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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
14章 エルフの森の大きな樹
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14-39 イグドラ大森林 エルフエ・ロフのシアンさん

いいですか。



です。

時計はないのに、時計の音だけがカチカチと聞こえてきそうな程の沈黙が流れる。

気まずいというか、俺から話しかけて良いものか……。


ちらりと隣を見ると、恥ずかしそうに合わされた両の手のひらをおっぱいの前で指を組むなどして落ち着かない様子のシアンさん。

エルフエ・ロフの制服に身を包んでいるという事はここの従業員だとは思うんだが……。


「お、お酒! お酒を飲むんだよね!?」

「え? あ、ああ……」


突如叫ぶように声をあげたかと思ったら、テーブルの前にある氷とお酒をグラスへと注ぎ始めたんだが……ちょっと待った。

そのお酒、かなりアルコール度数が高くて本来ならば割って飲むお酒なのだがその量を注ぐとロックになるのでは?


「は、はいご主人様様!」

「お、おう……」


わあ……やはりロックか。

これはきついが……ここで失敗をしたとなればシアンさんは余計に緊張して再起不能になってしまいかねん。

ここは一気に……。


「ぐっ…………ぷはぁ!」


きっつ……強、ひぃぁぁ。

おおおお……ぐわああっと来る……!

胃に落ちてなお存在感を主張してくる。


「グラスが空かないようにする……!」


いや、ちょっと待ったもう一杯はきつい。

何か、何か話題を振って酒を避けねば!


「そ、そういえばシアンさんの知り合いのエルフって、もしかしてママ?」

「へ? あ、そうだよ。ママってリリーの事だよね? リリーはお父様の同世代のご友人かな。小さい時に遊んでもらったりしていたよ」


やっぱりそうだったのか。

イエロさんの友人という事はアトロス様とも同世代なのかな?

……次にママと話す機会があればの鉄板ネタいただきました。


「じゃあ仕事の紹介ってここなのか? てっきり冒険者になるのかなって思ってたよ」


なんとか勢いに流されずに二杯目はちびちびと飲みながら会話を続ける。

うん。別に一杯目も一気飲みする必要は無かったんだが、俺も戸惑っていたようだ。


「えっと、冒険者にはなるよ?」

「そうなの? あーでもママなら顔も広いから、シアンさんに合いそうなパーティーを紹介してくれそうか」

「ううん。私はソロの予定だよ。精霊樹を見守りに来たのが主な目的だから、パーティーだと予定が自由に決められないのは困るんだよ」


あーなるほど……じゃあソロ冒険者になるって事か。

まあでもシアンさんの実力ならソロでも大丈夫か。

ソロが難しい時はアイナ達に臨時パーティーを頼めば組んでくれるだろうし。

……ん? となるとなぜ今制服を身に纏い、エルフエ・ロフで働いているんだろうか?


「……ご主人様様の言いたい事は分かるよ。暇なときはお仕事を手伝って欲しいって言われたんだよ。人族の社会を知らない世間知らずにはちょうどいいお仕事だって、お酒をお客さんに注いで話を聞くだけの簡単なお仕事だって聞いていたんだけど……こんなエッチな服を着るのは聞いてなかったかな!」

「あー……いや、でもその制服ってもっと着こめたと思うんだけど……」


何故かキャストオフ済みなんだよなあ。

もしかしてさっきまで接客をしていてゲームで負け続けたのか?

もっと自分に有利なゲームにしないとだめだぞ?

シアンさんなら……腕相撲とか?

……シアンさんと腕相撲なんて見応えも抜群で最高なのでは?


