14-37 イグドラ大森林 小さな精霊樹の守り人
精霊樹にトラブルが発生した為に長い事エルフの村に滞在する事になってしまったものの、無事トラブルが解決したという事でそろそろ帰ろうかという話になった。
まあ本来の目的はウェンディが許す。と言うだけの事だったからなあ。
とはいえエルフの村は見てみたかったし観光も十分させてもらえた上に、エルフの村の貴重な薬草類や果実なども大量に頂いたり買ったりできたので大満足だ。
……ガチャの木から出てきた物も普通に売ってはいたので、万が一に備えて買ってはおいたが使う機会が無い事を祈るばかりだな。
ちなみに、レアガイアはさっさと帰って行った。
持てる限りの魔力球を俺にせびってな!
仕方ないので大量に薄めに作った魔力球を布に包んで渡しておいたよ。
薄めなのが分かったのか、協力したのに! と不満そうであったがお前も原因の一つであったこととこれからは痩せて貰わないと困るし、更にはカサンドラが帰ってきた時に太っていたら今まで以上になるぞと脅したらしぶしぶ納得してくれた。
次会う時はきっと痩せた姿で……というのは、願望だなあ。
「ミゼラちゃん。基礎は教えたから後は教えた事をこなしていけば大丈夫よ」
「ありがとうマゼッタさん。とても勉強になりました」
「んふふ。ミゼラちゃんは真面目で素直に聞いてくれるから教えがいがあったわ。またいつでも来てね」
ミゼラはあれからほとんどの日をマゼッタさんの所に行って薬師のスキルを学んでいたからなあ。
薬師で錬金術師とか面白い事になりそうだよなあ。
成果を見せてもらうのが楽しみだ。
「よーし! それじゃあ出発しようか」
イエロさん達からはもっと居ても……と惜しまれたが、こういうのは惜しまれている間に出た方がいいもんだ。
それに、また何時でも訪れる事は出来るしな。
残念ながらイグドラ大森林には一発で『座標転移』を使って入れはしないが、必ずまた来ようと思う。
具体的にはエルフの森製の素材が無くなったらまた採取させてもらいに行こうと思っていると伝えておいた。
と、いう事で俺達は馬車に乗ってアインズヘイルへと戻る事になったのだが……いやあまさかだねえ。
「ご主人様様。小さい精霊樹可愛いよ。お水とか……どうやって飲むのかな?」
……と、俺の手に巻き付く精霊樹をじーっと観察しているのはシアンさん。
まさかシアンさんがアインズヘイルにまで付いてくることになるとは……。
シアンさんは精霊樹の守り人。
俺がアインズヘイルに精霊樹を連れて帰る事になったので、この精霊樹にも守り人が必要だ。という事だそうだが……無防備だなあ。
精霊樹の様子にとらわれているせいか屈んだり馬車が揺れたりするたびにシアンさんの持つおっぱいの谷間がちらちらと視界に入るのだ。
……他意は全くなくこの純粋さのままアインズヘイルに行って大丈夫なのかと心配になった為、俺の家の一室に住むかと聞いたのだが……。
『大丈夫かな。ご主人様様には迷惑をかけるつもりはないよ。それに皆さんがいれば精霊樹に危険は無いと思うから、様子を見るだけに留めるよ』
と言い、どうやらアインズヘイルに知り合いがいるそうなのでそちらで厄介になるという事らしい。
精霊樹関係という事もあって、知り合いは大歓迎。
更には仕事も紹介してくれるそうで、本当に俺達には迷惑をかけないように取り計らってくれたようだ。
イエロさんは可愛い娘を外に出すのに抵抗があるのかと思ったんだが意外にもあっさり送り出していたな。
『ほう。アインズヘイルに……か。なるほどね。次帰ってくるときは、孫の顔を拝めるかもしれないね!』
とか何とか言っていたな。
いや、この純粋さで悪い奴に騙されるんじゃ……と聞いたら、契約精霊もいるから大丈夫とのこと。
精霊には悪人かどうかは分かるとの事だが、おっぱいの谷間を覗く男は皆が皆善人ではないと思うから注意はしておいた方が良いだろう。……次から。
「ご主人様?」
「ぴ」
背筋が凍るような感覚に思わず背筋を伸ばし、視線も真っすぐから少し上を見て硬直してしまった。
「全くもう……私のではもう飽きてしまったんでしょうか……」
「いやいやいや。そんな事は無い!」
飽きるわけが無いじゃないですか!
