閑話 騎士科臨時講師……の恋人
とりあえず、リハビリ的な感じで!
前々から閑話で書こうと思っていたのでスムーズにかけた。
ま じ か!
アイナから騎士科に来ている臨時講師の名を聞いて、いてもたってもいられずに俺は会いに行くことにした。
おおお、ドキドキする。
芸能人に会いに行くかのような高揚感で、普段走るのは極力避けたいはずの足が勝手に走り出してしまうほどに軽いのが自分でも驚きだ。ひゃっほう!
「む。主君早速来たのか」
「来たぞー!」
騎士科と錬金科の授業時間が違うため、錬金科の授業の休み時間に急いでやってきたのだ!
ラズやクランに捕まる前にダッシュで教室を出てきたのだ!
さてさて、どこだ?
あの男はどこにいるんだ?
「ふふ。主君。目がキラキラしているぞ」
「そりゃあそうだろう! 俺はずっと会いたかったんだよ!」
一度見てからずっとファンだったからな!
男に会うのにこんなにワクワクするなんて初めてだ!
「少し待ってくれ。皆、今教えたことを反復して繰り返しておくように。規定数を終えたら走り込みをするが、鎧は着たままでな」
アイナが鎧を着こんだ生徒達へと指示を出し、俺の方を振り返るとちょいちょいっと人差し指で促してくるのでそっちに目を向ける。
すると、腰を下ろして汗を拭いている大男の後ろ姿を発見した!
「いたあああー!」
「っ! な、なななんなんだな!」
俺の大声にびっくりした様子を見せるのは、武術大会個人戦でシロと戦ったあの男。
驚きのあまり「な」がとても多いが、見事な投擲術を披露し、努力を重ねて強くなったというあの男だ!
「ゴンザさん!! うわあい! 本物のゴンザさんだ!」
「そ、そりゃあ本物なんだな……。えっと、だ、誰なんだな?」
「すまないゴンザ殿。私の主君なのだ」
「アイナさんの……あ」
「ん。久しぶり。主はシロの主」
「シロさん! の、主さんなんだな!?」
そうですー!
シロとアイナの主です! 初めまして!
って、シロついてきてたのか。
それにしても、おおー……本当に大きいな。
あれか? 熊人族とかか?
でも、獣耳はないから人族なんだな!
「凄い、凄いな! 生ゴンザさんだ! 大きいなー!」
「ゴ、ゴンザでいいんだな。えっと……二人の主さんはどうしてこんなに目をキラキラさせて興奮しているんだな……?」
「そりゃあ、俺はゴンザのファンだからだよ! 武術大会は格好良かったぜ!」
顔に似合わぬ……というのも失礼だが、繊細にして計算された美しい攻撃だった。
俺には絶対にどうあがいても出来ないとわかるからこそ、果てしないまでの努力が実った姿だからこそ格好いいと思ったのだ!
「ああ、なるほど……そういう事なんだな。でも、僕のファンだなんて……」
「いやいや謙遜するなよ。あの時のゴンザは最高に格好良かったぞ! あれ? でも、騎士科の臨時講師って事は……」
「ぼ、僕も特別に騎士にはなれたんだな。とは言っても、正式な騎士ではなく、守護者の一人に加わったんだな」
おおお、守護者ってアイナ達に勝った三人組だよな!
そこにいきなり入るなんて、流石はゴンザだ!
「そっかそっか! おめでとうだな!」
「あ、ありがとう……で、いいんだな?」
「ん。おめでとう。また強くなってる?」
「守護者にもなれて、騎士団の偉い人にも謝られて、試験方法も大きく見直すことになって、見返すことは出来たんだな。実戦経験も積んで……次はシロさんに、せめて一発当てられるように鍛錬は続けてるんだな」
「ん。シロも強くなってる。一朝一夕じゃ、追いつかせない」
「の、望むところなんだな!」
おおー……シロに当てるのが目標か……。
そいつはなかなか達成出来ないぞ?
うちのシロは本当に強いからな!
でも、応援はしたい! 努力するゴンザは格好いいのだ!
