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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
8章 アインズヘイルという街
219/444

Valentine's Day SS

あー……間に合わなかった……。


いつもどおり衝動的に書いたSSです。

作業時間は約2時間。

推敲等行っておりませぬ。いつもどおりです!

なまぬるーくお願いします。

事の発端はとある流れ人の女の子だった。


『あのね、バレンタイデーは意中の人にチョコレートと共に気持ちをプレゼントする日なの。でも、異世界(ここ)じゃあチョコは貴重なのよね……。だから、甘味をプレゼントすればいいと思うわ』


流れ人である彼女の話を興味深そうに聞くのは恋する乙女達。


『貴方達の想い人は、一体誰の甘味を気に入るのかしらね』


そんな事まで言ってしまったのだから、恋する乙女達は止まらない。否、止まれなくなってしまったのだった。



「んんー……はぁぁ……疲れたぁ……肩凝ったぁ……」


今日の分のノルマを終えて、さて一眠り……と思ったのだが、太陽はとっくに顔を出し、朝どころかもう昼であることを精一杯アピールしていた。


「昼夜逆転……こっちの世界でもそれはまずいよな……」


皆の生活は当然昼間に行動しているので、このままいくとすれ違い生活になってしまう恐れがある。

俺が眠くない時に皆が寝てしまっては、やることが無い俺は仕事をするかとなってしまうだろう。

ああ、恐ろしい。


「あ、ご主人様。おはようございます」

「あー……おはよう?」

「むぅ。もう……また徹夜なされたんですか? 納期はもっと先だったのでは?」

「いやあ、ついつい乗っちゃってね。まあおかげで全部終わったからさ」

「それは……いいことなのでしょうけども……。どうしますか? お昼ごはん食べますか? それともお休みになられますか?」

「お昼をもらおうかな。仕事も終わったし、今日はゆっくりするよ」


ウェンディがせっかく作ってくれた昼食を無駄にするわけにもいかないしな。


「お、パン粥か。胃に優しいメニューで助かるよ」

「起きたばかりかな? と思って作ったのですけどね……。もう、あまり無理をしすぎて体を壊さないようにしてくださいね?」

「わるいわるい。心配かけないように気をつけるよ」

「もう……口だけなんですもん」


ウェンディが口を膨らませてぷいっとそっぽを向くので、その膨らんだ頬をぷにっと押すと空気が漏れる。

その行為にも口を膨らませて怒るウェンディを可愛いなあと思いつつ食事を取り終えるのだった。



「そういえば、皆はどうしたんだ?」


洗いものを二人で並んでしつつ聞いてみた。

いつもならシロやミゼラを見るはずだが、今日はまだ姿を見ていない。

アイナ達も……確か今日はクエストはなかったはずだったんだけど、姿が見えないな。


「ミゼラは冒険者ギルドに届け物があるらしく、それを取りに行きました。アイナさん達は臨時のクエストだそうです。シロは……ちょっとわからないですね」

「ほーう。それじゃあ、今日はウェンディと二人きりなんだな」

「そうですね。ご主人様を独り占めです」


そういうとウェンディは俺のほうに半歩だけ体を寄り添わせるように触れるか触れないかの距離にまで近づけた。

それにあわせて、俺も気持ちウェンディのほうに体を寄せる。


しばしの沈黙。

何かを話すでもなく、何かをするわけでもないのだが今この時この瞬間が幸せだと思える時間だった。


「すみませーん」


そんな時間を邪魔したのは、狸人族の女の子の声だった。


「あ、はーい。どうやら頼んでいたものが届いたようなので、受け取ってきますね」


基本的に郵便物も門番をしている子が受け取り、匂いや音、重さなどから危険物ではないことを調べ、俺達へと届けてくれているのだが……もう少しだけ、タイミングを遅くして欲しかったな。



