14-14 イグドラ大森林 大樹の守り人シアン
昨日は夜遅くまで宴は続き……というかまさかの朝までコースだったようで。
限界が近くなった人から自由に帰って行ったようだが、イエロさんは『朝まで飲むぞー!』と叫んでいたので朝までだったのだろう。
まあ……尊敬やら敬愛やらする大妖精のウェンディがはるばる自分達の村にやってきた宴となれば、朝までどころか三日三晩お祭り騒ぎになりそうなものだものな。
実際に三日三晩騒がれたら観光どころではないので勘弁してもらいたいが……。
俺はというとウェンディと程よいところで帰り、一緒に寝る事にしたのだが、俺は一度仮眠していたのでかなり早い時間に起きてしまった。
「んー……っ!」
軽く伸びをし、隣で眠るウェンディを見る。
すやすやと可愛らしい寝息を立てて眠るウェンディなんだが……服が散乱しているな。
昨日は流石に何もせず寝たはずなんだが何故……。
酔っていたから暑かったのかな?
ウェンディって寝る時全裸派だったっけ?
もしかしてまた俺が何か……いや、ウェンディは確か寝る時は全裸派だったはず。
勿論そういうことをした日以外での話だが、少なくとも何回かは見た気がする。
その時もこんな感じで服が散乱していたような気もするが、きっとその点は気のせいだろう。
「んっ……せっかくだし、散歩でもするか」
すやすや眠るウェンディにいたずらしようかとも考えたが、昨日は応対でお疲れだったようだし、可哀想なのでぐっすり寝かせてあげよう。
「ん……んんんー! ……はあ」
顔を洗って寝ぐせを軽く直して、宿の外に出ると思い切り伸びをし、一気に脱力。
深呼吸一つでも違いが分かる程空気が綺麗だな。
はああ……気持ちのいい朝だ。
まだ早い時間のせいか少しひんやりとした空気がこれまた気持ちが良い。
さて、散歩しようと思うのだが……やはり目指すはあの大樹、『世界に根付く世界樹』だろう。
イエロさん曰く空気も美味いし風の通りも良い、お昼寝……もとい二度寝にも良い場所らしいしな。
後で皆とも一緒に回るとは思うが、ちょっと先んじて行ってみてしまおう。
なに、一回きりという訳ではないのだし問題ないと思うの。
「……お館様? 一人でどこに行くんですか?」
「っ! びっくりしたぁ……。シオンか」
「はい。寝起きも可愛いシオンちゃんです。こんな朝早くからお散歩ですか? 酔狂ですねえ……。昨日はお酒も沢山飲んだんですし、惰眠を貪りましょうよう」
「普段の俺なら間違いなく惰眠を貪るけどな。今日はせっかくだし、あの大樹まで散歩でもしようかなと」
「はあ……分かりました。お付き合いしますようー」
ん、あれ? ついてくるのか?
