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9-10 砂の国ロウカク 戦闘前に腹ごしらえ

ソリの荷台で快適な環境で過ごしつつ、俺たちは砂の国ロウカクの王国に近い町で一番大きな町に入った。

その町は白い壁に囲まれており、規模としてはアインズヘイルの内側と同じくらいの大きさで、建物なんかを見ると思ったよりも発展しているようだ。

まあ、砂漠で起こりやすいであろう水問題も、魔法があるから解決だもんな。

あとはこの日光だけどうにかしてくれればもっと過ごしやすいのに……。


「うーん。多分この町にいると思うんすけど……」


日光など平気そうな顔で呟くレンゲ。

俺もこのまま行けば温熱耐性がついてくれたりしないだろうか。


さて、本題に戻ろう。

地図を見ながら砂漠を進むと小さな村があった。

そこも小規模ではあるが地竜が湧いているとあったので、立ち寄ったのだが既に地竜は討伐されたとのこと。


村の人に話を聞くと、老人がやってきてあっという間に地竜を倒し、風のように去っていったらしい。

おそらく、クドゥロさんだろう。


「栄えている町ですね」


ウェンディの言うとおり人が多いな。

しかも俺のイメージどおり頭に白いターバンを巻いている男性と、色鮮やかなサリーをお洒落に着こなしている女性達が大通りを行き来していた。

……というか、地竜が湧いていると言うのに顔が明るいな。


「そういえば、この町も白い壁に囲まれてるんだな」


立ち寄った小さな村も、真っ白な壁に囲まれていたのを思い出して聞いてみる。

地竜が湧くからか? と考えたのだが、あの壁にそこまで高い防御力があるとは思えなかった。


「そうっすね。あの白い壁に地竜が嫌がる香草が練られてて、地竜が湧いた後も30日くらいは大丈夫なように出来てるっす」

「30日? 日にちが関係あるのか?」

「そうっすよー。地竜もお腹が空いたら嫌いな匂いがどうのと言ってられないみたいっす」


……なるほど。

って事はある程度の時間を壁で稼いで、その間に討伐隊やレンゲ、過去には歴代の巫女達が倒してきたって事か。

流石に対抗策くらいは打ってあるのか。


「町の中も暑いわね……。もう少し水場を作ってくれればいいのに。はあ……主様に貰った魔力球が最高だわ」


ソルテは俺が渡した魔力球を握り、自分の頬に当てて気持ちよさそうにしている。

かくいう俺も首に当てながら町を歩いているのだった。


「主、お腹すいた」

「そうだな……聞き込みも含めて飯でも食べるか」

「ロウカクは基本的に肉が美味いっすよー! 香辛料が豊富っすから、お店によって味も無限大っすからね!」


へえ……香辛料か。

ちょっとお土産用にも買い込んでいきたいな。

出来ることならこっちの料理を覚えて、ミゼラに教えてあげたいところなんだが……教わるのは流石に難しいか。


「おや、レンゲちゃん。久しぶりだねえ!」

「あ、女将さん! お久しぶりっす!」


なにやら色々と豊満な女性が買い物袋を持って近づいてきた。

どうやらレンゲの知り合いらしく、随分と親しげである。


「今日はうちの店寄ってくれるのかい? レンゲちゃんが来るとうちの娘達が喜ぶんだけどねえ」

「おお、いいっすねえ! ご主人におばちゃんの料理を是非食べてほしいっす!」


どうやら女将さんはお店を持っているらしい。

言われて見れば、酒場の女将さんっぽいな。

ってことは、買出し中だったのか。


「ご主人……? おや、レンゲちゃんったら、男の人嫌いだったんじゃないのかい?」

「あははは……やぁぁ……えへへへ」

「あらやだ。ゾッコンなんだね! 貴方、良い子に好かれたわねえ!」


このこのっ! っと、結構鋭い肘がわき腹に刺さる!

この人、結構、強いんじゃないかっ!?


「よし、それなら尚更うちの店にきな! 営業前だから貸切でお祝いしてあげるよ!」

「いいんすか!?」

「ああいいとも。いつもレンゲちゃんにはお世話になっているからね」


おお……なんか話がとんとん拍子に進んで食事先が決まったようだ。

シロもお腹を押さえて限界みたいだし、ひとまず腹ごしらえといきますかね。



「はぐはぐがつがつもぐもぐあむあむんまんま」

「いやあ気持ち良い食べっぷりだねえ! 作りがいがあるよ!」

「んん。ん! 美味しい!」

「そうかいそうかい! いっぱい食べな! 子供は食べるのも仕事だからね!」


いや、そう言ってくれるのはありがたいんだけど、この後営業があるんだろう?

流石にこの量を食べてしまうと、差しさわりがあると思うんだが……。


「……主君。私が食材を買い足してくるよ」

「なら私もついていくわ。町の人に聞き込みも済ませておくわね」

「ああ、悪い。頼めるか?」


アイナとソルテも同じ事を思ったのだろう、気を使って買い物と聞き込みを買って出てくれた。

二人の目の前の皿は空になっているが、まだ足りないだろうから二人の分の食事は別で取っておいて貰うとしよう。


「レンゲさんのご主人さんも、もっと食べてくださいな。女将さんの料理は熱いうちが一番おいしいですよ!」

「ああ、いただいてるよ。ありがとう」


お店の従業員さんだと思うのだが……スカートが短く、素敵なおみ足がばっちりと見えている。

膝上でソックスを止め、絶対領域を広く見せて本来の脚線美をアピールしているあたり、この服を従業員に着せるチョイスをした人はたいしたもんだと感心する。


おそらく……女将さんかな?