「よし。終わりだな」

「はい。終わりですね」


戻ってきたウェンディに何を頼んだのか聞いたのだが、秘密と言われてしまい、俺達はいいじゃないかーといちゃつきながら洗い物を終わらせた。


「今日他にやる事は?」

「お掃除はほとんど終わってます。洗濯物は、取り込むくらいですが、まだかかりますし……お買い物も大丈夫ですね」

「そっか。んーそれじゃあどうしようかな」

「あのー……差し支えなければなのですが……」

「ん?」


俺は、ウェンディからのお願いを聞き、二つ返事でオーケーを出した。

当然だろう! なんせ……。


「痛くないですか……?」

「すげぇ気持ちいい……」


うおおお……やば。

これはやばい。素敵過ぎる。


「あ、大きいのがいましたよ」

「あぁぁああぁぁぁ……」

「変な声あげないでくださいよ。笑って手元が狂ってしまいます」

「いやあ……至福だぁ……」


頬はウェンディのむちっとしてぷりっと張りのあるふとももを感じつつ、耳元でウェンディの声がぞくぞくっと体を駆け巡る。

更には耳の中に細い棒を突っ込まれ、中を擦られ快感を与えられているのだ。


どうしてこう、人にしてもらう耳掃除は気持ちがいいのだろうか……。

自分でやっても気持ちはいいのだが、それでも人にやってもらう耳掃除には敵うまい。

そして、ウェンディの艶っぽい声が超近距離で俺の耳をくすぐるのである。

仕上げ、といって耳を吹きかけられたりなんてしたらもう……もう、身悶えてしまいますよ!


「あ、奥の方に大物が……動いちゃ駄目ですよ?」

「はーい」


おおお……あーやばい。やばいね。これは奥だね。ぞくぞくする。

しかも凄く気持ちい。あー……このまま寝れそうかも。

いいかな? 疲れてるし、寝ても……いいよ……ね……。


「ごっ主人ー! ただいまっすー!!」

「ッ!!」

「あ……」


勢い良く開けられた扉と共に入ってきたレンゲさんの声に驚き、びくんとしてしまった。そしてその拍子に自分から耳かき棒に突き刺さりに行ってしまい、耳には痛みが!!


「ッッッ!!!」

「ご、ご主人様落ち着いて、ゆっくり、ゆっくり抜かないと傷ついちゃいますから!」


ウェンディになだめられ、ゆっくりと慎重に耳かき棒を抜いてもらう。

そして、耳の中に少量の回復ポーションを注いでもらうのだった。


「……」

「ごめんなさいっす……! 次から落ち着いて扉を開けるようにするから怒らないで欲しいっす!」


レンゲはジャパニーズドゲザで謝ってきたので、俺は耳を抑えつつも許してあげる事に。

まあ、リビングでやってた俺にも若干、僅かながら責任もあるだろうし。


「で、どうしたんだ?」

「あ、そうでしたっす! これっすー! これをご主人にプレゼントするっすよ!」

「プレゼント?」


レンゲが取り出したのは小さな黒い塊。

んん? あれは……。


「これは黒糖っす! どうっすか? どうっすか? 珍しくないっすか!? 白じゃないんすよ! 黒なんすよー! 更に、普通の砂糖よりも栄養価が高くて、体にもいいんすよー!」

「お、おう……」


うん。黒糖……だもんな。


「あれ? 反応が薄いっす…………まさか!」

「うん。そのー……元の世界でな」

「ガーンっすー……。甘いものって言ったらやっぱり砂糖っすし、その中でも特殊なものをと思ったんすけど……」


ショックを受け、膝を突いて首をガクッと下ろすレンゲ。


「いや、でも久々だし、美味いぞ? うん。ありがとな!」


実際元の世界でもそんなにしょっちゅう食べるものでもないし、うん。美味い美味い。


「ううう……そっすかぁ? 喜んでもらえたなら嬉しいっすけど……」

「ふふふ。甘いわねレンゲ……。主様の世界は食に貪欲なのよ。そんなただの黒糖じゃあ食べた事があるに決まっているじゃない」


落ち込むレンゲの後ろから、ドヤ顔で入ってきたのはソルテだった。

レンゲに対し、勝ち誇った顔をしているのだが……一体なんなのだろうか。


「主様! 私からのプレゼントよ! はい!」

「お、おう……ありがとう」


えーっと……これは……蜂蜜か?