「まだ眠いんだろう? 別に一人でも大丈夫だぞ?」
「え、信用できませんけど? 絶対何かあるに決まっているじゃないですか」
……うん。なんか、そんなに真っすぐな瞳で言われると反論も出来ないので分かったよ。
別に一人が良かったわけでもないし、二人の方がきっと楽しいだろうしな。
「それじゃあ行きましょうか! 予期せずしてお館様と二人きりでデート出来るとは……! 早起きは3ノールの得ですね!」
ああ、こっちだとそういうことわざなんだな。
あれって、どちらの意味にも取れるんだよな。
三文得をするという良い意味と、三文しか得をしないという悪い意味。
今回は……嬉しそうに腕に抱き着いてきているので良い意味なのだと思う事にしようか。
「しかし、流石に人はいないな。酔いつぶれて道で寝ているエルフはかなりいるが……」
エルフが道端で酒瓶を抱えて倒れているのはかなりシュールな光景だな……。
裸踊りでもしたのか、服をきておらずお盆のような木の板が転がっていたりしているし、あそこでうつ伏せで寝ているのは多分イエロさんだろう。
……俺の持つエルフ像は音を立てて崩れ落ちていくが、現実を理解して納得してこその大人というものだろう。
大丈夫……傷ついてなんかない。
「当たり前ですよう。いくら何でも早すぎますって。シオンちゃんだってギリギリ起きられたんですからね。ほら見て。寝ぐせを完璧に直す暇もありませんでした。お茶目で可愛いですか?」
「はいはい。寝ぐせも寝ぐせのついたシオンも可愛いよ」
「むうーおざなりぃ……。もう少し本気で褒めてくださいよう。ウェンディさんにするみたいに!」
「そうだな。そのうちな」
そういうのは雰囲気を持ってきてくれるとやりやすいんだがな……。
その軽さで褒めろと言われて本気で褒めたら茶化しそうだろう。
今も別に気にしているそぶりなど無いしな。
とはいえ、今度本気で褒めてみようとは思うけど。
「昨日出されたエルフのご飯美味しかったですねー。お館様は昨日食べたお野菜で何が一番お好きでしたか?」
「そうだな……ナシュかな。焼いてもらったんだが、とろっとろで美味かったぞ」
「ナシュですか。焼きナシュは美味しいですよねえ……。お塩をほんの少しかけて食べる焼きナシュはアマツクニの酒に合うんですよねえ……」
「甘いな。焼きナシュには醤油が最高だ。柑橘類を絞って醤油と合わせるのも至高だったぞ」
思い返すだけでもよだれが出てくる……。
丸い茄子や長い茄子、果ては白い茄子など様々な茄子があり、各種焼いてもらって試したが、どれも特徴的で美味しかったな……。
じゅわっ……とろっとろ……。
「なっ……お館様の世界のあのしょっぱい黒い汁ですよね? うわあ絶対美味しいやつじゃないですか……。ずるいです。なんで私に分けてくれなかったんですか!」
「いやその時お前イエロさんと何かを真剣に話してたろ? だから隼人と二人で美味しくいただいたんだよ」
焼きナス、もとい焼きナシュも醤油をかければ元の世界の料理みたいなものだからな。
こういったものは、まずはやはり隼人と食すのが正しいかなと思ってな。
あいつ、本当に美味そうに食べるから一緒に食べがいがあるんだよなあ。
「ううう……美味しいものは分かち合いましょうよう。私はお館様の為にお館様の役に立つことをしていたのにぃ……」
「何をしてたんだよ……。お土産に買って帰るから、アインズヘイルに戻ったら作ってやるよ」
「わーい! 流石はお館様! 超愛してます!」
「俺も愛してるよ。で、何をしたんだ?」
うん。てへ? じゃないんだよ?
ぺろっと舌を出してウィンクしたところで、可愛いだけで誤魔化せてないからな?
ほら、こら。白状しなさい。
腕にぱいを押し付けてもダメだから。
っ、手を太ももに? くっ……わかった。何も聞かないでおこう。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよう。私はお館様の喜ぶツボを押さえています。他の皆様では出来ない事をやってのける。それがお館様のシオンちゃんです!」
そうだね。そうだろうね。
ぱいに手を当てて自信満々って事は相当自信があるのかな?
だからこそ何するか分からないから怖いんだけどね?
