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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
11章 帝国満喫
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11-3 シュバルドベルツ帝国 突発執事

シシリア様に手を引かれてテントに誘われるままに付いていき……というか、俺が力で敵う訳もなく連れていかれた結果、いつの間にかお外が明るくなっていました……。

……ええ。明るくなってから寝たような気がします。


そしてそんな時間まで何をしていたのかと言えば、シシリア様の欲求不満によりシシリア様が眠ってしまうまで抱き枕にされつつ朝まで語り明かしましたよ。

……ええ。語り明かしましたとも!!


こっちの世界に来てからの事とか、アイリスと何を食べただとか……あと何話したっけ……眠過ぎてちゃんと覚えてないな……。


予想し期待していたものとは違ったが、窮屈ながらも抱き枕にされるという至福と、揉みしだいていいものかという葛藤と戦って、いつの間にか眠りについたと思ったのに、起こされたらシシリア様はおらず、6つの不満そうな顔が待っていた朝から数時間経った頃の事。


「おおお……」


眼前に広がるのは巨大な城壁のような壁で、それらがずらっと彼方まで続いており、大地を分断するかのように聳え立っていた。

実物を見た事は無いのだが、万里の長城もこんな感じに壮大なのだろうかと衝撃を受ける。


そして、さらに衝撃なのは列に並ぶ人の多さとそれらを警備する者の数である。

ずらっと、道に整理されて並んでいる馬車の数は丘を幾つか越えて数えきれないほどに多く、反対に向こうからもひっきりなしに荷馬車が通っていくのである。


「ふふ。壮観であろう?」

「ええ……こんなに人が多いとは思いませんでした……」

「まあ、王国と帝国はどちらが大陸の覇者かと長きにわたり敵国であったからな。定期的に行われる戦のさなか、魔族が介入してきたので二国で一時的に手を組んで討伐し、そこから魔王の存在や魔族の侵略、魔物の増加などで人同士で争っている場合ではないと休戦が決まったのだ」

「それは……英断ですね。もし今も戦争なんてしているようなら呆れてしまいそうです」

「ふふ。そうだな。そこから流通も出来るようになった結果がこれというわけだ。我が国にも王国の文化や物資なども広まり、逆もまたしかりというわけだ」


元々敵対していた国同士に繋がりが生まれれば、互いの名産品や互いに足りない物を売る商人が販路を広げ、旅商人が行き来するのは当然という事か。

更には、新たな商品の開発による商売や、旅行者や移住者なんかも増えているんだろうな。


「あー……ある意味では魔王が戦争を止めたんですかね」

「そう言われればそうであるな……。魔王のおかげでアイリスと出会い、お主にも出会えたわけだ。だが、おかげとは言っても魔に堕ちた奴らは人類の仇敵である故容赦はせぬがな」


愉快そうに笑うシシリア様であるが、シシリア様も睡眠不足なはずなのに元気だな……。

俺は欠伸が止まらないというのに……。

だが、もしかしたらあの仲の良い……うん。多分仲の良いアイリスとも敵対関係であった可能性もあったのか。

共通の敵が生まれ協力する訳ではないにしても、戦争が無くなったのは良いことだろう。


「そういえば、少し前の道は舗装が中途半端な感じでしたね。人が多いから直しづらいんですかね?」


途中から揺れが目立つようになり、気になって見てみると一応舗装はされて道にはなっているのだが、序盤の頃の整理されたものとは比べ物にならないものになっていたのだ。


「ん? そうか? 特にそうは感じぬが……ああ。アインズヘイルから伸びているものと比べればそれは劣るであろう。アレはアインズヘイルの領主であるオリゴールが事業を進めておるからな」

「ああー……そういえば、隼人が前にそんな事を言ってました」


あれは確か初めて王都に行く途中の馬車の上だったか。

道が整備されているのに驚いたら、オリゴールが推し進めたものだと言っていたな。


「あやつも上手い奴だ。アインズヘイルに行きやすく、そしてアインズヘイルから地方にも出やすいとなれば、帝国からもアインズヘイルを目指す者が多くなる。立地的にも各国からそう遠くない故、自然と物や人が集まる仕組みを作りおった」

