兄弟券バイク・ロスしたー そのなな
ザックは一人、凄まじい勢いで駆け出して行った。街の人は皆、ただならぬ様子にビビりまくって逃げていく……。
しかし突然、ザックは立ち止まった。自らの考えに酔いしれ、上がったテンションのまま何も考えずに出てきてしまった。これから、どこで何をすればいいのだろうか……。
だが、その時に先ほどの警察署のやり取りを思い出した。ひょっとして、今なら魔法刑事ジャン・ギャバンが戻っているかもしれない。ザックは足早に、警察署へと向かう。
しかし、その道中で――
「よう、ザック……また会ったな。そんなに急いで、何処に行くんだい?」
聞き覚えのある声が、後ろから聞こえてきた……振り向かなくても、声の主はわかる。魔法探偵のケーン・カザミだ。ザックは聞こえなかったふりをして、その場を立ち去ろうとする。万が一、自分の計画に感づかれでもしたら……この男は、掛け値なしの疫病神である。人に不幸をもたらす力もまた、チート級なのだから。
しかし、ザックの考えは甘かった。
「おいおい……無視は酷いぜ。フライングスイッチ、オン!」
そう言うが早いか、ケーンは飛んだ……重力を無視してケーンは空を飛び、ザックの前に着地する。
「と、飛べるのか! お前は!」
ザックは思わず怒鳴りつけた……だが、ケーンはニヤリと笑う。
「ああ、フライングスイッチをオンすれば、簡単に飛べるんだよ――」
「訳わからんこと言うな! 私は帰る!」
そう言い捨てると、ザックは向きを変えて立ち去る……こんな馬鹿者が自分の計画に介入してきては、確実に失敗してしまう。ここはひとまず、家に戻って出直そう……ザックはまたしても足早に、屋敷への道を歩いた。
しかし、何故かケーンが付いて来る……。
「なぜ付いて来るのだ、貴様は!」
ザックが怒鳴りつけると、ケーンはニヤリと笑って見せる。
「いやあ、俺も暇なんだよ……お前らと遊ぼうかと思ってな」
「暇だったら働け! 探偵業に精を出せ!」
ザックは怒鳴りながら、ひたすら歩き続けていた……すると、あっさりと屋敷に到着してしまったのだ。
そしてケーンは、図々しくも屋敷の中に入り込んで来てしまった……。
「よう、シェーラ……お前さん、ここいらじゃあ二番目だ」
リビングに入ってくるなり、シェーラに話しかけるケーン……シェーラはきょとんとしている。
「え……な、何が二番目なのです?」
うろたえながらも、聞き返すシェーラ……するとザックが近づき、そっと耳打ちする。
「まともに相手にするな……一番は誰なのか、それだけ聞けばいい」
ザックの言葉を聞き、シェーラは不可解な表情を浮かべたが――
「で、では……一番はだれなのです?」
持ち前の素直さを発揮し、一応は尋ねてみるシェーラ……すると、ケーンはニヒルな笑みを浮かべた。そして、チッチッチ……と言いながら人差し指を揺らして見せる。
そして、親指で自らの顔を示す。
「俺さ」
「そ、そうなのですか……ケーンさんは凄いのです。何をやっても一番なのです……」
愛想笑いを浮かべ、答えるシェーラ……一方、ケーンは勝ち誇った表情だ。
その横では、ザックが頭を抱えている。隣にいるヒロコも引きつった表情だ。シェーラのような子供を相手に、あまりにも大人げない態度である……。
「にゃにゃにゃ? ニャンゴロウが来たにゃ!」
リビングに漂う、何とも言えない妙な空気……それを吹き飛ばしたのはミャアだった。ミャアはにゃにゃにゃにゃ言いながら、庭に行く。すると庭には、丸々と太った一匹の野良猫がいた。野良猫はミャアに対し、何かを訴えている。にゃーにゃー鳴いたり、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、尻尾をぶるんぶるん振ったり……。
「にゃ、にゃんとお! でかしたにゃ!」
いきなりミャアが叫んだ……他の者たちが見守る中、ミャアはキッチンに飛び込む。そしてスルメを握りしめ、再び庭に現れた。
「ニャンゴロウ! でかしたにゃ! さあ、ご褒美だにゃ!」
そう言うと、ミャアはスルメを差し出す。ニャンゴロウは嬉しそうにスルメをくわえて、庭の隅の方に運んで行った。
一方、ミャアはザックの方を向く。
「ザック! わかったにゃよ! 子供をいじめて喜んでる奴らの居場所が!」
「な、何だとお! でかしたぞミャア!」
叫びながら、立ち上がるザック……しかし、そんな楽しそうな話を聞かされたら、黙ってはいられない男がいた。
「おいおい……ずいぶん面白そうな話をしてるじゃねえか。俺にも聞かせてくれよ……」
言いながら立ち上がったのは、ケーン・カザミだ。ザックの顔色が、みるみるうちに青くなる。このチート野郎の存在を、すっかり忘れていたのだ。
しかし、空気を読めないし読む気もないミャアは喋り続ける。
「あのにゃ、大人のくせに子供をいじめて喜んでいるわるものがいるにゃ! そいつらの本拠地を、ニャンゴロウが見つけだしたんだにゃ! 今からザックが、そいつらをぶっ飛ばしに行くにゃよ!」
「おいおい、そいつらはデストロイじゃねえか……だったら、俺も付き合うぜ。潰しに行こうや……」