「あ、そうだ主さん。アイナさんには感謝しているんだな。僕じゃあ普通の騎士科のメニューは実践して教えられないから、アイナさんがいて助かったんだな!」
「おお、そっかそっか!」
ゴンザは投擲術のエキスパートだもんな。
剣を振るうならば、基本がきちんとできているアイナはぴったりだったのだろう。
「私こそ冒険科の方はソルテとレンゲだけで足りているから、暇を持て余さずに済んで助かった。騎士を目指す彼らに冒険者の私が教えて良い物かとも思ったのだがな……素直に私の方が強いと判断してその強さを学ぼうとする彼らは、きっと誠実で強い騎士達になるだろうな」
「ア、アイナさんだったらすぐにでも騎士になれると思うんだな?」
「ふふ。ありがとう。だが、私は既に主君の騎士であり、主君を守ると決めていてな。二君に仕える気はなく、私の剣は一生でただ一人の為に誓った剣なのだよ」
そう言うとアイナは俺に熱のこもった視線を向けてくるので、俺も微笑んで応える事にする。
「あ、も、もしかして二人は……」
「ああ。俺の恋人だよ」
「ん。シロも」
「そうだな。シロもだな」
「ええ! 2人もいるんだな!?」
「ん? 6人いる。……6人でいい?」
なんで疑問形だよ。
アイナ、シロ、ウェンディ、ソルテ、レンゲ、ミゼラで6人だよ。
……コレン様とかカサンドラとか、それ以外にも微妙な立ち位置の人が多々いるかもしれないけど……6人だよ!
「お、おおー……豪快なんだな……。主さんは錬金科の臨時講師って聞いたけど、戦闘はしないんだな?」
「ああ。俺は戦闘はからっきしだよ。一応鍛えてはいるんだけどな……まあ、生徒達を含めたここにいる誰よりも弱い自信があるぞ」
「そ、そうなんだな……」
「で、だ……そのー……な」
「え? な、なんなんだな?」
「いや、さっきからそこの木の陰にいて、こっちを物凄く凝視している子は誰なんだろうって……」
俺が来てから木の裏に隠れたままずーっと暗いオーラを放ちつつ、こっちを睨みつけている女の子。
あれ? でも俺に向けて……じゃないのか?
「え? ……あ、ロコ……」
「ロコ? 知り合いだったのか」
「あ、その……えっと……こ、恋人……なんだな……」
ゴンザの恋人と言う言葉にビクンと反応し、連続小ジャンプとおそらく耳があったらピコピコ動き、尻尾があったらぶんぶんと振っているであろう程に喜びのオーラを溢れさせる。
「ロ、ロコ! こっちに来て欲しいんだな」
「…………わかった」
ゴンザの呼びかけに、木の陰から現れたのは小さな女の子……ではなく、背が低い女性だ。
あれ? 確かあの子は……。
「……守護者。ロコ。魔法使い。ゴンザの恋人」
「お、おう。えーっと、第二錬金科の臨時講師、忍宮一樹、錬金術師で、アイナとシロの恋人だ」
「……恋人?」
「おう。そうだけど……」
キョトンとした可愛らしい顔をした後に、俺、シロ、ゴンザの顔を見て、ゴンザが頷くのを確認したと思ったら胸をなでおろすロコちゃん。
「……ほ。良かった……」
「だ、だからシロさんは自分にとって目標なだけなんだな……」
「……でも、四六時中思われてるのはずるい」
「ん? シロは主のだよ?」
「……ゴンザに想われてるのがずるい」
あーなるほど。
ゴンザの恋人だが、ゴンザが次はシロに一発は当てると鍛錬に励んでいるので妬いていたのか。
はは。可愛らしいやきもちって奴だな。
「ゴンザ。いい子捕まえたなー」
「つ、捕まえたわけじゃないんだな……」
「うん。私が捕まえた」
「お。意外と肉食系なのな」
「うん。ゴンザに一目ぼれした」
「わかるわ……。俺も一目でゴンザのファンになったんだよ」
「見る目ある」
「そっちこそ、ゴンザに一目ぼれだなんて見る目あるじゃないか」
「当然。ゴンザは最高の恋人」
おおお、愛されてるなあ。
ゴンザ……首まで顔が真っ赤だぞ。
「なるほどな。だが、うちのアイナもシロも最高だぞ?」
