調し契約者の命令には絶対的に服従するという方式だった。この第一世代型は高い知能や自立性を有していなかった。しかし、この方法はテドル動乱の際に契約者と魔機構機人の魔術的な繋がりを遮断されると、魔機構機人が一斉に機能停止し、契約魔法を書き換えられる事によって別の魔術師に魔機構機人を乗っ取られる事が分かった事から、動乱後に長期にわたって使用されなくなった。魔機構機人が再び使われだしたのは統一暦462年に第二世代型が開発されてからである。第二世代型の魔機構機人は第一世代型の問題点を克服する為に契約者を作らないという斬新な方針を採用し、魔機構機人の個々の個体に死霊の記憶を完全に消した状態で本体に定着させ自我を発生させる事で、契約者無しでもスタンドアローンの状態で可動する方式を取った。一方で契約者の代わりに魔術的繋がりのないマスターと呼ばれる所有者を設定しており、魔機構機人の自我を司る死霊の魂にマスターの指示には従うという強力な暗示を施す事で魔術無しでも指示を与えられる様にした。一方でこの暗示の中にはマスターが帝国に反旗を企てる様な反社会的な指示を出した場合には命令を拒否する機構も組み込まれている。これが現在、帝国で使用されている第二世代型である。ガレア=テドル帝国では、この第二世代型の魔機構機人は現在、700万体以上が利用されているとされるが、あまりにも高度な自我や感情を持っている為に現地では単なる労働力ではなく、一つの種族として見られている節があり、多くの都市で魔機構機人に対して厳しかったり酷い扱い方をする様な所有者には批判の目が向けられる風潮がある。あまりにも悪質な場合は現地の警察機構によって所有者が逮捕され所有者登録が抹消される例もある。また、所有者が居ないフリーの魔機構機人も存在し一般の市民と同じ様に生活している個体も少なからず存在しているとされる。詳しくは「魔機構機人」の記事を参照。
・錬金技術
ガレア=テドル帝国には地球では空想の産物だとされてきた錬金術が技術として存在している。ガレア=テドル帝国の錬金術師連合省が地球に提供した資料によると、錬金術は魔術技術と同じ様に体内に存在しているエネルギーと霊体を鉱石を媒介として力を発現させるとされる。しかし、術の形態が大きく異なり目的も異なる事から錬金術と魔術は別の技術として区別されている。錬金術は生産性があるかは別ではあるが、理論上、土と水さえあれば、如何なる物質をも生み出す事ができるとされ、ガレア=テドル帝国ではこの技術は国家の根幹をなしている技術と見られており、航空艦に使われる反重力鉱石の精製や帝国で使われる様々な金属の多くが錬金術によって生み出されているとされる。この様に国家安全保障上、非常に重要な技術であるとされるが、錬金術を扱える術者人口は魔術師の人口よりも30%近く少ないとされる。
・科学技術
ガレア=テドル帝国の科学技術水準は一部を除いて地球における水準で1918年から1940年程度の技術水準を有していると言われる。ただ、特筆すべき点として、ガレア=テドル帝国の科学技術水準は第二次ガレア=テドル統一戦争からテドル動乱期に確立されたもので、それ以降、科学技術の分野において大きな技術革新などは殆ど起こらなかったとされる。また、化石燃料が存在しない事から自動車の類も発明されていない。
・航空艦
ガレア=テドル帝国には地球上で唯一航空艦を製造し運用する事ができる特殊な技術が存在する。航空艦とは反重力の性質を持った大質量船の事である。航空艦は軍隊や民間で広く一般的に利用されており、その技術は統一暦-332年に、ガレア帝国の翼空衛士軍兵器工廠が浮遊陸地群の反重力鉱石を利用した新型飛行機械の開発に成功した事が始まりとされる。それまで浮遊陸地群において飛行機械の主力は飛行船でありそれ以外には存在しなかった。飛行船がヘリウムを利用してその巨体に比べて搭載量や防御面で限界があったのに対して、大地をも浮かせるエネルギーを持った反重力鉱石を動力とした航空艦は、当時の大型飛行船(当時最大規模の飛行船は全長200m程であったとされる)と例え同規模の大きさだったとしても、その重量は飛行船の比ではない規模に達する事ができ、飛行船よりも強力な火砲を多く搭載する事ができたとされる。この初期に誕生した航空艦を第一世代型と言う。