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【コミカライズ始動】アラフォー警備員の迷宮警備 ~【アビリティ】の力でウィズダンジョン時代を生き抜く~  作者: 日南 佳
第一章・幕間

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幕間2 激突! マリンフォートレス坂(4)

 序盤の試合運びは悪くなかった。会場も対戦相手も何でこんな所でヒロシマ・コボルトを出してきたんだと戸惑いでざわついていたが、うちのテイムモンスターは一味違う。

 こいつらはあのドラゴン戦に参加して、ゲームで言う所の経験値の代わりとも言える魔素をこれでもかと浴びている。その成長度合いは真っ当とは言い難く、通常個体の三倍近い能力差を叩き出している。

 最初はこの能力差が騙し討ちの役割を果たしていたが、向こうの一番手であるファイア・グリズリーとエルフの弓使いを倒した頃にはネタが完全にバレてしまっていた。

 相手の二番手で出てきた槍持ちのケンタウロスと高火力の魔法を連発するウィッチによって、マックスくんとタゴサクは倒されてしまった。

 ちなみに向こうのエルフやウィッチは田方ダンジョン産ではなく、通常個体の方だ。

 バタ臭いと言うか洋ゲー風味のモンスターで、TRPGやシミュレーションゲーム用のメタルフィギュアになっていてもおかしくない風体をしている。



 こちらの二番手はオーガのショーグンとケラマだ。

 オーガは攻撃力も耐久力も高いが、俊敏性に欠ける。一度コンバットゾーンまで出たら、回復のためにタクティカルゾーンまで戻って来るのに時間がかかる。

 継戦力の為には回復は必須、しかし戻るに戻れぬ事情がある。その隙間をうまい具合に埋めたのがヒールスライムのケラマだ。



 ケラマもまた、ドラゴン戦を経て強化されている。肉体的な部分では多少打たれ強くなった程度だが、回復力の伸びが異常だ。

 以前は回復対象に触れなければ回復魔法の対象にする事が出来なかったが、今では三メートルくらい離れていても回復魔法が届くようになった。

 さらにはその回復力も高まっている。ヒールポーションより少し劣る程度だが、常にヒールポーションを服用しながら戦っているのと同程度と思えば、その有用性は非常に高い。

 ケラマはショーグンの頭の上に陣取り、怪我を負い次第片っ端から回復させている。怪我を気にしなくてしなくていい分、ショーグンの動きもダイナミックになっていく。

 だが、それが仇となった。ウィッチの首をへし折り、ケンタウロスの下半身へ予後不良待ったなしのクリティカルヒットを叩き込んだ所で、相手の三番手のミスリルゴーレムの一撃がショーグンの脇腹に叩き込まれる。

 動きが大味になり回避出来ない隙を見せてしまったせいだ。よろめいたショーグンの全身をミスリルゴーレムの怒涛の連打が襲う。

 ケラマの回復も虚しく、ショーグンはそのまま倒れカードへと戻ってしまった。

 こちらのタクティカルゾーンまでぽにょんぽにょんと跳ねて戻ろうとしていたケラマだったが、もう一体の三番手、巨大な怪鳥であるシームルグの爪によって引き裂かれてしまった。



「マズいな……」



 これでお互い三番手同士。とは言え、こちらは状況があまりよろしくない。

 一桜は木製と思しき野球用バットが主力武器で、対空攻撃の手段が無い。ラピスは一応登録はしたが、面倒事が増えそうな気がする。なるべく一桜で対処したい。

 月島君の方は……ヒロシマ・エルフのシトリンを召喚している。

 田方ダンジョン産の特殊なエルフではあるが、能力的に通常のエルフとほぼ同等のシトリンは魔法も使えるし、弓も扱える。

 ダイアーウルフのジローではシームルグに攻撃が届かないと判断したのだろう。



「高……フォックスさん! 飛ぶ奴からどうにかしましょう!」


「分かった、シトリンの護衛は一桜に任せる。あの鳥を撃ち落とすように指示してくれ」



 俺は一桜のカードを取り出し、召喚する。一桜はタクティカルゾーンにふわりと降り立った。

 巨大モニターに一桜が映し出されると、会場が湧いた。やはりかわいい女の子は華があるからな。

 一桜はやたらめったら広いフィールドと巨大モニターに映る自分の姿、そして周囲の歓声に驚いたのか、あたりを見回したりおろおろしたり俺の方をじっと見たりしている。

 俺は一桜に視線を合わせて、指示を出す。



「一桜、あそこにでっかい鳥がいるだろ? シトリンがあいつを攻撃するから、お前はゴーレムや鳥からシトリンを守ってやってくれ。出来るか?」


「シトリンちゃん? はい! できます! 一桜はおねーちゃんですから!」



 一桜は胸の前で拳を握り、ふんすと鼻息を荒くしている。俺は一桜の頭をぽんぽんと撫でて、シトリンに合流するように促した。

 仕草もそうだが、言語能力が普通の小学生と変わらないレベルになりつつある。これも本人のやる気とドラゴン……ラピスの教育の賜物だろう。

 シトリンに話しかけているようだが、あちらは知能の発達がまだ今ひとつのようで、戸惑っている様子が見て取れる。



 ……今気がついたが、相手チームのテイマーが一桜を苦々しい表情で睨んでいる。何か気に食わない事でもあったんだろうか?

 俺が首を傾げていると、月島君が俺の方に近寄り、話しかけてきた。



「フォックスさん……マズいかも知れません」


「マズい? 何がだ?」


「ボク達、探索者協会の実証実験に参加してるじゃないですか……その、魔物の自我とコミュニケーション能力に関して」


「ああ、その結果が一桜を始めとする魔物のコミュニケーション能力の劇的な向上だな。……それが何か?」


「対戦相手の佐原さんと宮園さん、テイマー界隈でもかなり強硬的な保守派でして……実験を始めるにあたっての最大の抵抗勢力が彼らだったんです。ボクらにやたら突っかかって来てるのは前々からなんですけど、実験の参加を表明してから余計にウザ絡みするようになってて……」


「で、実験の結果を目の当たりにしてあの表情って事か」



 月島君が深刻な表情で頷く。



「もしかしたら……一桜ちゃん、狙われるかも知れません。覚悟だけはしておいて下さい。こっちも気にかけておきますから」



 そんな危機的状況とはつゆ知らず、当の本人の一桜はコンバットゾーンに入る直前で立ち止まり、俺にニッコニコで手を振っていた。

 俺はというと、そんな一桜の無事を願いながら手を振りかえす事しか出来なかった。

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