「……ゴンザの方が最高。ゴンザはいつも私のしたい事を優先してくれる。今日もいっぱい抱き着いたら、受け止めてくれた。紳士的で、とても優しい」
「うちのアイナだって、俺がしたい事をなんでもさせてくれるぞ? 勿論、突然抱き着いても怒らない」
「……ゴンザはいっぱいチューしてくれる。恥ずかしそうにしながらも、ちゃんといっぱいしてくれる」
「シロはすぐにほっぺにチューしてくるし、アイナも……自分がしたいときはそわそわしていてな、丸わかりなんだが俺から言うのを待ってる時が可愛いのなんのって」
「ゴンザは料理も得意。ゴンザのご飯はいつも美味しい」
「料理は……流石に俺が作るからな……。でも、俺が作った料理を二人共美味そうに食べてくれるよ」
「むう……この前は一緒にお風呂に入った!」
「アイナ達とは毎日お風呂に一緒に入ってるぜ。勿論洗いっこだ!」
じぃーっと見つめられるので俺も見つめ返す。
その間ほんの少しの静寂が訪れるが、すぐにロコちゃんが口元を微笑ませて俺に手を伸ばしてきた。
「……なるほど。いい恋人。素敵な関係」
「ロコちゃんもな。お互い、好きあってるのが伝わって来たよ」
「ロコでいい。私は大人。ゴンザの大人の恋人だから」
ぐっと差し出された手を握り返し、良い顔でお互い見つめあい、頷きあう。
改めて、ゴンザは良い子を恋人にしたんだなとちょっと嬉しい気分になった。
「……しゅ、主君……」
「ん?」
「そういう話は……公の場でしないでほしいのだが……」
「ロコも……流石に他人に聞かれるのは恥ずかしいんだな……」
「ん? 私はいっぱいゴンザの良いところを自慢したい」
「その通りだ。俺だって恋人の自慢がしたい」
俺とロコは恥ずかしがる二人をよそにむふーと鼻息を荒くする。
俺を持ち上げられるのは恥ずかしいが、いかに自分の恋人が素晴らしいかは自慢したいのである。
「んふー。シロは満足。主の最高!」
シロがそう言いつつ俺の後ろから首に抱き着くので、それに対抗してかロコもゴンザの後ろから一生懸命に乗ろうとする。
それをゴンザは顔を赤くしながらも手伝って乗せてくれる優しさを見せてくれる。
「……ところで、洗いっこのところを詳しく。私もしたい。おすすめの石鹸とかある?」
「ああ、『泡がめっちゃ立つ石鹸』がおすすめだ。あとはいずれ俺の教え子が出すであろう匂い付きの石鹸もいいかもな。二人から同じ香りが……なんて、さりげないお揃いが出来ていいんじゃないか?」
「おお! それは良い。出来れば、オーダーメイドもできるともっといい。ゴンザと一緒の、二人だけの香り……」
オーダーメイドか……誰からでも受けてしまうと忙しくなってしまってあいつらがてんてこ舞いになってしまいそうだが、臨機応変に対応は出来るように相談には乗れるようにしておくか。
「あ……そうだ。あとはアインズヘイルのリートっていう錬金術師の石鹸はいいぞ。美容に効果覿面で、他にも出してるからそれと合わせれば……!」
「むふー。ゴンザもメロメロ」
ふっふっふ。守護者の紅一点に宣伝しておきましたよリート先輩。
これで、うちの生徒達が石鹸を作るのは許してくださいね!
お互いサムズアップをしてにやりと笑う俺とロコ。
ゴンザもアイナも突っ込み慣れしていないせいか、顔を赤くしてあうあうしながらも止め方がわからない様子なのであった。
ええー11章開始は来週の土曜日予定。
そこからは一応不定期なのだけれど、おそらくまた定期的に書いていくと思います。
とりあえず、11章は何とか書けると思う……。
というか、どちらにせよ12章はしっかり詰めないと書けないと思うので、11章終了後もお休みを貰うのなら早めに11章を書いてしまわないと沢山休んでしまうので書きます!
スランプ的にはまだ全快ではありませんし、集中力不足が一番の原因だと判明はしましたが、11章で書く事もいくつか書き出せてはいるのでやっていきますー!
皆様、お待たせいたしました!
またよろしくお願いします!