「あー……普段はアレですけどね……。そういえば、お祭りの時はオリゴールに用事があったんでしたっけ?」

「そうだな。あの時は我が王国に来ているので事前の話し合いを……っと、領主との会談故、それ以上は言えぬぞ?」

「わかってますよ。それにしても、ちゃんと有能なんだよな……。オリゴールは普段が普通ならもっと敬えるのに……」

「ふふ。公私で可愛げもあって良いではないか。まあ、奴の場合は可愛げだけではなく、強かでもあるのが他国としては怖いところなのだがな……」

「強か……」


と、言われて思い出すのはついこの間の出来事だ。

オリゴールに……ドキっとさせられた悔しい思い出である。

あの時のオリゴールは……その、ちょっとだけ素敵に見えたな。


「ふふ。お主にも思い至るところがあるようだな。しかし……それにしてもまだ待たねばならぬのか……」

「まあまあ……。それでも今並んでいる方々よりも早くいけるんですから、我慢しましょうよ……」


一般小市民の俺としては、列に並んでいる人達を抜かして進むのはとても心苦しいんだけどもさ……。

まあ……帝国の皇帝の姉君だからそりゃあ特別だよね。

むしろ、待機している間に何かあった場合王国側には責任の取りようがない以上当然というべきなのだろうけど……。


しかも並んでいる人達も慣れたものなのか通達があった後も不満の声は上がっていないから、俺が気にしすぎなんだろうさ。

むしろ帝国の『天からの二物(バーストギフト)』を一目拝もうと遠目から好奇の眼差しを向けられているくらいだ。

……拝んでいるのが男ばかりではなくちっぱいの若い女性というのは……いや、何も言うまい。


で、なんで特別扱いなのに暇を持て余して待っているかというと、今並んでいる列を超えて進むには、王国に既に入っている反対側の馬車を全て流して帝国側の馬車を止めなければならないから。