まあでも、俺が喜ぶことをしてくれるのは素直にありがたいので良いとしようか。
「あ、ほらほらお館様! もう着いちゃいましたよ。お話しているとあっという間でしたね。うわああ! おっきい!」
わざとらしく駆けて行って感動しているが、この話はどうやら終わりらしい。
まあでも確かに、目の前の大樹『世界に根付く精霊樹』を前にしてする話でもないか。
それにしても……凄いな。
大樹の根元で首を上に向けると、まるで東京タワーを下から見上げているかのような壮大さで、横にも縦にも圧倒的な大きさである。
サイズに伴った大きな存在感。
エルフ達がこの樹を守る理由が分かる程の神秘性。
聖域……と感じるだけの清らかな空気と雰囲気を持ち合わせており、心が洗われるような光景に暫し惚けてしまった。
普通であればヒト族の俺はこの光景を遠巻きにしか見る事が出来なかったのだと思うと感謝しかないな。
そしてイエロさんが言っていたように精霊が好む場所らしくて精霊がとても多く、少し目がちかちかする。
殆どの精霊は光のままだからな……。
「……慣れれば目に優しくなるよ。嫌がって細めないで。そのまま慣れた方が良いよ」
「へ?」
突然少し間延びしたようなのんびりしたような優しい口調で声をかけられ振り向くと、まず視線を奪われたのは真正面にある緑と白を基調とした衣服におっぱいの谷間! ……ではなく、大きなハルバードと褐色の肌のエルフがいた。
尖った耳と青みがかった乳白色の髪色を持つ優しい印象の褐色のエルフさんがのそっと立っていたのだ。
「おや? イエロさんの言っていた守り人さんですかね?」
「うん。この樹の守り人の一人。イエロの娘のシアンだよ」
この子がイエロさんの娘さんのシアンさんか。
遠目では分からなかったんだが……大きいな。背も。
俺よりも背が頭一つ分かそれよりももう少しくらい高く、目線がその……とても谷間に合わせやすくて困ってしまう。
「……お館様? どこ見てるか第三者の私でも分かる程露骨すぎますよ? 初対面の方に失礼ですよ?」
「いや、うん。すまん」
ぱっと見るとどうしてもそこに視線が注がれるような身長差なのだ。
意識せずとも吸い込まれるように視線誘導がされてしまうようになっているんだよ。
いや、でもシオンの言う通り失礼だったな。
頑張って改めねば……っ。
「別にいいかな。見ていいよ。はい」
ずずいっとおっぱいを押し出してくるシアンさん。
眼前十数センチおっぱい!
ええっと……えっと? 見ていいの? 見てていいの?
じゃあ見るー! ……いいのかな?
「いいんですか? うちのお館様は見ての通り許可さえあれば本当にずっと見ますよ?」
「ご主人様様は、ウェンディ様の恋人。村にとっても大切なお客人。望みは可能なら叶えるよ。これくらいならいくらでもいいかな」
なんという器の大きさ……では遠慮なく。
なんというか……服の構造が既に谷間を見るためにあるんじゃないかという物なのだが、基本的に蒸れるからそのためなんだろうね。
嗚呼、谷間をこんなに真っすぐ見ていられると、今日一日何があろうと良い日だなと思えるね。
「そう言えば昨日は大猪を取ってきてくれたんだよな。ありがとう。シロが喜んでたよ」
「お館様? 視線がおっぱいに注がれたまま日常会話を話すとか酷い光景ですよ?」
そうは言われてもな……。
揺らすんだもん……シアンさん。
俺が喜ぶからか、たゆん。って揺らすんだもん……。
それに俺が毎回僅かに反応しているせいか、頻繁に揺らすんだもん。
「うん。シロい子、お肉好きそうだったから取ってきたよ。私もお肉好きだから。昨日少し話したけど、良い子だったよ」
「ああ。良い子だし、かなり強いぞ」
「うん。それは分かったかな。小さいのに、凄く強くて驚いたよ」
「え、スルーでいいんですか? 流石に見すぎかと思うんですが……。というか、何故平気なのでしょうか……。まさか! もうお館様が誑したんですか!? いくら何でも早すぎますよう! 明日には子作りですか!?」
「……今初めてお会いして今初めて会話を交わしたばかりなんだが……?」
もうってなんだもうって。
誑す事前提というか、時間さえあれば人を誑して回っているかのような物言いではなかろうか。
「こ、子作りはしないかな? 流石にそれはご主人様様でも駄目……かな。おっぱいなら好きにしていいよ。ご主人様様の事情ならしょうがないかな」
……んー?
何か引っかかるような物言いだな。
例えばこれがご主人様様ならしょうがない……ならば、ウェンディの恋人だから? しないけど権利を振りかざして等ともとれるが、俺の事情?