いや、ちょっと香りが違うかな?


「ふふーん。これはね」

「あ、メープルシロップか」

「メー……」


しまった。ソルテが答えを言う途中で言ってしまった事により、とても悲しそうな顔をした後にその場にしゃがみこんで体育すわりをし始めてしまう。


「あ、いや、ああー美味そうだなー! 俺、メープルシロップ好きなんだよなぁー……」

「っ……そうなの?」

「ああ。そうなんだよ」


ぺろりとなめてみると、ものすっごく甘い。

嫌いではないし、好きと言えるのだが、直接食べるのは……違うと思うけど今は仕方が無いだろう!


「えへへ、そうなんだ。あのね、それシュガーメープルっていう木の魔物から稀にとれるものなのよ。甘さも上品で、いくら食べても飽きないでしょう?」

「ああ、飽きないなー!」


そう言われて一口だけなんて出来るわけが無い!

指につけて舐め取っては、指につけた。


なんだなんだ。

なんだって二人とも俺にプレゼントをくれるんだ?

もしかして、今日って何かの記念日だったか……?

出会って○○日記念! とかか?

やばい……俺カウントしてないからわからないぞ……。


「はぁ……犬もレンゲも甘い。奇をてらいすぎ。主の好きなものは、主の国のもの。だから、これが一番好きなはず」


しゃがみこむ二人の後ろから、今度はシロが現れる。

手に持っているのは……。


「わたあめ……」

「ん。主の世界の、主の好きなもの」


まるまると大きなわたあめは持ち帰りようのスライムラップに包まれていて風で溶けてしまわぬようになっていた。


「はい。主、あーん」

「あ、あーん……」


またしても甘いものだ!

なんだ? なんなんだ?

俺を甘いもの地獄へと陥れたいのか?

まさか、糖尿に……って、そんな訳ない……よな?


「主君! 私からの気持ちだ! 受け取ってくれ!!」


ひぃ。


「ふふふ。シロも着眼点は悪くは無いと思うが、主君の世界の甘い食べ物ならばもう一つあるだろう?」


今度はアイナが大皿に乗った白くて丸い塊を持ってきた。

待て待て待て……あれはまさか、いやでもあんなサイズは……。


「さあ、食べてくれ! 店主と交渉し、特別に作ってもらったダイフクだ!」


俺の知ってる大福と違う!

小玉スイカを潰したくらいの大きさがあるじゃないの!


「い、いやあ……流石にこの量は……」

「食べられるだけで構わんぞ。足りないよりは良いと思ったのだ!」


んんんーんんー……っ。

一口だけ……って訳にはいかないよね……。

うぷっ……甘い。匂いも口の中も体の組織も甘いものに作り変えられてしまいそうだ。


なんとか……なんとか半分は食べた。

でも、もう無理……。もう駄目だ。もう甘いものは……食べたくないッ!


「あ……もう皆いたのね……。あら、その様子じゃあ私は5番目だったかしら」


嗚呼……次は……ミゼラか。

一体今度はどんな甘いものが出てくるのだろう。


「その……ね。セレンが材料を送ってくれたものだから……挑戦してみたのだけれど……どうかしら?」


小さなお皿に乗っていたのは、小さな茶色くて四角いもの。

これは……チョコレートだよな?


「ああー! ずるいっすミゼラー! 一番王道じゃないっすかー!」

「なんで誘ってくれないのよー……」

「違……出来るかどうかもわからなかったし、結局材料を全部使ってもこれだけしか出来なかったのよ……。それに、正直美味しいかどうかは……ちょっと、苦くなってるかもしれないし……その、それでも貰ってくれるかしら?」


チョコが王道って……あっ! バレンタインか?

