ノアール、完結する?
前回のダイジェストォ!!
オカダとちっちゃいオジさんは、現実世界に転移。
ノアールは悪魔になる。
そして、ムキムキになったセインツは、壁にめり込んだ!
ノアールの放った魔力により、魔王城とその周辺一帯は、深い闇に覆われていた。
魔法都市スゲーンダーナ。
「アリアさん……あれ……」
リンディが、魔王城の方角を指さす。遠くの空が、不自然な闇に染まっていた。
「ああ……」
「ノアールたち……大丈夫でしょうか……?」
不安を押し殺した声で、リンディはアリアに尋ねる。
「大丈夫よ」
アリアは、はっきりとそう言った。
「ノアールとオカダなら、きっと大丈夫。だって……約束したでしょう? 必ず、また遊びに来るって」
その言葉は、リンディに向けたものでもあり、同時に自分自身に言い聞かせるためのものだった。
アリアは、リンディの手を強く握る。
胸の奥に、不吉な予感が渦巻いていたが、それを少しでも打ち消したかったのだ。
(ノアール……オカダ……)
◇
現実世界。
オカダが元の世界に戻ってきてから、一週間が経っていた。
(私が異世界にいた時間は、半年ほど……。けれど、この世界では、ほとんど時間が経っていなかった……)
家族も
この街も
スーパーも
すべてが以前と変わっていなかった。
(それに……他の人たちには、ちっちゃいオジさんが見えていない……)
ちっちゃいオジさんは、オカダの隣で、軽やかなステップを踏んでいる。
(私が元の世界に戻されたのには、きっと理由がある)
エダルの言葉が、脳裏をよぎる。
――ジャギー様は、異世界に転移した。
(もし、その“異世界”が……この世界だったとしたら……)
ちっちゃいオジさんは、野良猫とにらみ合っている。
(ちっちゃいオジさんが一緒に転移したのも、偶然じゃない。きっと、ジャギーさんに呼ばれたから……。だから──)
ちっちゃいオジさんは、野良猫と踊り始めた。
(私が、この世界でジャギーさんを見つける。たとえ、何年かかっても……。ジャギーさんの力なら、あのときの魔王城へ戻れるはず……)
オカダは、小さく息を吸い、空を見上げた。
「ノアールさん……待っていてください」
そして、静かに――しかし、確かな意志を込めて宣言する。
「私が必ず、ジャギーさんを見つけます。“チョモランマ”の名に懸けて……!」
ピィーッ。
ホイッスルが鳴り響いた。
この日、オカダは弟のサッカーの試合を応援しに来ていた。
「風よ! 炎よ! この身に宿れ! 《ファイアサイクロン》!!」
キックオフ直後、そう叫ぶ相手チームの選手。
(今どき、いるのね。中二病の高校生……)
オカダがそう思った次の瞬間。
彼の蹴ったボールが、明らかに炎と風を纏った。
(え? いや、待って。あれ……どう見ても……)
炎と風を纏ったボールは、一直線にゴールへ飛び――
ズサッ!
鋭い音を立てて、ネットに突き刺さった。
会場が、静まり返る。
誰もが、言葉を失っていた。
ピィイイイイーー!!
遅れて、審判が笛を鳴らす。
ポケットから取り出されたのは――赤いカード。
「……退場。11番、深田くん」
深田と呼ばれた少年は、何事もなかったかのように微笑み、ゆっくりとフィールドを後にした。
その背中を、オカダは見つめていた。
(……やっぱり、あれは魔法!)
◇
「あ、あの……」
退場処分となり、控え室へ戻ろうとする深田に、オカダが声をかけた。
フカダ……
オカダ……
――紛らわしいな、おい!
作者、もうちょっと分かりやすい名前を付けろよ!
(↑誰?)
呼び止められ、振り返る深田。
その視線が、オカダの隣に立つ“ちっちゃいオジさん”を捉えた瞬間、空気が変わった。
「ほう……。“サッカー”を極め、この世界で力を蓄えてから元の世界へ戻るつもりだったが……」
その目が、ぎらりと光る。
「まさか、こんなにも早く我が“魔力の源”が戻ってくるとはな……」
(……やっぱり)
オカダは、確信した。
「あなたが……ジャギーさん……」
その瞬間――
深田?
ジャギー?
