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自宅警備兵  作者: SIN


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23/50

7 th BREAK

 4月1日水曜日、3回目となる病院の待合室で突然襲い掛かってきた眠気と戦う。

 1月から続くカラ咳は夜から朝にかけて酷く、どう言う訳か昼間にはあまり出ない。出れば出たで中々止まらない厄介な物だが、出そうになっても只管我慢していると治まる場合があって、バイト中は気合で我慢している。

 「木場さーん」

 フラッと立ち上がって診察室へ行くと、聴診器を耳に装備した医者が胸を出せと催促して来た。

 せめて喋れ!

 仕方なく椅子に座り、長い時間心音を聞かれ「咳してー」と言われて1回、で済む筈がなく、5回ほど連続して出たと思う。

 そして終にレントゲン。意外と撮影はササッと終わり、一旦待合室に戻された。

 「木場さーん」

 名前を呼ばれて診察室に入ると、目の前にバーンと張られているレントゲン写真。胸が痛いので骨折しているかも知れないと思っていた肋骨だが、素人判断ではあるものの異常は見当たらなかった。しかし、医者から見れば可笑しな事があるのかも知れない、ちゃんと聞かねば…。

 「んー…特にー異常はー…ない、ですねぇ…」

 はい?

 レントゲンを前になにをシドロモドロ喋ってんだコイツは!

 いやいや、隅々まで丁寧に写真を見ているだけだろう。

 しばらく写真を眺めていた医者は、何度も唸っては患者の不安をかきたて、仕上げとばかりに真正面から顔を見て、さもそれが1番の解決策だと言わんばかりの堂々とした表情で言うのだ。

 「血液検査しましょう」

 と。

 注射が恐ろしいのに採血だとぅ!?

 「原因が分からんとアカンやろ」

 後ろから現れた看護師は、手にゴム製の紐的な物を持っている。

 コイツら、俺の腕に穴を開ける気だ!しかも原因が分からないのか!?原因不明で処方された咳止めにどれほどの効果があったと言うのか。

 逃げなければ。どうにか誤魔化して帰らなければ…。

 そうだ、今日は幸い世界が嘘を認めている日ではないか!

 「治りかけてきているので大丈夫です」

 懇親の嘘を付いて診察室から逃げ出そうとした俺の真後ろに看護師が立ち、

 「さっき出てたやないの」

 と、ニヤリと笑ったように見えた。

 くそっ!

 こうして俺の腕には今、1箇所穴が開いている…。

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