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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
10章 日常の一時
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10-22 アインズヘイルで休息を アイリス降臨

稀少系のオイル集めについての説明を終えてきちんと守秘義務については理解してもらえたと思う。

とはいえ、油断はせずに都度話していかねばならない。


更に、ラズとクランによりこれからの数種類の草花の確保についても話をしてもらい、皆二人の覚悟に驚きつつも表情をより真剣なものへと引き締めなおしたようだ。

実家の領地で農業が盛んな子も、自分も親になにか融通をしてもらうことが出来ないかを聞いてみるそうで上手く回っていきそうだ。


立っているものは親でも使え……というが、親が貴族であるとその効果はすさまじいものがあるな……。

と、そんな感じで順調に進んでいたある日。


「本当に来たのかよ……」

「うむ! 思ったよりも真面目にやっておるようだな。感心したぞ」

「そりゃあ仕事だからな……っていうか、なんでそこなんだよ」


俺の席の隣。つまりは教壇の真横に椅子をもってきてまるで特別待遇のように座っているのはアイリスだ。

先ほど何食わぬ顔で入ってきては椅子を置き、どかっと偉そうに座って、『わらわの事は気にするな、ほれ。授業を開始せい』などとのたまったアイリスだ。


おかしいな……この学園は『門をくぐった時点で貴族や王族としての立場を利用すること』を禁止しているはずだ。

貴族だ王族だは関係ないはずなのに、なぜそこにいるのだろうか……。


「んんー? わらわだけ特別扱いなのが気になるのかー? それはわらわの監査の仕事ゆえな。この学園に視察という名目できておるから、生徒でも教師でもないという立場なのだ。とはいえ、中に入ってしまえば王族という力を行使できないことも事実であるがな」

「あーなるほどね……」

「せんせー! こっちとこっちとこっち、どの匂いがいいー?」

「あ、私のもー! こっちとこっちぃー!」

「んー……どれどれ」


俺とアイリスが話していると、横からラズとクランが両腕を出して匂いを嗅がせてくるので、顔を寄せ手首のあたりの香りを嗅ぐ。

最近の俺はこうして匂いを嗅がされ、感想を求められることが多くなっていた。

これも仕事。むしろ、これが仕事だ。


「へえ……優雅で上品な香りだな。ベースは何を使ったんだ?」

「んーっとねえー! マグノリアっていうお花なんだよー! 右も左もどっちもマグノリアベースなんだよぉー!」

「せんせー! こっちもこっちもー!」

「ん、ラズのはベリー系か?」

「そうだよー! ラズールベリーとクランブルーベリー、それにストロングベリーだよー!」


なるほどなるほど。

確かに甘酸っぱくて女の子らしいいい香りだ。

ただ、シングルノートで単一の匂いとするには少し強いか?

少し経った後に香るミドルノートに薔薇やベイリーフなんかが出てくるようにすると、ちょうどいいかもしれない。

そういえば、アイリスなんて花もあるんだよなー。


だが、右手がクランブルーベリーで、左手がストロングベリーなのはわかる。

しかし、ラズールベリーはどこだ……? と思っているとニカっとラズとクランが笑う。


「ラズールベリーはーここだよー! ここを、くんくんするんだよー」

「……あのなあ……」


ラズが指さした先は、制服の胸元を開いた胸の谷間だ。

そこを男の俺が嗅ぐのは流石に絵面がまずいだろう……。

んんー……とはいえ、香水は汗で匂いが大なり小なり変わってもくるものだ。

おそらく、あのおっぱいでは汗をかきやすくもあるだろう。

そういう名目でというのならば、これも仕事だと割り切ろう。


「仕方ない」

「「え!?」」


ああ、この香りも甘酸っぱくて小悪魔のようで素晴らしい。

だが、少し落ち着く匂いも交じっているな……。

確かリートさんの話だとラズールベリーにはジャスミンの香りが合うって言っていたのを生徒達にも話したし、その香りかな?


