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11 想像以上です

エヴァ目線に戻ります!!


口コミと言うのはどれだけすごいかを、今、身をもって体験しておりますです。


侍女サマたちは、すごく、すごくいい仕事をします。

さすが一流。さすが天下の国のトップオブ侍女。


なんていうか、今まで甘く見ていてごめんなさい。

反省します。

反省しますが…頑張りすぎだと思うのです。


私は一人しかいないわけでして。

一人と言うことは、一人でできる仕事量も決まっているわけでして。


更に更に?

トップオブ侍女サマたちと違って凡人なので、仕事も遅いわけですよ。



そんでもって、あの『魔王』のおかげで、私の頭はショート寸前なのですよ。





いやむしろ、もうショートしてバグってなにもできないっていうか、壊れてるっていうか。


「ちょっと、エヴァ様?現実逃避してトリップしてる場合じゃありませんわよ?」


わかってます。わかっているんです。

…ですが…目の前には現実逃避をしたくなるほど高く積まれた書類。という名の注文書。


「この状態は…なんなの〜〜〜〜〜〜!!??」

何十…いや、一人三本やら四本やら注文しているから下手したら百本超えます。

え?なんのって?

そりゃあ…


「エヴァ様の化粧水。すごい人気ですわね。たった数日でここまでとは…明日には倍になっているかもしれませんわね。さすがですわ!エヴァさま!」

「いやいやいや、嬉しくないから…どうするんですか、この量…一人じゃ作れませんよ。こんな数…」

「…まあ、そうですわねぇ。どうしましょう」


って、にこにこ言われてもねぇ。


アーちゃん絶対『どうしましょう』とか思ってないでしょう。

だって、目の奥が笑ってる。

私は見たのです。

アーちゃんの瞳の奥がきらりと光るのを。

あれは…面白がっています。この状況を楽しんでいます。


確信してます。

アーちゃんはディセル殿下同類です!


「あら、ご冗談を。エヴァ様。わたくしあんなに病んで…変態ではないですわ」


えー…侍女サマにも『変態』扱いされる完璧なる氷の王子ってどうなの?

遠い目をして、


ここには居ないディセル殿下を想います。


ああ、やっぱり…思い出さなきゃよかった…。

ディセル殿下のことを思い出すと、どうしてもあのことを思い出してしまいます…


あうう。


「さて、冗談はここまでにして。本当にどうしましょうね。この量。エヴァ様どのくらいのペースでどれくらい量産できますの?」

「うーん。どんなに頑張っても1週間で10本が限度ですかね…けっこう手間隙かけてるんですよ。スペシャルな化粧水なもので…」

「ちなみにストックは?」

「この城にあるのは10本。あと、お店に確か…30本ぐらいですね。コアなファンはよく買って行きましたけど、

うちのお店はまだそんなに顧客が多くないですし…月に20本もあれば足りたんですよね。」

「…全然たりませんわね」

「…そうですねぇ。足りませんねぇ…」


ふたり揃って溜息が出てしまいます。


「それに、エヴァ様は化粧水で仲間を作ろうとしただけで、ここまで売るつもりでいた訳ではないですしねぇ。あまりにこちらにかかりっきりになると王妃様との面会もできませんわね」

「…それじゃ、ここにきた意味ないですもんね」

「いえ、そんなことはないですわ。ですが、本当にこの量はちょっと予想外でしたわ。いい仕事したようですわね。あの子達…。」


あはは、ソウデスネ!

ちょっと頑張りすぎですケドね!


そんなときでした。


バアアン!!


突然ドアが開かれました。

あ、いえ自動ドアではありませんよ?ただちょっと乱暴に開けられただけです…よ?


呆然として、ドアのところを見るとそこにはめちゃくちゃ『お姫様〜』な感じの、美人なんだけど、ちょっと近寄りたくないような「女王様」っぽい、女性二人がおりました。


…えっと。…誰?