シオンも同じく疑問に思ったのか、俺と視線を合わせるもお互いに疑問しか浮かばないようであったので、聞いてみるしかないよな。
「事情って……どういうことだ?」
「うん? ご主人様様にとっておっぱいは、草花にとってのお日様だって聞いたよ。長い時間見れば見る程元気になるって。だから、沢山見てもいいんだよ。お花はお日様がないと生きていけないし、元気も出なくてしおれちゃうんだよ」
お日様……おっぱいが、お日様か……。
いい得て妙……いや、流石に見ないからとしおれはしないぞ。
ただ、見れば元気にはなるとおもう。
まるで真っすぐに太陽の方を向く向日葵のように、顔は上を向く事だろう。
「……えっと。それは誰からお聞きしたんですか?」
「うん? お父様かな。昨日の夜……というか朝に教えて貰ったんだよ。揺らすと効果が倍になるって聞いたから、これであってるかな? ちゃんと揺れてるかな?」
う、うん。凄く揺れてます。
服装的にノーブラで補正が入っているのだと思うのだが、張りが良くてしっかりと形をキープしたおっぱいがとっても揺れてはおります。
「それにしても、ご主人様様は大変だよ。でもそういう事情なら仕方ないかな。……恥ずかしいとかはないかな。医療行為のようなものだよ」
……ああ、そういえばイエロさんが昨日言っていたな。
心配になるくらい他人を信じやすいからからかいが……って。
……とりあえず、シオンと視線を交わして頷き合う。
「……恐らくですが、それ嘘つかれてますよ?」
「うん? 嘘って……?」
「別にお館様はおっぱいを見なければしおれた花のようになるという訳ではないですよ……?」
「え? ……で、でもウェンディ様のを昨日もずっと見てたよ!?」
「それは日常というか、普段通りというか……」
なんとなくいたたまれない空気の中、シアンさんは俺に確認するように視線を向けて来たのでしっかりと頷いてあげる。
これは……もう谷間に目を向けてはいけないなと俺も認識を改めなければならない。
だって、あっという間にシアンさんは顔を真っ赤にしてしまったからね。
そして、おっぱいを隠すように背中を向けると……。
「……ちょっと、お父様をぶっ飛ばしてくるよ。お二人は、ゆっくりしていっていいよ。樹には触れてもいいし寄り掛かってもいいけど、登るのは駄目だよ。それじゃ……イッテクルカナ」
「……いってらっしゃい」
コクンと頷くと一歩一歩に今の感情を込めたかのように力強く歩き出したシアンさん。
その足取りはだんだんと早くなっていったのだが、その手にはしっかりとハルバードが握られている。
……そういえばイエロさんはうつぶせのまま寝ていたのだが、シアンさんの接近に気がつけるのだろうか?
「えっと……どうします?」
「んんー……とりあえず、帰ってくるのを待とうか。せっかくだし、座らせてもらおう」
「はーい!」
そういうと腰を降ろして『世界に根付く精霊樹』に背を当て足を延ばした俺の上に何故か向かい合うようにして座るシオン。
えっと……? どうして服をはだけさせて谷間が見やすいようにしてくれたんだい?
「シオンさん?」
「先ほどよりは小さめのお日様ですが、いかがですか? どうやらお館様がしおれたお花になっちゃうそうですし」
「あー……」
「あ、ここでは駄目ですよ? 流石に怒られちゃうでしょうしね。それにすぐ帰ってくるでしょうし。でも……やっぱり、元気……。昨日はウェンディさんとしてないんですね……」
……分かっているのならそこからどいて欲しいんだが……。
こいつはまた……悩むなあ。
確かにここではまずいが、『隔離された小世界』なら……と、本気で悩んでいると、遠くから『良かれと思って! 良かれと思ってええええ!!』と、叫び声が聞こえるのだった。
ごめん! ちょっとお休みしますー!
仕事のトラブルやら、脳みその切り替えがおっつかねえ……。
10巻を自分が思う安全ラインまで集中して書いたら戻ってきます!




