表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自宅警備兵  作者: SIN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/50

LEVEL ∞

 晩酌をするのは好きだ。

 大勢でワイワイと喋りながら飲むより、1人で飲むのが好きだ。

 ツマミを食べながら飲むより、淡々と酒だけを楽しむのが好きだ。

 なので、自分が酒に強いのかどうかは良く分かっていない。

 デロンデロンに酔って記憶をなくした事もなければ、フワフワすると言う感覚を経験した事もない。呂律が回らなくなった事もないし、二日酔いになった事もない。

 親父はデロンデロンに酔って同じ話を何回もした挙句、翌日にはその事を忘れているので完全に酒に飲まれている。

 弟はフワンとした感覚を楽しみたいからと酒を飲んでいる。

 姉は1度酒を飲み過ぎて路上で寝オチた事があると本人から聞いたので、これもまた酒に飲まれている。

 旧母親は、酒は好きだがスグに腕の内側に赤い発疹が出来るので強くはなく、祖母は下戸だった。

 さて、新母親と俺はどうなのだろう?

 そんな単純な疑問から、飲み比べをしてみたいなと考えていた。

 開催する日をいつにするのか、どんな酒を用意するのか、ツマミは?あれ?妊活中の深酒は駄目なのではないか?

 色々と調べた結果、酒は控えた方が良いらしい事が分かったのだが、禁酒する事でたまるストレスの方が体には悪影響なようで、酒は常温か暖かいのを。と書いてあった。

 だからって飲み比べをして良い訳ではないので、妊活が終わってからにしようと飲み比べ実施日を延期したのだが、ソレは突然訪れた。

 本当に突然。

 土曜日、旧母親の所に泊まった弟が、甥と姪にゲームをさせてあげようと考えたらしく、連れ帰ってきたのだ。

 翌日は勤労感謝の日で祝日ではあるが、弟は仕事。にもかかわらず、弟自ら甥と姪に、

 「今日は泊まっていき」

 と、もの凄い良いオジサン発言をした。

 急遽夕飯の買出しに行く事になった新母親が、チョイチョイと手招きして来るので一緒に行く事になった近所のスーパー。その道中に、

 「眠れそう?」

 と、質問を受けた。

 「多分無理だと思います」

 数回軽く頷いた新母親は、スーパーに入ると野菜売りコーナーや魚、肉コーナーを完全に無視し、一直線に酒が置いてあるコーナーに向かい、日本酒片手にこう言った。

 「飲もう」

 こうして飲み会の開催が決定した。

 翌日仕事の弟が眠り、甥と姪が眠った夜の10時過ぎ、食器の片付けをしていると先に親父と新母親が酒盛りを始め、急いで混ざる。

 家にある酒は、1.8リットルの日本酒と1.5リットルの赤ワイン。それにジンと、自家製の珈琲酒。後は貰いに貰った梅酒の残りが1瓶と、親父が用意した缶ビール6本。

 「かんぱーい」

 出来る限り新母親と同じペースで酒を飲み、コッソリと飲み比べをしていると、12時過ぎに親父がご陽気に同じ話を始め、不意に歯磨きをして2階に上がって行った。

 「まだ飲みますか?」

 俺も新母親もまだ素面に近い状態だったので、飲もうと思えばまだ飲み会は続けられる。しかし、親父が寝てしまった事で新母親の中では「お開きにしたい」と言う気持ちがあるかも知れないので「飲み会終了の切欠になれば」と、気を利かせたつもりで声をかけたのに、

 「敬語はやめてって言ったでしょ」

 怒られた。

 酔っている訳ではなさそうなのに、言ってる事が良く分からない。

 そもそも、敬語はやめろなんて始めて言われた。

 もしかしてそれで酔っているとか?

 「水飲みますか?」

 「敬語やし…なに?馬鹿にしてんの?」

 絡み酒なのか?けど、口調がこんなにもハッキリしている酔っ払いには出会った事が無い。素面?にしては話の内容が可笑しい。

 もしかして、本音をぶつけられているのだろうか?にしても言葉使い位で何故怒るのだろう。

 「馬鹿になんかしてませんよ」

 思った事をそのまま声に出すと、どうしたって毒が出る。だから一旦頭の中で整理して、それから喋る。そうすれば言わなくても良いような事を言わずに済む。余計な事を言わなければ、調子に乗り過ぎたと後悔する事もない。

 それに、極度の人見知りである俺が、年上女性に対してタメ口など!

 「いつまでもそれじゃあ悲しいわ」

 一緒に暮らし始めて今日まで、本当にそんな風に思っていたのだろうか?だとしたら、新母親にとっては「言葉遣い位」では済まされないほど大きな問題だったのだろう。

 ストレスは体に良くはない。なんとかしなければ!

 「家の中に他人がいると落ち着きません。だから今日は徹夜です」

 少し考えて伝えた言葉に、新母親はハテ?と考え込んでしまった。

 馬鹿にしている訳でも、余所余所しい訳でも、他人扱いしてる訳でもない事を分かりやすく伝えようとした言葉だったというのに、全く伝わりませんでしたとさ。

 おしまい。

「自宅警備兵」はこれで最終話となります。

今までのお付き合い、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