そして反対側の馬車の一つの車軸が折れてしまったらしく、更には禁止されている物を運ぼうとした輩が見つかった事等も重なって普段よりも長めに待機しているという状態だ。

……で、俺は何をしているのかと言えば……。


「……いっその事、我が行って解決してこようか」

「問題も混乱も生まれるので止めましょう……」

「仕方ない……こちらを楽しむとするか。で、そろそろ着替えは終わったか?」

「……ええ。まあ一応終わりましたけど……」


用意してもらった簡易更衣室から出ると、楽しそうに笑うシシリア様がまず目に入る。


「ふふふ。やはり似合うではないか」

「そうですか……? 結構恥ずかしいんですけど……」


スーツに似てはいるが、似て非なる物だしな……。


「その恥ずかしがる姿もまた良いぞ。そら、カップが空になっているぞ。どうするのだ?」

「……かしこまりました。シシリアお嬢様」


シシリア様の要望で、現在俺は燕尾服を着て給仕をし始めました。

髪をオールバックにして整髪料で固め、胸ポケットには白いハンケチと白い手袋。

薄らと生えていた髭や産毛も綺麗に剃り、THE清潔感を大事にした定番の出来る執事といった装いである。

……装いだけだが。


「はぁぁぁぁ……ご主人様……格好いい……素敵です……」

「……ウェンディお嬢様。お茶のおかわりはいかがでしょうか」

「はいぃぃ。いただきます……何杯でもいただいちゃいますぅぅ!」


ウェンディのカップにお茶を注いでいると、ウェンディが拝むように両指を絡め、瞳にはまるでハートが映っているかのような蕩けるような笑みを浮かべている。


「皆も喜ぶ良い罰であろう?」

「罰も何も、記憶も無ければ感触を覚えてもいないんですけど……」


そう。これは罰、罰ゲームである。

今朝起きた後にシシリア様がおらず、皆がいた理由なのだがどうやらアレが起こったらしい。

アレが何かを聞いても誰も答えてはくれないのだが、シシリア様のあのおっぱいを寝ぼけた俺が揉みしだいたという事だけはわかった。


だが、本当に本当に残念な事なのだが、俺には全くその記憶がない。

指先に残る温もりも、覚えておかねばならない感触や手ごたえも何も覚えていないのだ。

だが、覚えていないとはいえ皆は確信しているそうで、謝罪に行くと……。


『寝ぼけていたのだろう? 寝所に連れて行ったのは我だしな。だが、気にするというのであれば……そうだな。皆も楽しめる罰を受けるというのはどうだろうか』


と、いう感じで何故か罰として……。


『執事となり、皆をお嬢様に見立てて奉仕する』


という事になったのだ。

で、何故執事服なのかというと……。


『我と出会った際、お主だけ普段着であっただろう? あれは、我がお主を気に入るとみてアイリスがめかしこませなかったとみたのだ。それに、我に、我らに仕えるお主というのも見てみたくてな』


という流れでして、燕尾服は元々俺に着させようと用意していたらしいです。

なんでわざわざ燕尾なのだろう……。


ウェンディはご主人様に奉仕してもらうなんて! と、最初は拒否していたのだが、俺が燕尾服を着て更衣室を出るとキャーキャーと騒いで、ミゼラの肩をがくがくと揺らし、ミゼラはすっかりなすがままで困り果てていた。


「おおっ! ご主人イメチェンっすか!? なんかいつもと違う感じっす! あ、これがさっき言ってた罰なんすか?」


近場で鍛錬がてらに組手をしていたレンゲが戻ってきてしまった。

皆に……で、ある以上レンゲにも仕えるようにしなければならないんだよな。


「……レンゲお嬢様。こちらのタオルで汗をお拭きください」

「ぶふぅー! なんすかその話し方! ご主人が、ご主人が丁寧っす! 丁寧なご主人っす! あ、タオルはありがとうっす!」


それはあれか?

この前ロウカクで言った『綺麗なレンゲ』の仕返しなのか?

そう問い詰めながらタオルを使ってグリグリしたいのだが、今の俺は執事だからな……。


たとえ記憶や感触を覚えておらずとも事実であるらしいので、微妙に納得はいかずとも俺も男として覚悟を決め、全力で執事役に徹する事にしよう。


「へえ主様が執事の真似って訳ね……。主様。こっちもタオルお願い」

「はい。ソルテお嬢様。鍛錬お疲れ様です」

「うん。主様もウェンディも皆守るから任せておいて。それじゃあ、拭ってもらおうかしら」

「……はい。ソルテお嬢様」


上機嫌で俺が拭いやすいように腕を伸ばすソルテ。

俺はそんなソルテの手を取って指先から汗を絡めとるようにタオルを使って拭っていく。


「……主様、顔の汗が垂れそう……」

「はいはい。お任せくださいな」


んんーと顔も拭いやすくしてくれるソルテの頬に手を添えて、跡が付かぬようにと丁寧な力加減で拭っていく。

首回りや耳周りなども忘れずにきっちりとこなすと、ソルテは満足そうにして椅子に座り、俺はすかさず冷たいお水を差しだした。


「はあ……主様気が利くわ……。一家に一人は欲しいわね……」


いや俺普段から一家に一人いるからね?

それと、これくらいなら普段もしているだろうに……。


「あ、ご主人自分もお水欲しいっすー! あとお菓子も!」

「かしこまりました」

「主。シロも。あれとこれとそれを三つずつ。あとお膝に乗せて食べさせて」

「座ったら給仕が出来ませんので……」

「むう……残念」


シロお嬢様のお願いであっても、今は皆の執事という事なのでお聞きできません……。

というか、それを許可してしまっては他のお嬢様からももっと過激なものを頼まれそうなので……。


「……ほぁ」

「どうしましたアイナお嬢様? タオルですか? お水ですか?」

「あ、いや、私は自分で……それにお嬢様では……」

「……そういう設定なのだから、乗れば良いのではないの?」

「む、むう……。だがミゼラ、主君にお嬢様と呼ばれるとむず痒いというか……。それに……主君が普段と違う服装や髪形をしていると、何故だか少しドキドキしないか?」

「それは……わからなくはないけれど……」

「そんなもんか? 良く分からないんだが……」


あれか。

この前皆で着てくれたロウカクの民族衣装のような感じなのだろうか?

