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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
13章 アマツクニ巡り
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13-4 和国アマツクニ 今のアインズヘイル

今日はウェンディとシロと三人でお買い物。

アインズヘイルが国となり、行商人が増えた事で毎日見て回っても次の日には見た事のない物が並ぶようになっている。

だから最近は仕事の時間以外は買い物や散歩が多くなっていた。


「主、主。白パンと牛串買おう?」

「そうだな。寄ってくか」

「もうシロ。さっきご飯食べたばかりでしょう?」

「ん。牛串と白パンは別腹」


なるほど。

シロにとって牛串と白パンはデザートのようなものなんだな。

……俺には重いな。


「いよう。兄ちゃん! 今日も別嬪さんを引き連れていらっしゃい!」

「ふっふっふ。両手に華で羨ましいだろう?」

「はっはっはまったくだ。でも、そうして連れてないとウェンディさんは大変だろう?」

「ええ……よく声をかけられてしまいます。幸い普段はシロがついて来てくれているので安心ですけどね」

「ん。シロが追っ払うー」

「偉いぞシロー」

「んふー」


頭を撫でると誇らしそうに、満足そうに鼻から息を吹きだすシロ。

そう。アインズヘイルの国民達はウェンディが俺の恋人だと知っており、手を出せば俺がどれほど非情になれるかを冒険者達の話からよーく知っているだろうからまずナンパ目的で声をかけるなどはない。


だが、外から来た奴らはそんな事を知らないので、買い物中のウェンディを見かけると、すぐ声をかけてくるんだそうだ。

まあ? ウェンディはそこらにはいないような美人でありおっぱいも大きくてとてもとても魅力的過ぎて同じ男として声をかけずにいられないというのはわからなくはないのだが?  恋人がいると知って諦めるならばよし、だが恋人がいるというのに引き下がらないような輩はシロがお仕置きしても何も問題はあるまいさ!

だから最近は、ウェンディを一人で買い物に行かせるわけにはいかなくなっているのである。

だから最近はシオンが俺のそばにいるという訳なのだ。


ミゼラも一人で出かけている事が多いのだが、幸いミゼラには狸人族のシノビことポココちゃんが付いてくれている。

ミゼラとは仲良しな上に腕も立つので、ミゼラがハーフの子達の所へ行く際は護衛をお願いしてあるのだ。


ミゼラも大分健康的な体となったものの、線が細く儚げで荒野に咲く一輪の花のように、守ってあげたくなる魅力が満ち溢れているので何かあったらとポココちゃんも喜んで護衛を引き受けてくれたのだ。


「それで、何か買ってってくれるんだろう? まさか冷やかしじゃないだろうな?」

「当然。白パンセットを3つ頼む」

「ご主人様、私はいりませんよ?」

「大丈夫。俺もお腹いっぱいだから全部シロのだ」

「んふー。ウェンディを守る報酬ー」

「そう言われると、諫められませんね……。シロ。よく噛んで食べるんですよ? 店主、野菜は多めでお願いします」

「葉っぱはいらない!」

「駄目です。一緒に食べると美味しいんですから、こういう時こそ食べなさい」


顔をしかめるシロではあるが、ウェンディは譲らない。

それを察して諦めたのか、こそっとお肉も多めでとシロも店主に伝えていた。


「はははは。相変わらず仲睦まじいな。あいよ。野菜も肉も多めだな。ようし、それじゃあ取ってきてもらえるか? 牛串屋にセット4人前で肉、野菜多めって言えば伝わるからよ」

