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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
10章 日常の一時
262/444

10-8 アインズヘイルで休息を ゴールデンモイと孤児院と

一般列で購入できるゴールデンモイの数は一人につき二つ。

早朝に家族の分もと考えると少し少ない気がするが、確実に買えるということでそれなりに長蛇の列が出来ており、ようやく買うことが出来た。

ついでに来年分の予約も済ませておいた。


「これがゴールデンモイか……」


見た目は普通のさつまいもだよな。

まあ、いつもどおり足がついていたと思われる跡はあるんだけどさ。

おそらく、ゴールデンというのだから中身が金色に輝くようなイモなのだろう。


「主君、買えたのか?」

「ああ。アイナもお疲れさん」


アイナは両手いっぱいに美味しそうなゴールデンモイを抱えてこちらへと近づいてきたので、それらは全て魔法の袋(小)に入れて横に並んで歩き出す。


「しかし、すごい量だったけど大丈夫なのか? 取り過ぎて皆から不満がでたりしないか?」

「確かに多いが、取りすぎということはないぞ? 皆も楽しみにしていたものだからな。私が取りすぎては、可哀想だろう?」


そう言ってアイナが周りに目を向けさせると、参加賞しかもらえなかった冒険者達が仲間内で悔しそうにしつつも笑いあい、楽しそうにしていた。

結局分け合っていたりなど、まあひとつのイベントを楽しんでいたって事なんだろう。


「さて、それでは帰って食べる準備をするか」

「そうだな。ところで、ゴールデンモイはどうやって食べるんだ?」

「焼くか蒸すだが、基本は焼いて食べるぞ?」

「焚き火か? それとも石焼き? 壷焼きってのもあるが」

「主君の世界ではそんなに焼き方があるのか……。私たちはそのまま食べるのならば焚き火などで鉄串などに刺して焼く事が多いな。ただ、焦げる可能性や生焼けになる事が多いのが問題なのだが……」


焚き火をするにしてもアルミホイルもないもんな……。

石焼きにするとしたら、普通の石で出来るのだろうか?

加熱しても割れず、丸くて軽い石だったっけか……。

遠赤外線がどうたらこうたらとかあるんだろうけど、詳しくは覚えてないな……。


壷焼きは……一度お店で見た事がある。

普通に割れにくい壷と炭があれば出来そうだな。

んー。焦げる心配をするのなら、壷焼きがよさそうか……。


「あ、兄ちゃん!」

「ん? おお、よう。久しぶり」


声をかけてきたのは孤児院の子供達が6人ばかり。

皆両手にはゴールデンモイを二つ持っている。


「おはようお兄ちゃん! アイナお姉ちゃんも!」

「ああ。おはよう皆」

「兄ちゃん達もゴールデンモイ?」

「そうだよ。俺は初めてだから、今日しか買えなくてさ」

「そっかそっか。俺達も去年はお金が無かったから食べられなかったけど、今年は兄ちゃんに教わったお好み焼きのおかげである程度収入はあるからさ。マザーがちょっとくらいならって言ってくれて買って来たんだ!」


そう言って誇らしげに買ったゴールデンモイを見せつけるように掲げる子供たち。

お好み焼きも中々の売れ行きだそうで施設や服、身の回りのものから整えているようだ。


だが、こういった嗜好品にまではなかなか手が回らないのだろう。

なんせ子供たちも多い上に、国からの助成金は少ない。

アイナ達も寄付等を行ってはいるが、子供の成長は早いので使いまわしていても必要な物は多いのだ。


となれば、今回6人が買ったゴールデンモイも、ギリギリだったのだろうな……。


「主君……」

「ああ。そうだな」


アイナが言いたいことはわかる。

ゴールデンモイを分けてもいいかと聞いているのだろう。

まあ、俺たちは人数分あればいいからな。


「なあ、アイナがモイ掘りに参加して結構な数があるんだが、いくつかいるか?」

「兄ちゃん……ありがとう! 足りないんじゃないかって思ったんだろ? でも、大丈夫!」

「ん? なんでだ?」

「これは普段お世話になってるマザーやシスター達にあげる分なんだ! 俺達が稼いだお金で何かしてあげたくてさ、前々から皆で考えてたんだよ。あ、内緒だから絶対言わないでくれよ?」

「お前たち……」

「……格好いい事するねえ」


へへへっと照れ笑いを浮かべる子供たち。

良い子に育ってるな……。


「まあ、俺達は別のご馳走があるらしいからさ! 今回はそれを食べて、来年予約しておいたからゴールデンモイは来年楽しみにしておくんだ!」

「あのねあのね。王都から偉いシスターが来てくれるんだって! それで、そのシスターが炊き出しをしてくれるの!」

「そっか……そいつは、楽しみだな」

「うん! なんか凄いお話もしてくれるんだって! まあ、難しい話はわかんないんだけどさ!」

「勉強も大事だぞ? 何になるにしてもな」

「「「「「「はーい!」」」」」」


王都から偉いシスターが凄いお話ねえ。

司教様だとか司祭様だとかではなく、偉いシスターか……。

心あたりが一人しかいないな。


「あれー? 主さんじゃないですかっ! やーん奇遇ー!」

「違う。お前じゃない」


副隊長。

俺の心当たりはお前じゃない。


「いきなり酷い!? なんですか!? 今日はスリットが上まで入っていないからですか!? ノーパンにしないと気がすまないんですか!? 当たり前じゃないですか子供の前なんですよ!」

