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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第91話 終焉

 佐伯が二連続で拳銃を撃つ。

 しかし、どちらの弾も村長には当たらなかった。

 村長は獣のような動きで佐伯を押し倒す。


 吊り橋が大きく揺れる中、佐伯は勢いよく蹴りを放つ。

 爪先が村長の顎にクリーンヒットし、仰け反った村長が尻餅をついた。

 村長は外れた顎を無理やり戻す。


 橋のロープに引っかかったスマートフォンは二人の対決の一部始終を撮影していた。

 大いに盛り上がるコメント欄には、佐伯の素性に言及する視聴者がいた。


『この娘、元アイドルのNONAKAじゃね?』


 佐伯が拳銃を構えるも、村長に腕を押し退けられた。

 結果、弾は明後日の方向に飛んでいってしまう。


 怒り狂う村長は佐伯の首を絞める。

 佐伯は口から泡を吐きながら必死に抵抗した。

 しかし力の差で上手く引き剥がせずに苦悶する。

 その表情はスマートフォンで全世界に配信されていた。


『マジでのなかじゃん』


『誰それ知らん』


『地方のマイナーアイドルだろ。それか地下アイドル』


『確かAVデビューがリークされてた』


『良い乳や』


 首から手を離した村長が佐伯を執拗に殴る。

 細身の老体からは想像できないほどに力強く、佐伯は鼻血を噴き出した。

 鈍い痛みに涙を流す佐伯は、明滅する視界に悪態をつく。


「……こ、のッ」


 佐伯は拳を振り払うと、村長の襟首を掴んで頭突きを食わらせた。

 見事な一撃にコメント欄が喝采を上げる。


『いいね』


『さっきの蹴りもそうだけど喧嘩慣れしてそう』


『NONAKAって元ヤンじゃなかったっけ』


 頭突きを受けた村長は呻く。

 既に大部分が割れていた翁の能面が完全に外れて落ちた。

 晒された素顔は、幾多もの死闘を経て凄惨な状態となっていた。

 皮膚が抉れて血が固まり、露出した骨には亀裂が走っている。

 辛うじて無事な目は佐伯を睨んでいた。


『やばい顔』


『グロすぎるだろ』


 佐伯が拳銃を発砲する。

 弾丸は村長の額から生えた木片に命中した。

 そのせいで軌道がずれ、村長の頭蓋と脳の一部を削り飛ばすだけに留まる。

 常人なら致命的だが、村長を死に至らしめるには不十分なダメージであった。


「ウオァッ!」


 村長は佐伯の首に噛み付こうとする。

 佐伯は咄嗟に腕で遮る。

 村長の尖った歯が彼女の前腕にめり込んだ。


「……ッ」


 激痛に顔を顰める佐伯は、震える手で拳銃を動かす。

 銃口を村長の眉間に押し付けると、そのまま引き金に力を込めた。


 銃撃が村長の頭に穴を開けた。

 後頭部が爆散し、血と脳漿が飛び散る。

 仰向けに倒れた村長は呆けた顔で起き上がろうとする。

 そこに佐伯がとどめの一発を撃ち込んだ。


 片目を弾丸に貫かれた村長は、吊り橋から転げ落ちた。

 そのまま川に落ちて消える。

 濁流に呑まれた村長は二度と姿を見せなかった。


 佐伯の勝利により、コメント欄はかつてないほど熱狂していた。

 一方で佐伯自身は冷静だった。

 腕に刺さった村長の歯を引き抜いて捨てると、彼女は吊り橋を渡り切って立ち去る。

 やがて吊り橋が崩落し、スマートフォンの水没で配信は強制終了となった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >銃撃が村長の頭に穴を開けた。 >後頭部が爆散し、血と脳漿が飛び散る。 >仰向けに倒れた村長は呆けた顔で起き上がろうとする。 >そこに佐伯がとどめの一発を撃ち込んだ。  ……よし。いくら…
[気になる点] 首を絞める村長が佐伯を執拗に殴る。 村長片腕なのに首絞めたまま佐伯ちゃんを殴れるのかな?
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