「あ、はい。行ってきます」


店主に言われて一人の少年が駆け出していく。

あれは……。


「店主。新人を雇ったのか?」

「おう! 領主……じゃなかった、代表が仕事を斡旋してるんでな! パンの仕込みから商売の仕方まで教えてるぜ」

「へえ……」


あれはハーフエルフの男の子だな。

どうやら少しずつ働き先が振り分けられているようだ。


「店長、お待たせしました……。それじゃあ、薪割りに戻ります」

「ああ、待った待った。おめえさんもここにいて作業を見ておきな」

「え、はい」


店主が呼び止め、白パンと牛串のセットを作って行く。

真っ白でふわふわの白パンにバターを塗り、その上に野菜、串から抜いた牛肉、そしてパン屋秘伝のソースをかけて、最後に白パンで蓋をすれば完成だ。


ちなみに、牛串屋で買うと牛串屋秘伝のソースがかかっていて、気分によって頼む店を変えている。

シロはどっちも好きみたいだけどな。


「よし。お待ちどうさま!」

「んんーいい匂い! 主、一個は今食べる!」

「あいよ。それ以外は預かっとくぞ」


シロから牛串セットを2つ預かり、シロは目いっぱい口を開いて牛串セットにかぶりつく。

噛んだ先から牛串の肉汁が溢れるものの、白パンへと吸収されて次の一口がまた美味いのだ。


「どうだ? 手順はわかったか?」

「はい。大丈夫です」

「それじゃあ作ってみな」

「あ、はい!」


なるほど。4セット頼んだのはこのためか。

新人君は緊張した面持ちながら、慎重に店主と同じように盛ってみせ、白パンセットを作り上げる。


「で、出来ました」

「よし、良いぞう。ちなみに今回のは肉も野菜も多めの量だからな。それと、白パンセットの会計は牛串屋と分けるから普段入れる金袋とは別の袋に入れるんだ」

「わかりました!」

「よし。それじゃあ、ちょっと早いけど軽食って事で食べて良いぞ」

「え? いいんですか?」

「そりゃあおめえ。味を知らなきゃお客さんにおすすめできねえだろう?」

「っ……はい! いただきます!」

「へへへ。どうだ。美味いだろう?」

「ん……んぐ……はい! 美味しい……とっても美味しいです!」


……どうやら、いい関係を築けているようだ。


「店主。お金置いてくぞ」

「おう! また来てくれよ! 兄ちゃん達は常連だからな。良く覚えておくんだぞ」

「んん……ごくん。はい! ありがとうございました! またのお越しをお待ちしております!」


慌てながらもしっかりと頭を下げて見送ってくれる新人君。

恐らく、これからも会う機会は増えるだろう。

急いで飲み込んだせいか、しゃっくりを出して店主が笑いながら水を差しだしており、俺も思わず微笑んでしまった。


「しかし、本当に人が増えたな……」


お客さんや行商人もそうだが、先ほどの白パン屋のようにハーフの子達を雇っているお店が多い。

よく行く肉屋や野菜売りのおばちゃんの所、熊人族がやっている油を売っているところにまで店員が増えているようだ。


「ミゼラが頑張っているようですね」

「だな。帰ったら労ってやろう」


王都からやってきたハーフの子達。

初めは解放されたと言われても戸惑い、今後の衣食住などを心配する者も多くいたようだ。

だが、それ等は既にオリゴールが手を打ってあり、住める場所も働く先も準備していたのだ。


全てが順調……という訳ではなかったのだろう。

だからこそ、ハーフエルフであるミゼラにも協力してもらい、この街がどういう街なのか、皆の今後はどうなっていくのかを話し、一人一人どんなことをやりたいのか等ゆっくりと話を聞いて仕事先を割り振っているのだ。

そして、働いているハーフの子達皆の顔が明るく感じるのは、きっと気のせいではないはずだ。


まあ、当然と言えば当然ながら、国となったのだから皆今までよりは忙しくなっているようだ。

かくいう俺も、普段以上に仕事に打ち込んでおり、アクセサリーなんかも作っているしな。


冒険者も商人の護衛依頼などで出払っていたりなど大変そうだが、アイナ達はそういった依頼は受けていないので比較的暇……ではなく、護衛依頼を引き受けた冒険者がいない間に出てきた緊急を要する依頼に出なくてはならないのである。


