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派手なギャルと地味なぼく ~目立たないけどあの子、なんか気になるんだけど~  作者: 美濃由乃
夏休み

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28/46

浄化される


夏祭りの会場へは姉帯さんの家から歩いて行けた。

この辺では一番規模が大きい祭りだ。

まだお昼過ぎだが、すでに沢山の人が来ており、多くの出店で賑わっている。

夜には花火もあるので、これからも人はたくさんやってくるだろう。

特設されたステージもあり、太鼓や祭り囃子の音が響いてくる。

もともと楽しみだったぼくは、実際にお祭りにきてみて、場の空気もあり、かなりテンションが上がっていた。



「うわぁー!すごい!人がいっぱいだね!姉帯さん!」

「うんうん、いっぱいだね、弟月くん。」


「見て!新妻さん!焼きそばが売ってるよ!」

「うんうん、いろいろ美味しそうだね。」


「姉帯さん!あの人が持ってる綿あめ!すっごいおっきいね!」

「うんうん、お姉さんの胸もおっきいよ。どう?」


「わぁ!金魚すくいだ!ねぇ新妻さん、金魚すくいって難しいかな?ぼくやってみたいな!」

「うんうん、後から一緒にやってみようね。」


「すごい!太鼓の音って響いてくるんだね!ドンドンって!」




「結、天使が見えるんだけど。」

「私も見えるわ、天使が楽しそうに遊んでる。ここ天国だったっけ?」

「天国ってここだったのね。心が浄化されるわ。」

「わかる。風のない海のように穏やかになる。」



はっ、ついついはしゃぎ過ぎちゃったよ。

友達とお祭りなんて夢のような出来事にテンションが上がりすぎてしまいました。

ぼくだけ楽しんでしまって、ふたりは大丈夫かな?


そう思って姉帯さんと新妻さんを見ると、ふたりは悟りを開いたような穏やかな表情をしていた。

とりあえず怒ってはいないみたい、かな。よかった。


「ご、ごめんね。つい楽しくて…。」

「気にしないで弟月くん。お姉さんにもっとその天真爛漫なお姿を見せて。」

「思い出は写真として形にするから、もっと無邪気にはしゃぎまわっていいんだよ。」

「なんか、そこまでされると流石に恥ずかしいよ。」


三人で笑いあう。お祭りの陽気な雰囲気もあり、些細なことでも楽しく感じる。


「弟月くん、そんなにお祭り楽しみだったんだね。」

「うん、家族以外とお祭りに来るのが初めてでね。姉帯さんと新妻さんが初めてでぼく、よかったよ!」

「え、お姉さんと結が初めてがいい?弟月くんがそう言うなら私は3」

「言わせねえよ!」


「おっほん、ウチらもだいたいはね、ふたりで来てたよね。」

「そうね、だから今年は弟月くんが一緒でお姉さんと結も嬉しいな。」



「そ、そんな。ふたりと一緒にこれて嬉しいのはぼくの方で、でも、そう言ってくれてぼくも嬉しいな。」



(ああ~心が、心がキュンキュンってなるぅ。)×2


「あ!ラムネだ!ビー玉入ってるやつ!いいなぁ。買おうかなぁ。」

「夏の風物詩だよねぇ。」

「じゃあお姉さんが買ってあげる。ほら、弟月くん、ラムネを上げるからお姉さんに付いておいで。」

「え。いいの⁉」

「不審者みたいになってるから。」



「あれ、姉帯さんと新妻さん!」

「ん?」

「え?」


急に声をかけられ振り向くふたり。

そこにはクラスメイトの男性陣がいた。

どうやら友達同士で遊びに来ているようだ。考えてみればこの辺では一番大きなお祭りだ。みんなも来ていても何もおかしくはなかった。


「ふたりで来てたんですか?」

「浴衣すごい似合ってますね!」

「俺たちも遊びに来てたんですけど、よかったら一緒に見て回りません?」


みんなもお祭りでテンションが上がっているようだ。

学校では遠巻きに彼女たちを見ているだけだったみんなが積極的だ。

これが、夏祭りパワー!


っていうか、ぼくには絶対に気付いてないよね、みんな。


「ウチら今日は弟月くんとデートしているから。」

「え?」


「お姉さんの身体は弟月くんのものだから諦めてね。」

「え?」

「…え?姉帯さん、それって、ヒッ」


ふたりの言葉でぼくがいることに気付いたみんな。

気付いてもらえたのは良かったのだが、最悪の形で注目を集めているような…。

冷たくも燃え上がるような視線でぼくを見てくるんですけど…。


「そういうことだから、ごめんね。」

「じゃあね~。行こっか弟月くん!お姉さんがラムネ買ってあげますからねぇ。」


ふたりに連れられてその場を離れる。


二学期の学校…。

ぼくは平穏な学校生活を送れるのだろうか。すこぶる不安である。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「くそぉ、弟月め~!」

「クラスの美女ふたりと夏祭りなんてリア充過ぎるだろ!」

「おい!見ろ!姉帯さんとラムネ回し飲みしてるぞ!間接キスだ!」


「俺は今血の涙を流しそうだ。」

「お、落ち着けよお前。」



みんなから離れた後も背筋に悪寒を感じるのだった。


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