13-11 和国アマツクニ 呼び出し
さあさあ! 今日も勿論アマツクニ散策だ!
本日の予定はユートポーラの温泉館を共に作った木工組合の親方の所に顔を出した後、ユウキさんの父であるゴウキさんにご挨拶、更には定期的な発注が出来る物を吟味させてもらう予定なのだ!
あとお茶ねお茶!
茶葉は勿論だけど抹茶も手に入れたい!
美味しい抹茶を手に入れたらフリードにまた抹茶プリンを作ってあげよう!
和菓子も買って美香ちゃん美沙ちゃんも誘ってお茶会なんてのもよさそうだ。
会場は……ユートポーラの畳部屋が良さそうかな?
さあ、今日も思い切りアマツクニを楽しむぞー!
……って、はずだったんだけどなあ。
「動くな! 男が1人、巨乳が2人、獣人が3人にアマツクニの女が1人……間違いないこいつらだ!」
「神妙にお縄につけい!」
「御用だ御用だ!」
……俺が、俺達が一体何をしたというのだろうか。
宿を出てすぐに……これがトラブルメイカーの宿命という訳か?
なんでぇ……望んでない。望んでないよこんな事。
俺は大人しくアマツクニの魅力を堪能したいだけなのに、どうしてこういうことが起こるの?
スローライフを願う事はそんなに悪い事なの?
女神様……レイディアナ様ぁ助けてぇ!
「ん。殺意はない。恐らく、捕縛が目的」
「そうか。ならば一先ず主君は安全だな」
「一人一人が結構強いっすねえ。C……いや、Bランク冒険者ってところっすかね」
「ご主人様は私が……っ!」
「いや、ウェンディは俺の後ろに隠れてなさいな」
すっとウェンディの肩を持ち、俺の背中で隠すように移動させる。
はああ……揉め事は正直勘弁してもらいたいんだがな……。
「あの制服……白狐隊ですよね。つまり、タチバナの部隊……? ということはまさかまさか……巫狐様関係って事ですか?」
なにやら独り言をぶつぶつ呟いていると思っていたら、はっとして俺の方を振り返るシオン。
なんで『これがお館様の力……なにこれしゅごい怖い!』と小さく呟いて、戦々恐々とした視線を俺に向けているのかな?
絶対に、間違いなく、確実に、俺は何もしていないっ!
「お館様。ここは私がどうにかしますが……さって、困りましたね。タチバナがいればすぐ解決するんですけどねえ……いないし。使えませんねあの真面目女……」
「ん? 良く分からない。ぶっ飛ばせばいい」
「いやいやいや、お尋ね者になっちゃいますって! この人達街を守る存在なので、手を出した時点でダイグウにいられなくなっちゃいますからね! まあ……最終手段はそうなりますけど……」
それは……残念だが、仕方ないだろう。
どうやらタチバナ? さんとやらがいれば解決できるそうなのだが、何よりも安全が第一である。
……本当に、残念だけど。
「んんー……私がどうにかしてみますから、皆さんは手を出しちゃ駄目ですよ! いいですね? 手を出す。ダメ、絶対」
まるで子供を諭すかのように、一人一人にダメ、絶対を徹底していくシオン。
皆も渋々ではあるが納得したようで、武器を収めたものの警戒までは収めずに様子見となった。
「ん、んん。失礼、取り囲まれる理由がないんですけど、これはタチバナからの命令ですか?」
「タチバナ様の名を……? 貴女は……」
「私、シノビ名はシオンと申します。タチバナとは同期なのですが……タチバナはいないのですか?」
「シオン……? まさか、『俊英鬼才のシオン』?」
「うわあ……痛い名前をお館様達に聞かれてしまいました……。あ、一応言っておきますけど、私が自分で名乗ったとかではないですからね? 勝手にそう呼ばれていただけですからね?」
いや、ネーミングセンスは置いておくとしてそれよりもシオンって本当に優秀扱いされていたんだなと思い知ったというか……。
馬鹿にされて着けられた異名ではなく、本当にそうだったのだろう?