航空艦は軍事目的に当初は開発されたが、その後、錬金術の飛躍的な発展を受けて民間航空にも普及していった。ヘリウム飛行船は現在でも一部で利用されているが、その数は少なく、航空艦の普及率は2035年時点で浮遊陸地群における航空移動手段の8.5割を占めた。現在は第一世代型の航空艦から世代が進み第三世代型と呼ばれる航空艦が多くで利用されている。現在の航空艦には大きく分けて2つの種類が存在するとされ、内臓動力型と外装動力型があるとされる。内臓動力型は艦内に反重力鉱石を内蔵したエンジンを搭載した形式であり、外装動力型とは、艦外に反重力鉱石を内臓したエンジンを搭載した形式である。それぞれメリットとデメリットがあるとされ、内臓動力型は反重力鉱石を艦内に設置している為に艦の安定性と防御面が優れているとされるが、その反面、推進装置を艦尾にしか、とり付けられない為に必然的に加速性と機動性が低く、また万が一推進器が故障した際には航行不可能に陥るという問題があるとされる。一方で外装動力型はエンジンを多数設置する事が可能で加速性と機動性に優れまた、積載量を大幅に増やす事ができるとされる。その反面、エンジンが露出している為に防御面で不安があるとされる。また、これらの推進方式はいずれも全ての航空艦がプロペラ方式である。速力は10ノットから18ノット。航続距離は燃料が要らない為に燃料的な航続距離問題はないが、艦の整備や乗組員の消費物資などから、地球の海上船と同じ様に定期的な補給を必要とする。航空艦の詳細は「航空艦」の記事を参照。
また、この航空艦の技術を小型化したのが飛航艇であり、飛航艇は速度として40ノットから50ノットの速度を出す能力があるとされる。しかし飛航艇は、エンジンの冷却問題から航空艦とは違い、航続距離が短いとさる。飛航艇はの詳細は「飛航艇」の記事を参照。
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軍事
ガレア=テドル帝国は翼空衛士軍とロイヤル・エア・ガードの2つの国防軍事組織を保有している。翼空衛士軍が対外的な安全保障を担う組織となっており、ロイヤル・エア・ガードは各都市の治安維持を担っている。
・翼空衛士軍
総兵力200万人を保有している。翼空衛士軍はガレア=テドル帝国成立以前のガレア帝国の成立と同時に初代皇帝のアレクサンドロス帝によって帝国を守護する存在として設立された。テドル動乱まで翼空衛士軍は事実上、皇帝と帝国に忠誠を誓う組織だったが、平和文化革命時代に帝国政府から独立した機関となり、浮遊陸地群内の安定と妖精の脅威から市民を守護する為に特化した組織へと再編された。政治への関与は一切できないが、政治からも独立した機関である。軍事費は各都市の分担金によって賄われており、兵士は全て志願制で招集されており、兵士の8割が多くの種族で構成され、残りの2割が魔機構機人で構成されている。航空戦艦、航空輸送艦、飛航艇などで編成される航空艦隊と、陸上部隊で構成される。ロイヤル・エア・ガードの規模が拡大される以前は現在よりも艦隊の規模が半数近く少なく、代わりに陸上部隊の戦力が多かったとされる。翼空衛士軍の詳しい装備などは詳細には明らかにはなっていないが、歩兵装備などは基本的にカートリッジ式ライフル銃が主力兵装として配備されている事が分かっており、機関銃の類も地球のMG08重機関銃に類似した機関銃が主流であったとされる。また、地球国家との交流があった際に翼空衛士軍はアメリカからM16自動小銃を2,000丁、M4カービンを1,500丁、M249軽機関銃を500丁、輸入した事が明らかになっている。
翼空衛士軍の主力である航空戦力に関しては2038年時点で少なくとも500隻以上の航空戦艦を保有しているものと考えられている。以下は地球側が把握している航空戦艦の代表的な艦と飛航艇一覧。
〔航空戦艦リャナンシー〕
全長 :298.3m
兵装 :39cm3連装砲 ×4
:80mm連装高射砲 ×20
:43mm8連装機関砲 ×6
:122mm連装艦底部砲×8
:無誘導爆弾
推進器:大型反重力鉱石エンジン×6