「お」


早く落ち着かないかなとは思いつつ、この忙しさも今後の成長につながるのだと思うと悪くはないとも思ってしまう。


「に」


祭りの様な高揚感……は、ちょっと違うか。

ただ、なんとなく少し浮かれ気味ではあるかもしれない。


「い」


最近じゃあヤーシスも忙しそうだしな……。

王都とアインズヘイルを行ったり来たりで、たまに転移で送ってあげたりもしているのだが、その際は隼人とも会って話をしていて――


「ちゃあああああああああああん!!」

「ぐるかっ!!」


くの字に曲がる体と、下腹部付近に走る衝撃。

痛くはない……感覚を失っているとかでないのであれば、恐らく大事な部分は無事だろう。


「はぁぁぁぁ……お兄ちゃんのスメルがする……。濃いよう……しゅごい濃ゆい……。さてはお兄ちゃん、朝からお盛んだったね! いいないいな! ボクも混ぜろー!」


……なんでこいつがここにいるのだろうか。

ちなみに、朝からお盛んな訳もないのでこいつが言っていることは全てでたらめだ。

でたらめだから、初見さんは勘違いしないように!

ひそひそするんじゃないよ! 久しぶりだよこの感じ! 今までのアインズヘイルの領民たちならいつもの事かとスルーだったのに!


股間に顔を埋めてすうはあと聞こえる程の呼吸をしている光景はさぞ異様でしょうとも!

おい、油屋の熊人族! 勝手に名物として説明するんじゃないよ!

肉屋の店主! なんだ? と思って見に来たのにいつもの事かと興味を失った感じで戻っていくんじゃないよ。


「オリゴール……お前、何してるんだよ」

「ん? そりゃあお兄ちゃんを見つけたからね。突撃して股間周りの匂いを嗅いでいるんだよ? もうすんごいの。お兄ちゃんの匂いを嗅いでいるだけでボクは発情しそうだよ!」

「知ってるか? ヒトに発情期はないんだぜ?」

「お兄ちゃんこそ知らないのかい? 愛は全てを超越するんだぜ? 今の僕はウサギもびっくりな程の発情期だよ! ふんすふんす! という訳で! 早速宿に行ってしっぽりいこうぜ!」

「行かねえよ。見ての通り買い物中だよ」

「買い物……? ああ、なるほど。アレだね? 共和国から持ち込まれたっていう、死者でもびっくりもっこりな漢方薬を買いに来たんだろう? それならあそこさ! ボクとの初夜に準備万全なんて素敵! 抱いてお兄ちゃん!」


ああ……凄いなこいつ。

何にも変わらない。一応お前、この国のトップだろう?

なんで街を普通に歩いてるの? なんで今まで同様に変態のままなの?

威厳とか身に付かないの? コロネットでも作ってあげようか?


「お前……皆が忙しくしているって言うのに……」

「いやいやいや。ボクだって超忙しいからね!? 泣きそうなくらいずっと忙しいんだよ!? そんな中でボクのオアシスを見つけたんだからそりゃあ飛び込むだろう!? 飛び込まにゃあいかんだろう?」

「ああ、なんだ忙しかったのか。またいつも通り仕事を抜け出してふらふらしてるのかと思ったぞ」

「流石にそんな訳ないだろう……。これでもお仕事はきちんとしているさ。そうしないと各地区の統括に怒られるからね……特にメイラちゃんが怖いんだよ……」

「メイラが?」

「そう。ダーウィンがめんどいとか言って統括を降りたんだよ! アインズヘイル領の時は人任せにしつつも西地区の統括を引き受けてくれたのに! ボクだってソーマやウォーカスに押し付けたかったよ!!」

「それは無理だろ……」

「わかってるよう……。だからこそ、たまにこうして出会えたお兄ちゃんに甘えているんじゃないか」


甘えて……?

股間付近に顔から突撃してくることを甘えるというのだと俺は初めて知ったんだが。


「ちなみに、お兄ちゃんの住んでいる南地区の統括はアイリスだからね」

「あー……なんか姿は見るがばたばたしているなーとは思ってたんだよな。じゃあ、ヤーシスも統括なのか?」

「ううん。西地区はメイラちゃん、南地区がアイリス、東地区はダーマで、北地区は現在暫定的にウォーカスがこなしてるよ!」

「へえ……ヤーシスがいないなんて意外だな」


かなり権力を持っている感じがしたんだけどな。

ダーウィン、ヤーシス、レインリヒ辺りがこの街の実力者だと思っていたんだが、誰も統括に入らないとは……。

もう次世代に託したのだろうか?


