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侍ウォーリアーズ バンバとジュリエット 8

「なあ、言ってみ」

「い、いや、お前に話すことなど何もないと……」

「嘘つけ。お前、何か悩んでるんだろうが。言ってみろってばよう」

「しつこい奴だな……」

「だ〜か〜ら〜、早く吐いちまえば楽になるんだよ、ザック。なあ、言ってみ」


 二十分ほど前から、ザックは魔法刑事のジャン・ギャバンにずっと絡まれ続けていた……。

 ジャンは普段、すっとぼけた男である。魔法刑事でありながら、基本的には極めてゆるい。万引きくらいなら見て見ぬ振りをする。道でケンカを目撃しても、血を見るようなものでない限り無視する男だ。

 なのに今は……ザックの悩みを敏感に感じとり、無意味なやる気を発揮させている。ロドリゲス兄弟を引き連れ、営業に廻っているザックたちの後を二十分以上も付け回し、「なあ、言ってみ」と言い続けているのだ……。


「なあ、言ってみ?」

 何十回目かの、このセリフ……さすがのザックも諦めた。いきなり立ち止まると、ジャンの顔を見る。

「ジャン……お前の口は堅いか? 秘密は守れるんだろうな?」

「へ? 何が?」

「だから、お前は秘密を守れるのかと聞いているんだよ私は!」

「ああ、そういうことか。うーん……」

 ジャンは言葉を止め、頭を抱えながら首を捻った。少し間が空き――


「わからん」


「わからんだと!? わからんでは困る! 私は秘密を抱えているのだぞ! 二つの組織が戦争を起こしかねないような秘密をだな――」

「ほう……それは魔法刑事としては実に興味深い話だな。是非とも教えてくれ」

 ジャンの目付きが変わった……獲物を狙う猟犬のそれに変わる。ザックは観念した。こうなるとジャンは更にしつこくなる。具体的には、通常時と比べると三倍のしつこさで動き回る。もっとも、どこぞの赤い彗星とは違い、動きの速さは三倍にはならないらしい。

 以前ジャンは、目星を付けた容疑者の自宅前に愛馬のサイバリアンに引かせた屋台を置いた。そして商売を始めてしまったくらいなのだから。結局、その容疑者はジャンのしつこさに震え上がり、自分から警察署に飛び込んでしまい自白してしまったのだ。

 そして……ザックもまた、ジャンのしつこさに根負けした。

「ジャン、実はな……」




「うわあ……そいつは非常にマズイな……それ知ったら、ラウル将軍は間違いなくブチ切れるぞ」

 ザックの話を聞き終わったと同時に、頭を抱えるジャン……ザックは、この事態の深刻さが、少しずつではあるが理解できてきた。

「ジャン……奴らは何故、仲が悪いのだ? 知っているなら教えてくれ」

「ああ、それな……俺も詳しくは知らんが、ヒューマンガスとラウル将軍は、若い頃にライバルみたいな関係だったらしくて、色々あったみたいなんだよ。まあ、今じゃ奴らも二つの組織のトップだが……両方の組織は冷戦状態だしな」

「そうか……」

 ザックは考えた。若い頃に何かがあり、その因縁を未だに引きずっている。となると……。

「仕方ない……こうなったら、私の持てるコネクションを総動員させ、奴らに話し合いをさせる。それしかないだろう」

「いや、そいつは無理だと思うよ……それにな、下手にお前が介入したら、なおさらヤバくなるぜ。さっきお前も言ってたじゃねえかよ。ヒューマンガスとラウル将軍の間に戦争が起こるかもしれねえぞ……」

 困惑したような表情を浮かべるジャン。だが、ザックの表情は対照的だった……自信に満ち溢れた口調で答える。

「フッ……その二人の仲など知ったことではない。私が話し合わせるのは、バンバとジュリエットだ。二人を密かに連れ出し、そして話し合わせる。これでもし、バンバがジュリエットのことを気に入れば……私は愛の天使だ」

 その言葉の後、ザックは胸を張った。そしてドヤ顔でジャンを見る。すると――

「ほお、そいつは面白そうだなあ……俺も混ぜてくれよ」

「はあ? 何を言っているのだ? お前は魔法刑事だろうが。仕事しろ仕事を……とっとと犯罪者を捕まえて来い」

「お前こそ、何を言ってやがるんだ……市民の平和を守るのも俺の仕事だよ」

 そう言うと、ジャンは笑みを浮かべる。悪巧みをしている悪役のような笑い方だ。ザックは激しく後悔した……大事な秘密を、こんな適当男に話してしまったことに対して。

 だが、今さら仕方ない。

「ええい、かくなる上は……お前も協力しろ! そうだ! お前が海まで行ってバンバを連れて来い」

「え? 俺が?」

 ジャンはぽかんとした表情で、自らの顔を指差す。しかし、ザックは容赦しない。

「当たり前だ! 今、手伝うと言っただろうが! さっさと行け!」

「何か面倒くせえな……わかったよお……サイバリアーン!」

 ジャンが叫ぶ。すると、どこからともなく駆けて来た灰色の馬……その馬こそ、魔法刑事ジャン・ギャバンの忠実な愛馬サイバリアンである。

 サイバリアンは凄まじいスピードで走って来て、ジャンの前でピタッと止まった。

「よしサイバリアン! 海まで光の早さでダッシュだ! 若さとは、すなわち振り向かないこと!」

 叫びながら、サイバリアンに飛び乗るジャン。サイバリアンは走り出し――

 あっという間に見えなくなった……。






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