いやあ、あれはとてもいい物だった!

是非また着てもらいたいものだね!


「旦那様。言葉遣いが乱れてるわよ。あと、なんで鼻の下を伸ばしたの……?」

「んんっ……失礼しました。ミゼラお嬢様」

「いいえ。それにしても、よく瞬時に切り替えられるわね……」


まあ、これでも元社会人だからね。

丁寧な受け答えや、姿勢など、相手に不快感を与えないような所作くらいは心得ているつもりだからな。


「ところでミゼラお嬢様。お口の横にクリームがついておりますよ」

「え? 嘘」

「失礼いたします」


俺は胸ポケットから白いハンケチを取り出して、ミゼラの口元についたクリームを拭きとった。


「はい。いつもの綺麗な顔になりましたよ」

「あ、ありがとう……じゃなくて、なんですぐそういう言葉が出るのよ……」


事実だからかな?

うん。やっぱり綺麗で可愛いミゼラの顔だ。

ちょっと照れて赤くなっているのがまた良いね!


「お、おおー……ミゼラがすっごく照れています……。可愛いです!」

「セレンお嬢様にもついておりますよ。失礼しますね」

「ふえ!? わ、私はただの護衛ですから! そういうのは! そういうのは大丈夫ですから!」

「落ち着いてください。垂れたら服が汚れてしまいますよ」


立ったまま警備をしつつケーキを食べていたセレンさんの口元を拭うと、子供のように目を瞑りんんー! と、声を出して拭われている。


「……取れましたか?」

「はい。セレンお嬢様も美人さんに戻りましたよ」

「あ、あうう……」


以前、護衛として凛とした態度でいたいと言っていたのだが、油断をするとすぐに年相応な可愛らしさになってしまっているようだ。

いずれ努力は実って欲しいものなのだが、空回りしていそうなところが可愛らしい。


「……ふむ。これだけ余裕を見せても何もないところを見ると、この待機は奴の仕業ではなさそうだな」

「ん。問題なさそう」

「あ、俺も一応思いましたけど、それを調べてたんですか?」


なんともタイミングの良い事故だなと思って警戒はしていたんだけどな。

まあ、シロも近くにいたままだったので、一応の警戒にとどめておいたのだが……気にはなっていたんだ。


「当然であろう。やはり、我と一緒にいる間は大丈夫であろう。仕掛けてくるとしたら、王国内のはずだと踏んでいたからな。帝国に入れば我の手中であるゆえ、少しは安心して帝国を楽しんでおくれ」


なるほど……という事は、この罰ゲームも油断を誘う罠であったと……。

まあ、あの公爵がもうすでに動いているのかどうかもわからないからな。

でもって、帝国内ならばシシリア様の管理下になると……それなら、ある程度は楽しむ方向で考えられそうだ。


せっかくの待ちに待ったラガーのある帝国だもんな。

そういえば、シシリア様お勧めのお店があるそうだが、そこには連れて行って貰えるのだろうか?


「ところで……セレンには手を出すなよ? これから成長が著しくなるところで、男に躓かれると困るのでな」

「出しませんよ……」


ちょっと待って、見てなかったの今の俺の紳士的で執事らしい所作の数々を!

どこに手を出す要素があったのか、詳しくお聞かせ願いたいんですけど!?

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― 新着の感想 ―
[一言] 抱き枕係の朝は早い…いやまぁ、多分しっかりねっとり揉み込んだろうなぁ~ てか、罰ゲームとは言え何故に執事服があるんだ~もしかしてセレンさんのモノだったりして 異世界だと衣服の自動調整とかあり…
[一言] こんだけ誑し込んでおいて、どの口が言うのだろうか。 追加もありそうなのに。
[一言] いや、主人公さんよ…傍から見たら執事プレイ?しつつで落としにかかってる様に見えるのでは?
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