今だってほらすっごく見てます!
ウェンディが自らのおっぱいを腕で下から持ち上げて気にしているさまをまじまじとたっぷりと脳内フォルダに何枚も保存するように見てますよ!
「ほう……」
「アイナー? なんで鎧外したの?」
ほう?
「む……? こちらの方が主君が見やすいかと思ってな」
キラリと視線を走らせるとアイナが鎧を外し、少し汗ばんでくっついたシャツが張り付いたおっぱいがふるんと揺れるのを見逃さずにすんだ。
「ぐっ……。せめて取り乱しなさいよ……! ああ! 昔の何も知らずにすぐ赤面するアイナはどこに行ったの!」
「ソルテ……流石にアイナもあんなことやこんなことをしてるんすから、谷間見せるぐらいじゃあ照れないっすよ」
「はあ……我ながら大変な変態を好きになってしまったわね……」
「今更っすよ……」
おいおい酷い言いようだな。
ここには無垢そうなシアンさんもいるのだからそういう発言には気を付けなさい!
「むううう……」
「シオン? どうした?」
「いえ……別に……」
何やら深刻そうに悩んでいるようだがどうしたのだろうか?
精霊樹を助けるために使った陰陽刀に何かあったとか?
なんだかんだ地龍に刺し続けていたのだし、刃こぼれなどあってもおかしくはないが……確認したが破損などは無かったと思うんだけど……。
「何かあったなら話してみろよ」
「うーん……大した事ではないんですが……私とシアンさん。名前似てません?」
「……」
「これきっとアレですよね? アインズヘイルに行ったらいつの間にかシアンさんも誑されているパターンですよね? その際にシアンとシオンって名前が似ているなあと……」
「本当に大した事ない話だな!」
そんな内容だったら深刻そうに悩まないでくれます!?
あと、いつの間にか誑されているパターンとかないからね?
「いやでも良く考えてくださいよ。名前間違いとか地味に傷つくじゃないですか。それが夜の最中だったりしたらガッカリしますよ!」
「それはそうかもしれないけど……間違わなければ良い話だろうが」
「そうは言いますけどぉ……私よりもご立派ですし……ふと思い出して間違えたりするかもしれないじゃないですか」
……無いとは言い切れない。
いや、限りなくないとは思うが全くないとは言い切れない。
「うーん……私の名前ヨイマチとかにしときます? これなら誰にも似ませんし。そっち系が得意なお名前ですし」
「いやもう俺の中でシオンで定着してるから無理だよ……」
「むう……じゃあ間違えないでくださいね?」
「善処します……」
大丈夫だとは思うけどね。
流石に夜の最中は目の前の相手しか考えてないだろうし……でも意識して気を付けておこう。
「ん。見えた」
と、幌の上にいるシロの声が聞こえ、御者台にいるミゼラの横から顔を出してみると懐かしきアインズヘイルの外壁が見えてきて帰って来たんだなと実感が持てる。
「はあ……やっとね。御者も出来るようになってしまったわよ」
「はははは。帰ったらゆっくりしような」
「その前に埃をかぶっているでしょうし、掃除からね」
あー……そうだった。
ミゼラがお留守番をしてくれている時は、ミゼラが定期的に掃除をしてくれていたから助かったんだがな。
まあミゼラと一緒にお出掛け出来たことに比べれば掃除くらい大した事ではないし、帰ったら隅々まで綺麗にするとしよう。
「あ、そうだお館様。これイエロさんからお預かりしていました……」
「ん? 手紙?」
「はい。お一人で読むようにと……」
こそっと俺に声をかけ、すすっと手紙を誰にも気づかれないように渡してきたシオン。
……手紙をシオンに託すだなんて、二人でウェンディに怒られる等意外と打ち解けていたのだろうか?
それにしても一人で読むようにって……一体何が書かれてるのだろうか?
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