そして、アイリスだ……。

王国を離れ、これからはアインズヘイルで生きるらしい。

王位継承権は放棄しているのだし、問題ない……いや、問題ないのか?

まあ、問題があっても関係なくどうにかしてしまうのだろうけどさ。

……まあ、隣の家で暮らしていくのだろうし、これからはお隣さんとして仲良くしていこう。

多分、アイス食べに来るだろうしな。


「意外でもなんでもないよ……。あいつは昔からそういうやつさ。面倒事は笑って誤魔化して引き受けやしないからね!」


あー……想像はつくな。

結構あいつも自由人だよなあ。


「でまあ、各統括のその頂点に立つボクこそが代表なわけだよ! と言っても、皆優秀過ぎてボクがすることなんて、承認の判子を押すだけだけどね。暇なんだよ。暇なんだけど、その場を離れるわけにもいかないから物凄く面白くないの!」

「まあ、政なんてそんなもんだろう」

「分かってたさ……分かってたけど、代表なんてつまらないねえ……。ボクが間違えた時は咎められるように統括職を作った訳だけど、大体ボクに上がってくるのは既に決まった事ばかりだしね……。あ、お兄ちゃん北地区の代表やらない? お兄ちゃんがいるならボク頑張れる気がする」

「やる訳がない」

「なんでだよ! 権力者になれるんだぜ!」

「はっはっは。興味がない」

「いい顔で言うなよー! まあわかってたけどさ。ん? お? おおお? なんだいシロちゃん?」


おっと、悪い悪いシロ。

買い物中だったもんな。

オリゴールの袖をくいくいっと引っ張って抗議していると思ったのだが……ああ。


「オリゴール」

「ん? どうしたんだい? 何かおねだりかい? いいよいいよ。今日はお兄ちゃんに会えたから何でも買ってあげる! シロちゃんは牛串が好きなんだよね?」

「あれ」

「……げ! じゃ、じゃあねお兄ちゃんシロちゃんウェンディちゃん! 代表は大忙しだからね! さらばー!」

「おーう。またなー」


居なくなる時はあっという間だなあ……。

まあ、シロが指さした先を見たら当然なんだろうけどさ。


「オリゴール様ぁぁぁ!!! いい加減にしろよ糞ガキィー! あんた代表なんだから、ちゃんとしなさいよう!」

「あっはっはっは! ちょっとだけ! ちょっとだけ買い物したらすぐ戻るからああああぁぁぁぁ……!」


……あれぞ、アインズヘイル名物逃げる代表と元気な老人の姿である。

まあでも、相変わらず元気そうで良かった……のかな?

忙しいだろうから、ちょっとだけ心配はしていたのだ。

今度差し入れくらいは持って行ってやろう。


「さあ! 買い物再開しようか。後はどこに行くんだっけ?」

「あ、えっと……こちらに少し用事がありまして……」

「いいぞいいぞ。どこのお店でも行こう」

「はい。あの……お店に着いたら、少しだけお外で待ってていただけますか?」

「ん? ああ、わかった……けど」


なんだろう? 買いにくい物でも買うのかな?

まあ、男にはわからないものもあるんだろうなあ。

あれ……ここって確か、さっきオリゴールが言ってた共和国の品が入っている店――。


その後、ウェンディが何を買ったのかは別の日にわかるのであった。

説明回チックな?



もう一回お知らせ!


ノベルス八巻は10月25日予定です!

半分以上は完全書き下ろしですので、お楽しみにっ!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 肉屋の店主! なんだ? と思って『君』に来たのにいつもの事かと興味を失った感じで戻っていくんじゃないよ。 身に来た では?
[良い点] 女性ですが。 イヤじゃないハーレムものだと感じています。 イツキが、度量が大きくてかっこいいです。 隼人との関係も好きです。 [気になる点] 特に無いですが、案内人ちゃんと領主様はち…
[一言] 半分以上が書き下ろし これはもう買うしかないってことなんですね 電子版でとりあえず順に買っていきます 現在電子版二巻です( ・`ω・´) 引き続き応援しますので可愛いソルテもお願いします( …
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