「ちょっと、あなたがこの魔法の化粧水の売り子?」

「えーと、はあ、まあ」

「おほほほ。なかなかでしてよ?わたくしたちが自らこうして求めてきたのですから。」

「ええ、ええ。そうよねお姉さま。」

「さ、早くよこしなさい。そうね、まずは2本ずつでいいわ。一週間たったらまた届けなさい。わたくしたちは一週間に一度後宮に…」

「あの!ごめんなさい。すぐには無理です。」


「…なんていったのかしら。よく聞き取れませんでしたわ」

「ええ、ええ。わからなかったわ!」


わあお。なんていうか分かりやすい顔されてます。

いじめっことか、こういう顔するんですよね。

美人なのにもったいない。というか、美人だから余計に意地悪さが出てます。

でも、ここで負けたりしません。

物事には順番と言うものがあるのです。

注文してくださったかたから、お渡しするのは当たり前です。

「申し訳ありませんが、注文して頂いた順にお渡しします。それと、予想以上に注文をいただきましたので、お渡しには時間がかかると思います。それでもよろしければ注文書に記入してお待ち下さい。」

「…なにを言っているのかしら。この小娘は。わたくしたちを誰だと思っているの?」

「誰だろうと、関係ありません。」

「なっ…!」

「お姉さまにむかって、なんて口の利き方!」


あ、油断しました。

美人姉の方に気を取られていたので、後ろに控えていた妹らしき女性には意識を向けていませんでした。

さっと出てきた彼女は手を振り上げています。

あ、叩かれる…!


そう思って、目を閉じた時でした。


「そこまでですわ。オリエンナ・ラシュエント様、カリシュ・ラシュエント様」

アーちゃんがいつの間にか、私達の間にはいり、振り上げられた手を止めてくれていました。

さすがスーパー侍女サマ!

ん?ちょっと寒い…あれ?アーちゃんから冷気が漂っている気がするのは…気のせいでしょうか?


「この方は、化粧品を売るためにこの城に来たわけではありませんのよ。お二方。王子が直々に王妃様のことをお願いした薬師様ですの。ですから、大事な大事な方ですの。無礼はわたくしが許しませんわ」

「…平民に王妃様を任せるなんて、ありえませんわ。なにかの間違いでは?」

「そ、そうですわ!放しなさい!侍女の分際で失礼です!」


アーちゃんは妹さんの手を放してにこりと笑いました。

…怖いです…


「この方は、さる国の姫君であらせられます。下がりなさい。貴方達も王妃様の為に招集されたのでしょう?この方に無礼なことをして王妃様のお怒りを買いたいのですか?ああ、もちろん王妃様だけでなく、殿下三人もエヴァ様のことを大事にされてますから、なにかあったらそれはもう、お怒りになるでしょうね…」


はい?アリアスさん?今なんて?


「…いいでしょう。今回は引きましょう。ですが、その平民が『さる国の姫君』とは思えません。これが嘘だったら、承知しないわ。覚えてなさい!行くわよ。カリシュ!」

「はい!お姉さま!」


嵐のように来たお嬢様たちはまるで、悪役のような台詞をのこして去っていきました。

が。

アリアスさん?

さっき、なんかとんでもないこと仰ってませんでした?


「…アーちゃん。いつ、私がさる国の姫君になったのでしょう。それに王妃様や殿下まで出して…。こちらが怒られちゃいますよ…」

「あら、わたくしは嘘は言っていませんわ。」

「いやいやいや。」

「大丈夫ですわ。エヴァ様!ここでは堂々となさっててくださいませ!というかラシュエント姉妹。ついに出てきましたわね。あの威張りんぼう娘たち。エヴァ様に手を上げようとするなんて許せませんわ。なにかお仕置きしようかしら…ああ、それにしても先ほどのエヴァ様、凛々しかったですわ。さすがディセル殿下が認めたお方ですわ!」



ええと、アーちゃんは大丈夫と言っていましたが、全然大丈夫ではないような気がするんですが…

というか、私が姫君っていう設定はありえないでしょう!


ああ。さきほどの怖い姉妹は侍女さまズが気をつけろと言った二人だったようですし…

面倒なことになりました。

目の前には、やはり消えてくれない…むしろ増えてる注文書。


ああ!これをどうしろというのでしょう!

想像以上の出来事に、ぐったりとうな垂れるのでした。



これでストックがなくなったので、次回は少しお時間頂きます。


今回も読んで頂きありがとうございました!

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