「個人的にはこれが一番いいな。ただ、ラズールベリーだけじゃなくてクランブルーベリーの香りも混ぜた方が、もっと華やかになると思うぞ」

「あー! ああー!! 嗅いだー! 遠慮なく嗅いだー!!」

「いや、嗅げって言ったよな……?」

「そうだけどー! 乙女の胸元の匂いを嗅ぐのにどうして躊躇しないんだよぉー!」

「仕事だからな」

「そんなお仕事はないよー! 胸の匂いを嗅ぐのはお仕事じゃないよー!」


そんなことを言われてもな……。

くんくんするんだよー! とか自分で言ってたじゃないか。

香りのように小悪魔になるには、まだまだ経験不足が否めないぞ。


「うわー! ラズのおっぱいがせんせに蹂躙されたよぉー!」

「されてはないよー!? クラン変なことを広めちゃだめだよー!」


ぴゅーっと走り去ってしまう二人が、クラスの皆のもとに走る。

おいおい……と思っていると、皆笑顔なので一連の出来事は知っていたか見ていたのだろう。

あーあークラスメイトにまで嗅がれる真似をされて恥ずかしがっているし……。

まあでも、作っている最中は集中していて真面目だからいいか……。


「……で、アヤメさんは俺に何か用が?」


さっきからずーっと睨みつけるように俺に熱い視線を送ってきているのには気づいていますよ。

もしかして、教壇に立つ俺に萌えですか?

先生フェチだったりします?

アヤメさんとなら放課後の教室でマンツーマンの授業も考えますよ?


「貴方……彼女たちに何をしたのですか? 薬でも盛りましたか? 犯罪ですね。首を落としましょうか?」

「なんでだよ……。そう思った理由も対処方法もなんでだよ……」


あれー? 最近は昔ほど冷たくなくなってきたと思っていたのだが、まさか時間があいたせいで出会った当初に元通りに?

MPの自然回復のように、俺への嫌悪も自然回復してしまうのだろうか……?


「彼女達の変わりようはおかしいです。彼女達のような卒業を待つだけの貴族の子が、こんなにもやるきになっているのですよ? 怪しい薬か何かを疑うのが当然でしょう?」

「いやいや、怪しい薬を疑う前に予想できることがあるでしょう? 俺の教師としての腕前が良かったからとか、もっと自然なことをさ……」

「はあ? 自然でしょう? 腕前のいい錬金術師が起こした珍事ですよ? 怪しい薬がまず第一に出るものと考えるのが普通では?」


言いたいことはわかるけども……。

錬金術師がかかわっていれば、お薬の効果が! とか思う人も出てくるのもわかるけどもさ……もうそれなりの付き合いなんだから、俺がそういうことしないってのもわかるでしょうに……。


「ねえねえねえー」

「ん? どうした? また匂いを嗅いでほしいのか?」

「ち、違うよー! もう今日は駄目だよー!」

「あのねー教室に入って来た時からずっと皆も気になってたんだけどー……。せんせ、アイリス様とお知り合いなのぉー……?」

「あー……まあな」


あれ。もう戻ってきたのか。

で、なんで腕を軽く触ってくる必要があるのだろうか……。


「い、意外だよー。びっくりだよー! 驚愕の事実だよー!」


キャーキャーと俺の袖を引っ張って弾んでと変なテンションの二人を筆頭に、クラスが少し騒がしくなる。

お前らー……今授業中だからなー?


