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物部の書評広場  作者: 物部がたり
あ行————
16/100

上橋菜穂子 『獣の奏者<探求編><完結編>』

講談社(講談社文庫) 【ファンタジー】 発行期間:2006年11月21日 - 2009年8月11日 著者:上橋菜穂子 漫画化有り アニメ化有り

 はい、今回は獣の奏者の後編です。探求編と完結編ですね。長い物語なので、読み終わった時の感動はひとしおですね。意見は分かれるでしょうが、私はこれ以上ない終わり方だと思いました。傑作と言われるゆえんですね。


 まず、上橋菜穂子さんがこの、探求編と完結編を書くことになった、経緯から書いていきましょうか。


 実はこの『獣の奏者』は『闘蛇編と王獣編』で完結さした作品だったそうです。それがある人から「この完璧な物語が損なわれてもいいから、エリンの物語をもっと読みたい」みたいな事をいわれ書く事にしたそうなのです。


 それと、アニメ化も上橋さんのやる気を出させたのだとか。そういう事が重なり『探求編と完結編』を書く事になったのです。


 だけど、取って付けた感はまったくなく、『探求編と完結編』で本当の『獣の奏者』という作品になったのだと私は思います。


 続きを書いてもらえて本当に良かったです。それでは簡単なストーリーの紹介をしていきましょう。


 物語の主人公エリンはある人と結婚してジェシという男の子を産みました。誰と結婚したかというと――教えない方が良いでしょう。だけど無口な人とだけ教えておきます。


 エリンも無口、結婚相手も無口、じゃあ、そんな二人の子供は無口、かというとそうでもなく、凄い口達者です。作中でエリン自身も不思議がっているぐらい、良くしゃべる。


 子供がいるなら、子供と楽しく暮らしています、という描写から物語に入ると思うでしょう。だけど、始まって早々エリンとジェシは離れ離れなんですよねー。


 なぜ、エリンがいないかというと、ある村で起きた闘蛇大量死の原因を探求するため、エリンは出張中です。あ、エリンは晴れて、獣ノ医術師になっていますよ。


 エリンの母親も獣ノ医術師でしたから、エリンは幼いころから憧れていたんですよねー。子供は親の背中を見て育つもの? ですからね。


 闘蛇の大量死の原因には触れませんが、ファンタジーとはいえ説得力のある謎でした。生物学的な見解で詳しく説明されます。こういうところはミステリーっぽいですね。


 生物学的と言えば、王獣も闘蛇も本当にいるのでは? と思わせるほどに作りこまれた幻獣でした。何から何まで細かく、作りこまれた幻獣。そして、ここまで作りこまれた小説はそうそうありませんからね。


 話は飛びますが、過去に起きたという、大災難が作中に大きく関わってきます。一応簡単にその大災難の事に触れておきます。


 かつて、神々の山脈(アフォン・ノア)の向こう側で起きた、大戦争がありました。闘蛇大地を闊歩し王獣が大空を飛翔する大戦争です。


 その大戦争で使われた、生物兵器こそが王獣と闘蛇です。『闘蛇編・王獣編』の書評でも書きましたが、王獣の方が闘蛇の百倍は強いのです。


 闘蛇が何万、王獣が何千、という規模の戦争だったそうです。最強であるはずの王獣はその大戦争で殆どが死んだそうなのですよ。ん? おかしいですよね。だって闘蛇よりも王獣の方が強いのですから。


 いくら数では闘蛇の方が多くても、闘蛇が王獣に勝てるはずないのです。例えるなら、地を這う蛇と空の王者鷲並みの力の差があります。


 いくら、闘蛇といえども、空から襲われてはたまったものではありませんよ。で、その大戦争で逃げ延び、王国を作ったのがジェ一族です。民族問題や戦争問題を語った作品でもあります。


 そして、王獣編でもその大災難が語られていましたが、本幹までは語られなかった。しかし、完結編ではその大災難の真相が明らかになります。歴史もうまく回収されますよ。どうやって、闘蛇が王獣に勝つのか? ということですね。


 もうあれは神話でした(笑)。人間は禁断の知識みたいなものを知らずにはいられない生き物なのでしょうね。いくら戦争を起こせば大災難が起きると言われていても、口だけでは人間は納得しない。


 いくら、核兵器の知識をこの世から抹消してもいつか、また、核の知識を知る者たちが出てきます。歴史は繰り返しますからね。


 その度に過ちを繰り返し、二度と戦争などやっていけないと、悟るのでしょう。ちゃんと自分の目でその大災難(戦争)の悲惨さを確かめないと人間は納得しない。


 今では戦争の記憶も薄れつつある現在、深くは言及しませんが再び戦争を起こそうと考えている、人たちがいるのも事実ですね。


 そして、エリンは王の命を受け、王獣部隊を結成することになるのだった。と、まあ、こんな感じです。はい、大災難が起きるのは明白ですね。


 壮大な物語なので、この短い書評では語ることができません(汗)。


 そして、上橋さんが描きたかったもう一つの大きな問いは『家族の愛』です。これは家族の愛の物語なのですよ。


 エリン一家の愛の物語。普通の一家団欒ではありませんが、これも一つの愛、なのだと思いました。母と子の愛、父と子の愛。子が親を思う愛。エリンがいかに家族を愛しているのかが、痛いほどに伝わってきました。


 そして、エリンや父親がジェシに聞かせる話は感動ものです。


 エリン一家を待ち受ける運命とは?。ありがとうございました。

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