だから皆俺に甘いものをくれていたのか!

おおお……皆義理じゃない……よな?

本命だなんて……いつ以来だろうか……。


「もちろんだ! ありがたくいただくよ!」


不安がるミゼラだが、俺はまずその大きさに感謝した。

一口、一口で終わる!

ではさっそくいただきましょうか!


ひょいっと摘み上げて一口で食べてしまう。

確かに少し苦い。

少し苦いし、たまに砂糖の塊がどばっと出てくるが十二分に美味い。


「うん。美味しい。ありがとなミゼラ」

「無理してない? でも……こちらこそ、ありがとう」


ミゼラは俺から小さなお皿を回収すると、それで紅くなった顔を隠すようにしてしまう。


「あれ。そういえばウェンディは……?」


先ほどからいつの間にかウェンディがいない……。

そういえばウェンディからは何も貰っていなかったけど……もしかしてさっきの届いたものがそうなのだろうか?


ウェンディが用意する甘いものか……何故だろうものすごく甘いものな気がしてしまう。

一体何が待っているのだろう……。


「ご主人様。お待たせしました」


どきどきして待っていると、ウェンディが御盆を持って現れる。

どうやら件の品はティーカップに入れられているらしい。


「あれ? ウェンディはまだだったんすか?」

「意外ね……。ウェンディなら真っ先に渡していると思ったのに」

「最後だから意味がある……ということもあるのですよ。はい、ご主人様。どうぞ……」

「ああ……ありがとう? あれ?」


色からして紅茶じゃない。

これって……緑茶?


「アマツクニで好まれているグリーンティーです。甘いものを食べた後ですから、こういったものの方がお喜びになられると思ったのですが……いかがでしょうか?」


ずずっと小さく音を立てて口の中へと運ぶと、少しの苦味とまろやかな茶の旨みを感じさせる温かみのある味だった。

しかも、だんだんと飲むにつれて茶のわずかな甘みを感じさせてくれるのだ。


「ああ……美味いなあ……」


ほっとしてしまうような、最後に締めくくるには最も素晴らしい贈り物である。


「ず、ずるいっす……」

「あれはずるいわよね? 甘いものじゃないじゃない!」

「抜け目がない……」

「やられたな……」

「流石ですね」

「あら。私はご主人様に最も喜んでもらえるものをお選びしただけですよ」


ウェンディは悪戯っぽく微笑んでみせるが、皆ははぁ……とため息をついて肩を落としてしまう。


「いや、どれも嬉しかったし、美味しかったぞ? 皆ありがとな。さあ、食べ切れなかったのは皆で食べて、お茶にしようか」


大福とかまだ半分残ってるし、メープルシロップがあるならホットケーキでも作りますかね。

お返しの時期にはまだ早いが、そのくらいの用意なら俺がしよう。


今日は天気もいいし、皆でバルコニーでお茶を満喫するとしよう。

誰が皆に教えたのか知らないが、良いバレンタインになったよ。ありがとうございました。



「くしゅん」

「美沙姉風邪か?」

「ううん、多分……噂でもされているのかしらね」

「お姉ちゃん……また何かしたんですか?」

「あら、心外ね。あ、まーくん。これ、バレンタインのプレゼントね」

「あ、ありがとう美沙姉」

「え……今日……バレンタイン?」

「そうよ。新年になってから、45日目でしょ?」

「あ、そっか! ああああ……何も用意してないよう……。なんで教えてくれなかったのー!」

「ふふふふ。ごめんね。材料は余ってるから、今から作っても間に合うわよー」

9章は多分来週からかな?

書籍の4巻作業もあり、遅めで申し訳ないですが、よろしくお願いしますー!

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[気になる点] バレンタインデーを英語で書くならValentine's Dayが良いような気がする。
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