脚線美が最も美しいのは、止まっている時ではなく動いているときだ。

千変万化、筋肉が形を変えれば脚線美もまた新たな美しさを生み出すことをわかっている采配だ。

やり手だね……この人は。


「それでそれで、レンゲさんはあの人のどこを好きになったんですか!?」

「ええー内緒っすよぅ。恥ずかしいっすー!」


……悠長にしていていいのだろうか?

と、一応レンゲに聞いたのだが、ご飯の時間くらいリラックスした方がいいって事で、皆気を抜いている。

あまり気張りすぎてもばててしまうし、クドゥロさんと合流した後は嫌でも忙しくなると……。


ということで、ウェンディは女将さんの料理を見させてもらって勉強中。

シロは食事に夢中。

レンゲはお話中と。

なら仕方ない。俺も隣に立つ眼鏡の従業員さんとお話しするとしよう。



「どうですか? 女将さんの料理のお味は?」

「美味いよ。かなり美味い。香辛料の配合が絶妙だな」

「そうですよね。このお店の味のファンは多くて、香辛料の配合を見抜こうと他国から料理人さんもやってきますからね。料理を教えてもらえるのはラッキーですよ」


それは凄いな。でも、それだけの価値は確かにこの料理にはあるのだ。

まず香りから腹を刺激し、食欲を増させた上でピリ辛な味付けがもう一口と自然にフォークを進めてしまう。

暑い日に熱い料理のはずなのに、汗をかきながらもどんどん食べてしまうのだ。


少し濃い目の味付けなのは、おそらくここが酒場だからだろう。

熱々でピリ辛のこいつでラガーをぐいっといけたらたまらないんだけど、生憎とラガーがもしあっても目的が目的なので酔っ払うわけにもいかないのが悲しいところ……。


「ところで、その眼鏡少し曲がってないか?」

「そうなんですよ……。生まれつき眼が悪くて、頂き物なんですが、高価な物なので修理にも出せなくて……」

「そっか……ちょっと借りていい?」

「はい、どうぞ。壊さないでくださいね?」


眼鏡っ子から眼鏡を受け取る際に顔が近くなり、本当に目が悪いのだなと思いつつ、鼻止めの辺りを見る。

おそらく、ここが曲がっているから少しずれているように見えたのだろう。

細い金属なので、金属疲労で簡単に折れてしまうことを考えて『手形成(ハンディング)』を発動させる。


「んんー……と、これくらいかな……? はい、これで一回つけてみて」


一度つけてもらいこちらで位置を確認し、また返してもらって微調整をしていく。


「おおー。錬金術師さんなんですか?」

「うん。本職はね。で、どう? 変な違和感とかない?」

「はい! 大丈夫です! ありがとうございます!」


うん。ちゃんと真っ直ぐだ。

ついでに曲がりにくくなるように補強もしておいた。

やはり眼鏡っ子は眼鏡をしっかりとつけてこそだと思う。


「えへへ。レンゲさんのご主人さん良い人ですね!」


眼鏡っ子はぺこりと頭を下げて胸の谷間をアピールすると、俺が食べ終わった食器を持って、心なしか脚を弾ませて奥へと下がっていった


「ご主人! ナンパしちゃ駄目っすよ!」

「えええ……」


眼鏡っ子の眼鏡を直してあげるのはナンパなのだろうか?


「はっはっは。良いご主人じゃないか。良い男ってのは、自然と女にモテるもんさ! それで、レンゲちゃんは今回も地竜の討伐かい?」

「んんー……そうといえばそうっすね」

「歯切れが悪いねえ。あれ? そういえばこれからは軍が討伐するんじゃなかったのかい?」

「そうっすね。今回は……ちょっと特別っす」


大量発生の報告は町には入っていないのか?

普段と同じように地竜が出てきた程度の認識って事なのだろうか……。


「そういえば、さっき町で聞いたんだけど、老人が地竜の居場所を聞いていたそうだよ」

「本当っすか!? どどど、どこっすかそれ!」

「地竜かい? 北の門を出て真っ直ぐ行った先だよ。もしかして、そのご老人はレンゲちゃんの知り合いかい?」

「そうっす! 北の門っすね!? ご主人!」

「ああ。わかった。シロもお腹いっぱいか?」

「ん。お腹いっぱい。食後の運動が必要」


シロは丸くぽっこりしたお腹をぽんぽんと叩き、口の周りについたソースを俺がぬぐってあげる。


「ただいま。買ってきたわよ。それと、老人が北の門から出て行ったらしいわ」

「おそらく、クドゥロ殿だと思うのだが……急いだほうがいいかもしれないぞ」


ちょうどいいタイミングでソルテとアイナも戻ってきたので、早速向かうとしよう。

この町の近辺に書いてあった地竜の数は多い、クドゥロさん一人じゃあ流石に危ないだろう……。


「ふう。勉強になりました。女将さん、ありがとうございます」

「いいよいいよ。レンゲちゃんのお仲間なら、秘伝のスパイスも教えてあげるさ。それじゃあ、頑張ってきな! また来ておくれ」

「「「いってらっしゃーい!」」」


こうして、腹ごしらえを終えた俺らはクドゥロさんと地竜の元へと急いで向かうのだった。

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[気になる点] なんで人物検索で位置情報を探査しないのだろうか 騎士団長夫人の時はすぐにしたのに
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