ノアール、今度こそ完結する
前回のダイジェストォォォ!!!だよ
ちっちゃいオジさんは、野良猫と踊った。
深田は退場した。ジャギーは関西弁を話した。
そして──
セインツは、壁にめり込んだままだった……。
異世界・魔王城。
漆黒の翼を広げ、ノアールが空中を舞っていた。
「ケケケ……死ね、死ね、死ね!」
ズガーン!
ズガーン!
ズガーン!
放たれた複数の雷撃が、エダルを襲う。
「ヒエッ!」
「ヒエッ!」
「ヒエ~!!」
エダルは寸前のところで、それらをかわす。
「オカダを……ちっちゃいオジさんを……返せ~!!」
(いや……それは、お前のせい……)
エダルは心の中で冷静にツッコんだ。
ズガーン!
ズガーン!
ズガーン!
「ギェェエエ!!」
雷撃の一つが、セインツに直撃した。
沈黙。
「オマエ、よくもセインツを!!」
(いや、だから……それ、ノアールがやったよね……? 私、関係ないよね……?)
ズガーン!
ズガーン!
ズガーン!
雷撃は、さらに激しさを増していく。
(くっ……こうなったら、仕方がない……)
「ノアール! 私の最強呪文を受けてみろ!!」
エダルが詠唱を始める。
だが──
ズガーン!
ズガーン!
ズガーン!
「キャハハッ! 死ね、死ね~!」
(いやいや……こういう時って、詠唱が終わるまで待ってくれるものじゃないのか……?)
必死に回避するエダル。
その時──
異世界と現実世界を繋ぐ、あの渦が現れた。
そこから現れたのは、ジャギーとオカダ。
「ジ、ジャギー様!!」
エダルが驚愕する。
しかし、ノアールは雷撃を止めない。
「ノアールさん……!」
悪魔の姿となったノアールに、オカダは言葉を失う。
なお、壁に埋まっているセインツには気付いていない。
「あれは……ノアールが魔力を完全に解き放った姿か……!?」
ジャギーも目を見開く。
「オカダ……ノアールを元の姿に戻すには、お前の協力が必要だ!」
「わ、私の……?」
「ああ。この紙に、ノアールへの思いを書くのだ。詩で……!」
(え……? 詩!? なんで、詩なの!?)
「早くしろ! 急げ!!」
そう言って、紙とペンを押し付けるジャギー。
オカダは、必死に思いを込めて書いた。
『ノアールさん
あなたは、いつもかわいい笑顔で私たちを癒してくれました。早く、いつものあなたに戻ってください。
P.S
パンティストッキングの略ではありません』
提出。
沈黙。
「ちがーう!! これは手紙や!! それに、P.Sの一文はいらんやろ!! やり直し!!」
ビリビリに破られる。
(詩……? 詩って……なんだっけ……? あ、こういうの……?)
『ノ:のど越し爽やか
ア:あいつも飲んでいるビ
ー:ー
ル:ル』
提出。
沈黙。
「“あいうえお作文”やないか~い!! しかも、“あいつも飲んでいるビール”って、ノアール関係ないやん!! やり直し!!」
再び、ビリビリ。
(詩……そうだわ! 確か……韻を踏むのよ!)
『Yo Yo チェケラッチョ
ノアール、あーる。ここにいる!
悪魔でもかわいい、あくまでも個人的意見!
いつものあなたに戻ってほしい、私の星ぃ!
Yo! チェケラ!』
提出。
沈黙。
──グッドサイン!
「よくやった、オカダ!」
ジャギーはそう言うと、その詩?を火にくべた。
(え? も、燃やすの……? 私の思いは……? 私の苦労は……?)
燃え上がる紙から立ち昇った煙が、空中のノアールを包み込んでいく。
「ゲホッ、ゲホッ……にゃ、なんだ、これは!? や……やめりょ……やめろー!」
煙に包まれ、ノアールが悲鳴を上げる。
やがて、その煙はぎゅっと収束し、球体を形成した。
『Yo Yo チェケラッチョ……』
球体の内部から、謎のサウンドが響き渡る。
(こ……これは……)
『ノアール、あーる。ここにいる!』
(私が書いた詩だわ……)
『悪魔でもかわいい、あくまでも個人的意見!』
(や、やめて……私の黒歴史を、公開しないで……)
赤面するオカダをよそに、サウンドは容赦なく鳴り続ける。
『いつものあなたに戻ってほしい、私の星ぃ!』
その様子を、ニヤニヤしながら眺めるエダル。
『Yo! チェケラ!』
ピカーンッ!!
