14-38 イグドラ大森林 白百合の聖母
んんー!
久々の我が家だー!
……けど埃っぽい。
ダーマに家の管理を頼めば良かったなあ……。
いや、あいつを家に入れるのはなんか怖いからこれが正解か。
よし。それじゃあ掃除しますかね。
「ご主人様はご自身のお部屋だけで構いませんよ。他の部屋は私達が行いますので」
と、ウェンディから優しい言葉を貰ったのでベッドから綺麗にしていくとしよう。
シーツなどは表に出しておけば洗濯をしてくれるそうなので一度出し、家具の埃などは叩いて床へと落としてから掃除する。
そういえばシアンさんとはアインズヘイルに着いた後すぐに別れたんだよな。
知り合いのエルフさんの所へと向かったのだが、仕事は何をするんだろうか?
知り合いのエルフが仕事を紹介してくれるらしいのだがやはり冒険者になるのかな?
シアンさんは守り人だし、腕が立つようだしなあ。
あ、そういえばイエロさんから貰った手紙があったな。
一人の時に読むようにって言っていたようだけどどれどれ?
『やあやあご主人様様。シオンちゃんから聞いたんだけど、どうやらご主人様様はエルフの耳に御執心らしいね! 残念ながら僕達の村にはそういうお店はないのだけど、アインズヘイルにはエルフのお店があるんだろう? エルフの営むお店に精霊樹を連れて行けばご主人様様の願望が叶うと思うよ☆ミ』
…………ほう。
―――――
夜。
皆も馬車での旅で疲れていたのか今日は夕食後風呂に入った後はぐっすりの様子だった。
そして俺はというと久しぶりにフリードとの鍛錬の時間。
「ふむ。新しい武器でございますか」
「そう。なかなかいい感じだろ?」
「そうでございますね。お客様には合っているかと思います。ところで、隼人様はお元気でしょうか?」
「ああ元気元気。タフだよなあ。こっち戻ってきてすぐにアインズヘイルを出て王都に向かったからもう数日したら帰ってくるんじゃないか?」
転移で送っていくって言ったんだけどなあ。
正式な手続きをしてこっちに来ているから俺の空間魔法の存在がばれるきっかけになったら困るからってさ。
「左様でございますか。教えていただきありがとうございます」
「お礼を言うなら、もう少し手加減とか……」
精霊樹が自動で防いでくれていたのに、その上から腹パンされて動けない俺に慈悲をくれい……。
普通に話しているようにみえて、地面に横たわる俺とそんな俺を見下ろすフリードの図なんだよう。
「手加減をしているとその新しい武器に防がれますからな。私との鍛錬はご自身の防御面や耐久力の強化。地龍の加護もあるのですし、もう少し頑張りましょう」
「はぁい……」
厳しいが、この厳しさがフリードに鍛えて貰っている理由でもあるからな。
死んでないのだから手加減は一応してくれているが、遠慮は無いのが良いんだよね。
「……とは言え、隼人様が戻ってくるのであれば屋敷の状態をより完璧にしなければならないのでそろそろ戻ろうかと思います」
「っ! それじゃあ今日はここまでにするか。送ってくよ」
こうしてフリードを送り届けた後は自宅へと転移を……しない。
戻ってくる転移先は錬金術師ギルドにし、そのまま目立たぬように移動を開始。
スキルを駆使して周囲を警戒し、シロ達がいない事を確認するといざ入店! エルフエ・ロフへ!!
『『『いらっしゃいませー!』』』
「いらっしゃいました!」
エルフのお姉さんたちが迎えてくれたのだが、俺だと気付くと今日は普段よりも接客態度が良い気がする!
具体的には席に案内する際も妙に近いというか、当たってますけども!?
当ててんのよですか? 挟んでんのよですか!?
「聞いたわよー。お兄さん。精霊樹を助けてくれたんでしょ?」
「ま、まあ?」
「すごぉーい。私達ぃ森から出てても精霊樹はとても大切だから本当にありがとぉー!」
……うは。
普段は触れようとするとさっとうまい躱し方をするエルフエ・ロフの女の子達が自ら押し付けて来てます!
まさしく好待遇! し・か・も!
「わあああ! もしかしてこれが噂の小さい精霊樹? 凄い凄ーい!」
ゲームに勝ってもいないのに既に服装がセクスィなんですが!?
俺の来店と同時に普段は何度もゲームで勝たないと露出の増えない制服を脱ぎながらやってきましたけど、股下数センチのスカートで精霊樹に興奮してぴょんぴょんしちゃうと見えちゃいますけどいいんですかそうですか!
いやあイエロさんの言う通り精霊樹効果様様ですよ!
周りの客が驚いてるからね。
おう俺と普段来ているお前らも来てたのか。
誰がソルテにチクりを入れた裏切り者なのか気にならない訳じゃあないが、まあ寛大な心で許してあげよう! はっはっは!
この調子ならばいけるのでは?
本当にエルフ耳いっちゃえるのでは?