概要 :航空戦艦リャナンシーは翼空衛士軍が対妖精対策として統一暦529年に開発した史上最大規模の超大型航空戦艦である。39cm3連装砲を4基搭載し、従来の航空戦艦の大口径砲が陸上攻撃目的や対空目標に対しては目標と接近した際に使用する地球で言う魚雷に近い意味合いで搭載していたのに対して、ニャナンシーは遠距離対空戦闘でも本格的に大口径砲を運用する目的で設計された。航空戦艦における大口径砲の歴史は第一次ガレア=テドル統一戦争時こそは遠距離での砲撃戦目的で使われたが、命中精度の問題や砲弾の弾薬の問題からその立場は次第に速射性のある小口径砲に取って代われたという歴史がある。ニャナンシーは実験艦としての意味合いとしても建造された。ニャナンシーはガレア=テドル帝国のもつ魔術技術、錬金術、科学技術の集大成とされ、就役後すぐに翼空衛士軍の広告塔として運用された。ニャナンシーを有名にしたのは中国による浮遊陸地群侵攻時のミレイユの戦いである。ミレイユの戦いで、ニャナンシーは翼空衛士軍の艦隊総旗艦として翼空衛士軍艦隊の対空戦闘の主力として運用された。ニャナンシーは39cm3連装砲を含めた多数の対空砲によって中国軍機を少なくとも60機以上を撃墜に成功した。ニャナンシーは最終的に中国軍機の対艦ロケット弾を6発受けた事によって反重力鉱石エンジンを6基中、3基を喪失した事によって大破したが、その性能を充分に示したとされる。その後、この艦がどうなったかはガレア=テドル帝国が大陸封鎖令を実行した為に定かではない。しかしながら、2050年12月にカナダで浮遊陸地群を追って撮影をし続けているドイツ人写真家のアルフレート・グスタフ氏が撮影した望遠写真にリャナンシーと良く似た艦影が映し出されている事から、現在でも修理されて運用されている可能性がある。翼空衛士軍は航空戦艦に5等級から大1等級までの等級をつけて運用しているが、ニャナンシーは唯一の大1等級航空戦艦に分類されていた。
〔航空戦艦ルノワール3世〕
全長 :112m
兵装 :135mm連装砲 ×2
:無誘導爆弾
推進器:反重力鉱石エンジン ×2
概要 :航空戦艦ルノワール3世はガレア=テドル帝国が地球人類との初めてのファーストコンタクトに遭遇した航空戦艦である。航空戦艦ルノワール3世は2等級航空戦艦に分類され、翼空衛士軍が保有する航空戦艦の大半を占める量産型航空戦艦であるとされる。このルノワール3世と同型の艦船が最初に開発したのは第二次ガレア=テドル統一戦争とされ、その頃から現在に至るまで非常に長期に渡って翼空衛士軍の主力戦艦として運用されている。
〔航空戦艦リットンバーグ〕
全長 :138m
兵装 :28cm連装砲 ×2
:無誘導爆弾
推進器:反重力鉱石エンジン ×2
概要 :航空戦艦リットンバーグは中国が浮遊陸地群に侵攻した際に翼空衛士軍と中国軍との間で停戦交渉の舞台として使用された航空戦艦である。リットンバーグは準1等級航空戦艦に分類され、設計は陸上攻撃と接近戦に特化したものとなっている。リットンバーグと同型の艦船が最初に開発されたのはルノワール3世の同型艦と同時期の事で第二次ガレア=テドル統一戦争期であるとされる。この艦級は元々、統一暦480年までは1等級航空戦艦に分類されていたが、下記の航空戦艦アラファトが登場すると、準1等級に格下げされた。リットンバーグと同型の艦船は2035年まで19隻が在籍していた事が判明している。
〔航空戦艦ジャヤックジャン〕
全長 :98.3m
兵装 :43mm連装機関砲 ×2
:100トン砲 ×1
推進器:反重力鉱石エンジン ×1
概要 :航空戦艦ジャヤックジャンは中国が浮遊陸地群に侵攻した際に翼空衛士軍において英雄として扱われた艦である。ジャヤックジャンはミレイユの戦い前、11月1日から11月12日までの間に中国軍による攻撃が激化していた際に単艦で斥候艦として使われた艦である。多くの翼空衛士軍の航空艦が撃墜される中で生き残り、単艦行動にも関わらず、中国軍機11機を撃墜しエース艦として有名だった。ジャヤックジャンは3等級航空戦艦に分類され対飛航艇を目的にテドル動乱後に設計され登場したコンパクト艦である。艦後部に搭載した100トン砲は陸上攻撃及び接近してきた敵に対する攻撃手段として用いられる。ジャヤックジャンと同型の艦は翼空衛士軍の保有する航空戦艦の2割を占めるとされる。
〔航空戦艦アラファト〕
全長 :171m
兵装 :28cm連装砲 ×4
:122mm連装艦底部砲×4
推進器:反重力鉱石エンジン ×4