「子供達の前で教育に悪いことを言うな。悪影響を与えるな」

「悪影響!?」


子供達の前でスリットがどうだの、ノーパンがどうだのと……悪影響以外の何物でもないだろう。

見ろ思春期真っ只中の少年のあの困りきった表情を……。

スリットだノーパンだと下半身の事ばかり言うから、変にちらちらと気になっているじゃないか。

せっかく立派なおっぱいを持っているというのに、見られもしないとは副隊長不憫な……。


「副隊長……何を遊んでって、おや。お久しぶりでやがりますな」

「テレサ。うん。やっぱりそうだよな」

「な、なにがでやがりますか?」

「いや、なんでもないんだ。うん。テレサと会えて良かった!」


王都の偉いシスター……つまりは聖女であるテレサだよな。

ほかの聖女様だとか、俺の知らない偉いシスターの可能性もあったけど、副隊長もいたし……うん。

良かった。いてくれて。


「お、おかしい……隊長と私で扱いの差がおかしい!」

「はぁ。何を言っているでやがりますか……。主さん、悪いでやがりますが、今日は仕事でやがりますから、失礼するでやがりますよ。まだ暫くはアインズヘイルにいるでやがりますから、後日挨拶に行くでやがります」

「あー仕事ってあれか? 孤児院に凄い話をするっていう……」

「凄い話って……また抽象的でやがりますな……。教会に伝わるこの世界の神についての話をするだけでやがりますよ」


おお、神って言うと女神であるレイディアナ様のお話だろうか。

それに、戦闘神アトロス様だったか? 確かちっぱいだとかの……。

そっか、レイディアナ様のお話か……ちょっと気になるな。


「……なあ、それ俺も聞いていいか?」

「構わないでやがりますが……。まずは炊き出しの準備からでやがりますよ?」

「ああ。それも手伝うよ。アイナもいいか?」

「うむ。構わないぞ。火をつけるのは任せろ」

「では行くでやがります。子供達も、しっかりはぐれずに行くでやがりますよ」


はーい。と、元気よく返事をしてテレサの後についていく子供達。

テレサはそんな子供たちを気にしながら、ペースをあわせて歩き、アイナが子供達の中に入って面倒を見ながら進んでいくので俺と副隊長がその後ろを付いていく。


「で、副隊長達はこんな朝早くから何してたんだ?」

「ゴールデンモイ掘りの救護所で治療のお手伝いですよ。それよりも主さん主さん。教会に興味が出てきたんですか?」

「いや、レイディアナ様にはお世話になっているし、色々知っておきたいなって思ってさ」

「あーそうですよね。流れ人ですもんね。いいなあ……レイディアナ様にお会いできて」

「……副隊長って意外と信心深いのか?」


普段の様子から見て、とても敬虔な神の信者だとは思えにくいんだが……。


「意外とってなんですか……。私は普通に信心深いでしょう。そうじゃなければ、神官騎士団の副隊長にはなれませんよ……」

「信心深くないとなれないのか?」

「そうですよ。神官騎士団は、強さ、神気、そして知識が必要なんです。試験では筆記試験もありますし、より女神様の事を知っていなければなれないんです! つまりは神官騎士団はエリート! そして、そのエリートのNo2である私はもっとエリートなんです!」


わあ……なんでだろう。

途端に神官騎士団が心配に思えてきてしまう……。


「まあ、隊長に比べたら全然ですけどね……。隊長は凄いですよ。強さは言わずもがな流れ人に近い神の力を宿していますし、神気は聖女級ですし、なによりもレイディアナ様を崇拝しておられ、筆記試験も満点でしたからね」

「ほーう……」

「隊長は私達に知られてないと思っていますけど、毎朝水ごりと祈りを欠かしませんし、教会の中で誰よりも信仰心が厚く、信者にも慕われている凄い方ですからね。隊長の後釜の隊長なんて、正直な話比べられるのが酷だろうと思いますよ」

「あれ? 次の隊長には副隊長がなりたいんじゃなかったのか?」

「冗談に決まってるじゃないですか。隊長がいない神官騎士団なんて、速攻で退役しますよって、何をニヤニヤしているんですか……はっ! まさか気づいたんですか? これはたまたま今日は寝ぼけてて付け忘れただけで! 趣味とかじゃないですから!」


ばっと歩くたびに揺れていたおっぱいを隠す副隊長。

副隊長がノーブラだという事は既に気づいていたのだが、せっかく真面目な副隊長に感心していたというのに……。


「はぁ……」

「なんのため息ですかそれ……? おっぱいを手で押さえられて揺れなくなったからため息をついたんですか?」

「いや……。それも残念ではあるのだけど、副隊長は残念だなあって」

「一番残念思考の主さんには言われたくないんですけど!?」


お、言ったな。

副隊長と俺、どっちが残念な思考の持ち主か勝負するか?

よし、後でテレサとアイナに聞いてみようじゃないか!


結果……ドロー。

まさかのドロー。

圧倒的に勝てると思っていたのだが、思った以上に俺の思考も残念だったらしい。

というか、目線が露骨だとか、考えている事がわかりやすいだとか言われましたよ……。

ついつい目が向いてしまうだけなのだが、女性は視線にシビアだなあ……。

今年の風邪は長続き。

皆様マスク&手洗いうがいをお忘れなく!!


絶対にならない方がいいヨ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 副隊長は「あーーん♡」 テレサは「あ゛ぁん?」 って感じかなー、たぶん。
[一言] 寛大さは美徳。 余っているものをただ渡す、ではなく、 持っているものを惜しみなく分け合う、という考え方が素敵。
[一言] 「あのねあのね。王都からエロいシスターが来てくれるんだって! それで、そのシスターが炊き出しをしてくれるの!」 「そっか……そいつは、残念だな……」  副隊長。
2021/03/09 16:51 退会済み
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