「……今日はサイズがなかったんだよ」

「あー……」


シアンさん……大きいもんなあ。

この店には他にもおっぱいの子はいるけれど、そんなには多くは無いからなあ。

ママよりは小さいとはいえ、既製品では着こむのは難しかったのか……。

よく見てみると座った事で裾とか胸元とか色々ギリギリじゃないか。


「ううー……こんなひらひらだったり薄っぺらいの着た事ないんだよ! ずっと鍛錬してたから筋肉もついてるし、似合う訳ないかな!」

「いやあ……凄く似合ってるけどなあ」

「っ!?」


っと、さっきの一気飲みの酒が回って来たかな。

ついつい思ったことが口に出てしまった……いかんいかん。


「あーシアンさんも何か飲むか? ここはお客がキャストの飲み物代も出すんだけど、飲みたいのを飲んでいいよ」

「え、えっと……」

「遠慮しなくていいぞ。お勧めは……『ハニーエキストラ』かな? 甘くて飲みやすいから人気だって聞いたな」


んーでもこの場にはないなあ。

どうやって頼めば……と思ったら、ハンドベルがあった。

これを鳴らせば来てくれるっという訳で、ベルを鳴らすとリリーママが顔を出してくれたのだが、悪戯が成功したかのような茶目っ気溢れる笑顔を見せてくれました。と。


「ん……美味しい。ありがとうご主人様様」

「いいえー。まあ、今日は楽しく飲もうか」


普通におしゃべりしながら飲むのも楽しいし。

シアンさんには精霊樹について色々聞いておいた方が良い事もあるだろうしなあ。

まあ酔いも回ってきているし、記憶は曖昧になる気がするけど……。


「あーでも、これじゃあ流石に耳は無理だろうなあ……」


リリーママが言うには大丈夫な子を連れて来ると言っていたけれど、今日はシアンさんの初出勤という事で知り合いの俺を当てたかったんだろうな。

期待していなかった……って訳じゃないから残念ではあるけれど、チャンスは今日だけって訳じゃないし次の機会を――。


「……いいかな」

「ん? ああ、おかわり飲む? またハニーエキストラでいい?」

「私の耳……触ってもいいかな」

「ふぇ?」


耳……?

あれ? 俺さっきもしかして口に出してた……?

うう、目がとろんとして酒ではっきりと頭が働かないんだが、んん?


「ご主人様様が喜ぶなら。ちょっと恥ずかしいけど……いいよ?」

「え……と、でもエルフにとって耳は大事なんだろう?」

「そうだけど、お父様からも自分が良いって思った相手になら構わないって言われてるからご主人様様なら大丈夫かな」


それなら……と酔って働かない頭だと流されそうになるが、耳の重要性をママに聞いた後に知り合いの耳となると少し手が止まってしまう。

俺が手を出しかけたところで止まっているとシアンさんは俺の手を取り、自分の耳へと持って行って俺の指がシアンさんの尖った耳の先へと触れる。


「んっ!」

「おー」


触れた。触れてしまった。

一度触れてしまったら先ほどの戸惑いなど忘れたかのように触り続けてしまう。


おおー。人に比べて全体的に少し硬めなんだな。

耳上部のくるんってなっている部分が長く、尖っている先に行くほどにくるんが解消されて硬さが増していく。

そして顔を真っ赤にしながら身悶えているシアンさんの体温が耳にまで届いているかの如く温かい。


「っ!? ん……んぅ……っあ……そこ、駄目……」


くにくにっと先っぽを撫でると、何とも言えない触り心地だな。

硬いのだが人体らしい硬さで妙な中毒性がある。

テレサのお腹……に近いような遠いような?


「あっ! んっっぅ! や、そこ、ばっか……りぃ……」


んーこの先っぽの感触どこかで……もう少し触れば出て来るかな?

いや、んん? うーん……鉛筆についている消しゴム……でもないな。


「ふっ……! んんぅ。はっ、はっ、はあっ……」


やはりエルフの耳はエルフの耳でしか表せないという事か。

んんー……薄いところも平らな部分が広くて指で挟むとちょっと楽しい。


「はぁーはぁー……こしゅこしゅ……あふ。ん、んっぅぅ……」


耳たぶ……はないんだな。

シャープな印象通りなのだが、何かの名残なのか人族であればある耳たぶに当たりそうな部分は柔らかいんだな。


「あっ……んぅ。くふ……ぅ……っ!」

「おっと」


シアンさんが俺の膝の上に倒れて来た。

んー……? 撫でやすくしてくれたのかな?