「お主らベルセン侯爵家の『双星の美姫』だな。久しいな。元気にしておったか?」

「はいーアイリス様もご機嫌麗しくー」

「ご健勝そうで幸いですぅー」


どうやらアイリスと二人は知り合いだったらしい。

というか、このクラスは全員貴族の娘なんだし、繋がりくらいはあってもおかしくはないか。


「ところで、おぬしら随分とそやつが気に入ったようだな? そんなにもくっついて……ぬしらが今までフってきた男達が見たら涙を流して悔しがるであろう」


そんなにも、と言われて自分が今何をしているかを確認するラズとクラン。

腕を見て自分を見て、そして俺を見上げたうえで更にくっつくように抱き着いてくる。


「気に入ってますよー。せんせーは私達のせんせーですからねー」

「せんせは面白いんだよー。予想外が多すぎるよぉー」

「ふむ……だが、そやつはわらわのものだ。おぬしらにはわたせぬぞ?」

「ええー!!? アイリス様のだったのー!?」

「聞いてないよー! 驚愕の事実だよー! 予想外すぎるよー! まさか愛する6人の恋人の一人がアイリス様なのぉー!?」

「いやそれは違うが……あー……」


そういえば俺一応アイリスの庇護下にいるんだっけか。

特に影響が無いから忘れてたな。

まあ、もしかしたら陰ながら守られていたりするのかもしれないが……自分からは言ってこないか。


「ええー……アイリス様ずるいー」

「アイリス様の手が付いてるなら、何もできないよぉー」

「はっはっは。目の付け所は悪くはない。こやつはお前達が師と仰ぐには相応しい程に優秀である。なにせ、帝国の皇帝の姉であるあの乳肉にも気に入られておるからな」


乳肉て……お前それシシリア様の事じゃないだろうな……?

あの究極完全体なおっぱいを乳肉呼ばわりたあ、言ってくれるじゃないか……。


「シシリア様も……? やっぱりせんせーは大物だったのー?」

「んなこたあないんだって……。たまたまだたまたま」

「そうですよ。この男が大物だなんてありえません。女を見ては胸を見て尻を見て足を見るような途方もない最低の変態です」


……援護してくれたんだよね?

俺の謙遜の援護なんだよね……?

目を瞑っての悪口はきっと照れ隠しだと思うことにしよう。

……強く生きよう。


だが、ラズとクランは少しむっとした顔をすると顔を見合わせて一瞬で不安そうな顔をしてみせる。


「ええー……じゃあ、せんせは信用しちゃいけないのぉー……?」

「流石に最低な人なんだったら、お父様にも報告しないとだよー……もうお家を出るって決めちゃったのにー……」

「あ、いえ、その。錬金術の腕前に関しては……一目を置く価値はあると思いますが……」


いつもの調子で俺に冷たくしていたつもりだったようだが、ここは教室であり俺は先生であり、そして生徒がいる。

まだ俺のことをそこまで深く知らない生徒達に、なんだか付き合いのありそうなアヤメさんが言うと真実味を帯びてしまい不安になった……と見えるわけか。

よし。ちょっと黙っていよう。


「でも、人として最低なんでしょー?」

「ならやっぱりぃー……」

「……失礼。今のは言いすぎました。ところどころ女性にはだらしない部分はありつつも、しっかりと人と人との関わりを大切にし、一本筋の通った頼りになる男ではあります。錬金の腕についても、エリオダルト卿に負けず劣らずですし、貴方方に悪意を持って近づくような男ではありません。混乱を招くような真似をしてしまい申し訳ございませんでした……」


ほぉ……。

まさかだよ。

アヤメさんが俺をちゃんと褒めてくれたという衝撃の事実に驚愕を隠せない。


「えへへー。知ってますよー」

「せんせは悪いことは出来ない人だよねぇー」

「……ただし、女性には本当に情けなくなります。特に胸は気をつけなさい。狙われます。揉みしだかれてお嫁にいけなくなります」

「狙わねえよ……。俺がいつアヤメさんの胸を揉みしだいたんですか……しだいてないでしょうよ?」

「今は……でしょう? もし揉みしだいて構わないと言ったらどう――」

「そりゃあ揉みしだきま……はっ!」

「……こういう男です。ですから、隙は見せてはいけませんよ」


しまった……『アヤメさんの』という限定商品のような素晴らしい提案の前についうっかり言葉が滑ってしまった。

教師としての威厳が! このままでは、俺の威厳がっ!