とはいえシロが棒読みで「しゅんえーきさい」と呟いていたので、暫くシロからはそう呼ばれそうだな。
「まあここにいなくとも、呼べば来るでしょう。タチバナー! タチバナー! 早く来ないとここの連中ぶっ飛ばしちゃいますよー!」
いやお前、ぶっ飛ばしちゃうとか物騒な事言うんじゃないよ。
一瞬にして相手がとても警戒しだしちゃってるじゃないか。
「……貴女は。相変わらずふざけていますね」
「おお、タチバナ。やはりいましたか。久しぶりですね。相変わらず糞真面目で面倒くさそうで何よりです」
どうやらシオンの知り合いらしいのだが、巫女服……というか、腋やら太もものスリットやら露出は多めの神主の服のようなものを着たぎりぎりおっぱいで黒髪ポニーテール眼鏡の真面目そうな女性……。
落ち着いた物言いで真面目そうなのにスリットから見える横乳がえっちぃ……。
完全にノーブラで、激しく動いたらおっぱいの先が見えそうなのだが、シオンの話ではシノビのようなのできっと見えないようになっているのだろう。
「で? これは何のつもりですか? 私達には、包囲される覚えも捕らえられる理由もないのですが?」
「……はあ。探し出すようにとは言いましたが捕えるようには言っていないのですが……」
タチバナと呼ばれた女性が一睨みすると、周囲を囲っていた男達がすくみ上ってだらだらと冷や汗を流し始める……。
つまり、捕縛の必要はなかったという事か……。
そう言う事なら……って、なんで探していたんですかね?
「……私の部下が失礼を致しました。以後このような事が無きようきっちりと教育をしておきます」
ああ……うん。
その方が良いと思うけれど、兵士さん達が全員直立のまま震えている……。
恐らくこの人は上司で、とてもとても怖いのだろう……。
「……ただ、お連れするのは巫狐様からの要請です。悪いですが、シオンといえど従っていただきますよ」
巫狐様?
巫狐様って、確かシオンの話じゃあこの国で一番偉い化け物みたいな……そんな人が何の用があるんだ?
「巫狐様が……? 私達に一体何の用で……?」
「私にはわかりません。ですが、八尾様が興奮状態のようでして……。どうやら巫狐様はそれが気になるようです。そして、その原因は貴方達の誰かのようで……それ以上は私にはわかりません」
「八尾様が……? 良く分かりませんが……危険はないのでしょうね。お館様を危険にさらすわけにはいきませんので、それは保証してもらいますよ」
「俺だけじゃなくて、皆の安全もな」
これは絶対である。
というか……やっぱりこれ、行かなきゃダメな流れなんだろうなあ……。
ははー……面倒くさそうだな……。
大人しくアマツクニを見て回りたいなあ……。
「ええ……『傍仕え』タチバナの名を以て安全を保証しましょう。巫狐様も悪い者ではないとの事なので謁見の後すぐに解放されるかと……」
「そうですか……。お館様。申し訳ないんですけど、この国で一番偉い人からのお誘いです。断ろうと思えば断れますが……まあ、断らない方がよろしいかと……」
「……なんかそんな感じだよな。じゃあ、木工組合の親方とゴウキさんには遅れる……いや、日にちを動かしてもらった方がいいか……」
「ですね……。それはタチバナに話しておきましょう。まあ、お二方とも巫狐様に呼ばれたと話せばご納得いただけるとは思いますがね。とはいえ……本当に、一体何の用があるのやら……」
それは俺も気になるな。
探していたって事は、何かしらの理由があるって事なんだろうし……。
という訳で、タチバナさんの後に続いてお城の中へ……。
これはこれで貴重な体験な訳だが、これから会いに行くのが巫狐様っと……。
「お館様。お館様」
「なんだシオン」
「案の定……巫狐様とお会いすることになりましたね!」
「……」
「私、心配です。お館様が巫狐様をどんな手管で誑すのか」
「……誑す事前提なのな」
「だって、ほら。お館様ってお会いした偉い人全員誑しているじゃないですか。それで、何するんですか? ちっぱいを口に含みますか?」
「しねーです……」
何の心配をしているのか知らないが、俺は何かするつもりはない!
コレンやシシリアのように誰かの知り合いという訳でもないし、何の伝手もないのだからきっと平穏無事に終わるはずだ!
……終わるよね?