球体が燦然と輝いた。
まばゆい光が辺りを包み込む。
やがて──
光が静かに収まると、球体はゆっくりと地上へ降りてくる。
地面に触れた瞬間、球体はフッと消え──
そこには、元の姿に戻ったノアールがいた。
ノアールは、すやすやと穏やかな寝息を立てている。
「ノアールさん……!」
オカダは駆け寄り、その小さな身体をぎゅっと抱きしめる。
「よ……良かった……」
「むにゃむにゃ……おか……あさん……」
眠ったまま、ノアールがそう呟いた。
そして──
セインツは、最後まで壁にめり込んだままだった……。
◇
一か月後。
魔法都市スゲーンダーナ。
「おーい! リンディ、アリアさーん!」
二人の姿を見つけたノアールが、大きく手を振りながら叫ぶ。
「あ、ノアール! それにオカダも!」
気付いたリンディが、ぱっと表情を明るくして駆け出した。
その様子を、微笑ましそうに見守るアリアとオカダ。
リンディは勢いよくノアールの前に立つ。
「おはよー、ノアール!」
「おはよー、リンディ!」
二人は笑顔でハイタッチした。
魔王城での出来事の後──
ジャギーはノアールとともに、魔法都市スゲーンダーナに移り住んだ。
エダルは、野望を抱きノアールたちを襲った罪によりジャギーの怒りを買い、今ではジャギーの館で使用人として働く身となっていた。
セインツは筋肉愛に目覚め、真の筋肉を求める旅に出た。
そして今日は──
オカダが、現実世界へ帰る日だった。
「オカダ……本当に帰っちゃうの……?」
リンディが、ぽつりと呟く。
「ええ……」
オカダは、寂しさを隠すように微笑んだ。
「ノアールは……寂しくないの……?」
「寂しいけど……でも、思い出があるから。大丈夫よ……」
ノアールは、少し背伸びしたように答えた。
「……強くなったな、ノアール。えらいぞ」
そう言って、アリアが優しく頭を撫でる。
(ノアールさん……)
「そろそろ行きましょ。闇の扉の準備ができている頃よ」
「ええ……ノアールさん。アリアさん、リンディさん……お二人のこと、忘れません。どうか、お元気で」
「ああ。オカダも、元気でな!」
「わ、私も……私も……オカダのこと、忘れないから!」
リンディは涙をこらえながら、そう告げた。
◇
ジャギーの館。
「戻ってきたか。準備は整っているぞ」
ジャギーがそう言うと、闇の扉がゆっくりと姿を現す。
「ジャギーさん……本当にお世話になりました。今まで、ありがとうございます」
オカダは深く頭を下げた。
「フッ……オカダがいなければ、私はここまで早く戻れなかった。礼を言うのは、私の方だ」
「ノアールさん……あなたと過ごした日々は、絶対に忘れません。私の一生の宝物です」
オカダは、涙をこらえながら言った。
「わ……私も……忘れない……オカダのこと、絶対に……」
ノアールの瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれる。
(ノアールさん……)
オカダの視界も、滲んだ。
(……ありがとう)
そして──
オカダは、現実世界へと戻っていった。
◇
十年後。
現実世界。
「オギャア、オギャア」
「松下さん、元気な女の子ですよ。今日からパパですね」
看護師にそう告げられ、松下は照れくさそうに笑った。
「あ、ありがとうございます!」
「奥様にも声をかけてあげてください」
「はい!」
そう言われ、松下は妻の手をぎゅっと握り、優しく声をかける。
「恵美、頑張ったな。元気な女の子だよ」
「ふふ……ありがとう。ねえ、名前……もう決めてあるの……」
「え? どんな名前だい?」
「希望の『希』に、『歩く』って書いて──
『希歩』っていうの……」
「うーん……ちょっと、キラキラネームすぎないかな……?」
「大丈夫よ。きっと、明るくて、強い女の子になるわ」
(また……よろしくね。ノアールさん……)
その様子を、Tシャツにふんどし姿のぬいぐるみが、静かに、そして温かく見守っていた。
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