「はぁ……はぁ……あ……まだ……ぁ……背中、ぞくぞくしちゃうかな……」


裏っかわ好きだなあ。

こしょこしょしたくなる。


「ひぁぁ! あ……はぁん、ぅぅ……も、駄目っ……」


ずっと触っていられるなあ。

これは……楽しいな!

あ、そうだ。

そう言えば俺帝国で『とっても気持ちのいい素敵な耳かき』を買っていたな。

せっかく耳を触らせてもらったのだし、今ちょうど膝の上に頭が乗っている事だしお礼を兼ねて――。


「邪魔するわよ!」

「ここにご主人がいる事は分かってるんすよ!」


おおお?

ソルテと……レン……ゲッ!?

酔って頭がふわふわしていたのが一瞬で冷めて正気に戻り、急速に頭が回り始める。


なんでソルテとレンゲがここに……はっ!

リリーママがぺこぺこと後ろで頭を下げているのだが、更にその後ろにはウェンディが……!

ウェンディは水の大妖精……イエロさん同様リリーママも従わざるを得なかったと……。

ついでにシオンも頭を下げているのだが、手紙の内容がばれたという訳だろう。


だ、だがエルフエ・ロフは健全店!

少なくともクドゥロさんが営むお店よりもずっと健全店だからセーフ!

別に変な事も……耳は触ったけど、それ以外はしていないし……って、シアンさん?


皆さん来てますよ? 膝の上から起きた方がよろしいのではと思うのですが、何故か息が荒くそんな状態ではないと……!


「……そこにいるのってもしかしてシアン?」

「ご、ご主人!? シアンに何してるんすか! 股間に顔を埋めさせるなんて……!」

「ちょっと待て!? それは大きな勘違いだ!」


確かにそっちからの角度だとそう見えても仕方ないけれどそういう事はしていない!

ここ! 健全店! お店でそういうことをしてはいけないお店だからね!?


「なるほど……どうやらエルフのお耳も獣人の尻尾のような感覚があるようですね」

「っ! やっぱりそうなのね……危惧していた通りだわ」

「あー……そういうことっすか。つまり、シアンはご主人に耳を許したんすね……」


な、なんだ?

なんで三人だけ共通で分かったみたいな感じなんだ!?

獣人の尻尾のような感覚……確かにエルフの耳の扱いは獣人の尻尾のような扱いだけど……。

いやいや、まさか獣人の尻尾は触られると気持ちよくなるみたいだけど、エルフの耳もそうなのか?


つまり、今シアンさんは気持ちよくなって脱力している状態……。

ちらりとシアンさんの様子を見ると仰向けになっており、顔を紅く染めてとろんとした瞳を俺へと向けている。

どことなく吐息が桃色で、真っすぐに俺を見つめているようにも見えるのだが……多分、皆にもそう見えていそうだな。


「すぅー…………ギリギリどうにかなるか」

「声に出てるわよ主様」

「なんでどうにかなると思えるんすか……」

「では、家に帰ってから詳細をお聞きするとしましょうかご主人様?」

「……はい」


正座してお話します。

正座してしっかりお話しますのでどうか! どうかエルフエ・ロフ禁止令だけはご勘弁願えないでしょうか!

エルフの耳には触れたけど、人によって違うとかまだまだ物足りないんです!

それにほら! エルフエ・ロフは健全店ですので!

これにて14章は終了となります。


15章は予定は決まっているのですが、詳細が未だなので少し考えます。

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― 新着の感想 ―
[一言] あれ? イツキ、ちょっと調子に乗ってない? ちょっとそろそろオイタが過ぎるのでそろそろ痛い目にあっても良いのでは? エルフの里でも正直大した活躍してないし。
[一言] シアンちゃんこれは友達以上恋人未満って事か.....あと一息だ!!!オリゴールとメイラちゃんも頑張れ!
[気になる点] イツキさん優しいから 強くならず(痛がらないように)離れすぎず(感触が分かるように)の絶妙なバランスが高DEXからのおタッチに…なったと思うんだ。 優しさが伝わるから気持ち良いのだろう…
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