「……先ほどから気になっていたのですが、シオン。貴女主を決めたのですか?」
「あ、はい。こちらが私のお館様です! 先んじて言っておきますが、見た目が普通だとか、冴えなさそうだとかの言葉は自重してくださいね?」
「おい」
「いやいや、後ろにいらっしゃる方々が殺気を飛ばして暴れるよりましでしょうよ……」
……そうだね。
別に気にもしていないからいいけどさ……。
「大丈夫ですよう……私達は、お館様の良い所を沢山知っていますから。それで充分でしょう?」
「まあ……そうだな」
「ようし! 私良い事言った! これでお館様もメロメロですね!」
んなちょろいことあるか。
まあでも、良い事を言ったのは認めよう。
「はぁ……貴女が主を定めた事も驚きですが……随分と楽しそうですね」
「楽しいですよー。お館様と一緒だととても楽しいです!」
ぎゅっと腕に抱き着いてきてイエイと横ピースで仲良しアピールをしているようだが、歩きながら抱き着かれると歩きづらいです。
あと、腕に押し付けたぱいはわざとだろう。
っふ、鍛えられた俺がその程度で喜ぶわけが……いや、何度されようと嬉しいものは嬉しいな。うん。
「そうですか……。貴方は見る目もありますからね。私には見えませんが、そのお方もきっと何かあるのでしょうね」
訝し気な視線を向けられつつ、どこか少しだけシオンの言う事を信じている様子にも見える。
……ある程度の信頼はお互いにあるという事だろうか?
「あータチバナさんって、シオンと同期だとか……もしかして、ライバルだったとか?」
「いいえ。同期ではありましたが、私とシオンでは雲泥の差がありましたよ。ライバルなど……とても言えない程の差がありました」
「てれてれ。いいですよタチバナ。私をもっと褒めてください。いまいち私の評価が上手く上がらないので、私の養育機関時代の武勇伝なんかをほらほら!」
「……こんなふうにふざけてばかりいましたが、本当に優秀ではありました。私は巫狐様の傍仕えという名誉ある仕事を拝命していますが、もしシオンにやる気があれば私などこの職に就く事もかなわなかったでしょう」
「まあ、傍仕えが名誉はあるとは思いますが、面白くはなさそうでしたからねえ。でも、そのおかげでお館様と出会えましたし、やはり私の選択は正しかったという事ですよ!」
はぁぁぁ……ほぉぉ……。
やっぱり、優秀なんだなあ……。
この性格が損をしているのだろうが、でもこの性格だからこそのシオンという気もするしなあ。
そんな風に話しながら城を登っていき、最後の階段を抜けた先に一際厳かな扉の前までやってきた。
「さて……話はここまでにしましょうか。この扉の奥が、巫狐様のいらっしゃる狐々殿になります。どうか……失礼は無いようにお願いします」
「礼儀とか作法とか分からないんだが……」
「シオンの真似をすればよろしいですよ。多少の無礼は、こちらが呼びつけているので構いません。巫狐様は偉ぶらずお優しい性格なので、他国の王のように咎められる事もないでしょう。それでは私は先に入りますので、少し経ったら入ってきてください」
扉を少し空けて中へと入っていくタチバナさん。
さて、毎度思うのだが、少し経ったらってどれくらい待てば……ん?
「……なんすかこれ。この扉の奥、ヤバいのがいるっすね」
「ああ……地龍と対峙した時の様な感覚だな……」
「あー……間違いなく巫狐様ですね。私が暴れないでといった理由がお分かりになられましたか? 巫狐様はアマツクニの守護神。普段はとてもお優しく温厚で可愛らしい方ですが、怒らせたら……って、訳ですよ」
「扉一枚隔ててこの圧力……シロ。勝てる?」
「……無理」
「断言するレベルか……本当に、大人しくしておいた方が良さそうね」
おおお……戦闘組は何やら感じているようだが、俺はきょとんとしています。
何かわかった風な口を聞きたいところだが、良く分からないので下手な事は言わず、なんとなくキリっとしておこう。
ウェンディは俺の服をきゅっと握っているのだが、やはり大妖精なのでわかるのだろうか?
……ここにミゼラがいれば、俺は独りぼっちじゃないんだけどなあ。
「巫狐様の恐ろしさを分かってくださったのなら幸いですね。それじゃあ、入りますよ。皆さん……くれぐれも――」
シオンが俺達に再三の警告を促しながら扉に手をかけると同時に、勢いよく扉が開き何かが飛び出してきた……。
何か……それは、八本のもふもふと小さなお尻であり、それが俺の顔へと飛び掛かってきて俺はそのまま押し倒されるのであった。
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と、思い出したかのように宣伝していく。
さあ、巫狐様とご対面(尻)だ!