俺がじっと見つめているとぴこぴこ動かしてきて、表情はにこっとしていて許されそうな……いやむしろ誘っているような気さえもしてくるんですけど今日こそいけるのでは?
「うふふ盛り上がっていますね」
「っ! ママ!?」
「ようこそお越しくださいました。ご主人様様」
こちらが緊張しそうな微笑みを見せたのは『白百合の聖母』と呼ばれるこの店のママだ。
美人揃いのエルフエ・ロフの中でもひときわ目立つ美人であり、その名の理由とも思われる白く美しい肌と色素の薄い髪色。
落ち着いた大人の魅力があり、更にはウェンディと同等のおっぱいの持ち主であるママ。
普段は接客をすることはなく、店の奥にいるのだがたまに店の方に顔を出した瞬間に立ち会えると幸運とまで言われる存在が話しかけてくるとは!
そしてご主人様様と呼んでくるとは!
え? え? お隣に? 接客するの?
してくださるの?
うわ、めっちゃ優しくて甘い良い匂いする。
「精霊樹の事イエロから聞いております。本当にありがとうございました」
「あ、えっと、いえ俺はそんな感謝されるほどの事は……」
でか……ではなく、ママからエルフの森で感じた様な花の香りをふわりと感じる。
そして顔をあげられた際に視線が交わりにこりと微笑まれるとドキッとするな。
「聞けばご主人様様はこのお店も懇意にしていただいているとのこと。スタッフ一同、感謝の気持ちをこめて精一杯のおもてなしをさせていただきます。勿論……ご主人様様のご要望もスタッフにはお伝えしておりますので……」
ご、ご要望ってもしかしてお耳ですか?
俺と視線を合わせたエルフさんがにこって笑ったんですが、お耳に触れさせてもらえるという事ですか!?
も、もしかしてママの耳も……。
「……大変申し訳ないのですが、私は死別してしまった人族の夫に操を立てておりますので」
死別した夫……か。
エルフと人じゃあ寿命が違うからそう言うこともあるのだろう。
何十年か何百年かは分からないけど、一途な愛……。
というか、エルフの耳って操を立てるような扱いのものなんだな。
これは流石に他のエルフの方でも触らせてもらうのは申し訳ない気が……。
「ご安心ください。操を立てるまでの風習は私のような長い時を生きている古いエルフだけです。若いエルフはこの風習をそこまで重くは考えておらず、不埒者には触らせないというような子ばかりで、余程気に入った相手であれば触られても問題の無い子も多くいますので」
あ、そういうものなんですね。
獣人の尻尾よりももう少し慎重な扱いって感じかな?
じゃあさっき耳をぴこぴこ動かしてた子とかはやはり誘っていたんですかね?
「とはいえ、人前でするような事でもありません。ですので、特別なお部屋をご用意いたしました。ご主人様様にはそちらで接客の方をお受けいただきたく思います」
もしかして……VIPルームということですか?
ここもクドゥロさんが経営するお店のようにVIPルームがあったんですか!?
結構通っているけど知らなかったんですが、もしかしてこのために用意したとか……?
腕を取られ、ママに抱き着かれたままその特別な部屋へと案内される。
すんごい……視覚的にも感触的にもすんごいの……。
ママの大きく色白なおっぱいの形が崩れる程に押し付けられ、背中ががばっと空いているドレスがかろうじておっぱいの大事な所を隠しているのだが、今にもはだけそうなんですが……!
……というか、耳は操を立てているようだけど、こういう抱き着いておっぱいを押し付けるのは良いのか。
逆を言えば、それだけ耳の重要度が高いという訳か。
さーて……部屋に案内されたもののママは別のお仕事があるため、接客する子が後で入って来るとの事。
勿論、耳については了承済みだそうなのだが……。
一体どの子が来るのかは分からないんだが、んんーさっき耳をピコピコしていたエルちゃんかな? それとも、おっとりぱいエルフのルイちゃんかな?
「……失礼するよー」
「はーい……って、え?」
声が聞こえ返事をして振り向き中に入ってきた子を見て思わず固まってしまう。
エルフエ・ロフの制服をまとい、緊張しているのか胸の下で組んだ腕で谷間の開いたおっぱいを持ち上げ締まっている褐色の肌のグランドエルフ。
その相手とは顔を紅潮させて恥ずかしそうにしたまま扉の前から動けていないシアンさん。
「……まじまじ見ないで欲しいよ」
「いや、えっと……シアンさん?」
えっと……まさか?
働き先ってこの店!?
もしかして知り合いって……ママか?
さっきイエロから話しは聞いたとイエロさんの事を知っている感じだったし……。
「と、とりあえず……座る?」
「そ、そうするよ……」
混乱して思わず座らせてしまったのだが、この後どうしよう!?
エルフエ・ロフは健全店。
エルフエ・ロフは健全店で間違いないのだが、なんか気まずいんですけど!?
11巻発売中ーですー!
よろしくお願いしますー!