もうややこしいので、以後この人はジャギーでいきます!
(↑だから誰なんだよ!)
オカダの言葉に、ジャギーの眼光が更に鋭くなる。
「その名を知っているとは……」
一歩、距離を詰める。
「貴様、勇者の仲間か!?」
そう叫ぶと同時に、ジャギーは呪文を唱え始めた。
(ま、まずい……!)
オカダは息を呑む。
(ジャギーさんは、魔王軍最強の魔女……! こんな場所で魔法を使われたら……!)
「ま、待ってください……!」
「闇よ! すべてを焼き尽くせ! 《ダーク・ファイアボール》!!」
ジャギーの手から放たれた火の玉は――
ピンポン玉サイズだった。
しかも、ヒョロヒョロと、今にも落ちそうな速度で飛んでくる。
(……え? 虫より遅い……。でも、当たったらとんでもない威力だったり……?)
だが──
火の玉はオカダに届く前に、ふっと消えた。
沈黙。
次の瞬間――
がくり、とジャギーがその場に膝をついた。
「……あ、あかん……」
肩を震わせ、呻く。
「ダメや……ワイ、何をやっとるんや……。こんなん、魔法ちゃう……! ワイの知ってる魔法ちゃう!!」
(……関西弁? え、どういうキャラなの……?)
オカダは、心の中で全力ツッコミを入れた。
「あ、あの~……ジャギーさん?」
オカダは、恐る恐る声をかける。
そして――
これまでのいきさつを、ゆっくりと語り始めた。
数分後。
「なるほど……話はわかった。早速、魔力の源を取り込むとしよう」
ジャギーはそう言うと、ちっちゃいオジさんとアイコンタクトを交わす。
次の瞬間――
二人?は横に並び、なぜか両腕をグルグル回し始めた。
「え? 君、今なんて言ったんだい? い、いや……僕の聞き間違いかな……。うん、きっとそうだ。僕はてっきり――」
ジャギーが、謎のセリフを語り始める。
「オマエ……コロス……」
「ち、違うって! そ、そんなこと考えてないってば──!」
(……何なの!? そのやり取り!!)
オカダが心の中で全力ツッコミを入れた、その瞬間。
二人?が同時にバンザイのポーズを取り、ジャギーが叫ぶ。
「魂のレボリューション!!」
同時に、二人の全身がまばゆい光に包まれた。
(ま、眩しい……!)
やがて光が収まると、そこには――
一人の魔女が立っていた。
深田の身体は地面に横たわっている。
そして、ちっちゃいオジさんの姿は、どこにもなかった。
(ちっちゃいオジさんが……消えた……。でも……今は悲しんでいる場合じゃない!)
「キャッホー!! これや! これがワイの身体や!!」
両手を掲げ、ジャギーが歓喜の叫びを上げる。
「あ、あの……深田くんは、大丈夫なんでしょうか……?」
「ああ、問題ない。こやつの魂は、もともとこの身体に残っていた。すぐに目を覚ますだろう。それよりも──」
ジャギーはそう言って、真剣な表情で呪文を唱え始める。
「出でよ……闇の扉よ!!」
叫ぶと同時に、あの時と同じ“渦”が出現した。
だが――
(……ちっちゃい)
そう。
直径、わずか1センチほどの渦だった。
沈黙。
そして次の瞬間――
がくり、とジャギーがその場に膝をついた。
「……あ、あかん……」
肩を震わせ、力なく呻く。
「こんなん、ちゃう……ワイの魔法とちゃう……。魔力が……魔力が、全然回復しとらんのや……!!」
(魔力が回復してない……? もしかして……)
オカダは鞄の中を探り、ある物を取り出した。
それは――
“銀のペットボトル”だった。
「ジャギーさん、これを……。この中には、“魔力の水”が入っています」
「ま、魔力の水やて~!! フフ……やるではないか。クク……血が騒ぐ。これで帰還できるぞ……我が“本来あるべき世界”へ!」
こうして――
ジャギーとオカダは、再び異世界へと戻るのだった。
ノアールは思った。
(主人公の私の出番がないなんて……そんなのあり!?)
セインツは思った。
(壁にめり込んだまま、1エピソードが終わるなんて……そんなのあり!?)
そんなのありなんですぅ~!
(↑だから誰なの……?)
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