「あー……それは、えっと知ってますのでー」

「さっきもおっぱいの匂いを遠慮なく嗅いだし、初めて教室に入って来た時もすぐにラズのおっぱい見てたもんねぇー」

「しぃーだよー。せんせーが傷ついちゃうでしょー」

「えーでもでも、師匠になったらラズはおっぱい揉まれるかもよー? 私は大きくないから大丈夫だけどぉー」

「ふむ……おぬしらがこやつの弟子入りか。それはそれで面白そうだな。ちなみに、こやつの恋人のうち2名は妹の方と同じくらいの大きさじゃぞ」


余計な事を言うんじゃないよ。

言われたクランが「えっ!?」って口を開けて自分の胸を大事そうに隠しているじゃないか。

皆もひそひそ話をし始めるんじゃない。


「せ、せんせー? ダメだよー? もし師弟になってせんせーの家にお邪魔することになっても、おっぱいは好きにさせてあげられないよー?」

「小さいのも大きいのもダメなんだよー? 師弟でも越えて良いラインと悪いラインがあるんだよー? これも修行! とか言っても、気づいちゃうんだよぉー?」

「求めねえよ……。もし求めるような奴だったとしても、そうなりたくなかったらさっさと錬金しろ錬金! お前らも、授業中なんだから手を止めるなよ」

「「「「あははは。はーい!」」」」


コロッと打って変わって錬金の作業を再開しだす生徒達。

……なるほど結束してからかわれていたわけか。

どうしてこう……女の子っていうのは連帯感が強いんだろうな。

何の打ち合わせもなかったはずなのに凄いのなー……。


「ん? どうした? まさか本気にでもしたのか? こやつらとて、幼き頃から人を見る目は養われておるからな。お主くらい分かりやすければ信じるに値するかどうかは少し話せば見極められるぞ」

「あのなあ……危うく俺の教師としての信頼が脅かされるかと思ったんだが?」

「はっ、わらわが認めた数少ない男だぞ? もう少し自信を持っても良いのではないのか?」

「俺にとってアイリスはアイスを求めるお子様なもんで」

「言いおる……。ふふ。そうじゃな……こやつらとてすぐにはおぬしの良さに気づかぬが、わらわは一目でお主が信頼に足ると見抜いたぞ。わらわは凄かろう?」


楽しそうに、誇らしそうに笑うアイリス。

しかし、皆にわざわざ自分の物だと言うとか、自分の方が早く見抜いたとか……。

もしかして、第二錬金科が貴族の女の子ばかりだと知っていて……。


「もしかして……嫉妬してたのか?」

「……たわけが。嫉妬ではなく独占欲というのだ。それに、そういうことは言うものではない」


図星だったのか少し顔を赤らめてそっぽを向くアイリス。

はは、やはりまだまだ子供だな。


「まあ俺はお前の庇護下から簡単に出る気はないぞ。これからもお世話になるつもりだからな。頼むよ。アイリス様」

「ま、まあそこまで言うのであればわらわも特別に庇護し続けてやろう。いひひひ」


あーあー……露骨に機嫌が良くなってまあ。

アヤメさんも自分の主の露骨な態度の変化に苦笑いを浮かべつつ、見て見ぬふりをしたようだ。


「早速頼りにさせてもらうけど、完成したらアイリスにも使って広めてもらえるか?」

「ふむ……仕方ない。詫びはアイス一つで手を打ってやるか」


ほら。

結局アイスだろ?

まあでもアイリスが手伝ってくれるなら効果は絶大だろう。

なんせ、王族だからな。

……休み時間にでもアイスを出してやって、皆と一緒に食べるとするか。

はやいところだともう5巻もコミックス1巻も発売されているようですね。

購入報告などすでにしていただきありがとうございますー!

ネタばれはくれぐれもご注意を!


でも発売日は25日!

さあさあ、連休明けに発売ですよー!!


そういえば、ニコニコ静画にもコミカライズが出たようですね。



危ない投稿予約を25日にしそうになった……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的に! 全くもって個人的にだけどどうもアヤメみたいなキャラは苦手。 1人くらい主人公に辛辣なキャラが居ても良いんだけどイツキの性格上なのか仲は悪くないんだよねぇ。 でもイチイチ、イツキ限…
[一言] そして、アイスに飢えたギルドカードで連絡を取れない女子達が、隼人の家でなら食べられると聞きつけ、押しかける……。侯爵に隼人が呼ばれ、何故か奴隷の子を連れて来てくれと言われ戸惑いながら訪れると…
2021/07/11 09:27 退会済み
管理
[良い点] 面白かった。
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