概要 :航空戦艦アラファトはファーストコンタクト後の国連主導による交渉の際に地球人として初めて、浮遊陸地群に上陸する国連の代表団をロシア連邦領バシコルトスタン共和国ウファから副首都のガレア市へと護送する際に、代表団の乗った賓客船パルーム号の防衛を担当した護衛艦隊の旗艦を勤めた艦である。代表団と一緒にパルーム号に乗り込んだアメリカの報道官が船室から撮影し後にツイッター上で公開した映像にバルーム号を先導して浮遊陸地群を進むアラファトの様子が映っている。アラファトは統一暦480年に同型艦のミーティア、ケットシーと共に当時の1等級航空戦艦の能力を大きく超える最新鋭の航空戦艦として開発された。全部で3隻が建造されており、その設計は陸上攻撃と近接戦に特化したものとなっており、アラファト登場前の1等級航空戦艦の陸上攻撃手段が28cm連装砲2基、無誘導爆弾であったのに対して、アラファトとその同型艦は28cm連装砲を倍の4基に増設。無誘導爆弾を廃止した代わりに、艦底部には122mm連装艦底部砲を搭載した。アラファト、ミーティア、ケットシーの3隻には翼空衛士軍の歴史上最初の航空戦艦と同じ名前を付けられているだけに、翼空衛士軍内部では特別視された艦であったとされる。しかし、中国の侵攻の際にアラファトとミーティアが失われており、同型艦で現存する艦はケットシーのみだと考えられている。
〔ニャーマーニャ型飛航艇〕
全長 :12m
兵装 :15mm連装機関銃銃座×1
:ブラストランス ×1
推進器:反重力鉱石エンジン ×1
概要 :ニャーマーニャ型飛航艇は翼空衛士軍が二次ガレア=テドル統一戦争期に開発し現在まで運用されている3人乗りの主力攻撃飛航艇である。乗組員は操縦者、銃座、機関室を担当する。機体形状としては反重力鉱石エンジンの上に操縦者と武器ブロックが乗っている様な形状である。対地対艦攻撃兵装としてブラストランスと呼ばれるロケット噴射で飛翔する全長11mの大型槍を搭載しており、この槍には爆裂魔術と呼ばれる命中後に爆発作用のある魔法が掛けられており、対艦攻撃手段として有効な装備として搭載している。地球で飛行艇と言えば、航空機をイメージするが、飛航艇には翼が無く、エンジンもプロペラではあるが、機体の後ろ向きにスクリューの様に備え付けられている。
・ロイヤル・エア・ガード
総兵力100万人を保有している。兵士の大半は魔機構機人で構成される。平和文化革命時代に翼空衛士軍が帝国政府から独立した機関となった事から皇帝の身辺警護や首都の守護を目的に設立された。その後、第二世代型の魔機構機人が開発され魔機構機人の安全性が担保された事からこれらの第二世代型魔機構機人を使用して、その任務の用途を現在の各都市の治安維持にまで徐々に拡大させた。ロイヤル・エア・ガードは所謂、警察活動を行う組織である。ただし、有事の際には陸上での戦闘部隊の主力を担うとされる。また、実質的な影響力は低いが、名目上として皇帝を最高司令官に置いている。配備している装備の詳細は不明だが、陸上装備に特化している事以外では翼空衛士軍と近いと考えられている。地球国家との交流があった際にアメリカを通じてM11拳銃を500丁、MP5短機関銃を2,000丁、MP7短機関銃を1,500丁、HK416アサルトライフルを1,500丁、500MILLS散弾銃を1,800丁、M240機関銃を1,500丁、M110狙撃銃を500丁、AT‐4無反動砲を600基、輸入していた事が明らかになっている。また、実現はしなかったが、ロイヤル・エア・ガードの担当者がアメリカで戦車の存在を初めて知った際にアメリカ軍の戦車に興味をもったとされるが、浮遊陸地群には燃料となる石油が無い為に輸入を断念した話が残されている。
航空装備としては、準1等級航空戦艦を7隻、2等級航空戦艦を11隻、航空輸送艦を30隻、飛航艇を530機、保有している事が分かっている。
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参考資料
【※注意 この項目は書きかけです。現在、添付画像の選定中です。添付予定の画像の観覧は議論ページを参照】
・翼空衛士軍の2等級航空戦艦のスケッチ
・航空戦艦リャナンシーのスケッチ
・翼空衛士軍の3等級航空戦艦のスケッチ
・翼空衛士軍の準1等級航空戦艦のスケッチ




