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裏・空白の国・ディセル目線3

皆様、本当にありがとうございます!!


皆様のおかげで頑張れてます!!




…納得がいかない。


エヴァの部屋を俺の隣の部屋にしようという提案に、アルシェイとレイランドから猛反対を受けた。

母上の部屋からもそう遠くないし、どうせいずれは一緒の部屋になるのだから、別に今隣の部屋でもいいと思うのだが…


ま、普通は反対するだろうな。

今は、まだ。


しかし、もっと納得がいかないのは、俺の部屋の隣ではないことが分かったときのエヴァの安心した表情だ。


なんだ、そのホッとした顔は。


久しぶりなのだから、もっと側に居たかったが、仕事が残っているために離れねばならなかった。

…しょうがない。今日の夜にでももう一度逢いに行くか。

そう、心に決めたのだった。





執務室に入ると、昨日までに片付けたはずの書類がまた高く積みあがっていた。


「…はぁ」


…さっきまでは綺麗だったんだがな…

しょうがない。と深く溜息をついて書類に目を通し始めた。




エヴァにつけた『侍女』であり『影の護衛』であるアリアスからオカシな連絡が入るまで、俺は書類との戦いに集中した。



それは、まもなく仕事が終了するだろうという所まできたときだった。


音もなく、執務室に入り込む気配。


…めずらしく、気配が消せていない。


「どうかしたか。アリアス」

「…。」


反応がない。一体どうしたというのだ?

ふと、気付いた。

…これは、エヴァ。

よっぽどアリアスに気に入られたな。

そう思った瞬間だった。


「んもおおおおおおおおお!最っ高ですわあああ!殿下ああああ!」


予想通り、いつもよりテンションの高い話しかたをするアリアスが震えながら叫んでいた。


「ちょっと殿下!めちゃくちゃエヴァ様可愛いんですケド!?・背は小さいけど、さわり心地は良好!すぽっと抱き抱えるに最高のサイズですわ!なるほど。

殿下の言う通りでしたわ!ううん、素敵!!あら!肌もつるつるで最高でしたわあ!」


侍女モードそのままの言葉使いで、感動しているアリアスに頷く。


そうだろう、そうだろう。

ん?というか、お前密かにさわり心地やら言っていたが抱きついたかのか。


「しかし、想像以上に若い方でしたわね…。でも本当は25歳なんて詐欺ですわね。まさかわたくしよりも年上とは思いませんでしたわ。うふふ。殿下とならぶと軽く犯罪に見えますものね」

「…だから?」

「いいえ?」



っち。

侍女モードのアリアスは、かなりニヤニヤしたまま報告を続けてくる。


少々腹が立つな…。

それとともに少し動揺した。

…そういえば、気にしたことがなかったが、アレの容姿はかなり若く見え小さくて可愛い。

同い年だが、一緒に並ぶと犯罪に見えるほどなのか…


しかし、俺の表情筋は動かず無表情のままだ。


まあ、結局どんな風に見えようがかまわないのだがな。


と、次の瞬間アリアスの言葉で俺の表情がさらに冷たいものになった。


「レイランド殿下は、エヴァ様がお気に入りなんですのね。さっきなんて手をこうとって…チュって祝福されたのですわ。なんともお似合いで、美しい姿でしたわ。」



…手にチュウ…だと?



あの可愛い弟とエヴァが手を繋いだり、手にチュウしている姿を想像してしまった。


が、アリアスが期待に満ちた目をしているのを見て、つい声が低くなってしまった。


「…ほう。で?何が言いたい?アリアス」


と冷たい目で一瞥した。

するとつまらなそうに、ひょいっと肩をすくめて「なんでもないですわ」と言った。


アリアスが去った後もあの二人の姿を想像してしまい、仕事のペースが乱れてしまった。


…俺としたことが…


まあ、もちろん少々遅れはしたが書類の仕事は終わらせたが。


レイランドとエヴァか。

…似合いすぎる。可愛い弟と可愛いエヴァ。眼福だな。

だが、チリっと胸が痛む。

…まさかこの俺が、あのレイランドに嫉妬するとは思わなかったな…。


心配はないとは思っているが、それとこれとはどうやら別らしい。

嫉妬なんて感情をこの俺が感じるとは思わなかったから、ふと笑みがこぼれる。

本当にエヴァが絡むと俺は人間らしくなれるらしい。

…あいつは、すごいな…



時計を見ると、もう夜も遅い時間になっていた。

…エヴァはもう寝ているか。


そう思ったが、なぜか足はエヴァの部屋へ向かって歩き出していた。


エヴァの部屋に着くと、『影』が動くのがわかった。

…まあ、アリアスだろう。

無視して中に入った。



想像通り、エヴァはぐっすりと寝ていた。


大きなベッドにすっぽりと布団をかぶり健やかに寝ている。

黒く長い髪をすくうと、懐かしい感触がした。

そのまま、頭をなでて寝顔を見る。


頬はピンク色に染まり、少し開いた唇からは「すうすう」と規則正しい寝息。

あまりに無防備で、つい顔がにやける。


「ん…」


小さく発せられた声に、どきりとする。

そうして、一緒にいた時のことを思い出す。


出会った頃のエヴァはずっと泣いていた。

あいつが安心するように、ずっと一緒に寝ていたのだ。

やっと、笑顔を見せてくれた時は、なんだこの可愛い生き物はと驚いたものだ。

懐いてくれていると思っていた。

確かな好意を感じていた。

だから、お前を迎えるために俺は動いた。


だが、迎えに行ったときは…もうお前はあの家にはいなかった。


「エヴァ…探した。どうして逃げた…?お前は、あの日の約束を、覚えているか?」


俺は、言っただろう?『迎えに来る。待っていろ』と。

もちろん寝ているエヴァは答えない。


「…お前がどうやって俺の魔法からすり抜けたのか分からないが…この手に戻ってきたなら…もう放さない。逃がさない。…永遠、お前は、俺のものだ」


触れたところから感じる体温に、胸が熱くなる。

自然と触れたくなって体を寄せると、アリアスの視線を感じた。


・・・お前、空気読めよ…


アリアスが覗いているのは知っていたが、邪魔をしないなら放置しようと思っていたのに、「興味しんしんです!」っていう空気をだしてくるなら話は別だ。


「去れ」


一言つぶやくと気配が消えた。


居なくなったことを確認し、エヴァの白い首元に唇を寄せた。


「…ん…」


首元に俺のものと言う印がついたのを確認したあと、その小さい唇を奪った。


「…永遠…」


こぼれ出た愛しい名に、胸が震える。

ああ、やはりお前が側にいてくれるだけで、こんなにも幸せになれる。


明日のエヴァの反応を想像して、また笑みがこぼれた。

きっと、驚くだろうな。


また明日。

そう言える幸せをかみ締めて、俺は部屋を後にしたのだった。



あと一話か二話でとりあえず、裏・空白の国は終わります。


なるべく早く更新したいと思います!



あぁ、ディセル様ってば、全然男らしくてカッコいいところが出てこない!!


何故でしょう…(^^;)))

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